ページトップ
  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 平成28年5月|

日本郵政グループの経営状況等について


3 検査の状況

(1)郵政事業の運営に係る組織形態、制度等の変遷等

ア 組織形態、制度等の変遷

郵政事業の公社化及び民営化に伴って、その運営に係る組織形態、制度等は、次のとおり、大きく変遷している。

(ア)組織形態、会計制度以外の制度等の変遷

前記のとおり、郵政事業は、郵政省又は郵政事業庁により、昭和24年6月から平成15年3月まで(以下、当該期間を「特別会計時代」という。)は、国の直営事業として一体として運営されていた。そして、同年4月から19年9月まで(以下、当該期間を「公社時代」という。)は公社により一体として運営されていたが、同年10月の民営化により、郵便・物流事業については郵便事業会社が、金融窓口事業については郵便局会社が、銀行業についてはゆうちょ銀行が、生命保険業についてはかんぽ生命がそれぞれ運営することとなった。さらに、24年10月には、郵便局会社が日本郵便に商号を変更して郵便事業会社の業務等を合併により承継し、郵便・物流事業及び金融窓口事業については日本郵便が運営することとなった。

租税負担及び預金保険機構等への保険料の納付等についてみると、特別会計時代には、法人税、固定資産税等が非課税であり、また、当該納付等の対象外となっていたが、公社時代には、法人税は非課税のままであったものの固定資産税が一部の資産について課税対象となった。さらに、民営化後は、固定資産税が一部の資産について減免されているものの、税金の負担のほか、ゆうちょ銀行では預金保険機構への保険料の納付を、かんぽ生命では生命保険契約者保護機構への負担金の納付を行うこととなるなど、同業他社等と同水準の負担となっている。

そして、銀行業(民営化前は郵便貯金事業)における資金運用については、財政投融資改革により資金運用部への預託義務が廃止されたこともあり、安全性・確実性を重視した運用という基本的な姿勢は変わらないものの、運用方法が変化してきている。ただし、金融2社は、郵貯簡保機構と締結した契約により、その運用資産のうち国債、地方債(以下、特に断りがある場合を除き、国債は日本国政府が発行する国債をいい、地方債は日本国の地方公共団体が発行する公債をいう。)等の額が、それぞれ、郵貯簡保機構からの預り金である特別貯金(注4)の額、郵貯簡保機構のために再保険(注5)の契約に基づいて積み立てる額を下回らないように運用する義務を負っている(表3-1参照)。

(注4)
特別貯金  郵貯簡保機構が公社から承継した郵便貯金に相当する額についてゆうちょ銀行との間で締結する郵便貯金管理業務の委託契約に係る貯金
(注5)
再保険  郵貯簡保機構が公社から承継した簡易生命保険契約に基づいて負う保険責任の全てについてかんぽ生命との間に再保険関係が成立する旨を定める契約に係る再保険

また、郵政監察及び内部監査についてみると、郵政省、郵政事業庁及び公社においては、郵政省設置法(昭和23年法律第244号)、郵政事業庁設置法(平成11年法律第92号)及び日本郵政公社法に基づき、郵政監察官が置かれ、①郵政事業に対する犯罪について、刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)に規定する司法警察員の職務を行うなどの捜査活動のほか、②防犯対策活動、③郵便局等における業務が法令等に定められたとおりに、かつ、能率的に行われているかどうかを判断し、是正、改善を求める考査活動、④郵政行政の在り方等について調査等を行う調査活動等の郵政監察が行われていた。また、郵政監察官とは別に、郵政省組織令(昭和59年政令第183号)、郵政事業庁組織規則(平成13年総務省令第2号)及び日本郵政公社組織規程(平成15年郵経企第302号)に基づき、内部監査を行う職員が置かれ、郵政事業の業務に係る経費の支払の適否の監査や現金を保管する出納官吏の帳簿、現金等の検査等が行われていた。

民営化後の内部監査では、日本郵政の監査部門が、日本郵政グループ全体の内部監査態勢向上の観点から、日本郵政グループ各社の監査部門に対して、監査規程、監査計画、監査実施状況等のモニタリングを行い、内部監査態勢の評価、検証等を行っている。

表3-1 組織形態、会計制度以外の制度等の変遷

① 昭和24年6月から平成15年3月まで
項目 特別会計時代
昭和24年6月~平成13年1月 平成13年1月~15年3月 昭和37年4月~平成15年3月
組織形態
事業運営主体 郵政省 郵政事業庁 簡保事業団
設置根拠法 郵政省設置法 郵政事業庁設置法 簡易保険福祉事業団法
主務大臣(監督官庁) 総務大臣 総務大臣(
主要な意思決定機関 郵政大臣 郵政事業庁長官 理事長
職員の身分 国家公務員 みなし公務員
事業内容
業務範囲 郵便事業、郵便貯金事業及び簡易生命保険事業の一体経営
郵政事業の企画立案等
郵便事業、郵便貯金事業及び簡易生命保険事業の一体経営 加入者福祉施設の設置及び運営、簡易生命保険特別会計及び郵便貯金特別会計から寄託された資金の運用等
事業運営資金等 郵政事業に係る資産(郵政事業特別会計)、郵便貯金(郵便貯金特別会計)及び積立金(簡易生命保険特別会計) 国からの出資金、簡易生命保険特別会計及び郵便貯金特別会計から寄託された資金並びに簡易生命保険特別会計からの交付金
租税負担
法人税 非課税
固定資産税 非課税
その他税目 一部課税
保険料の納付等
預金保険機構に対する保険料の納付 対象外 該当なし
生命保険契約者保護機構に対する負担金の納付 対象外 該当なし
日本銀行預け金の保有義務 対象外 該当なし
資金運用制度等
銀行業(民営化前は郵便貯金事業)における資金運用 資金運用部への預託
→自主運用(一部を簡保事業団へ寄託)(主たる運用は財政融資資金預託金)
公社債、預貯金及び金銭の信託(運用資産別の運用状況は非開示)
生命保険業における資産運用 自主運用(一部を簡保事業団へ寄託)(主たる運用は国債等)
監察・監査制度
監察・監査制度 郵政監察及び内部監査 内部監査
(注)
平成13年1月5日以前は郵政大臣
② 平成15年4月以降
項目 公社時代 民営化後
平成15年4月~19年9月 平成19年10月~
組織形態
事業運営主体 公社 日本郵政、日本郵便 金融2社 郵貯簡保機構
設置根拠法 日本郵政公社法等 郵政民営化法等 郵政民営化法等 郵政民営化法等
主務大臣(監督官庁) 総務大臣 総務大臣 内閣総理大臣(金融庁長官。ただし、郵政民営化法上の一部の規定(新規業務等)については、総務大臣が共管) 総務大臣
主要な意思決定機関 理事会(総裁、副総裁及び理事で構成) 株主総会及び取締役会 株主総会及び取締役会 理事長
職員の身分 国家公務員 民間企業職員 民間企業職員 みなし公務員
事業内容
業務範囲 郵便事業、郵便貯金事業及び簡易生命保険事業の一体経営 郵便・物流事業及び金融窓口事業(日本郵便)並びにその他の事業(日本郵政) 銀行業(ゆうちょ銀行)及び生命保険業(かんぽ生命) 公社から承継した旧郵便貯金及び旧簡易生命保険に係る業務(貯金業務はゆうちょ銀行に、保険業務はかんぽ生命に委託)
事業運営資金等 各特別会計及び簡保事業団からの承継資産 公社からの出資金(日本郵政)、日本郵政からの出資金(日本郵便)及び公社からの承継資産(両社) 日本郵政からの出資金及び公社からの承継資産 公社からの承継資産(特別貯金、再保険等)
租税負担
法人税 非課税(国庫納付。免税措置そのものは変更なし) 課税 課税 非課税
固定資産税 事業資産は半額免除
事業外資産は全額課税
課税(日本郵便所有の一部資産については減免あり) 課税 課税
その他税目 一部課税 課税(日本郵便所有の一部資産については減免あり) 課税 一部課税
保険料の納付等
預金保険機構に対する保険料の納付 対象外 該当なし ゆうちょ銀行が納付 該当なし
生命保険契約者保護機構に対する負担金の納付 対象外 該当なし かんぽ生命が納付 該当なし
日本銀行預け金の保有義務 法定準備預金額に相当する預け金の保有義務 該当なし 法定準備預金額の保有義務(ゆうちょ銀行) 該当なし
資金運用制度等
銀行業(民営化前は郵 便貯金事業)における資金運用 自主運用(主たる運用は国債) 該当なし ゆうちょ銀行が自主運用(主たる運用は国債) ゆうちょ銀行へ委託
生命保険業における資産運用 自主運用(主たる運用は国債) 該当なし かんぽ生命が自主運用(主たる運用は国債) かんぽ生命へ委託
監察・監査制度
監察・監査制度 郵政監察及び内部監査 内部監査 内部監査 内部監査
(イ)会計制度の変遷
a 特別会計時代

郵政事業特別会計、郵便貯金特別会計及び簡易生命保険特別会計においては、財政法(昭和22年法律第34号)、会計法(昭和22年法律第35号)、郵政事業特別会計法(昭和24年法律第109号)、郵便貯金特別会計法(昭和26年法律第103号)、簡易生命保険特別会計法(昭和19年法律第12号)等に基づき、会計処理が行われていた。

郵政事業特別会計においては、計理方法として、一般会計で採用されている現金主義ではなく発生主義が採用されるとともに、減価償却、固定資産の価額の改定等、企業会計の考え方が取り入れられ、損益計算書等の財務諸表が作成されていた。また、繰越明許費については財務大臣(13年1月以前は大蔵大臣)の承認を経ることなく翌年度に繰り越して使用することができるなど、一般会計と異なる取扱いとなっていた。

一方、郵便貯金特別会計及び簡易生命保険特別会計においては、計理方法として、基本的に現金主義が採用されていた(表3-2参照)。

b 公社時代

公社においては、財政状態及び経営成績をより明らかにするために、企業会計原則による会計処理が導入された。

公社の予算は、日本郵政公社法等に基づき、4年を1期とする中期経営目標を達成するための中期経営計画において定められ、総務大臣の認可を受けることとなった。また、期間の収益及び費用の見通しに関する書類を添付した年度経営計画を定めて総務大臣に届け出ることとなった。

そして、決算については、毎事業年度、企業会計原則に基づいて作成した財務諸表等を総務大臣に提出し、その承認を受けるとともに、財務諸表等について、監事の監査のほか、会計監査人(公認会計士又は監査法人)の監査を受けることとなった(表3-2参照)。

c 民営化後

民営化後においては、日本郵政及び日本郵便は、それぞれ日本郵政株式会社法等及び日本郵便株式会社法等に基づき、毎事業年度開始前に、事業計画を記載した申請書に資金計画書及び収支予算書を添えて総務大臣に申請し、総務大臣の認可を受けるとともに、毎事業年度終了後、財務諸表等を総務大臣に提出することとなっている。

そして、日本郵政及び日本郵便における上記以外の事項並びに金融2社における事項については、会社法(平成17年法律第86号)等に基づき、他の株式会社と同様に、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従って、日本の会計基準(注6)に基づいて処理されることとなっている。また、計算書類等について、監査委員会等及び会計監査人の監査を受けるとともに、取締役会において決算の承認を受けた上で、原則として定時株主総会においても決算の承認を受けることとなっている(表3-2参照)。なお、28年3月末現在、日本郵政グループは、今後の事業活動のグローバル化を見据え、日本郵政グループの連結決算(以下「日本郵政連結決算」という。)の会計基準として、国際会計基準審議会が策定する国際的な会計基準である国際財務報告基準(IFRS)の導入を検討している。

(注6)
日本の会計基準  昭和24年に大蔵省企業会計審議会が定めた「企業会計原則」を中心として、以後、経済・社会の変化に合わせて同審議会が設定してきた会計基準及び平成13年以降、企業会計基準委員会が設定している会計基準

表3-2 会計制度の変遷

会計制度 特別会計時代 公社時代 民営化後
(日本郵政、日本郵便)
民営化後
(金融2社)
昭和24年6月
~平成15年3月
平成15年4月
~19年9月
平成19年10月~ 平成19年10月~
会計基準等 国の会計制度に基づく
(企業会計原則は非適用)
日本の会計基準 日本の会計基準 日本の会計基準
会計年度所属区分 郵政事業特別会計は発生主義、郵便貯金特別会計及び簡易生命保険特別会計は基本的に現金主義 発生主義 発生主義 発生主義
会計・経理規程類 財政法、会計法、郵政事業特別会計法、郵便貯金特別会計法、簡易生命保険特別会計法等 日本郵政公社法等 日本郵政株式会社法、日本郵便株式会社法、会社法等 会社法等
予算 内容 歳入歳出予定計算書等 中期経営計画(4年間)及び年度経営計画(1年間)に含まれる。 資金計画書及び収支予算書(事業計画に添付) 法令による規定なし
手続 総務大臣 注(1)が作成した歳入歳出予定計算書等を基に内閣が予算を作成し国会の議決を受ける。 中期経営計画
公社が作成し総務大臣の認可を受ける。その後、総務大臣が国会に報告する。
年度経営計画
中期経営計画を基に公社が作成し総務大臣に届け出る。
各社が作成し総務大臣の認可を受ける。 法令による規定なし
複数年度予算 なし 中期経営計画において4年間の予算を規定 法令による規制なし 法令による規制なし
繰越 繰越明許費については、総務大臣 注(1)が決定し、財務大臣 注(2)に通知する。 法令による規制なし 法令による規制なし 法令による規制なし
決算 内容 歳入歳出決定計算書等 財務諸表 財務諸表 財務諸表
手続 総務大臣 注(1)が作成した歳入歳出決定計算書等を基に内閣が決算を作成し国会へ提出する。
また、参考として、財務諸表を作成し上記の計算書に添付している。
公社が作成し総務大臣の承認を受ける。その後、総務大臣が国会に報告する。 各社で作成し、取締役会において承認を受けた上で、原則として定時株主総会においても承認を受ける。また、総務大臣へ提出する。 各社で作成し、取締役会において承認を受けた上で、原則として定時株主総会においても承認を受ける。
財務諸表 内容 貸借対照表、損益計算書、財産目録、資産価格増減表及び資本増減表 連結貸借対照表、連結損益計算書、連結キャッシュ・フロー計算書、貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書等(連結は公社全体と郵便業務、単体は公社全体と郵便、郵便貯金、簡易生命保険各業務別を作成) 連結貸借対照表、連結損益計算書、連結株主資本等変動計算書、連結キャッシュ・フロー計算書、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書等 連結貸借対照表、連結損益計算書、連結株主資本等変動計算書、連結キャッシュ・フロー計算書、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、キャッシュ・フロー計算書等 注(3)
  貸借対照表の区分表示 郵政事業特別会計は資産及び資本勘定に区分
郵便貯金特別会計は資産、負債及び資本勘定に区分
簡易生命保険特別会計は、資産、負債及び資本勘定に区分
資産の部、負債の部及び資本の部に区分 資産の部、負債の部及び純資産の部に区分 資産の部、負債の部及び純資産の部に区分
  損益計算書の区分表示 単一区分損益計算書 営業損益計算、経常損益計算及び純損益計算に区分 営業損益計算、経常損益計算及び純損益計算に区分 経常損益計算及び純損益計算に区分
利益の処理 積立金として整理 積立金として整理し、中期経営計画の期間の終了後に経営に必要となる分を除き国庫納付 経営、投資に必要となる分を利益剰余金として整理し、残余は株主へ配当 経営、投資に必要となる分を利益剰余金として整理し、残余は株主へ配当
外部監査等 会計検査院による検査 会計検査院による検査並びに監事及び会計監査人による監査 会計検査院による検査並びに監査委員会(日本郵便は監査役)及び会計監査人による監査 会計検査院による検査並びに監査委員会及び会計監査人による監査
注(1)
平成13年1月5日以前は郵政大臣
注(2)
平成13年1月5日以前は大蔵大臣
注(3)
かんぽ生命は連結決算及び単体決算の財務諸表を作成し(キャッシュ・フロー計算書については連結決算のみを作成している。)、ゆうちょ銀行は単体決算の財務諸表のみを作成している。

イ 従業員数等の推移

従業員数の推移についてみると、図3-1のとおり、特別会計時代の14年度には約27万人であったが、26年度には約22万人にまで減少している。

一方、郵便局数の推移についてみると、日本郵便株式会社法施行規則(平成19年総務省令第37号)により、いずれの市町村(特別区を含む。)においても、一以上の郵便局を設置しなければならないとされていること、また、過疎地においては、19年10月から24年9月までは19年10月時点の郵便局ネットワークの水準を、民営化法改正法が施行された24年10月からは同月時点の当該水準を維持することを旨とすることが規定されていることなどから、郵便局数は14年度末の24,752局から19年度末の24,540局に僅かに減少した後、おおむね横ばいで推移しており26年度末には24,470局となっている。

図3-1 従業員数及び郵便局数の推移

図3-1 従業員数及び郵便局数の推移 画像

従業員数について、19年度以降の日本郵政グループ各社の内訳をみると図3-2のとおり、日本郵便(24年9月30日までは郵便事業会社及び郵便局会社)の従業員数が、日本郵政グループ全体の従業員数の大半を占めている状況となっている。

そして、郵便事業会社は、22年度に子会社を統合して正規の従業員1,500人程度及び臨時従業員5,000人程度を受け入れたこと、従前から雇用していた5,000人程度の臨時従業員について雇用形態を改めて正規の従業員としたことなどにより正規の従業員数が7,000人程度増加した。また、23年度以降業務量に応じた人員配置の見直しを実施するとともに、日本郵便に吸収合併された24年度及び25年度に管理職数の削減及び新規採用者数の抑制を行うなどしたことで、両年度とも、正規の従業員が6,000人から7,000人程度減少した(図3-3参照)。

図3-2 日本郵政グループ各社における従業員数の内訳の推移

図3-2 日本郵政グループ各社における従業員数の内訳の推移 画像

図3-3 日本郵便、郵便局会社及び郵便事業会社の従業員数の増減の推移

図3-3 日本郵便、郵便局会社及び郵便事業会社の従業員数の増減の推移 画像

(2)日本郵政グループの損益等の状況

ア 公社及び日本郵政グループ全体の損益等の推移等

公社と日本郵政グループ全体の財政状態等の状況を比較するために、公社の連結決算及び日本郵政連結決算における経常収益等の推移をみると、経常収益については、図3-4のとおり、公社時代には15年度の24兆6050億余円から18年度の19兆6210億余円へ、民営化後には20年度の19兆9617億余円から26年度の14兆2588億余円へと減少傾向が続いている。これは、生命保険業において保険料等収入(19年9月末までは保険料収入。以下同じ。)の減少が続いていたこと、銀行業において財政融資資金預託金の残高の減少に伴って資産運用収益が減少したことなどによるものである。また、経常利益及び当期純利益については、経常費用が15年度の22兆0540億余円から26年度の13兆1430億余円へと減少していることなどにより、民営化後においてもそれぞれ黒字基調で推移しており、26年度には、1兆1158億余円、4826億余円となっている。

図3-4 公社の連結決算及び日本郵政連結決算における経常収益等の推移

図3-4 公社の連結決算及び日本郵政連結決算における経常収益等の推移 画像

純資産額及び純資産額から少数株主持分を差し引いた自己資本については、公社時代に当期純利益が多額に上っていたことなどにより、図3-5のとおり、それぞれ15年度末の4兆6282億余円、4兆6075億余円から17年度末の9兆2824億余円、9兆2657億余円へと約2倍に急増している。そして、その後、26年度末には、それぞれ15年度末の3倍以上となる15兆3015億余円、15兆2988億余円へと増加している。また、総資産額は、公社時代には15年度末の404兆2150億余円から19年9月末の338兆4785億余円へと減少傾向が続いていたが、民営化後の23年度以降は、23年度末の292兆1265億余円から26年度末の295兆8497億余円へと僅かながら増加に転じている。同様に、負債額についても、公社時代には15年度末の399兆5867億余円から19年9月末の330兆7820億余円へと減少傾向が続いていたが、民営化後の25年度以降は、25年度末の278兆8577億余円から26年度末の280兆5482億余円へと僅かながら増加に転じている。

また、バーゼル銀行監督委員会(注7)が公表している自己資本規制に基づく、銀行を子会社に持つ会社の経営の健全性を示す連結自己資本比率(注8)については、最も高かった21年度の69.7%から26年度には40.4%へと低下している。これは、運用資産に占める国債の割合が低下し、連結自己資本比率の算定の際に使用されるリスク・ウェイトが国債に比べて高い外国証券等の割合が増加していることによるものである。

(注7)
バーゼル銀行監督委員会  銀行を対象とした国際金融規制を議論する場として、昭和49年に10か国中央銀行総裁会議により設立が決められた銀行監督当局の委員会である。
(注8)
連結自己資本比率  連結財務諸表に基づいて算出する株主資本等から構成される自己資本を分子とし、保有する資産について、資産の種類ごとに定められたリスク・ウェイトを乗じて得た額の合計額であるリスク・アセットの額等を分母として算定される。リスク・ウェイトは、現金や国債は0%、外国の国債は0%から150%まで、株式は100%、250%又は1250%とされていて資産の種類ごとに定められており、運用資産に占める国債の割合が高い場合には、分母であるリスク・アセットの額が小さくなり、連結自己資本比率が高くなる。ただし、子会社の中に保険会社が含まれている場合には、連結自己資本比率の算定の際、当該保険会社を連結の範囲から除外することとされているため、日本郵政の連結自己資本比率の算定の際にはかんぽ生命が連結の範囲から除外されている。そして、日本郵政のように、海外営業拠点を有する銀行等を子会社としていない銀行持株会社等は、連結自己資本比率が4%未満になると、監督当局から改善計画の提出を求められるとともに、当該計画の実行等について命令を受ける。

図3-5 公社の連結決算及び日本郵政連結決算における総資産額等の推移

図3-5 公社の連結決算及び日本郵政連結決算における総資産額等の推移 画像

さらに、キャッシュ・フローの状況をみると、表3-3のとおり、営業活動によるキャッシュ・フローについては、公社時代には、銀行業において貯金残高が大幅に減少したことなどにより、15年度にマイナス12兆8845億余円、18年度にマイナス21兆2851億余円等となっていた。また、民営化後には、生命保険業において保険契約件数の大幅な減少等に伴って保険料等収入が減少していたことなどにより、20年度にマイナス5兆5327億余円、26年度にマイナス1兆2045億余円等となっている。一方、投資活動によるキャッシュ・フローについては、公社時代には、財政融資資金預託金の償還に係る収入が多額に上っていたため、15年度に9兆2504億余円、18年度に19兆1272億余円等となっていて、大幅なプラスとなっていた。また、民営化後には、20年度から23年度までは9007億余円から5兆9633億余円の間で推移していたが、24年度以降は有価証券の償還額がその取得額を上回るなどしていたため、10兆円以上で推移しており、26年度には15兆5217億余円となっている。

表3-3 公社の連結決算及び日本郵政連結決算におけるキャッシュ・フロー等の推移

(単位:億円)  
科目 公社  
平成
15年度
16年度 17年度 18年度 19年度上期      
営業活動による
キャッシュ・フロー
▲12兆8845 ▲16兆3599 ▲20兆7934 ▲21兆2851 ▲10兆9470  
投資活動による
キャッシュ・フロー
9兆2504 15兆8990 21兆1174 19兆1272 11兆7963
財務活動による
キャッシュ・フロー
▲6258 ▲1434 ▲44 ▲24 ▲118
現金及び現金同等物の
期末残高
9兆2517 8兆6467 8兆9668 6兆8069 7兆6446
 
科目 日本郵政
19年度下期 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度
営業活動による
キャッシュ・フロー
1兆5150 ▲5兆5327 ▲7825 ▲5兆6450 ▲3兆7364 ▲4兆5839 188 ▲1兆2045
投資活動による
キャッシュ・フロー
1兆6185 3兆2832 1兆5913 5兆9633 9007 10兆4315 11兆1801 15兆5217
財務活動による
キャッシュ・フロー
2 ▲134 ▲497 ▲388 ▲412 ▲392 ▲404 ▲421
現金及び現金同等物の
期末残高
8兆6604 6兆3980 7兆1575 7兆4376 4兆5613 10兆3703 21兆5296 35兆8053
(注)
平成19年10月に民営化されたため、19年度は上期と下期に分けて記載している。

一方、収益性を示す財務指標として投資家等の間で広く用いられている総資産当期純利益率(注9)及び自己資本当期純利益率(注10)の推移をみると、総資産当期純利益率については、民営化後、当期純利益が増加傾向にある一方、総資産額が減少傾向にあるため、図3-6のとおり、僅かながら上昇傾向にある。また、自己資本当期純利益率については、公社時代に自己資本が15年度末の4兆6075億余円から18年度末の10兆1317億余円へと大幅に増加した一方、当期純利益が15年度の2兆3018億余円から18年度の9424億余円へと大幅に減少したため、図3-7のとおり、急激に低下したが、民営化後は、緩やかな低下傾向にある。

(注9)
総資産当期純利益率  総資産額に対する当期純利益の割合であり、次の算式を用いて算出している。
当期純利益÷総資産額の期首と期末の平均×100
(注10)
自己資本当期純利益率  自己資本に対する当期純利益の割合であり、次の算式を用いて算出している。
当期純利益÷自己資本の期首と期末の平均×100

このように、経常利益及び当期純利益は黒字基調で推移し、純資産額は増加しているが、自己資本当期純利益率は低下傾向にあり、また、経常収益は減少傾向が続いており、日本郵政グループは、今後の株式売却に向けた企業価値の維持向上のために引き続き経営努力が求められる。

図3-6 総資産当期純利益率の推移

図3-6 総資産当期純利益率の推移 画像

図3-7 自己資本当期純利益率の推移

図3-7 自己資本当期純利益率の推移 画像

イ 日本郵政グループにおける各業務等の損益等の推移等

26年度の日本郵政連結決算及び各業務等の決算を用いて各業務等の損益等の推移等をみると、表3-4のとおり、経常収益については、生命保険業の額の日本郵政連結決算の額に対する割合が71.3%となっている。また、経常利益については、銀行業及び生命保険業の額の日本郵政連結決算の額に対する割合が、それぞれ51.0%、44.1%となっているほか、当期純利益については、銀行業の額の日本郵政連結決算の額に対する割合が76.5%となっているなど、日本郵政グループの業績は銀行業及び生命保険業に大きく依存している。さらに、総資産額及び負債額については、銀行業の額の日本郵政連結決算の額に対する割合が、それぞれ70.3%、70.0%となっているほか、純資産額については、銀行業の額の日本郵政連結決算の額に対する割合が76.0%となっているなど、日本郵政グループの財政状態は銀行業に大きく依存している。

表3-4 平成26年度の日本郵政連結決算及び各業務等の決算比較

(単位:億円)
区分 経常収益 経常利益 当期純利益 総資産額 負債額 純資産額
日本郵政連結決算 14兆2588 1兆1158 4826 295兆8497 280兆5482 15兆3015
(100.0%) (100.0%) (100.0%) (100.0%) (100.0%) (100.0%)
日本郵政
【単体決算】
2553 1492 1311 9兆1071 3627 8兆7444
(1.7%) (13.3%) (27.1%) (3.0%) (0.1%) (57.1%)
郵便・物流事業及び金融窓口事業
【日本郵便の連結決算】
2兆9620 228 221 5兆5254 4兆2383 1兆2871
(20.7%) (2.0%) (4.5%) (1.8%) (1.5%) (8.4%)
銀行業
【ゆうちょ銀行の単体決算】
2兆0781 5694 3694 208兆1793 196兆5490 11兆6302
(14.5%) (51.0%) (76.5%) (70.3%) (70.0%) (76.0%)
生命保険業
【かんぽ生命の連結決算】
10兆1692 4926 813 84兆9150 82兆9392 1兆9757
(71.3%) (44.1%) (16.8%) (28.7%) (29.5%) (12.9%)
(注)
連結処理をしているため、各業務等の額の合計は日本郵政連結決算の額と一致しない。また、括弧書きは各業務等の額の日本郵政連結決算の額に対する割合であり、その合計は100%にならない。

そして、民営化後の当期純利益及び総資産額の推移をみると、表3-5及び表3-6のとおり、19年度から26年度までの銀行業の額の日本郵政連結決算の額に対する割合が、それぞれ、54.2%から76.5%、64.2%から70.3%となっていて、銀行業の業績及び財政状態は長期にわたって日本郵政グループの経営に大きな影響を与えてきた。

表3-5 民営化後の当期純利益の推移

(単位:億円)
区分 平成
19年度
下期
20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度
日本郵政連結決算 2772 4227 4502 4189 4689 5627 4790 4826
(100.0%) (100.0%) (100.0%) (100.0%) (100.0%) (100.0%) (100.0%) (100.0%)
日本郵政
【単体決算】
425 1090 1453 1536 1514 1452 1550 1311
(15.3%) (25.7%) (32.2%) (36.6%) (32.2%) (25.8%) (32.3%) (27.1%)
郵便・物流事業及び金融窓口事業 741 706 ▲145 ▲47 143 830 360 221
(26.7%) (16.7%) (▲3.2%) (▲1.1%) (3.0%) (14.7%) (7.5%) (4.5%)
銀行業 1521 2293 2967 3163 3348 3739 3546 3694
(54.8%) (54.2%) (65.9%) (75.5%) (71.4%) (66.4%) (74.0%) (76.5%)
生命保険業 76 383 701 772 700 906 628 813
(2.7%) (9.0%) (15.5%) (18.4%) (14.9%) (16.1%) (13.1%) (16.8%)
注(1)
連結処理をしているため、各業務等の額の合計は日本郵政連結決算の額と一致しない。また、括弧書きは各業務等の額の日本郵政連結決算の額に対する割合であり、その合計は100%にならない。
注(2)
郵便・物流事業及び金融窓口事業については、平成19年度から24年度までは連結決算の額になっていない。19年度から23年度までは郵便事業会社と郵便局会社の単体決算の額の単純合計である。24年度は郵便局会社の9月までの単体決算の額に、日本郵便の24年10月以降の額を加えたものである。
注(3)
銀行業については、ゆうちょ銀行は子会社を有していないため、ゆうちょ銀行の単体決算の額であり、生命保険業については、かんぽ生命は平成22年度まで子会社を有していなかったため、同年度まではかんぽ生命の単体決算の額である。

表3-6 民営化後の総資産額の推移

(単位:億円)
区分 平成
19年度
下期
20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度
日本郵政連結決算 327兆5882 305兆8944 298兆5713 292兆9330 292兆1265 292兆8929 292兆2464 295兆8497
(100.0%) (100.0%) (100.0%) (100.0%) (100.0%) (100.0%) (100.0%) (100.0%)
日本郵政
【単体決算】
9兆7055 9兆5252 9兆6255 9兆6489 9兆7471 9兆7111 9兆7401 9兆1071
(2.9%) (3.1%) (3.2%) (3.2%) (3.3%) (3.3%) (3.3%) (3.0%)
郵便・物流事業及び金融窓口事業 5兆4360 5兆3066 5兆2157 5兆1132 4兆9729 4兆8065 4兆8644 5兆5254
(1.6%) (1.7%) (1.7%) (1.7%) (1.7%) (1.6%) (1.6%) (1.8%)
銀行業 212兆1491 196兆4807 194兆6783 193兆4433 195兆8198 199兆8406 202兆5128 208兆1793
(64.7%) (64.2%) (65.2%) (66.0%) (67.0%) (68.2%) (69.2%) (70.3%)
生命保険業 112兆5246 106兆5779 100兆9697 96兆7867 93兆6908 90兆4635 87兆0928 84兆9150
(34.3%) (34.8%) (33.8%) (33.0%) (32.0%) (30.8%) (29.8%) (28.7%)
注(1)
連結処理をしているため、各業務等の額の合計は日本郵政連結決算の額と一致しない。また、括弧書きは各業務等の額の日本郵政連結決算の額に対する割合であり、その合計は100%にならない。
注(2)
郵便・物流事業及び金融窓口事業については、平成19年度から24年度までは連結決算の額になっていない。19年度から23年度までは郵便事業会社と郵便局会社の単体決算の額の単純合計である。24年度は日本郵便の単体決算の額である。
注(3)
銀行業については、ゆうちょ銀行は子会社を有していないため、ゆうちょ銀行の単体決算の額であり、生命保険業については、かんぽ生命は平成22年度まで子会社を有していなかったため、同年度まではかんぽ生命の単体決算の額である。

ウ 日本郵政グループ内における取引等の状況

(ア)日本郵政グループ内における取引の状況

日本郵政グループ内における取引の状況をみると、26年度分として表3-7のとおり、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命から日本郵政グループ各社に対して、それぞれ6867億余円、3879億余円の支払が行われる一方、日本郵便は、日本郵政グループ各社から1兆0502億余円の支払を受けるなど、日本郵政グループ内における取引に係る支払額及び受取額は多額に上っている。

表3-7 日本郵政グループ内における取引に係る支払額及び受取額(平成26年度分)

(単位:億円)
右記の会社における受取額
下記の会社における支払額
日本郵政
(単体)
日本郵便 ゆうちょ銀行 かんぽ生命 その他の連結子会社 支払額計
日本郵政(単体) 258 0 0 107 366
日本郵便 310 1 1 1466 1779
ゆうちょ銀行 400 6319 10 136 6867
かんぽ生命 55 3719 11 92 3879
その他の連結子会社 4 205 639 849
受取額計 771 1兆0502 12 11 2443 1兆3741

このうち、主なものは次のとおりである。

a 委託契約

日本郵便は、ゆうちょ銀行との間で「銀行代理業に係る業務の委託契約」及び「金融商品仲介業に係る業務の委託契約」(以下、これらを合わせて「代理店契約」という。)を、かんぽ生命との間で「生命保険募集・契約維持管理業務委託契約」(以下「保険募集契約」という。)をそれぞれ締結している。26年度分のゆうちょ銀行から日本郵便への支払額6319億余円及びかんぽ生命から日本郵便への支払額3719億余円の大半はこれらの契約に基づくものであり、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命から日本郵便への同年度分のこれらの契約に基づく手数料の支払額はそれぞれ6024億余円、3603億余円となっている。

また、26年度分の日本郵便から「その他の連結子会社」への支払額1466億余円の大半は、日本郵便の子会社である日本郵便輸送株式会社に対して支払う郵便物や「ゆうパック」等の運送に係る委託費であり、これに係る同年度分の支払額は1068億余円となっている。

b 経営管理料

日本郵政は、日本郵政グループの経営戦略の遂行と内部統制の確保を実現していくために、基本方針の策定や年度事業計画の承認を行うことなどを内容とする「日本郵政グループ経営管理契約」を日本郵便、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命との間で締結しており、これに基づく26年度分の経営管理料として、日本郵便から49億余円、ゆうちょ銀行から34億余円、かんぽ生命から30億余円、計114億余円の支払を受けている。

c グループシェアード事業

日本郵政は、前記のとおり、グループシェアード事業を実施しており、これに係る26年度の受託業務収益474億余円となっていて、その主な内訳は、システム利用料として日本郵便から136億余円、ゆうちょ銀行から160億余円、かんぽ生命から16億余円、郵便局等の土地、建物、建築設備等に係る施設管理業務手数料として日本郵便から59億余円、健康管理事務手数料として日本郵便から51億余円等となっている。

d その他

日本郵政は、日本郵便に対して、郵便局等の建物、建築設備等の老朽化対策工事に係る負担金として、26年度に240億余円を支払っている。

また、システムの運用等に係る各種契約に基づき、日本郵政、日本郵便、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命は、日本郵政の子会社である日本郵政インフォメーションテクノロジー株式会社に対して、26年度において、それぞれ82億余円、200億余円、122億余円、69億余円を支払っている。

さらに、ゆうちょ銀行は、郵政民営化法第122条の規定により、日本郵政に対して、特別貯金に係る預金保険機構に納付する保険料に相当する額を交付することとされており、26年度分として189億余円を交付している。

これらの日本郵政グループ内における取引については、日本郵政が基本方針を定めており、表3-8のとおり、各社の業務の健全かつ適切な遂行に支障を及ぼすことのないよう、アームズ・レングス・ルール(注11)にのっとって公正に行うこととしている。また、各社は、当該基本方針に基づき、日本郵政グループ内における取引の適切な管理のため、「グループ内取引管理規程」等を定めている。

(注11)
アームズ・レングス・ルール  会社が子会社やグループ会社と取引を行う際の不公正な取引の防止措置規定の一種。互いに支配・従属関係にない当事者間において成立するであろう取引条件や価格を基準とする考え方

表3-8 「日本郵政グループ内取引に関する基本方針」の基本原則等(抜粋)

基本原則 グループ内取引は、グループ会社の業務の健全かつ適切な遂行に支障を及ぼすことのないよう、アームズ・レングス・ルールに則って公正に行う。
主たる内容 グループ会社は、次の取組方策に従って、適切なグループ内取引に努めることを基本とする。
  1. (1)グループ内取引の適切な管理のため、必要な事項をグループ内取引管理規程として定める。
  2. (2)前号に定めるグループ内取引管理規程において専門部署を定め、グループ内取引に係る各種契約内容を点検し、牽制するようにする。
  3. (3)連絡会議において、適正なグループ内取引の方策につき意見交換し、グループ内取引のより一層の健全化に努める。
  4. (4)グループ内取引で提供する財及びサービスの品質水準の維持・向上に努める。

そして、当該基本方針に基づき、アームズ・レングス・ルールにのっとるものとして、代理店契約及び保険募集契約に係る手数料について、次のような算出方法が定められている。

代理店契約に係る手数料について、ゆうちょ銀行は「委託手数料支払要領」を定めて、ゆうちょ銀行の直営店における業務コストを基に、日本郵便の業務実績に基づいて委託業務のコストに見合う額を算出し、郵便局の維持に係る「窓口基本手数料」のほか、貯金残高に応じて支払われる「貯金の預払事務等」、送金決済取扱件数に応じて支払われる「送金決済その他役務の提供事務等」、資産運用商品の販売額に応じて支払われる「資産運用商品の販売事務等」に係る手数料を設定している。また、これらの手数料に加えて、一定基準以上の業務実績の確保や事務品質の向上のために、成果に見合った「営業・事務報奨」を設定している。

そして、保険募集契約に係る手数料について、かんぽ生命は「代理店手数料規程」等を定めて、他の生命保険会社における生命保険商品の販売に係る委託契約の事例や業務の代理又は事務の代行の事例等に準じ、保有契約件数等に応じて支払われる「維持・集金手数料」等を設定しているほか、民営化後に募集した契約には、各契約の保険金額、保険料額等に応じて支払われる「募集手数料」を設定し、民営化前から継続している契約には、各契約の保険金額、保険料額等に応じて支払われる「継続手数料」を設定している。また、維持・集金手数料及び募集手数料については、一定基準以上の業務実績の確保や契約維持管理のための活動促進等のために、成果に応じた加算及び減算の仕組みを設定している(表3-9参照)。

表3-9 代理店契約及び保険募集契約に係る手数料の算出方法

項目等
契約名
手数料の項目 支払額の算出式等
代理店契約
(ゆうちょ銀行)
①窓口基本手数料 郵便局数×単価
②貯金の預払事務等 平均貯金残高×料率
③送金決済その他役務の提供事務等 取扱件数×単価
④資産運用商品の販売事務等 販売額×料率
⑤営業・事務報奨 総貯金の純増額等の成果に応じて算出
保険募集契約
(かんぽ生命)
①維持・集金手数料 保有契約件数等×単価(成果に応じた加算及び減算あり)
②募集手数料 民営化後に募集した契約の保険金額、保険料額等から算出(成果に応じた加算及び減算あり)
③継続手数料 民営化前から継続している契約の保険金額、保険料額等から算出
(イ)配当、法人税等の状況

日本郵政グループ内における取引に係る手数料等の支払及び受取のほか、日本郵便、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命は、日本郵政に対してそれぞれ配当を行っており、表3-10のとおり、26年度には日本郵便から87億余円、ゆうちょ銀行から939億余円、かんぽ生命から168億余円の配当が行われている。民営化後の配当の金額の推移は、23年度以降、その合計額は1000億円を超えて推移していて26年度には1195億余円となっている。一方、当該配当を受け取った日本郵政は、その一部を業務遂行に必要な費用に充てるなどしているため、日本郵政から国に対する配当の金額は、23年度から25年度までは、380億円程度で推移していて、26年度には435億円となっている。

表3-10 日本郵政グループ各社から日本郵政への配当及び日本郵政から国への配当の金額の推移

(単位:百万円)
会社名等 平成
19年度
20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度
日本郵政への配当 日本郵便 4,706 15,015 8,721
郵便局会社 1,169 10,211 8,245 7,665
郵便事業会社 17,371 7,453
ゆうちょ銀行 22,800 57,300 74,100 79,083 83,713 93,487 93,987
かんぽ生命 9,579 17,531 19,319 16,933 22,750 16,808
41,341 84,543 99,876 106,067 105,353 131,253 119,517
日本郵政から国への配当 8,520 27,256 36,346 38,404 37,851 38,550 43,500
(注)
民営化された平成19年度に配当が行われていないのは、配当は前年度の決算額に基づいて翌年度に行われるためである。また、20年度にかんぽ生命が日本郵政に配当を行っていないのは、19年度の当期純利益が少なかったことなどによるものであり、22、23両年度に郵便事業会社が日本郵政に配当を行っていないのは、21、22両年度に当期純損失を計上したことなどによるものである。

一方、法人税等の納付額等についてみると、表3-11のとおり、公社は法人税が非課税とされていたことから、法人税を納付していないが、積立金の国庫納付について定めた日本郵政公社法第37条の規定に基づき、公社の第1期中期経営計画に係る期間の終了後の19年度に9625億余円を国庫納付した。民営化後においては、日本郵政は、株主である国に対して配当を行うとともに、連結納税制度(注12)を採用して法人税等を納付していて、26年度には配当として435億円、法人税として2723億余円、計3158億余円を国に支払っている。そして、19年度から26年度までの間に、日本郵政は、国に対して計2304億余円の配当を行うとともに、法人税等として国に計2兆0890億余円を納付していて、その合計額は、2兆3194億余円となっている。

(注12)
連結納税制度  企業グループ内の個々の法人の損益等を集約することにより、あたかも企業グループを一つの法人であるかのように捉えて課税する仕組み。連結納税の対象となる子法人は、親法人によって発行済株式(自己株式を除く。)の全部を直接又は間接に保有される普通法人である内国法人である。

表3-11 法人税等の納付額等の推移

(単位:百万円)
  区分 公社 日本郵政
平成
15年度
16年度 17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 民営化後の合計額
公社 国庫納付額 962,576
日本郵政 配当の金額 8,520 27,256 36,346 38,404 37,851 38,550 43,500 230,428
法人税等の納付額 261,048 173,336 232,379 206,467 319,556 336,061 287,804 272,394 2,089,049
  法人税 261,048 173,336 232,379 206,467 319,556 305,510 261,640 272,394 2,032,334
復興特別法人税 30,551 26,164 56,715
1,223,625 181,856 259,635 242,814 357,960 373,912 326,354 315,894 2,319,477

(3)各業務等の実績等の状況

ア 郵便・物流事業及び金融窓口事業

(ア)業務の状況
a 日本郵便の状況

郵便・物流事業及び金融窓口事業の主たる事業主体である日本郵便は、子会社18社(うち連結子会社15社)及び持分法適用関連会社3社(26年度末現在。以下、日本郵便、連結子会社15社及び持分法適用関連会社3社を合わせて「日本郵便等」という。)を有し、前記のとおり、全国に直営の郵便局20,187局を設置するなどして業務を実施しており、日本郵政グループの土地、建物等の有形固定資産の約8割を保有している。また、日本郵便は、郵政民営化法、日本郵便株式会社法、郵便法(昭和22年法律第165号)等に基づいて業務を営んでおり、ユニバーサルサービスの提供水準が確保されるよう、郵便局ネットワークを維持することが義務付けられている。

郵便・物流事業のうち、郵便の業務に関して、郵便約款の策定及び変更、郵便の業務の一部委託、第三種及び第四種郵便物の料金改定等に当たっては、郵便法に基づいて、また、日本郵便の毎事業年度の事業計画の策定及び変更に当たっては、日本郵便株式会社法に基づいて、それぞれ総務大臣の認可が必要となっている。

そして、日本郵便は、物流事業として、国内物流事業、国際物流事業等を実施しており、国内物流事業としては、郵便法に基づいて公社時代に「ゆうパック」の名称で郵便物として取り扱っていた重量30kg以下の郵便小包が19年10月の郵便法の改正によって郵便物から除外されたことから、これを郵便事業の対象から切り離して、貨物自動車運送事業法(平成元年法律第83号)等に基づいて実施する宅配便事業における貨物として、同じ「ゆうパック」の名称で取り扱っている。また、公社が「冊子小包」等の名称で取り扱っていた郵便小包も同様に郵便物から除外されたことから、これらについても同法等に基づいて実施する事業における貨物として「ゆうメール」等の名称で取り扱っている(表3-12参照。以下、宅配便事業と「ゆうメール」等に係る事業を合わせて「宅配便事業等」といい、宅配便事業等で取り扱う貨物を「荷物」といい、郵便物と荷物を合わせて「郵便物等」という。)。このため、民営化後、「ゆうパック」「ゆうメール」等の取扱いが、宅配便事業等として実施されるようになったことで、これに係る約款の変更等について総務大臣の認可が必要なくなるとともに、他の事業者との競争の下で事業が実施されることになった。

また、日本郵便は、金融窓口事業の業務として、郵便局における郵便・物流事業に係る窓口業務、銀行窓口業務、保険窓口業務、カタログ等に掲載した商品等の販売あっせんを行うカタログ販売事業、郵便局の窓口や提携コンビニエンスストアにおいて販売を行う店頭販売事業等の物販事業及び公社から承継した不動産を元に郵便局の跡地等を開発して行う不動産事業を行っている。

表3-12 主な郵便物等の種類

郵便物等の名称等 内容等 根拠法令
郵便物 内国郵便物 通常郵便物 第一種郵便物 封書等 郵便法
第二種郵便物 はがき
第三種郵便物 日本郵便の承認を受けた定期刊行物
第四種郵便物 通信教育用郵便物、植物種子等郵便物、学術刊行物郵便物等
特殊取扱郵便物 速達、書留、配達証明、代金引換等
国際郵便物 外国に宛て又は外国から到着する通常及び特殊取扱の手紙、はがき、国際小包、国際スピード郵便(EMS)等
荷物 ゆうパック 原則として、長さ・幅・厚さの合計が1.7m以内で、重さが30kg以内の荷物。民営化前は郵便物として、民営化後は貨物として取り扱われている。 民営化前は郵便法。民営化後は貨物自動車運送事業法等
ゆうメール(民営化前は冊子小包) 長さ・幅・厚さの合計が1.7m以内で、重さが3kgまでの冊子とした印刷物やCD等の電磁的記録
媒体。民営化前は郵便物として、民営化後は貨物として取り扱われている。
b 郵便物等の引受物数の推移等

郵便・物流事業について、郵便物等の引受物数の状況をみると、表3-13のとおり、宅配便事業等については、インターネットを利用した通信販売の拡大等により、荷物の引受物数は14年度の約4億個から民営化された19年度には約25億個へ、さらに、26年度には約38億個へと増加している。一方、ほぼ独占状態で実施している郵便事業については、公社の発足と同時に施行された「民間事業者による信書の送達に関する法律」(平成14年法律第99号。以下「信書便法」という。)に基づく特定信書便事業者の参入による影響は少ないものの、インターネットの普及に伴う電子メール、ソーシャルネットワーキングサービス等の利用者の増加や各種請求書等の電子化の進展等、情報通信手段の多様化等により、郵便物の引受物数は14年度の約257億通から民営化された19年度には約219億通へ、さらに、26年度には約181億通へと減少しており、第一種、第二種(年賀特別郵便及び公職選挙法(昭和25年法律第100号)に基づく通常はがきを含む。以下同じ。)、第三種及び第四種のいずれの郵便物についても、引受物数が長期的に減少傾向にある。

表3-13 郵便物等の種類別引受物数の推移

(単位:百万通(百万個))
種類別 特別会計 公社 郵便事業会社 日本郵便
平成14年度 15年度 16年度 17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度
26,180 25,586 25,004 24,818 24,677 24,522 23,929 23,387 22,780 22,363 22,345 22,324 22,035
指数
(平成14年度=100)
100 97 95 94 94 93 91 89 87 85 85 85 84
郵便物 25,738 24,888 23,574 22,743 22,359 21,994 21,227 20,582 19,812 19,107 18,862 18,571 18,188
指数
(平成14年度=100)
100 96 91 88 86 85 82 79 76 74 73 72 70
  内国郵便物 25,647 24,804 23,493 22,666 22,284 21,921 21,158 20,521 19,757 19,058 18,814 18,524 18,142
通常 25,015 24,261 22,955 22,115 21,711 21,317 20,587 20,054 19,299 18,598 18,351 18,054 17,661
第一種
12,839 12,334 11,658 11,194 11,048 10,729 10,332 9,915 9,319 8,912 8,797 8,569 8,531
第二種
11,169 11,029 10,575 10,266 10,045 10,027 9,779 9,767 9,658 9,386 9,279 9,222 8,879
第三種
968 856 687 623 587 532 449 346 297 274 252 241 230
第四種
37 40 34 31 29 27 25 24 24 23 21 21 19
特殊取扱 632 543 537 550 572 604 571 467 458 460 462 469 480
国際郵便物 90 84 81 77 75 72 69 61 54 49 47 47 46
荷物 442 698 1,429 2,074 2,317 2,527 2,701 2,804 2,968 3,255 3,483 3,752 3,846
指数
(平成14年度=100)
100 157 323 469 524 571 611 634 671 736 788 848 870
(注)
平成19年度は公社の19年度上期と郵便事業会社の19年度下期を合算したものである。
c 主要事業についての他社との比較

国内物流事業や国際物流事業を行っているなどの点で日本郵便等と比較的類似性のあるA社及びB社と主要事業の実施状況について比較すると、郵便事業、銀行窓口業務、保険窓口業務、国及び地方公共団体からの受託事務等を実施しているのは、日本郵便等のみとなっている。

また、国内物流事業についてみると、貨物自動車運送事業法等に基づいて行う荷物の取扱いについては、宅配便市場における日本郵便のシェアは、図3-8のとおり、24年度の10.8%から26年度の13.4%へと拡大しているものの依然として低い水準となっている。一方、メール便市場における日本郵便のシェアは、図3-9のとおり、24年度の56.6%から26年度の61.5%へと高い水準で拡大している。

図3-8 宅配便市場のシェアの推移

図3-8 宅配便市場のシェアの推移 画像

図3-9 メール便市場のシェアの推移

図3-9 メール便市場のシェアの推移 画像

(イ)損益等の状況
a 郵便・物流事業及び金融窓口事業の損益等の状況

公社の郵便の業務並びに郵便事業会社、郵便局会社及び日本郵便の郵便・物流事業及び金融窓口事業に係る営業収益等については、郵便事業会社及び郵便局会社において19年度から23年度までの連結財務諸表を作成しておらず、また、日本郵便において24年度の連結財務諸表を作成していないため、単純に比較することはできないものの、14年度から26年度までの損益等の状況について会計検査院で整理したところ、公社は、表3-14のとおり、15年度から18年度までは営業利益、経常利益及び当期純利益を確保していたが、19年度上期には営業損失、経常損失及び当期純損失を計上していた。これは、郵便事業において、毎年度、11月頃から開始される年賀はがきの販売に係る収益の影響が大きいためである。

そして、郵便事業会社は、宅配便事業を承継させる目的で20年6月にJPエクスプレス株式会社(22年8月解散。以下「JPEX」という。)を設立したものの、宅配便事業の承継について総務大臣の認可が得られなかったため、JPEXの経営状況が悪化したこと、また、21年度にJPEXが日本通運株式会社から承継して行っていた宅配便事業を、22年7月に郵便事業会社が承継したため、人件費及び委託費が増大したことなどにより、表3-15のとおり、21年度から23年度までの間は当期純損失を計上していた。

民営化後の営業収益は、前記のとおり、代理店契約や保険募集契約等の日本郵政グループ内における取引に基づき、日本郵便(24年9月までは郵便局会社)に対して多額の手数料等が支払われるようになったことにより、公社時代の郵便の業務に係る営業収益と比べて大幅に増加している。

そして、前記郵便物の引受物数の減少等により、26年度には、郵便・物流事業で103億余円の営業損失を計上している。一方、金融2社からの手数料等が主な収益源である金融窓口事業の209億余円の営業利益等により、日本郵便等の連結決算は営業利益が125億余円、経常利益が228億余円、当期純利益が221億余円となっている。さらに、26年度から開始した建物、建築設備等の老朽化対策工事に伴って発生する費用の一部について、日本郵便は日本郵政から負担金を受け入れることとなっており、前記のとおり、26年度には240億余円を受け入れて特別利益に計上している。今後、同工事に伴って発生する費用が日本郵政連結決算及び日本郵便等の連結決算に影響することが見込まれている。

表3-14 営業収益等の推移(特別会計、公社、日本郵便)

(単位:億円)
科目 特別会計
注(1)
公社
注(2)
郵便事業会社及び
郵便局会社
日本郵便
注(2)注(3)注(4)
平成14年度 15年度 16年度 17年度 18年度 19年度
上期
19年度
下期
20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度
営業収益 1兆9689 1兆9268 1兆9174 1兆9301 8644 表3-15参照 2兆0541 2兆8699 2兆9409
営業原価 1兆8123 1兆7952 1兆7982 1兆8003 8421 1兆8100 2兆6210 2兆7129
販売費及び一般管理費 943 1012 1041 1016 544 1528 1981 2154
営業利益 621 304 150 281 ▲322 912 507 125
営業外収益 60 83 96 85 48 221 188 210
営業外費用 205 127 91 74 46 130 130 107
経常利益 476 260 156 292 ▲320 1002 565 228
特別利益 51 73 130 62 18 6 25 298
特別損失 246 52 255 338 ▲7844 39 114 306
当期純利益 ▲762 263 283 20 17 ▲8147 830 360 221
総資産額 12兆5432 2兆3103 2兆2489 2兆1910 2兆2696 2兆1003 4兆8065 4兆8644 5兆5254
負債額 9兆4506 2兆8415 2兆7570 2兆6958 2兆7732 3兆4190 4兆2634 4兆1632 4兆2383
純資産額 3兆0925 ▲5518 ▲5235 ▲5214 ▲5197 ▲1兆3345 5430 7011 1兆2871
注(1)
特別会計では、営業収益、営業利益及び経常利益に相当する科目が存在しない。
注(2)
平成15年度から19年度上期まで、25年度及び26年度は連結決算の数値である。
注(3)
平成24年度は、日本郵政株式会社法施行規則等の一部を改正する省令(平成24年総務省令第78号)附則第5条の規定を適用し、連結財務諸表を作成していないため、単体決算の数値であり、郵便局会社の9月までの決算数値に、日本郵便の24年10月以降の決算数値を加えたものである。
注(4)
連結処理をしているため、平成25、26両年度の日本郵便の連結決算の数値は表3-15の日本郵便の郵便・物流事業と金融窓口事業の数値の合計と一致しない。

表3-15 営業収益等の推移(郵便事業会社、郵便局会社並びに日本郵便の郵便・物流事業及び金融窓口事業)

(単位:億円)
科目等 郵便事業会社及び郵便局会社 日本郵便
平成
19年度
下期
20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度
注(4)
26年度
注(4)
営業収益 郵便事業会社 注(2) 1兆0536 1兆8652 1兆8130 1兆7798 1兆7648 1兆7544 1兆7776 1兆8239
郵便局会社 注(3) 6158 1兆2932 1兆2639 1兆2563 1兆2084 1兆1879 1兆1835 1兆1840
営業原価 郵便事業会社 注(2) 8936 1兆7246 1兆6751 1兆7831 1兆6963 1兆6348 1兆6875 1兆7476
郵便局会社 注(3) 5553 1兆1124 1兆0949 1兆0863 1兆0619 1兆0532 1兆0437 1兆0544
販売費及び一般管理費 郵便事業会社 注(2) 562 957 950 1002 908 821 806 866
郵便局会社 注(3) 530 1124 1168 1204 1130 1075 1022 1086
営業利益 郵便事業会社 注(2) 1037 448 427 ▲1034 ▲223 374 94 ▲103
郵便局会社 注(3) 75 683 521 495 334 272 375 209
営業外収益 郵便事業会社 注(2) 146 222 219 233 223 187
郵便局会社 注(3) 184 329 297 285 277 223
営業外費用 郵便事業会社 注(2) 46 81 77 89 100 83
郵便局会社 注(3) 74 174 195 198 184 173
経常利益 郵便事業会社 注(2) 1137 589 569 ▲890 ▲100 478
郵便局会社 注(3) 185 838 624 582 427 322
特別利益 郵便事業会社 注(2) 2 18 16 59 0 2
郵便局会社 注(3) 3 15 11 12 6 5
特別損失 郵便事業会社 注(2) 13 40 819 52 26 21
郵便局会社 注(3) 4 46 28 60 32 29
当期純利益 郵便事業会社 注(2) 694 298 ▲474 ▲354 ▲45 311
郵便局会社 注(3) 46 408 329 306 188 289
総資産額 郵便事業会社 2兆1495 2兆0501 1兆9634 1兆8634 1兆8519
郵便局会社 3兆2864 3兆2565 3兆2523 3兆2498 3兆1209
負債額 郵便事業会社 1兆8801 1兆7682 1兆7364 1兆6718 1兆6649
郵便局会社 3兆0818 3兆0121 2兆9851 2兆9602 2兆8202
純資産額 郵便事業会社 2694 2819 2269 1915 1870
郵便局会社 2046 2443 2671 2895 3007
注(1)
本表は、単体決算の数値である。
注(2)
平成24年度以降は、日本郵便の郵便・物流事業である。
注(3)
平成24年度以降は、日本郵便の金融窓口事業である。
注(4)
日本郵便の郵便・物流事業と金融窓口事業の数値の合計は連結処理をしている表3-14の平成25、26両年度の日本郵便の数値と一致しない。
b 郵便物等に係る損益等の状況

郵便物等に係る14年度から26年度までの営業収益等の推移をみると、表3-16のとおり、郵便物に係る営業収益及び営業費用は、それぞれ14年度の1兆8832億円、1兆8996億円から26年度の1兆3174億円、1兆3058億円へと減少しており、営業収益及び営業費用の規模は縮小する傾向にある。このような傾向の中、営業損益については、14年度には164億円の営業損失を計上していたが、15年度以降は、利益の規模は変動しているものの、毎年度、営業利益を計上しており、26年度の営業利益は115億円となっている。また、郵便物の種類ごとにみると、第一種から第四種までのいずれの郵便物についても、引受物数の減少により営業収益がおおむね減少傾向にある。そして、営業損益については、第一種郵便物は、毎年度営業利益を確保しているものの、その額は減少傾向にあり、第二種郵便物は、民営化後、ほぼ毎年度営業損失を計上している。料金改定に総務大臣の認可が必要な第三種及び第四種郵便物は、恒常的に営業損失を計上しているものの、その額はおおむね減少傾向にある。

一方、宅配便事業等については、他の事業者との厳しい競争の下で事業を実施しており、荷物に係る営業収益等の推移をみると、荷物の引受物数の増加により営業収益は14年度の1615億円から26年度の4444億円へと増加しているものの、営業費用も14年度の1661億円から22年度の4569億円へと急増しており、26年度には4651億円となっている。これは、前記のとおり、21年度にJPEXが日本通運株式会社から承継した宅配便事業を、22年度に郵便事業会社が承継したことに伴い、人件費や委託費が急増したことなどによるものである。そして、営業損益については15年度から19年度までは営業利益を計上していたが、20年度以降は営業損失を計上しており、26年度は208億円の営業損失を計上している。

表3-16 郵便物等に係る営業収益等の推移

(単位:億円)
科目 種類別 平成
14年度
15年度 16年度 17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度
営業収益 郵便物 1兆8832 1兆7127 1兆6070 1兆5200 1兆5063 1兆5246 1兆5023 1兆4411 1兆3793 1兆3343 1兆3131 1兆2998 1兆3174
  内国郵便物 1兆8098 1兆6294 1兆5247 1兆4397 1兆4246 1兆4435 1兆4203 1兆3655 1兆3087 1兆2656 1兆2430 1兆2195 1兆2261
  第一種 9898 9094 8488 7873 7764 7833 7780 7484 7035 6774 6633 6473 6597
第二種 5181 4727 4485 4343 4236 4246 4145 4142 4084 3948 3910 3855 3761
第三種 526 443 347 264 237 219 199 173 145 131 117 111 105
第四種 16 16 12 10 11 10 10 9 9 8 8 8 7
特殊取扱 2477 2013 1914 1907 1998 2127 2069 1847 1816 1795 1762 1748 1791
国際郵便物 734 833 823 803 817 811 819 756 706 686 700 803 913
荷物 1615 1686 2345 3052 3239 3046 2919 3000 3385 3721 3815 4139 4444
営業費用 郵便物 1兆8996 1兆6513 1兆5778 1兆5034 1兆4715 1兆4450 1兆4518 1兆3822 1兆3504 1兆2665 1兆2363 1兆2624 1兆3058
  内国郵便物 1兆8258 1兆5715 1兆5027 1兆4282 1兆3987 1兆3721 1兆3766 1兆3120 1兆2915 1兆2109 1兆1816 1兆1979 1兆2268
  第一種 9466 8334 7729 7310 7097 6810 6976 6796 6668 6226 6175 6200 6474
第二種 5157 4572 4467 4194 3996 4092 4213 4214 4283 3956 3827 3895 3976
第三種 795 659 583 489 443 375 304 262 234 198 178 174 170
第四種 57 45 38 32 29 28 28 31 23 20 19 20 20
特殊取扱 2783 2106 2211 2257 2422 2415 2246 1818 1707 1710 1616 1690 1628
国際郵便物 738 798 751 752 728 729 752 702 589 556 547 645 790
荷物 1661 1676 2264 2982 3221 3042 2956 3126 4569 4495 4230 4471 4651
営業損益 郵便物 ▲164 615 291 167 348 796 504 589 288 678 767 374 115
  内国郵便物 ▲160 579 220 116 259 715 437 535 172 547 614 217 ▲7
  第一種 432 761 760 563 667 1022 804 688 366 548 458 273 123
第二種 24 156 18 150 240 153 ▲67 ▲73 ▲199 ▲8 83 ▲39 ▲215
第三種 ▲269 ▲216 ▲236 ▲225 ▲206 ▲156 ▲105 ▲89 ▲89 ▲67 ▲61 ▲63 ▲66
第四種 ▲41 ▲30 ▲25 ▲22 ▲18 ▲17 ▲18 ▲21 ▲14 ▲11 ▲11 ▲12 ▲13
特殊取扱 ▲306 ▲92 ▲296 ▲350 ▲424 ▲287 ▲177 29 108 85 145 59 162
国際郵便物 ▲4 36 71 51 89 82 68 54 116 130 153 157 122
荷物 ▲46 10 81 70 18 4 ▲36 ▲127 ▲1185 ▲774 ▲415 ▲332 ▲208
注(1)
平成19年度は公社の19年度上期と郵便事業会社の19年度下期を合算したものである。
注(2)
平成24年度は郵便事業会社の24年度上期と日本郵便の24年度下期を合算したものである。
注(3)
本表では、日本郵便において表示単位未満を四捨五入した数値を使用している。
c 金融窓口事業の各種手数料等に係る営業収益の状況

郵便局会社及び日本郵便の金融窓口事業の営業収益(単体決算)は、表3-17のとおり、20年度の1兆2932億余円から26年度の1兆1840億余円へと減少している。そのうち、各種手数料等に係る営業収益の推移をみると、近年の貯金残高及び保険契約件数の減少に伴って金融2社から日本郵便に支払われる各種手数料は減少傾向にあり、銀行代理業務手数料は20年度の6481億余円から26年度の6024億余円へ、また、生命保険代理業務手数料は20年度の4152億余円から26年度の3603億余円へと減少している。一方、前記のとおり、日本郵便は、近年、金融窓口事業としてカタログ等を利用した物販事業を行ったり、郵便局、社宅等の跡地を活用した事務所、商業施設、住宅等の賃貸・管理事業、分譲事業等の不動産事業等に取り組んだりしている。これらの事業は、子会社が事業の一部を担っていることから、子会社における営業収益が計上される連結決算の数値が公表されている25年度及び26年度のこれらの事業に係る「その他の営業収益」(連結決算)をみると、25年度の1024億余円から26年度には1394億余円に増加していて、金融窓口事業の営業収益(連結決算)も、25年度の1兆0768億余円から26年度には1兆1023億余円に増加している。

表3-17 金融窓口事業の各種手数料等に係る営業収益の推移

(単位:百万円)
科目 平成
19年度
下期
20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度
単体決算 金融窓口事業の営業収益 615,880 1,293,229 1,263,975 1,256,349 1,208,447 1,187,938 1,183,528 1,184,044
  郵便窓口業務等手数料 103,066 213,201 209,307 203,990 183,270 注(2)81,574 注(2) 注(2)
銀行代理業務手数料 301,046 648,147 632,587 631,924 619,085 609,578 607,266 602,446
生命保険代理業務手数料 207,942 415,210 405,214 402,438 384,218 378,507 367,106 360,378
その他の営業収益 3,825 16,670 16,865 17,996 21,872 24,145 32,848 43,347
連結決算 金融窓口事業の営業収益 1,076,853 1,102,308
  銀行代理業務手数料 607,266 602,446
生命保険代理業務手数料 367,106 360,378
その他の営業収益 102,480 139,483
注(1)
平成19年度下期から24年度までは、連結財務諸表は作成されていないため、単体決算の数値のみを記載している。
注(2)
郵便事業会社から郵便局会社に支払われていた郵便窓口業務等手数料は、平成24年10月に、郵便局会社が郵便事業会社を吸収合併したため、同月以降は支払われていない。なお、単体決算の金融窓口事業の営業収益には、同月以降も、これに相当する額(24年度941億余円、25年度1763億余円、26年度1778億余円)が含まれている。
(ウ)当期純利益等についての他社との比較

日本郵便等と前記のA社及びB社の当期純利益等(連結決算)とを比較すると、日本郵便等は、25年度には当期純利益が最も多額となっているものの、総資産のうち「現金及び預金」及び「建物、構築物、土地」が、自己資本のうち「資本剰余金」が、それぞれ多額となっていることなどから、表3-18のとおり、総資産当期純利益率及び自己資本当期純利益率が低い水準にある。そして、26年度には、当期純利益が減少したことに加えて、総資産のうち「現金及び預金」が、自己資本のうち「資本金」及び「資本剰余金」が、それぞれ増加したため、総資産当期純利益率及び自己資本当期純利益率は、25年度と比べて更に低下している。

また、25年度について、道路貨物運送業20社(注13)の平均の当期純利益等(連結決算)と比較すると、日本郵便等の総資産当期純利益率は低い水準にあるが、自己資本当期純利益率は当該平均とおおむね同水準となっている。

(注13)
株式会社日本政策投資銀行「産業別財務データハンドブック2014」に記載されている道路貨物運送業20社

表3-18 当期純利益等の比較

(単位:百万円)
科目等 日本郵便等 A社 B社 道路貨物運送業
20社の平均
平成25年度 26年度 25年度 26年度 25年度 26年度 25年度
当期純利益 36,081 22,174 34,776 37,533 16,651 24,815 6,031
総資産 4,864,433 5,194,950 991,143 1,057,332 558,633 572,349 239,488
うち現金及び預金 1,979,416 2,298,665 216,883 233,772 86,019 75,127
うち建物、構築物、土地 2,202,693 2,201,210 319,046 339,923 200,420 190,985
自己資本 637,166 901,010 542,915 558,450 171,561 189,654 112,821
うち資本金 100,000 250,000 127,234 127,234 11,632 11,882 18,470
うち資本剰余金 300,000 450,000 106,076 85,536 632 882 16,653
総資産当期純利益率 0.7% 0.4% 3.5% 3.5% 2.9% 4.3% 2.5%
自己資本当期純利益率 5.6% 2.4% 6.4% 6.7% 9.7% 13.0% 5.3%
注(1)
A社及びB社のホームページの情報並びに株式会社日本政策投資銀行「産業別財務データハンドブック2014」を基に作成した。
注(2)
自己資本と総資産については期首と期末の平均を用いているが、平成25年度の日本郵便等の総資産については同年度の期首の数値が公表されていないため、期末の数値を用いている。
注(3)
いずれの会社についても、会計基準は日本の会計基準を採用している。
(エ)効率化、収益向上等に向けた取組の状況

公社は15年度から18年度までを第1期、19年度上期を第2期とする中期経営目標を定めており、両期の中期経営目標における目標値及び実績値は表3-19のとおりとなっている。目標値として用いられている送達日数達成率(注14)は郵便のサービス品質を測る指標として、事業経費率(注15)は業務運営の効率化の状況を測る指標として、積立金(注16)は利益の発生状況を測る指標として、それぞれ用いられている。

送達日数達成率については、目標値が第1期及び第2期とも「97.0%以上」となっていたのに対して、実績値は、「隣接都道府県宛て」及び「その他の都道府県宛て」については、第1期がいずれも96%台となっていたものの、第2期は97%台となっていた。また、「同一都道府県宛て」については第1期が98.0%、第2期が98.4%、「全国平均」については第1期が97.3%、第2期が98.0%となっていた。

そして、事業経費率については、第1期の目標値が「98.5%以下」となっていたのに対して実績値は98.3%となっており、また、第2期の目標値が「109.5%以下」となっていたのに対して実績値は106.8%となっていた。

さらに、積立金については、第1期の目標値が「500億円以上」となっていたのに対して、実績値は592億円となっていたものの、第2期の目標値が「マイナス1050億円以上」となっていたのに対して、実績値は「マイナス1250億円(注17)」となっていた。

(注14)
送達日数達成率  郵便法により定められた送達日数(差し出された日から原則として3日以内)に届けられた郵便物の割合
(注15)
事業経費率  営業収益に対する営業原価、販売費及び一般管理費の割合であり、次の算式を用いて算出している。   
(営業原価+販売費及び一般管理費)÷営業収益×100
目標値は各目標期間の平均値に係るものである。
(注16)
積立金  当期純利益の累積額
(注17)
公社では、第2期中期経営目標策定時に想定していなかった公務災害補償引当金等の計上があり、その影響を除けば当期純損失は1023億円となるとしている。

表3-19 公社の郵便の業務における中期経営目標の目標値及び実績値

区分 第1期目標値 実績値
平成15年度 16年度 17年度 18年度 4年間
合計又は平均
送達日数達成率 97.0%以上  
  全国平均 97.5% 97.2% 97.3% 97.3% 97.3%
同一都道府県宛て 98.1% 97.8% 98.0% 98.1% 98.0%
隣接都道府県宛て 97.2% 96.5% 96.6% 96.5% 96.7%
その他の都道府県宛て 96.8% 96.5% 96.5% 96.4% 96.6%
事業経費率 98.5%以下 96.9% 98.4% 99.2% 98.5% 98.3%
積立金 注(1) 500億円以上 263億円 283億円 26億円 18億円 592億円
 
区分 第2期目標値
注(2)
実績値  
19年度上期
注(2)
送達日数達成率 97.0%以上  
  全国平均 98.0%
同一都道府県宛て 98.4%
隣接都道府県宛て 97.2%
その他の都道府県宛て 97.5%
事業経費率 109.5%以下 106.8%
積立金 注(1) ▲1050億円以上 ▲1250億円
注(1)
各年度の積立金の区分には、当期純利益の額を記載している。
注(2)
整理資源債務の負債計上の影響等を除いて算定している。

民営化後は、公社時代のような目標値が定められていないが、民営化後のこれらの実績をみると、表3-20のとおりとなっている。

送達日数達成率については97%以上の水準で推移している。また、郵便事業会社及び日本郵便の郵便・物流事業における事業経費率については、15年度にインターネットによる郵便物の再配達依頼の受付等を開始したほか、20年度から年賀はがきの作成を支援するソフトウェアをインターネットを通じて配布するなど、これまで情報通信手段の多様化に対応した取組を実施しているにもかかわらず、前記のとおり、郵便事業会社が、22年度にJPEXから宅配便事業を承継したことにより上昇しており、20、21両年度には97%台であったが、24年度の97.8%を除いて、22年度から26年度までは99.4%から105.8%までの間(平均100.9%)で推移していて、26年度には100.5%となっている。また、事業経費のうち人件費の営業収益に対する割合である人件費率も上昇しており、郵便事業会社及び日本郵便の郵便・物流事業においては、20、21両年度には62%台であったが、22年度以降は63.5%から65.3%までの間を推移している。そして、前記のとおり、21年度から23年度までの間は当期純損失を計上していた。

表3-20 民営化後の送達日数達成率等の推移

区分 会社名 平成
19年度
下期
20年度 21年度 22年度 23年度
送達日数達成率
注(1)
郵便事業会社
  全国平均 97.8% 98.3% 98.5% 98.5% 98.6%
同一都道府県宛て 98.3% 98.6% 98.7% 98.9% 99.0%
隣接都道府県宛て 97.0% 97.8% 98.2% 98.0% 97.8%
その他の都道府県宛て 97.4% 98.1% 98.3% 98.0% 98.1%
事業経費率
注(2)
郵便事業会社
  全体 90.1% 97.5% 97.6% 105.8% 101.2%
うち人件費率 56.7% 62.3% 62.3% 65.3% 63.6%
うち経費率 33.4% 35.2% 35.2% 40.4% 37.5%
郵便局会社
  全体 98.7% 94.7% 95.8% 96.0% 97.2%
うち人件費率 77.5% 73.4% 74.3% 74.2% 75.2%
うち経費率 21.2% 21.2% 21.5% 21.8% 21.9%
当期純利益
注(2)
郵便事業会社 694億円 298億円 ▲474億円 ▲354億円 ▲45億円
郵便局会社 46億円 408億円 329億円 306億円 188億円
 
区分 会社名又は事業名 24年度 25年度 25年度  
送達日数達成率
注(1)
日本郵便
  全国平均 98.5% 98.6% 98.6%
同一都道府県宛て 98.9% 99.0% 99.1%
隣接都道府県宛て 98.0% 98.0% 97.8%
その他の都道府県宛て 97.8% 98.0% 98.0%
事業経費率
注(2)
郵便・物流事業
  全体 97.8% 99.4% 100.5%
うち人件費率 63.5% 64.2% 64.2%
うち経費率 34.3% 35.2% 36.3%
金融窓口事業
  全体 97.7% 96.8% 98.2%
うち人件費率 76.1% 76.0% 75.7%
うち経費率 21.5% 20.7% 22.5%
当期純利益 注(2) 日本郵便 830億円 360億円 221億円
注(1)
平成19年度下期の送達日数達成率は、19年度の通年の数値である。
注(2)
事業経費率及び当期純利益については、平成19年度下期から24年度までは単体決算の数値であり、2s4年度の当期純利益は、郵便局会社の9月までの決算数値に、日本郵便の24年10月以降の決算数値を加えたものである。25年度及び26年度の事業経費率は単体決算の数値、当期純利益は日本郵便等の連結決算の数値である。

前記のとおり、日本郵政は、26年2月に民営化後初めての中期経営計画となる26年中期計画を策定し、また、27年4月にこれを更新した27年中期計画を策定した。27年中期計画においては、27年度から29年度までの目標として、①営業収益3.1兆円(うち郵便・物流事業収益2.0兆円、金融窓口事業収益1.1兆円)、②経常利益350億円程度、③当期純利益300億円程度、④経常利益に支払利息及び減価償却費を加えたEBITDA(注18)1900億円程度が掲げられている(いずれも連結決算の数値)。当該計画に掲げられている営業収益等の目標について、26年度の実績をみると、①26年度の営業収益は2兆9409億余円(うち郵便・物流事業収益1兆8386億余円、金融窓口事業収益1兆1023億余円)、②26年度の経常利益は228億余円、③26年度の当期純利益は221億余円、④26年度のEBITDAは1180億余円となっている。また、収益拡大・生産性向上のために、27年度から29年度までに総額約7400億円の投資を計画しており、主な内訳は、建物、建築設備等の老朽化対策工事等や郵便局の窓口の改善等のサービス提供環境の整備に4800億円、郵便・物流ネットワーク全体の生産性の向上のために1300億円、不動産事業の展開のために700億円、情報システムの開発に600億円となっている。

(注18)
EBITDA  Earnings Before Interest,Taxes,Depreciation and Amortizationの略。利払前、税引前、償却前利益。企業の営業活動から生じたキャッシュ・フローを表す。

そして、日本郵便等は、前記のとおり、荷物に係る営業損失を継続して計上している上、郵便物の引受物数が長期的に減少傾向にあることなどから郵便物に係る営業利益が減少している状況に対して、25年度から、26年中期計画に基づくなどして、郵便・物流ネットワーク全体の生産性の向上等を図っている。具体的には、従来、郵便・物流事業に係る業務を行う多数の郵便局(以下「集配局」という。)に区分機を設置して分散して行っていた郵便物等の区分作業を、集配局のうち各地域の中核となる地域区分局に区分機を集中配置することなどにより集約して行う郵便・物流ネットワーク再編に向けた取組を実施しており、当該再編に着手して、郵便物等の区分作業の一部又は全部を地域区分局に集約して行うようになった集配局は表3-21のとおりである。

表3-21 郵便・物流ネットワーク再編に着手した集配局数(支社別)

(単位:局)
支社 平成25年度 26年度
北海道 1 4
東北 3 9
関東 1 0
東京 16 0
南関東 3 2
信越 1 0
北陸 32 1
東海 3 0
近畿 1 1
中国 2 0
四国 1 0
九州 12 6
沖縄 1 0
77 23

さらに、郵便・物流ネットワーク再編として、表3-22のとおり、大規模な地域区分局を高速道路のインターチェンジ付近に新設して市街地から移転するなどの取組を実施している。

表3-22 大規模な地域区分局の新設

支社 名称 受持地域 しゅん工予定等
北海道 道央 道央エリア 平成28年度冬頃しゅん工予定
東北 北東北 岩手エリア 28年度秋頃しゅん工予定
新福島 福島エリア 29年度春頃しゅん工予定
信越 新新潟 新潟エリア 28年度冬頃しゅん工予定
関東 新群馬 群馬エリア 29年度春頃しゅん工予定
東京 東京北部 東京北部エリア 27年5月開局
南関東 神奈川西部 神奈川西部エリア 29年度夏頃しゅん工予定
東海 静岡東部 静岡エリア 28年度秋頃しゅん工予定
近畿 近畿北部 京都エリア 29年度冬頃しゅん工予定
中国 中国東部 岡山エリア 28年度冬頃しゅん工予定
新広島 広島エリア 28年度冬頃しゅん工予定
新山口 山口エリア 28年度秋頃しゅん工予定
九州 新鹿児島 鹿児島エリア 29年度春頃しゅん工予定
(注)
東京北部以外の名称は、工事名で使用されているものであり、仮称である。

また、集配局における区分作業の生産性をみるために、会計検査院において、区分作業等に従事する従業員数(総務、経理や配達作業等に従事する従業員数を除き、臨時従業員数を含む。)と25年度の郵便物等の引受物数により、郵便物等の区分作業等に係る百万通(百万個)当たりの当該従業員数を試算したところ、次のとおりとなっていた。

すなわち、表3-23のとおり、会計実地検査を行った119集配局から14地域区分局を除いた105集配局のうち、26年度末までに郵便・物流ネットワーク再編に着手していない97集配局では、百万通(百万個)当たりの従業員数が5.6人となっていたのに対して、当該再編に着手した北海道、北陸、信越、九州各支社管内の8集配局では同従業員数が5.2人となっていて、僅かではあるが少なくなっている。また、区分作業を集中して行っている14地域区分局では同従業員数は2.2人となっていて、上記の105集配局と比べて少なくなっている。

表3-23 集配局における区分作業の生産性

郵便局分類 局数
(局)
区分作業等に従事する従業員数(人) 25年度の引受物数(百万通(百万個)) 百万通(百万個)当たりの従業員数(人)
(A) (B) (A/B)
集配局 再編着手済 8 495 94 5.2
再編未着手 97 10,188 1,793 5.6
105 10,683 1,888 5.6
地域区分局 14 9,667 4,286 2.2
合計 119 20,350 6,174 3.2

日本郵便は、荷物に係る営業損失を継続して計上していること、また、郵便物に係る営業利益が減少していることから、引き続き生産性の向上等に努めることが求められる。

イ 銀行業

(ア)業務の状況
a ゆうちょ銀行の状況

銀行業の主たる事業主体であるゆうちょ銀行は、持分法適用関連会社2社(26年度末現在)を有しており、26年度末現在において、日本郵政グループが運用目的で保有する有価証券の約7割を保有している。ゆうちょ銀行には、郵政民営化法等により、表3-24のとおり、新規業務について内閣総理大臣及び総務大臣の認可を要するという制限や預金者一人当たりの預入限度額等の他の銀行にはない規制が課せられている。なお、当該限度額については、昭和63年4月に300万円から500万円に、平成2年1月に700万円に、3年11月に1000万円に、28年4月に現在の1300万円に引き上げられている。

表3-24 ゆうちょ銀行に対する規制

項目 認可等 備考
新規業務の制限 内閣総理大臣及び総務大臣の認可を要する(内閣総理大臣は金融庁長官に権限を委任)。 日本郵政がゆうちょ銀行の株式の2分の1以上を処分した旨を総務大臣に届け出た日以後は、当該認可を要しない。
預金者一人当たりの預入限度額 当該限度額の引上げには郵政民営化法施行令の改正を要する。 平成28年4月から原則1300万円。
ただし、他に一般の金融機関がない市町村の区域として内閣総理大臣及び総務大臣が告示する区域に主たる事務所が所在する地方公共団体等の所得税法別表第一に掲げる内国法人、労働組合等については当該限度額の適用が除外される(内閣総理大臣は金融庁長官に権限を委任)。
b 預貯金残高の推移

ゆうちょ銀行(貯金残高及び資金運用については民営化前の特別会計及び公社を含む。以下同じ。)の貯金残高及び他の銀行(注19)の個人預金の預金残高(以下、これらを合わせて「預貯金残高」という。)の推移は、図3-10のとおり、ゆうちょ銀行の貯金残高は、14年度末の233兆2465億余円から22年度末の174兆6532億余円へと2割以上減少し、23年度以降は僅かではあるが増加に転じ、26年度末には177兆7107億余円となっている(22年度から26年度までの間の増加率は1.7%)。しかし、ゆうちょ銀行の貯金残高が減少していた14年度から22年度までの間に、他の銀行の預金残高は323兆2903億余円から386兆3056億余円へと2割程度増加し、その後、26年度末の430兆4343億余円へと更に増加していることから(22年度から26年度までの間の増加率は11.4%)、上記のとおり、23年度以降、ゆうちょ銀行の貯金残高は増加に転じたものの、他の銀行の預金残高と比較するとその増加率は小さくなっている。

(注19)
他の銀行  都市銀行、地方銀行、第二地方銀行及び信託銀行

このように、ゆうちょ銀行におけるこの間の貯金残高が減少している背景としては、市場における低金利が続く中で、主力商品である定額貯金の優位性が低下していることなどが要因であると考えられる。

図3-10 預貯金残高の推移・比較

図3-10 預貯金残高の推移・比較 画像

c 主要サービスの提供状況についての都市銀行との比較

主要サービスの提供状況について、ゆうちょ銀行と都市銀行(注20)とを比較すると、表3-25のとおりとなっており、ゆうちょ銀行は、前記のとおり、新規業務の制限が課せられていて、個人及び法人向けの貸出業務の範囲が制限されている。

(注20)
都市銀行  株式会社三菱東京UFJ銀行、株式会社みずほ銀行、株式会社三井住友銀行、株式会社りそな銀行、株式会社埼玉りそな銀行

表3-25 主要サービスの提供状況の比較(平成26年度末時点)

サービス内容 ゆうちょ銀行 都市銀行
個人向け 預貯金 円貨貯金 ○
外貨貯金 ×
送金(国内・国際)
資産運用商品(国債、各種投資信託の取扱い、変額年金保険)
カードサービス
インターネットサービス
確定拠出年金(個人型)
年金受取、公共料金等の支払
個人向け貸出業務 直接の貸付け ×
(ただし、貯金等を担保とした貸付けは○)
他の銀行のローン商品の媒介 ○
法人向け 法人向け貸出業務 地方公共団体への貸付け、
シンジケートローン(参加型)等 ○
企業への直接の貸付け ×
決済サービス
経営・事業支援(コンサルティング等) ×
外国業務 国際送金、外貨両替 ○
事業展開支援等 ×
(注)
都市銀行については各銀行ホームページの情報を基に作成
(イ)損益等の状況

銀行業の経常収益等の推移をみると、表3-26のとおり、資金運用の方法について、財政投融資改革により資金運用部への預託義務が廃止された13年度以降は全額自主運用になったため、特別会計の最終年度である14年度末には総資産額285兆7077億余円の約6割に当たる177兆3200億円を財政融資資金預託金が占めていたが、民営化された19年度末には総資産額212兆1491億余円の約1割に当たる20兆7000億円へと減少した。これに伴って公社時代の16年度以降は、国債等の有価証券が運用の中心になった。当該預託金の利回りと有価証券の利回りとを比較すると、当該預託金の利回りが15年度の2.25%から18年度の1.97%へと推移していたのに対して、有価証券の利回りは15年度の0.81%から18年度の0.93%へと当該預託金と比べて低い水準で推移(注21)していた。有価証券と比べて利回りが高くなっていた当該預託金の償還に伴って、経常収益の大半を占める資金運用収益が、15年度の4兆5894億余円から18年度の2兆8167億余円へと減少したため、経常収益は15年度の5兆8714億余円から18年度の3兆0589億余円へと大幅に減少した。また、経常費用は15年度の3兆6006億余円から18年度の2兆0815億余円へと減少し、経常利益は15年度の2兆2707億余円から18年度の9773億余円へ、当期純利益は15年度の2兆2755億余円から18年度の9406億余円へと、いずれも大幅に減少した。

(注21)
公社時代に償還された財政融資資金預託金は平成8年度から12年度までに預託されたものであり、市場金利の低下の影響等もあり、公社時代(15年度から19年度まで)に取得した国債等の利回りと比べて当該預託金の利回りは高くなっていた。

民営化後は、資金運用収益が20年度の2兆3099億余円から26年度の1兆8932億余円へと4166億余円減少するなどして、経常収益が20年度の2兆4885億余円から26年度の2兆0781億余円へと4103億余円減少しているものの、経常費用も20年度の2兆1033億余円から26年度の1兆5086億余円へと5946億余円減少(うち営業経費の削減額は1525億余円)するなどしているため、経常利益は20年度の3852億余円から26年度の5694億余円へ、当期純利益は20年度の2293億余円から26年度の3694億余円へとそれぞれ増加する傾向にある。前記のとおり、22年度以降は、僅かではあるが貯金残高が増加しているなどのため、総資産額も22年度の193兆4433億余円から26年度の208兆1793億余円へと増加している。

表3-26 経常収益等の推移

(単位:億円)  
科目 特別会計
注(1)
公社 注(2)
平成14年度 15年度 16年度 17年度 18年度 19年度
上期
経常収益 5兆8714 4兆0989 4兆5315 3兆0589 1兆7715
うち資金運用収益
6兆2538 4兆5894 3兆8229 3兆1341 2兆8167 1兆3110
うち預託金利息
4兆7083 3兆7125 2兆8218 1兆9438 1兆2729 3962
預託金の利回り 注(3)
2.44% 2.25% 2.08% 1.99% 1.97% 1.85%
うち有価証券利息配当金
1兆2228 8578 9694 1兆1514 1兆4901 8797
有価証券の利回り 注(4)
1.55% 0.81% 0.78% 0.80% 0.93% 1.03%
経常費用 3兆6006 2兆8754 2兆1997 2兆0815 9544
うち営業経費
1兆0538 1兆0039 9798 9941 5175
経常利益 2兆2707 1兆2235 2兆3317 9773 8170
当期純利益 1兆7303 2兆2755 1兆2095 1兆9304 9406 3726
総資産額 285兆7077 280兆5530 264兆8649 247兆7497 231兆6282 222兆5157
うち財政融資資金預託金
177兆3200 156兆0954 117兆6119 79兆8969 52兆2435 38兆8585
うち有価証券
90兆1071 109兆1605 132兆5461 152兆2415 165兆0165 170兆5092
負債額 282兆5851 276兆8866 259兆5927 240兆7711 223兆2137 214兆9299
純資産額 3兆1225 3兆6663 5兆2721 6兆9786 8兆4144 7兆5858
単体自己資本比率
(国内基準) 注(5)
 
科目 ゆうちょ銀行 注(2)
平成19年度
下期
20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度
経常収益 1兆3289 2兆4885 2兆2079 2兆2053 2兆2345 2兆1258 2兆0763 2兆0781
うち資金運用収益
1兆2650 2兆3099 2兆0660 2兆0441 2兆0069 1兆8761 1兆8276 1兆8932
うち預託金利息
2738 2547 861 140
預託金の利回り 注(3)
1.75% 1.74% 1.93% 2.00%
うち有価証券利息配当金
9369 1兆9408 1兆9209 1兆9721 1兆9478 1兆8162 1兆7683 1兆8260
有価証券の利回り 注(4)
1.08% 1.11% 1.09% 1.13% 1.13% 1.07% 1.02% 1.14%
経常費用 1兆0727 2兆1033 1兆7136 1兆6787 1兆6583 1兆5323 1兆5113 1兆5086
うち営業経費
6177 1兆2662 1兆2210 1兆2099 1兆1739 1兆1107 1兆0950 1兆1136
経常利益 2561 3852 4942 5265 5762 5935 5650 5694
当期純利益 1521 2293 2967 3163 3348 3739 3546 3694
総資産額 212兆1491 196兆4807 194兆6783 193兆4433 195兆8198 199兆8406 202兆5128 208兆1793
うち財政融資資金預託金
20兆7000 8兆7000 2兆0000
うち有価証券
172兆5321 173兆5511 178兆2306 175兆0264 175兆9532 171兆5965 166兆0578 156兆1697
負債額 204兆0723 188兆3012 185兆8388 184兆3497 186兆0017 188兆8431 191兆0483 196兆5490
純資産額 8兆0768 8兆1795 8兆8395 9兆0936 9兆8181 10兆9975 11兆4645 11兆6302
単体自己資本比率
(国内基準) 注(5)
85.90% 92.09% 91.62% 74.82% 68.39% 66.04% 56.81% 38.42%
注(1)
特別会計には、経常収益、経常費用及び経常利益に相当する科目が存在しない。
注(2)
平成19年10月に民営化されたため、19年度は上期と下期に分けて記載している。
注(3)
預託金の利回り  預託金利息÷財政融資資金預託金の平均残高×100
注(4)
有価証券の利回り  有価証券利息配当金÷有価証券の平均残高×100
注(5)
平成25年度から、国際的に業務を展開している銀行の健全性を維持するための新たな自己資本規制(バーゼルIII)を踏まえた国内基準を適用している。また、公社は単体自己資本比率を開示していない。
(ウ)資金運用の状況

特別会計時代の最終年度である14年度から26年度までの間のゆうちょ銀行の資金運用の状況をみると、図3-11のとおり、運用資産額は、14年度末には284兆1173億余円であったが、貯金残高が減少したことなどにより、22年度末には190兆7453億余円に減少し、その後貯金残高の増加等に伴って26年度末には205兆8654億余円に増加している。

前記のとおり、15年度から18年度までの間に、運用資産に占める財政融資資金預託金の割合が大きく減少し、また、ゆうちょ銀行は、個人及び法人向け貸出業務の範囲が制限されているため、運用資産に占める貸出金の割合は1%から2%程度となっている。このため、16年度以降、有価証券が資金運用の中心となり、中でも安全・確実な運用を目的として国債が中心となっている。ただし、国債を運用の基本にしつつも、市場の状況を踏まえてリスクの分散・収益源泉の多様化を図るとしており、金利の低下もあって(償還期間が10年の国債の利回りをみると、19年度の平均は1.6%程度であったが、26年度の平均は0.4%程度にまで低下している。)、運用資産に占める国債の割合は、最も高かった21年度末の81.1%から26年度末には51.8%へと低下している。そして、運用資産に占める割合が、外国証券等のその他の証券については21年度末の2.4%から26年度末の15.9%へ、日本銀行への預け金(注22)等については21年度末の2.1%から26年度末の16.0%へとそれぞれ増加するなどしている。なお、20年度以降、金銭の信託を通さずに直接保有している株式があるが、直接保有しているのは持分法適用関連会社2社(26年度末現在)の株式のみである。

図3-11 運用資産の内訳の推移

図3-11 運用資産の内訳の推移 画像

(注22)
日本銀行への預け金  銀行等が日本銀行に預け入れる当座預金。従来、各銀行等が預け入れなければならない最低金額を超える金額にはプラス金利の利息が付されていたが、平成28年1月の日本銀行政策委員会・金融政策決定会合において、同当座預金をプラス金利の利息が付される階層、利息が付されない階層、マイナス金利の利息が付される階層の3段階の階層構造に分割し、それぞれの階層に応じた金利を適用することとされた。

上記資金運用の結果、資金運用収益は、図3-12のとおり、14年度の6兆2538億余円から、民営化された19年度には2兆5761億余円へ、さらに、26年度には1兆8932億余円へと大幅に減少している。

図3-12 資金運用収益の内訳の推移

図3-12 資金運用収益の内訳の推移 画像

ゆうちょ銀行は、27年中期計画等において、貯金等の総預かり資産の拡大を目指すとともに、資金運用に当たっては、市場の状況を踏まえて収益源泉の多様化を図るとしている。

(エ)運用資産の構成等についての都市銀行との比較

26年度について、ゆうちょ銀行と都市銀行とを運用資産の構成について比較(注23)すると表3-27のとおりとなっており、また、指標等を用いて比較すると表3-28のとおりとなっている。ゆうちょ銀行は、個人及び法人向けの貸出業務の範囲が制限されていることなどから、運用資産に占める貸出金の割合が1.3%となっており、都市銀行の48.9%と比較して小さく、また、預貸率(注24)についても1.5%となっており、都市銀行が58.6%から75.4%であるのと比較して低くなっている。その一方、前記のとおり、ゆうちょ銀行は、都市銀行よりも業務範囲が狭いことなどを背景として、有価証券、特に国債を中心とする資金運用が行われているため、運用資産に占める有価証券の割合が75.8%となっており、都市銀行の25.7%と比較して極めて高くなっている。また、都市銀行の預証率(注25)が16.0%から38.9%となっているのに対して、ゆうちょ銀行の預証率は87.8%と高くなっている。

その結果、ゆうちょ銀行では、有価証券利息配当金が資金運用収益の96.4%を占めており主な収益源泉となっている一方、資金の運用利回りが0.95%となっていて、0.94%から1.42%となっている都市銀行と比べておおむね低くなっている。

(注23)
比較の対象となる都市銀行のうち、2行は日本の会計基準と米国の会計基準の両方を会計基準として採用しているが、当該比較においては日本の会計基準に基づいて比較を行っている。その他の3行は日本の会計基準のみを採用している。
(注24)
預貸率  預貯金残高等に対する貸出金残高の割合であり、次の算式を用いて算出している。
貸出金残高÷(預貯金残高+譲渡性預金残高+債券残高)×100
(注25)
預証率  預貯金残高等に対する有価証券残高の割合であり、次の算式を用いて算出している。
有価証券残高÷(預貯金残高+譲渡性預金残高+債券残高)×100

また、自己資本の規模が大きいなどのため、自己資本当期純利益率が3.2%となっていて、5.8%から11.9%となっている都市銀行と比べて低くなっている。一方、運用資産に占める国債の割合が51.8%と高くなっていることなどにより、バーゼル銀行監督委員会が公表している自己資本規制に基づく銀行の健全性を示す単体自己資本比率(注26)は38.4%となっていて、13.1%から18.8%となっている都市銀行と比べて高くなっている。

(注26)
単体自己資本比率  銀行の財務諸表で算出される株主資本等から構成される自己資本を分子として、保有する資産について、資産の種類ごとに定められたリスク・ウェイトを乗じて得た額の合計額であるリスク・アセットの額等を分母として算定される。リスク・ウェイトは、現金や国債は0%、外国の国債は0%から150%まで、株式は100%、250%又は1250%とされていて資産の種類ごとに定められており、運用資産に占める国債の割合が高い場合には、分母であるリスク・アセットの額が小さくなり、単体自己資本比率が高くなる。そして、ゆうちょ銀行のように、海外営業拠点を有しない銀行は、単体自己資本比率が4%未満になると、監督当局から改善計画の提出を求められるとともに、当該計画の実行等について命令を受ける。

表3-27 ゆうちょ銀行と都市銀行との運用資産の構成比較(平成26年度)

(単位:億円)
運用資産の区分 ゆうちょ銀行 都市銀行計
資産残高 構成比 資産残高 構成比
有価証券 156兆1697 75.8% 130兆1842 25.7%
  国債 106兆7670 51.8% 67兆4451 13.3%
地方債 5兆5251 2.6% 1兆0368 0.2%
短期社債 2269 0.1%
社債 10兆7560 5.2% 7兆2532 1.4%
株式 9 0.0% 15兆3357 3.0%
その他の証券 32兆8936 15.9% 39兆1131 7.7%
日本銀行への預け金等 33兆0349 16.0% 101兆6615 20.1%
金銭の信託 3兆4916 1.6% 343 0.0%
貸出金 2兆7839 1.3% 247兆1332 48.9%
その他 10兆3850 5.0% 25兆9501 5.1%
205兆8654 100.0% 504兆9635 100.0%
 
収益の区分 資産残高 構成比 資産残高 構成比
資金運用収益 1兆8932 100.0% 4兆7321 100.0%
  有価証券利息配当金 1兆8260 96.4% 1兆2129 25.6%
貸出金利息 311 1.6% 3兆1160 65.8%
その他 360 1.9% 4031 8.5%
注(1)
運用資産については年度末時点の残高である。
注(2)
都市銀行については全国銀行協会ホームページの情報を基に作成

表3-28 指標等によるゆうちょ銀行と都市銀行との比較(平成26年度)

(単位:億円)
区分 ゆうちょ銀行 都市銀行
C D E F G 都市銀行平均
経常利益 5694 6863 9026 9559 2291 566 5661
預貸率 1.5% 65.4% 61.0% 64.8% 75.4% 58.6% 64.1%
預証率 87.8% 38.0% 38.9% 28.4% 16.0% 18.5% 33.8%
運用利回り 0.95% 1.00% 1.31% 1.42% 1.17% 0.94% 非公表
  貸出金 1.04% 1.30% 1.62% 1.60% 1.36% 1.48% 非公表
有価証券 1.14% 0.79% 0.97% 1.29% 1.06% 0.60% 非公表
自己資本 11兆6302 7兆3120 10兆4886 7兆9987 1兆3597 3924 5兆5103
自己資本当期純利益率 3.2% 6.2% 5.8% 8.5% 11.9% 9.4% 非公表
単体自己資本比率
(国際統一基準又は国内基準)注(1)
38.4% 15.3% 17.2% 18.8% 13.1% 14.2% 基準が異なるため
算定不可
(国内基準) (国際統一基準) (国際統一基準) (国際統一基準) (国内基準) (国内基準)
注(1)
単体自己資本比率の算定方法は、海外営業拠点がある場合とない場合とで異なり、当該拠点がある場合には国際統一基準を、ない場合には国内基準をそれぞれ用いて算定する。ゆうちょ銀行には国内基準が適用されるが、都市銀行のうち、3行には国際統一基準、2行には国内基準がそれぞれ適用される。また、国際統一基準を採用している銀行については単体自己資本比率のうち、単体総自己資本比率を記載している。
注(2)
各都市銀行については各社有価証券報告書を基に、また、都市銀行平均については全国銀行協会ホームページの情報を基に作成している。
(オ)民営化後の新規業務等の申請・認可等の状況

ゆうちょ銀行は、民営化後、表3-29のとおり、新規業務等の申請等を行っており、クレジットカード業務等は認可されているが、24年9月3日に申請した個人向け貸付及び法人向け貸付等の業務等は、27年12月末時点において、認可されていない状況である。

表3-29 ゆうちょ銀行の新規業務等の申請・認可等の状況

新規業務等 申請・認可時期等 開始時期 目的等
新商品・サービスの提供
①クレジットカード業務
平成
20.4.18
認可
20.5.1 決済手段の多様化に伴う手数料収入等の収益機会の拡大
②住宅ローン等の媒介業務
20.5.12 スルガ銀行株式会社の住宅ローン等を媒介することによる代理業務による手数料等の収益機会の拡大
③変額個人年金保険等の生命保険募集業務
20.5.29 資産運用商品のラインナップの充実、手数料等の収益機会の拡大
④個人向け貸付け
24.9.3
申請
住宅ローン等の各種ローンを取り扱うことで顧客の利便性・収益構造等の改善を図る。
⑤損害保険募集
住宅資金貸付時に損害保険の募集を併せて行うことによる顧客の利便性・収益構造の改善を図る。
⑥法人向け貸付け
法人顧客の資金需要に応え、収益構造の改善を図る。
運用手段の多様化
①金銭の貸付け
(シンジケートローン(参加型))
19.12.19
認可
20.1 債券を発行していない企業等への投資等が可能となることによる収益機会の拡大
②デリバティブ取引
(金利スワップ取引等)
20.2 固定金利の変動金利化等のニーズに柔軟に対応
③金銭債権の取得又は譲渡
(貸出債権等)
20.2 債券を発行していない企業等への投資等が可能となることによる収益機会の拡大
④有価証券の取得
(信託受益権等)
20.3 債券を発行していない企業等への投資等が可能となることによる収益機会の拡大
預入限度額 預入限度額の廃止 20.4.1
政令改正要望を提出
預金者一人当たり原則1000万円とする預入限度額の撤廃による顧客の利便性の向上
(注)
平成27年12月末までに申請又は要望の提出を行っているものを記載している。
(カ)効率化、収益向上等に向けた取組の状況

公社の第1期及び第2期の中期経営目標における目標値及び実績値は、表3-30のとおりとなっており、目標値として用いられている経費率(注27)は平均貯金残高の減少が見込まれる中で業務運営の効率化の状況を測る指標として、積立金は利益の発生状況を測る指標として、それぞれ用いられている。

経費率については、第1期の目標値が「0.52%以下」となっていたのに対して実績値は0.47%、第2期の目標値が「0.62%以下」となっていたのに対して実績値は0.58%となっていた。また、積立金については、第1期の目標値が「3.9兆円以上」となっていたのに対して実績値は6兆3562億余円、第2期の目標値が「2900億円以上」となっていたのに対して実績値は7637億余円となっていた。

(注27)
経費率  平均貯金残高(未払利子を含み、振替及び為替を除く月末残高の平均)に対する営業経費の割合であり、次の算式を用いて算出している。
営業経費÷平均貯金残高×100

表3-30 公社の郵便貯金業務における中期経営目標の目標値及び実績値

項目 第1期目標値 実績値
平成15年度 16年度 17年度 18年度 4年間
合計又は平均
経費率 注(1) 0.52%以下 0.46% 0.45% 0.47% 0.51% 0.47%
積立金 注(2) 3.9兆円以上 2兆2755億円 1兆2095億円 1兆9304億円 9406億円 6兆3562億円
 
項目 第2期目標値
注(3)
実績値  
19年度上期 注(3)
経費率 注(1) 0.62%以下 0.58%
積立金 注(2) 2900億円以上 7637億円
注(1)
目標値は各目標期間の平均値に係るものである。
注(2)
積立金は、各年度の当期純利益の額を記載している。
注(3)
平成19年度に行われた整理資源債務の計上等の影響を除いた数値である。

そして、民営化後は、公社時代のような目標値が定められていないが、民営化後のこれらに関連する実績をみると、表3-31のとおりとなっている。

貯金経費率(注28)については、20年度に0.70%に上昇した後、おおむね低下傾向にあり、26年度には0.62%となっている。これは、経費のうち物件費の平均貯金残高に対する割合が低下していることによるものである。また、当期純利益については、公社時代の水準(注29)と比べると大幅に減少しているものの、20年度の2293億余円から26年度の3694億余円へと増加している。

(注28)
貯金経費率  経費(営業経費から臨時処理分(退職給付費用の一部)を除いたもの)の平均貯金残高(未払利子を除き、振替及び為替を含む暦日の残高の平均)に対する割合であり、次の算式を用いて算出している。
経費÷平均貯金残高×100
(注29)
前記のとおり、公社では法人税が非課税となっていたため、当期純利益を単純に比較することはできない。

表3-31 民営化後の経費率等の推移

項目 平成19年度
下期
20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度
貯金経費率 0.66% 0.70% 0.68% 0.68% 0.66% 0.63% 0.61% 0.62%
  うち人件費の平均貯金残高に対する割合 0.05% 0.06% 0.06% 0.06% 0.06% 0.06% 0.06% 0.06%
うち物件費の平均貯金残高に対する割合 0.55% 0.60% 0.58% 0.58% 0.56% 0.52% 0.51% 0.51%
うち租税公課の平均貯金残高に対する割合 0.04% 0.04% 0.04% 0.04% 0.03% 0.03% 0.03% 0.04%
当期純利益 1521億円 2293億円 2967億円 3163億円 3348億円 3739億円 3546億円 3694億円

また、公社時代及び民営化後は、顧客の満足度を高めるサービスの充実、業務運営の効率化及び経営管理の高度化を図るために、表3-32のとおり、各種の取組が行われている。

表3-32 顧客の満足度を高めるサービスの充実等を図るための取組

取組 開始時期 目的等
①国庫金・各種料金の電子収納サービス開始
平成16年1月 決済手段の多様化による顧客の利便性の向上
②投資信託の販売等開始
17年10月 顧客のニーズへの対応及び投資信託の販売による手数料収入の獲得、収益機会の拡大
③シンジケートローン(参加型)等運用方法の多様化
20年1月
など
債券を発行していない企業等への投資等が可能となることによる収益機会の拡大
④クレジットカード、個人向けローンの媒介等新規業務を開始
20年5月 決済手段の多様化等による手数料収入等の収益機会の拡大
⑤全国銀行データ通信システム(全銀システム)への接続開始
21年1月 他の金融機関との間での払込みや振込みが可能となることによる顧客の利便性の向上
⑥全国に13のエリア本部を設置
22年4月 日本郵便との連携強化による営業力の強化
⑦新型の窓口端末機の導入
26年4月 顧客対応の改善及び正確かつ効率的な事務手続の実施

そして、前記のとおり、日本郵政は、26年2月に、民営化後初めての中期経営計画となる26年中期計画を策定し、また、27年4月にこれを更新した27年中期計画を策定した。そして、27年中期計画においては、27年度から29年度までの目標として、①総預かり資産4兆円(貯金3兆円、投資信託及び変額年金保険1兆円)の増加、②29年度の経常利益4800億円程度、③29年度の当期純利益3300億円程度、④26年度と比べて経常費用のうち物件費500億円以上の削減が掲げられている。当該計画に掲げられている総預かり資産等の目標について、26年度の実績をみると、①24年度から26年度までの総預かり資産は2兆7995億余円(貯金1兆6146億余円、投資信託及び変額年金保険1兆1849億余円)の増加、②26年度の経常利益は5694億余円、③26年度の当期純利益は3694億余円、④23年度と比べて26年度の物件費は724億余円の削減となっている。

また、14年度以降に配備されていた旧型の窓口端末機が老朽化したことから、保守費等のコスト削減に資する投資として、旧型の窓口端末機よりも経済性、操作性等の点で優れている新型の窓口端末機の配備等に総額90億円を投資する計画となっている。

ウ 生命保険業

(ア)業務の状況
a かんぽ生命の状況

生命保険業の主たる事業主体であるかんぽ生命は、連結子会社1社(26年度末現在)を有しており、前記のとおり、26年度の生命保険業の経常収益及び経常利益は多額に上っている。かんぽ生命には、郵政民営化法等により、表3-33のとおり、新規業務について内閣総理大臣及び総務大臣の認可を要するという制限や被保険者一人当たりの加入限度額等の他の生命保険会社にはない規制が課せられている。なお、当該限度額の最高額は、昭和52年9月に500万円から1000万円に、61年9月に所定の条件を満たす場合に保険金額のうち300万円が当該限度額の計算に算入されないという形で1300万円に引き上げられた。さらに、平成28年4月に所定の条件を満たす場合に保険金額のうち1000万円が当該限度額の計算に算入されないという形で現在の2000万円に引き上げられている。

表3-33 かんぽ生命に対する規制

項目 認可等 備考
新規業務の制限 内閣総理大臣及び総務大臣の認可を要する(内閣総理大臣は金融庁長官に権限を委任)。 日本郵政がかんぽ生命の株式の2分の1以上を処分した旨を総務大臣に届け出た日以後は、当該認可を要しない。
被保険者一人当たりの加入限度額 当該限度額の引上げには郵政民営化法施行令の改正を要する。 被保険者が20歳以上55歳以下で、加入後4年以上経過した契約があり、被保険者が健康であることが確認できた場合、平成28年4月から1000万円が限度額の計算に算入されず、最高で2000万円になる。
b 保険契約件数の推移

かんぽ生命(保険契約件数及び資産運用については民営化前の特別会計及び公社を含む。以下同じ。)及び他の生命保険会社(注30)が保有する保険契約件数の推移をみると、表3-34のとおり、かんぽ生命については、14年度から19年度までの個人保険(民営化前に契約した「保険」も含む。以下同じ。)の保険契約件数は14年度末の約7264万件から19年度末の約5276万件へ、個人年金保険(民営化前に契約した「年金保険」も含む。以下同じ。)の保険契約件数は14年度末の約740万件から19年度末の約636万件へとそれぞれ減少していた。そして、19年度以降の状況をみると、民営化後に契約した保険契約の件数は26年度末には個人保険が約1353万件、個人年金保険が約131万件となっているのに対して、民営化前に契約した保険契約の件数は、満期を迎えたことなどにより、個人保険が19年度末の約5218万件から26年度末の約1994万件へと約3223万件減少し、個人年金保険が19年度末の約629万件から26年度末の約295万件へと約334万件減少している。その結果、26年度末の個人保険の保険契約件数は約3348万件、個人年金保険の保険契約件数は約426万件となっている。全体として、減少のペースは鈍化してきているものの、長期にわたり減少傾向が続いている。一方、他の生命保険会社については、15年度以降、保険契約件数(個人保険に係る分)はおおむね増加傾向にあり、特に、21年度以降は、21年度末の約1億1270万件から26年度末の約1億3819万件へと増加している。

(注30)
他の生命保険会社  一般社団法人生命保険協会に加盟している生命保険会社のうち、かんぽ生命を除いた生命保険会社。平成26年度末では41社ある。

このように、かんぽ生命において、民営化前に契約した保険契約の満期等による減少件数が民営化後に契約した保険契約の増加件数を上回って推移しており、その背景としては、かんぽ生命は、貯蓄性の高い商品である養老保険を主力商品としており、予定利率の低下により、貯蓄性の高い商品の魅力が低下していることなどが考えられる。

かんぽ生命は、保険契約件数の維持等に努める必要があることから、27年中期計画において、29年度以降の保険契約件数の底打ち、反転を目指すとしている。

表3-34 個人保険等の保険契約件数の推移

(単位:万件)
区分 平成
14年度
15年度 16年度 17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度
公社、かんぽ生命 個人保険 7,264 6,850 6,540 6,097 5,696 5,276 4,847 4,465 4,167 3,903 3,680 3,486 3,348
  うちかんぽ生命(民営化後)の契約 58 244 434 618 801 987 1,166 1,353
うち郵貯簡保機構(民営化前)の契約 7,264 6,850 6,540 6,097 5,696 5,218 4,602 4,030 3,549 3,101 2,693 2,319 1,994
個人年金保険 740 731 724 699 674 636 604 581 557 528 493 458 426
  うちかんぽ生命(民営化後)の契約 6 24 45 68 88 105 119 131
うち郵貯簡保機構(民営化前)の契約 740 731 724 699 674 629 580 536 488 439 387 339 295
他の生命保険会社 個人保険 11,017 10,934 10,961 10,998 10,978 10,943 11,055 11,270 11,573 11,919 12,614 13,221 13,819
注(1)
各保険契約件数は年度末時点の件数である。
注(2)
平成19年度以降の民営化前の契約は、かんぽ生命と郵貯簡保機構との再保険関係が成立する旨を定める契約に基づくものである。
注(3)
一般社団法人生命保険協会ホームページなどの情報を基に作成
c 主要商品についての4生命保険会社との比較

主要商品の取扱状況について、かんぽ生命と他の生命保険会社のうち26年度末時点で保有する保険契約件数の多い上位4生命保険会社(以下「4保険会社」という。)とを比較すると、表3-35のとおり、かんぽ生命は、企業と契約することで企業の職員全員が加入することになる団体保険を取り扱っていない。これは、簡易生命保険が、国民に、簡易に利用できる生命保険をなるべく安い保険料で提供し、もつて国民の経済生活の安定を図り、その福祉を増進することを目的としていた成り立ちによるものである。

表3-35 かんぽ生命及び4保険会社における主要商品の取扱状況の比較(平成26年度末時点)

商品内容 かんぽ生命 4保険会社
個人保険 医療保険 特約として付加 ○
商品単体 ×
定期保険
養老保険
終身保険
こども保険(学資保険)
がん保険 他社商品の受託販売 ○
自社商品の販売 ×
個人年金保険 定額年金保険
変額年金保険 ×
団体保険 団体信用生命保険 ×
団体定期保険 ×
総合福祉団体定期保険 × 注(1)
団体年金保険 拠出型企業年金保険 ×
確定給付企業年金保険 ×
注(1)
他社商品の受託販売について、平成27年9月30日に認可を受けて同年11月30日から開始している。
注(2)
4保険会社については各生命保険会社のホームページの情報を基に作成
(イ)損益等の状況

生命保険業の経常収益等の推移をみると、前記のとおり、保険契約件数が逓減していて、経常収益の過半を占める保険料等収入が減少傾向にあったため、経常収益も減少している。ただし、保険料等収入の減少、満期による保険契約の消滅等に伴い、経常収益の増加要因である過年度に繰り入れた責任準備金(注31)の戻入があるため、経常収益の減少は、その分、緩和されることになる。

公社時代の経常収益等の推移をみると、経常収益が15年度の16兆8577億余円から18年度の14兆7261億余円へと2兆1316億余円減少したものの、経常費用も15年度の16兆6252億余円から18年度の14兆4319億余円へと2兆1933億余円減少するなどしたため、経常利益は15年度の2325億余円から18年度の2941億余円へと増加した。なお、公社では、経常利益に特別損益等を加減した残余額を契約者配当準備金(注32)として繰り入れていたため、当期純利益は生じていなかった。

民営化後の経常収益等の推移をみると、経常収益が20年度の15兆5337億余円から26年度の10兆1692億余円へと5兆3644億余円減少しているものの、経常費用も20年度の15兆3194億余円から26年度の9兆6766億余円へと5兆6428億余円減少していることにより、黒字基調で推移しており、経常利益は20年度の2142億余円から26年度の4926億余円へ、当期純利益は20年度の383億余円から26年度の813億余円へとそれぞれ増加している。

また、上記の責任準備金の戻入により、責任準備金が15年度末の114兆8779億余円から19年度末の104兆7353億余円へ、さらに、26年度末の75兆1126億余円へと減少していることに伴って、総資産額が15年度末の121兆9119億余円から19年度末の112兆5246億余円へ、さらに、26年度末の84兆9150億余円へと減少している(表3-36参照)。

(注31)
責任準備金  保険業法により、毎決算期において、保険契約に基づく将来における債務の履行に備えるために、積み立てなければならないとされている準備金であり、保険業法施行規則(平成8年大蔵省令第5号)により、当該決算期以前に収入した保険料を基礎として、保険料及び責任準備金の算出方法書に記載された方法に従って計算し、積み立てることとなっている。積み立てられた責任準備金は有価証券等により運用されている。なお、公社時代には、日本郵政公社法等に基づいて責任準備金を積み立てることになっていた。
(注32)
契約者配当準備金  保険業法により、保険会社である株式会社が契約者配当に充てるために積み立てることとなっている準備金。なお、公社時代には、日本郵政公社法施行規則(平成15年総務省令第4号)に基づいて契約者配当準備金を積み立てることになっていた。

表3-36 経常収益等の推移

(単位:億円)  
科目 特別会計
注(1)
公社 注(2)
平成14年度 15年度 16年度 17年度 18年度 19年度
上期
経常収益 16兆8577 14兆6650 16兆6721 14兆7261 7兆3362
うち保険料等収入
14兆3176 12兆2915 11兆6665 11兆2318 9兆2450 4兆5702
うち責任準備金戻入額
1兆9639 2兆1550 5966 2兆7862 2兆7774 1兆0594
経常費用 16兆6252 14兆0317 16兆3521 14兆4319 6兆8957
うち事業費
6167 5594 5461 5635 2563
経常利益 2325 6333 3200 2941 4404
特別利益 88 298 77 109 103
特別損失 756 5358 1775 1276 3596
契約者配当準備金繰入額 1657 1273 1502 1774 911
当期純利益 3兆1110
総資産額 125兆7494 121兆9119 121兆2688 119兆9623 116兆6113 114兆9253
負債額 122兆1221 120兆4188 119兆8781 117兆1537 114兆3742 113兆4960
うち責任準備金
118兆0489 114兆8779 114兆2813 111兆4951 108兆7176 107兆6582
純資産額 3兆6272 1兆4931 1兆3906 2兆8085 2兆2370 1兆4292
 
科目 かんぽ生命 注(2) 注(3)
平成19年度
下期
20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度
経常収益 7兆6868 15兆5337 14兆5916 13兆3754 12兆5386 11兆8349 11兆2341 10兆1692
うち保険料等収入
3兆8866 7兆8811 7兆5056 7兆3423 6兆8564 6兆4817 5兆9116 5兆9567
うち責任準備金戻入額
2兆9228 5兆9341 5兆3841 4兆2523 4兆0209 3兆7418 3兆6564 2兆6328
経常費用 7兆6748 15兆3194 14兆2120 12兆9532 12兆0074 11兆3059 10兆7713 9兆6766
うち事業費
2665 5481 5492 5355 5161 5132 5139 5131
経常利益 119 2142 3796 4222 5312 5289 4627 4926
特別利益 1135 1157 251 117 24 1
特別損失 1 18 0 2 504 671 1000 993
契約者配当準備金繰入額 1069 2759 2943 3119 2719 3074 2421 2007
当期純利益 76 383 701 772 700 906 628 813
総資産額 112兆5246 106兆5779 100兆9697 96兆7867 93兆6908 90兆4635 87兆0928 84兆9150
負債額 111兆6204 105兆5052 99兆8004 95兆5790 92兆3964 88兆9967 85兆5546 82兆9392
うち責任準備金
104兆7353 98兆8012 93兆4170 89兆1647 85兆1438 81兆4019 77兆7454 75兆1126
純資産額 9042 1兆0727 1兆1693 1兆2076 1兆2944 1兆4667 1兆5381 1兆9757
注(1)
特別会計では、経常収益、経常費用及び経常利益に相当する科目が存在しない。また、責任準備金及び責任準備金戻入額の計算方法が公社及びかんぽ生命とは異なる。
注(2)
平成19年10月に民営化されたため、19年度は上期と下期に分けて記載している。
注(3)
平成23年度以降は、同年度に子会社としたかんぽシステムソリューションズ株式会社を含めた連結決算の数値である。
(ウ)資産運用の状況

特別会計の最終年度である14年度から26年度までの間のかんぽ生命の資産運用の状況をみると、前記の責任準備金の減少に伴って、図3-13のとおり、運用資産額(かんぽ生命を含む生命保険会社については単体決算の総資産を運用資産とする。以下同じ。)は、14年度末の125兆7494億余円から19年度末の112兆5246億余円へと減少し、さらに、26年度末の84兆9119億余円へと減少している。

図3-13 運用資産の内訳の推移

図3-13 運用資産の内訳の推移 画像

そして、14年度から19年度までの状況をみると、14年度末には、14兆3000億円が運用寄託金として簡保事業団を通じて信託銀行等に信託され、簡易生命保険特別会計において運用の対象とされていなかった株式等への投資が行われていた。公社化後は、直接、金銭を信託銀行等に信託して株式等への投資が行われるようになったが、その運用額は15年度末の11兆7188億余円から19年度末の1兆8615億余円へと減少した。また、このほか、社債が14年度末の23兆7666億余円から19年度末の10兆3874億余円へ、貸付金が14年度末の28兆0802億余円から19年度末の19兆9212億余円へと減少する一方で、安全・確実な運用を目的とするなどして国債が14年度末の45兆8277億余円から19年度末の68兆9599億余円へと増加した(図3-14参照)。

図3-14 運用寄託金及び金銭の信託における資金の流れ

図3-14 運用寄託金及び金銭の信託における資金の流れ 画像

そして、民営化後は、19年夏に表面化したいわゆるサブプライム・ローン問題に端を発した世界的な金融・経済環境の大幅な悪化を背景として、リスク性資産を圧縮することとしたため、15年度から18年度まで資産運用収益の3割から4割程度を占めていた金銭の信託の運用額が、前記の15年度の11兆7188億余円から21年度の1750億余円に大きく減少し、これに係る資産運用収益も15年度の6727億余円から21年度の387億余円に大きく減少していた。

また、金銭の信託に係る運用損が19年度下期に3185億余円、20年度に2967億余円、23年度に262億余円、24年度に41億余円発生していた。なお、19年度上期には金銭の信託に係る運用益が7448億余円発生していた。

そして、金利リスクの軽減を図りつつ安定的な収益獲得を目指すという方針の下、金利の低下もあって、運用資産に占める国債の割合は、最も高かった21年度末の66.9%から26年度末には56.6%へと低下傾向にある一方、国債より金利の高い地方債の割合が21年度末の5.0%から26年度末には11.2%へと増加している。

こうした資産運用の結果、前記のとおり、運用資産額が減少していることなどもあり、資産運用収益は、図3-15のとおり、14年度の2兆9637億余円から19年度の2兆5351億余円へ、さらに、26年度の1兆4607億余円へと減少している。

図3-15 資産運用収益の推移

図3-15 資産運用収益の推移 画像

かんぽ生命では、27年中期計画等において、資産運用の収益性の向上を目指して、運用資産の多様化を促進するとしている。

(エ)運用資産の構成等について他の生命保険会社等との比較

かんぽ生命の26年度末における運用資産の構成について、他の生命保険会社や、生命保険会社ではないものの長期的な観点から安全かつ効率的に年金積立金の運用を行うなどとしている年金積立金管理運用独立行政法人(Government Pension Investment Fund。以下「GPIF」という。)及びH年金運用機関と比較すると、表3-37のとおりとなっており、次の特徴がみられる。なお、かんぽ生命及び他の生命保険会社では会計基準として日本の会計基準を採用している。

① 有価証券(直接保有しているもの)については、かんぽ生命では、運用資産に占める割合は78.0%となっており、他の生命保険会社の82.5%と比べると低くなっている。また、GPIF及びH年金運用機関は、直接、有価証券を保有しておらず、金銭の信託を通して有価証券を保有しているため、単純に比較することはできないものの、金銭の信託を通して保有している有価証券を含めて比較すると、有価証券の運用資産に占める割合は、かんぽ生命では79.7%となり、当該割合が99.3%となっているGPIFと比べると低くなっており、当該割合が43.1%となっているH年金運用機関と比べると高くなっている。

② 国内債券については、かんぽ生命では、運用資産に占める割合(直接又は金銭の信託を通して保有しているもの)は75.7%となっており、他の生命保険会社の43.6%、GPIFの41.2%及びH年金運用機関の15.7%と比べると高くなっている。

③ 国内株式については、かんぽ生命は子会社の株式を直接保有しているほか、金銭の信託を通して他の国内株式を保有しているものの、運用資産に占める割合は1.2%となっており、他の生命保険会社の8.0%、GPIFの23.0%及びH年金運用機関の12.5%と比べると低くなっている。

④ 外国債券及び外国株式等については、かんぽ生命では運用資産に占める割合(直接又は金銭の信託を通して保有しているもの)は2.7%となっており、他の生命保険会社の25.2%、GPIFの35.1%及びH年金運用機関の14.8%と比べると低くなっている。

表3-37 運用資産の構成について他の生命保険会社等との比較(平成26年度末)

(単位:%)
区分 かんぽ生命 他の生命
保険会社
GPIF H年金
運用機関
有価証券 (A) 78.0 82.5
  国内債券 75.7 43.6
国内株式 0.0 8.0
外国債券 (C) 2.3 20.3
外国株式等 (D) 0.0 4.9
その他の証券 5.6
金銭の信託 1.6 0.6 100.0 43.1
  有価証券 (B) 1.6 注(1) 99.3 43.1
  国内債券 41.2 15.7
国内株式 1.2 23.0 12.5
外国債券 (E) 0.2 13.2 2.6
外国株式 (F) 0.2 21.8 12.2
その他 0.6
貸付金 11.7 9.5 1.8
財政融資資金預託金 50.6
その他 8.5 7.2 4.2
100.0 100.0 100.0 100.0
(A)+(B) 79.7 82.5 99.3 43.1
(C)+(D)+(E)+(F) 2.7 25.2 35.1 14.8
注(1)
一般社団法人生命保険協会では、これらの内訳を公表していない。
注(2)
他の生命保険会社、GPIF及びH年金運用機関については、一般社団法人生命保険協会、GPIF及びH年金運用機関のホームページの情報を基に作成

また、かんぽ生命と4保険会社とを指標を用いるなどして比較すると、表3-38及び表3-39のとおりとなっている。年度末における保険会社の健全性を示すソルベンシー・マージン比率(注33)をみると、4保険会社が25年度に772.1%から945.5%、26年度に913.2%から1041.0%となっており、いずれも200%を大きく超えているが、かんぽ生命は、25年度に1623.4%、26年度に1641.4%となっていて、4保険会社よりも更に高くなっている。これは、算定に用いる危険準備金(注34)が多額であることや運用資産に占める国債の割合が大きい一方、国内株式及び外国株式等の割合が小さいため、株価の暴落や為替相場の激変等により資産価格が大幅に下落するなどの資産運用リスクが小さいことなどによるものである。また、事業費率(注35)をみると、かんぽ生命は25年度に8.67%、26年度に8.60%となっていて、4保険会社が25年度に9.73%から14.31%、26年度に10.22%から12.64%となっているのと比べて低くなっている。

(注33)
ソルベンシー・マージン比率  保険業法で定められた、通常の予測を超えて発生するリスクに対応できる支払余力をどの程度有しているかを示す行政監督上の指標の一つ。当該比率が200%を下回ると監督当局によって業務改善命令等の早期是正措置が執られる。
(注34)
危険準備金  保険事故の発生率等が通常の予測を超える場合や責任準備金の算出基礎となる予定利率を確保できなくなる場合に備える準備金
(注35)
事業費率  保険料等収入から再保険収入を差し引いた収入保険料(公社時代は再保険収入がなかったため保険料収入)に対する保険の募集や維持管理のために使用した事業費の割合であり、業務運営の効率化の状況を測る指標。なお、生命保険会社が公表している事業費は、営業職員の人件費や募集代理店に対する手数料等の営業活動費、広告宣伝費等の営業管理費、契約の維持等に係る人件費や物件費等の一般管理費に分類される。

そして、事業費に関して、かんぽ生命と4保険会社とを比較すると、かんぽ生命は、日本郵便との間で保険募集契約を締結して窓口業務を委託していることもあり、事業費に占める営業管理費の割合は、25年度が2%、26年度が3%となっていて、4保険会社と比べて小さくなっている。一方、事業費に占める営業活動費の割合は、4保険会社とほぼ同水準で、25年度が37%、26年度が35%となっており、また、収入保険料に対する営業活動費の割合は、25年度が3.22%、26年度が3.06%となっていて4保険会社と比べて低くなっている。事業費に占める一般管理費の割合は、25年度が60%、26年度が61%となっていて、4保険会社と比べて高くなっているが、収入保険料に対する一般管理費の割合は、25年度が5.22%、26年度が5.25%となっていて、4保険会社とおおむね同水準となっている。

表3-38 指標によるかんぽ生命と4保険会社との比較

(単位:億円)
項目 年度 かんぽ生命 I保険会社 J保険会社 K保険会社 L保険会社
基礎利益
注(1)
平成25年度 4820 3998 5924 4604 3982
26年度 5154 4582 6790 5063 4108
危険準備金 25年度末 2兆5887 5310 1兆0057 6604 3013
26年度末 2兆4987 5580 1兆2502 6673 3151
ソルベンシー・マージン比率 25年度末 1623.4% 772.1% 779.0% 945.5% 888.2%
26年度末 1641.4% 913.2% 930.8% 1041.0% 944.2%
事業費率 注(2) 25年度 8.67% 14.31% 11.64% 9.73% 13.45%
  うち収入保険料に対する営業活動費の割合 3.22% 5.82% 4.56% 3.72% 4.67%
うち収入保険料に対する営業管理費の割合 0.23% 2.34% 1.69% 1.39% 2.35%
うち収入保険料に対する一般管理費の割合 5.22% 6.14% 5.37% 4.61% 6.42%
26年度 8.60% 12.20% 10.55% 10.22% 12.64%
  うち収入保険料に対する営業活動費の割合 3.06% 4.87% 4.12% 3.92% 4.27%
うち収入保険料に対する営業管理費の割合 0.28% 2.03% 1.59% 1.54% 2.25%
うち収入保険料に対する一般管理費の割合 5.25% 5.29% 4.84% 4.75% 6.12%
注(1)
基礎利益  保険料等収入や保険金等支払金・事業費等の保険関係の収支と利息及び配当金等収入を中心とした運用関係の収支からなる生命保険会社の基礎的な期間収益の状況を表す指標
注(2)
事業費率は単体決算の数値を用いている。
注(3)
各社のディスクロージャー誌の情報を基に作成

表3-39 事業費に関するかんぽ生命と4保険会社との比較

(単位:百万円)  
区分 かんぽ生命 I保険会社
平成25年度 26年度 25年度 26年度
金額 構成比 金額 構成比 金額 構成比 金額 構成比
営業活動費 190,508 37% 182,243 35% 166,961 40% 159,322 39%
営業管理費 13,847 2% 17,147 3% 67,332 16% 66,395 16%
一般管理費 308,690 60% 313,025 61% 176,221 42% 172,870 43%
513,046 100% 512,417 100% 410,515 100% 398,588 100%
 
区分 J保険会社 K保険会社 L保険会社
平成25年度 26年度 25年度 26年度 25年度 26年度
金額 構成比 金額 構成比 金額 構成比 金額 構成比 金額 構成比 金額 構成比
営業活動費 220,462 39% 220,033 39% 134,699 38% 133,730 38% 116,838 34% 109,985 33%
営業管理費 81,832 14% 85,035 15% 50,367 14% 52,563 15% 58,883 17% 57,958 17%
一般管理費 259,564 46% 258,303 45% 166,979 47% 162,132 46% 160,664 47% 157,712 48%
561,860 100% 563,371 100% 352,046 100% 348,426 100% 336,386 100% 325,656 100%
注(1)
各社の単体決算の数値を記載している。
注(2)
各社のディスクロージャー誌の情報を基に作成
(オ)民営化後の新規業務等の申請・認可等の状況

かんぽ生命は、民営化後、表3-40のとおり、顧客のニーズに対応した商品を開発するなどして、新規業務等の申請を行い、認可を受けるなどしている。26年1月に認可され、同年4月に販売を開始した改定後の学資保険は、被保険者の死亡保障が保険期間を通じて一定だったそれまでの学資保険と異なり、当該保障を払込保険料相当額に抑制することにより、保険料を低く抑えた商品であり、新規の契約件数が改定前の25年度の168,086件から26年度の666,866件へと4倍近くに増加している。

表3-40 かんぽ生命の新規業務等の認可等の状況

新規業務等 申請・認可時期等 開始時期 目的等
新規商品・サービスの提供
①法人向け商品の受託販売
平成20.4.18
認可
20.6.1 生命保険会社の法人向け定期保険を郵便局やかんぽ生命保険の支店にて受託販売
②入院特約の見直し
20.7.2 入院特約について、手術保険金の支払対象を公的医療保険制度に連動させたほか、日帰り入院についても入院保険金の支払対象とするなどの見直しを実施
③学資保険の改定
26.1.24
認可
26.4.2 被保険者の死亡保障を抑制することにより、保険料を低廉化させた商品に改定
④がん保険の受託販売等
26.6.27
認可
26.7.22 アメリカンファミリー生命保険会社のがん保険をかんぽ生命の支店にて受託販売(法人向け)
⑤短期払養老保険
27.4.15
認可
27.10.2 普通養老保険について、保険料払込期間を保険期間より短く設定することにより、貯蓄性を向上させた商品に改定
⑥経営者向け定期保険の受託販売
27.9.30
認可
27.11.30 受託元会社を限定していた定期保険の取扱範囲を拡大して利便性の向上及び収益源の多様化を図る。
⑦総合福祉団体定期保険の受託販売
総合福祉団体定期保険の受託販売を開始することで利便性の向上及び収益源の多様化を図る。
運用手段の多様化
①有価証券の取得
(信託受益権等)
19.12.19
認可
20.7.9 有価証券の運用対象を拡大することによる収益機会の拡大
②金銭の貸付け
(シンジケートローン(参加型))
20.8.6 金銭の貸付の運用対象を拡大することによる収益機会の拡大
③デリバティブ取引
(金利スワップ取引等)
20.12.22 変動金利の金利スワップによる固定化のニーズに柔軟に対応
④金銭債権の取得
(貸出債権等)
21.3.25 金銭債権の取得等の運用対象を拡大することによる収益機会の拡大
新規商品 第三分野商品の販売 21.3.19
政令改正要望を提出
がん保険の販売により利便性の向上及び収益源の多様化を図る。
限度額 加入後一定期間経過した場合の被保険者一人当たりの限度額の引上げ 20.4.1
政令改正要望を提出
28.4.1 被保険者一人当たり最高1300万円とされている限度額を最高2000万円に引き上げることによる顧客の利便性の向上
(注)
平成27年12月末までに申請又は要望の提出を行っているものを記載している。
(カ)効率化、収益向上等に向けた取組の状況

公社の第1期及び第2期の中期経営目標における目標値及び実績値は、表3-41のとおりとなっており、目標値として用いられている失効解約率(注36)は、顧客満足度の度合いを測る指標として、事業費率は、保険料収入の減少が見込まれる中で業務運営の効率化の状況を測る指標として、危険準備金・価格変動準備金(注37)の積増額は、経営環境の変化によって生ずるリスクに備えるための取組の状況を測る指標として、それぞれ用いられている。

失効解約率については、第1期の目標値が、保険「3.6%以下」、年金保険「2.3%以下」となっていたのに対して、実績値は、保険が3.2%、年金保険が1.5%となっており、また、第2期の目標値が、保険「1.80%以下」、年金保険「1.15%以下」となっていたのに対して、実績値は、保険が1.64%、年金保険が0.82%となっていた。

また、事業費率については、第1期の目標値が「5.1%以下」となっていたのに対して、実績値は5.14%となっていた。一方、第2期の目標値は「7.0%以下」となっていたのに対して実績値は5.61%となっていた。

そして、危険準備金・価格変動準備金の積増額については、第1期の目標値が「3000億円以上 」となっていたのに対して、実績値は2兆5128億余円、第2期の目標値が「1400億円以上」となっていたのに対して、実績値は1673億余円となっていた。

(注36)
失効解約率  年度中の経過契約に係る保険金額又は年金額(年度初めに保有していた契約、年度末に保有していた契約並びに年度内に失効及び解約となった契約に係る保険金額又は年金額の和に0.5を乗じて得た額)に対する年度内に失効及び解約となった契約に係る保険金額又は年金額の割合
(注37)
価格変動準備金  運用資産の価格変動リスクに備える準備金

表3-41 公社の簡易保険業務における中期経営目標の目標値及び実績値

項目 第1期目標値 実績値
平成15年度 16年度 17年度 18年度 4年間
合計又は平均
失効解約率
注(1)
保険:3.6%以下 3.4% 3.1% 3.1% 3.1% 3.2%
年金保険:2.3%以下 1.7% 1.5% 1.5% 1.5% 1.5%
事業費率 注(2) 5.1%以下 5.02% 4.80% 4.86% 6.10% 5.14%
危険準備金・価格変動準備金の積増額 注(1) 3000億円以上 41億円 5517億円 9318億円 1兆0250億円 2兆5128億円
 
項目 第2期目標値
注(3)
実績値  
19年度上期
注(3)
失効解約率
注(1)
保険:1.80%以下 1.64%
年金保険:1.15%以下 0.82%
事業費率 注(2) 7.0%以下 5.61%
危険準備金・価格変動準備金の積増額 注(1) 1400億円以上 1673億円
注(1)
失効解約率の目標値は各目標期間の平均値に係るものである。また、危険準備金・価格変動準備金の積増額の目標値は各目標期間の当該積増額の累積額である。
注(2)
事業費率  事業費÷保険料収入×100。目標値は各目標期間の平均値に係るものである。
注(3)
平成19年度に行われた整理資源債務の計上等の影響を除いた数値である。

そして、民営化後は、公社時代のような目標値が定められていないが、民営化後のこれらに関連する実績をみると、表3-42のとおりとなっている。民営化後、個人保険及び個人年金保険の失効解約率は公表されていないため、失効解約率とは計算方法が異なり、公社時代と比較することはできないものの、民営化後の契約に係る解約失効率(注38)により顧客満足度の度合いを測ることとし、個人保険及び個人年金保険の解約失効率をみると、それぞれ20年度には11.2%、3.5%、26年度には5.1%、1.5%となっており、22年度以降、個人保険は5%台、個人年金保険は1%台を維持している。

また、事業費率については、事業費が小幅な減少にとどまっているのに対して、収入保険料の減少が大きいため、20年度の6.95%から26年度の8.60%へと上昇している。そして、危険準備金等については、保険料等収入の減少等に伴って、20年度末には3024億余円減少していたが、26年度末には78億余円増加している。

(注38)
解約失効率  年度当初に保有していた契約に係る保険金額又は年金額に対する年度内に解約及び失効となった契約に係る保険金額又は年金額の割合

表3-42 民営化後の解約失効率等の推移

項目 平成19年度
下期
20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度
解約失効率 個人保険 注(1) 11.2% 6.7% 5.7% 5.4% 5.2% 5.2% 5.1%
個人年金保険 3.5% 2.2% 1.9% 1.7% 1.5% 1.5% 1.5%
事業費率 6.85% 6.95% 7.31% 7.29% 7.52% 7.91% 8.67% 8.6%
  うち収入保険料に対する営業活動費の割合 2.65% 2.68% 2.65% 2.74% 2.99% 3.03% 3.22% 3.06%
うち収入保険料に対する営業管理費の割合 0.12% 0.12% 0.11% 0.14% 0.19% 0.21% 0.23% 0.28%
うち収入保険料に対する一般管理費の割合 4.08% 4.14% 4.54% 4.40% 4.33% 4.66% 5.22% 5.25%
危険準備金・価格変動準備金の積増額 ▲3535億円 ▲3024億円 392億円 ▲764億円 ▲537億円 ▲355億円 ▲34億円 78億円
注(1)
解約失効率は年度当初に保有していた契約を分母として算定されており、年度当初に保有契約がなかった平成19年度下期においては算定されていない。
注(2)
事業費率 事業費÷収入保険料×100

また、公社時代及び民営化後は、顧客の満足度を高めるサービスの充実、業務運営の効率化及び経営管理の高度化を図るために、表3-43のとおり、各種の取組が行われている。

表3-43 顧客の満足度を高めるサービスの充実等を図るための取組

取組 開始時期 目的等
公社時代
①信託会社への信託等、資産運用方法の拡大
平成15年4月
など
資産運用の方法を拡大することによる収益機会の拡大
②簡易保険事務センター(現サービスセンター)の再編
17年4月 事業運営の効率化を図るために、7か所から5か所に再編
③民間金融機関の預金口座を利用した保険料払込及び保険金振込の実施並びにキャッシュレス化の推進
18年4月 郵便局のほか、他の金融機関の口座を利用した払込みや振込みが可能となることによる顧客の利便性の向上等
民営化後
④法人向け商品の受託販売開始
20年6月 保険商品のラインナップの充実、手数料等の収益機会の拡大
⑤新契約システムの導入開始
22年10月 保険契約の効率的・効果的な営業活動、正確・迅速な業務処理の実現
⑥全国に13のエリア本部を設置
25年4月 日本郵便との連携強化による営業力の強化
⑦タブレット型携帯端末の導入開始
25年10月 顧客への充実したコンサルティング・サービスの提供
⑧支払業務システムの導入
26年4月 保険契約の査定品質の向上、支払事務処理の迅速化・効率化

そして、前記のとおり、日本郵政は、26年2月に、民営化後初めての中期経営計画となる26年中期計画を策定し、また、27年4月にこれを更新した27年中期計画を策定した。そして、27年中期計画においては、27年度から29年度までの目標として、①28年度に新契約の月額保険料(注39)を500億円台に乗せて更に拡大し、29年度以降に保有する保険契約件数の底打ち、反転、②29年度に当期純利益を800億円程度(市場環境が大きく変化しないことが前提)、③29年度の配当性向の目安を30%から50%程度とすることを掲げている。当該計画に掲げられている新契約の月額保険料等の目標について、26年度の実績をみると、①新契約の月額保険料は465億余円、②当期純利益は813億余円、③これに係る配当性向は30%となっている。また、経営基盤の確立のために、27年度から29年度までに総額約2000億円の投資を計画しており、主な内訳は、基幹系システムの更改に600億円、引受けから支払まで簡易・迅速・正確に行う態勢整備に500億円、支店・サービスセンターの改修工事等に460億円等となっている。

(注39)
月額保険料  個人保険については被保険者から毎月支払を受ける月ごとの保険料。個人年金保険については、被保険者から毎月支払を受ける月ごとの保険料又は1か月を超える期間に係る保険料の支払を一時払いで受ける場合には当該保険料を当該期間(月数)で除した金額である。

エ ユニバーサルサービスの提供責務等

(ア)ユニバーサルサービスの提供責務

郵政事業に係るユニバーサルサービスの提供の確保については、前記のとおり、民営化法改正法により明文の規定が置かれるようになり、郵政民営化法第7条の2、日本郵政株式会社法第5条及び日本郵便株式会社法第5条において、日本郵政及び日本郵便のユニバーサルサービスの提供責務が規定されている。

(イ)総務大臣による監督等

総務大臣は、日本郵政株式会社法に基づき日本郵政を、日本郵便株式会社法等に基づき日本郵便を、それぞれ監督し、業務に関して監督上必要な命令をすることができることとなっている。そして、これらの法律によれば、日本郵政及び日本郵便は毎年度の事業計画を定めて、総務大臣の認可を受けることとされており、認可に当たり、総務大臣から様々な要請がある。例えば、27年度の事業計画の認可に当たっては、ユニバーサルサービスに係るものとして、日本郵政に対しては「郵便貯金銀行及び郵便保険会社の株式処分について、ユニバーサルサービス提供責務の履行への影響等を勘案しつつ、準備を着実に進めること」、日本郵便に対しては「郵便局ネットワークの活用その他の郵政事業の実施に当たっては、地方創生に資する観点から、利用者ニーズを的確に把握しつつ、郵便局のみまもりサービス、ふるさと納税手続の利便性向上のための施策など、公益性・地域性を十分に発揮するための取組を更に積極的に進めるとともに、ユニバーサルサービスを確実に提供すること」という要請があった。

そして、ユニバーサルサービスのうち郵便の役務については、郵便法等によれば、日本郵便は、当該役務に関する提供条件を定めた郵便約款及び郵便の業務の管理に関する規程を定めて、総務大臣の認可を受けなければならないとされている。また、日本郵便株式会社法によれば、日本郵便は、郵便局の所在地等を変更しようとするときは、総務大臣に届け出なければならないとされている。

(ウ)ユニバーサルサービスの提供範囲、水準及び状況

ユニバーサルサービスの提供範囲は、表3-44のとおりとなっており、郵便・物流事業のうち、郵便事業では内国郵便、国際郵便及び郵便物の特殊取扱の一部が含まれているが、物流事業は含まれていない。また、金融窓口事業では、流動性預金及び定期性預金の受入れ、為替取引、終身保険、養老保険等が含まれているが、国債、投資信託等の窓口販売や外貨両替、学資保険等は含まれていない。

また、ユニバーサルサービスの提供水準について、次のことなどが規定されている。

  • ① 郵便法施行規則(平成15年総務省令第5号)により、郵便差出箱の設置について日本郵政公社法施行の際にあまねく全国に設置されていた郵便差出箱数(約18万本)を維持すること
  • ② 郵便法により、郵便物について差し出された日から原則として3日以内に送達すること
  • ③ 日本郵便株式会社法施行規則により、前記のとおり、いずれの市町村(特別区を含む。)においても一以上の郵便局を設置すること、過疎地においては、19年10月から24年9月までは19年10月時点の郵便局ネットワークの水準を、民営化法改正法が施行された24年10月からは同月時点の当該水準を、それぞれ維持することを旨とすること

表3-44 ユニバーサルサービスの提供範囲等

内容 範囲 水準
郵便の役務 内国郵便
国際郵便
郵便物の特殊取扱の一部
(書留、引受時刻証明、配達証明、内容証明、特別送達)
郵便差出箱の設置:日本郵政公社法施行の際の本数(約18万本)の維持等
郵便局の設置:いずれの市町村(特別区を含む。)においても、一以上の郵便局を設置すること。また、過疎地においては、19年10月から24年9月までは19年10月時点の郵便局ネットワークの水準を、24年10月からは同月時点の当該水準を、維持することを旨とすること
料金:全国均一料金とすること、事前に届け出ること(一部認可制あり)など
送達:差し出されてから原則3日以内(国際郵便物を除く。)
配達:週6日 原則1日1回の配達等
簡易な貯蓄、送金及び債権債務の決済の役務 流動性預金の受入れ
定期性預金の受入れ
為替取引
簡易に利用できる生命保険の役務 終身保険(普通終身保険・特別終身保険)
養老保険(普通養老保険・特別養老保険)
保険金等の支払の請求の受理に関する事務の代行(満期保険金・生存保険金)

ユニバーサルサービスの提供状況をみると、次のとおりとなっており、必要なユニバーサルサービスの提供水準はおおむね維持されていると考えられる。

① 郵便差出箱数は、表3-45のとおり、民営化後、18万本以上で推移しており、19年度末は192,157本、26年度末は181,521本となっている。

② 郵便物の送達日数達成率は、表3-20のとおり、民営化後、公社時代の目標値であった97%以上で推移している。

③ 過疎地における営業中の郵便局数は、表3-45のとおり、民営化された19年度末は7,346局、26年度末は7,692局となっている。また、これらの郵便局のうち、郵便窓口業務は全ての郵便局において実施されているほか、銀行窓口業務を実施している郵便局は、19年度末は7,239局、26年度末は7,609局であり、保険窓口業務を実施している郵便局は、19年度末は5,790局、26年度末は5,867局となっている。

表3-45 郵便差出箱数及び過疎地における営業中の郵便局数の推移

(単位:本、局)
設置数 平成
19年度末
20年度末 21年度末 22年度末 23年度末 24年度末 25年度末 26年度末
郵便差出箱数 192,157 192,213 188,326 186,753 185,409 181,895 182,839 181,521
郵便局数 7,346 7,376 7,407 7,348 7,379 7,690 7,698 7,692
  うち郵便窓口業務実施局 7,346 7,376 7,407 7,348 7,379 7,690 7,698 7,692
うち銀行窓口業務実施局 7,239 7,259 7,296 7,250 7,281 7,591 7,607 7,609
うち保険窓口業務実施局 5,790 5,786 5,704 5,623 5,649 5,879 5,877 5,867

一方、前記のとおり、26年度に、郵便・物流事業では103億余円の営業損失を計上しており、また、金融窓口事業では209億余円の営業利益を計上しているものの、主な収益源である金融2社からの銀行代理業務手数料及び生命保険代理業務手数料は減少傾向にある。

したがって、ユニバーサルサービスの提供水準を将来にわたって維持するなどのためには、日本郵政及び日本郵便の更なる経営努力が必要となる。

(エ)総務省情報通信審議会によるユニバーサルサービスコストの試算について

総務省情報通信審議会は、25年10月に、総務大臣から「郵政事業のユニバーサルサービス確保と郵便・信書便市場の活性化方策の在り方」について諮問を受け、27年9月にこれに対する答申を行っている。そして、同答申において、各集配局が配達等を担当する区域である集配局エリア単位で損益を分析しており、「仮にユニバーサルサービスの提供責務が撤廃され、日本郵便が赤字の集配局エリアのサービスを停止することが可能となった場合に、節約できたであろう費用」(以下「ユニバーサルサービスコスト」という。)について試算を行っている。試算における計算過程や集配局エリア単位での損益については公表されていないものの、試算によれば、25年度のユニバーサルサービスコストは、郵便の業務が1873億円、銀行窓口業務が575億円、保険窓口業務が183億円となっていて、それぞれ多額に上っている。

また、同答申において、郵便の業務については、約8割の集配局エリアが赤字となっていて、その赤字を約2割の黒字の集配局エリアの利益によって賄っており、銀行窓口業務及び保険窓口業務については、約4割の集配局エリアが赤字となっていて、その赤字を約6割の黒字の集配局エリアの利益によって賄っているという試算結果が報告されている。その要因として、郵便の業務については、大都市部の集配局エリアでは、郵便物の引受物数が多く、また、配達についても、住宅が密集していて効率的に行うことができるのに対して、地方の集配局エリアでは、郵便物の引受物数が少なく、また、配達についても、各配達先が遠いため配達コストが高くなることが挙げられている。銀行窓口業務及び保険窓口業務については、手数料の額が窓口での業務取扱量に応じて決まるため、業務取扱量の多い都市部の集配局エリアの方が黒字になる傾向があることが挙げられている。

(オ)ユニバーサルサービスの提供範囲等についての日本と諸外国との比較
a サービス水準等の状況

総務省情報通信審議会郵政政策部会の資料等を基に、ユニバーサルサービスの提供範囲等について、日本と米国、英国、ドイツ、フランス(以下、これらを合わせて「4か国」という。)とを比較すると、表3-46のとおりとなっており、ユニバーサルサービスの提供範囲は、日本では郵便事業のほか、貯蓄や生命保険等の金融サービスが含まれているが、4か国では郵便事業のみとなっている。また、ユニバーサルサービスの提供水準は、郵便物の配達日数については、いずれの国においても週6日となっている。郵便局数は、1万km2当たりでみると日本が634局と最も多く、また、1局当たりの人口でみると、米国が9,027人と最も多く、日本は5,291人で3番目となっている。郵便局の配置については、いずれの国も規制を設け、郵便局までの距離や人口に対する設置局数等の具体的な基準を設定している。

表3-46 ユニバーサルサービスの提供範囲等についての日本と4か国との比較

項目 日本 米国 英国 ドイツ フランス
人口・面積 人口:約1.27億人
面積:約37.8万km2
人口:約3.25億人
面積:約962.9万km2
人口:約6500万人
面積:約24.3万km2
人口:約8300万人
面積:約35.7万km2
人口:約6300万人
面積:約55.2万km2
提供主体 日本郵便 米国郵便庁
(USPS)
ロイヤルメール・グループ ドイツポスト ラ・ポスト
経営形態 株式会社 国営独立機関 株式会社 株式会社 政府全株保有の株式会社
郵便ポスト数の規制 規制あり 規制なし 規制あり 規制あり 規制なし
ユニバーサルサービスの範囲 郵便、簡易な貯蓄等、簡易な生命保険 郵便 郵便 郵便 郵便
郵便のユニバーサルサービスの範囲
  • 4kg以下の郵便物
  • 書留、内容証明等
  • USPSが提供しているサービス
  • 2kg以下の書状
  • 20kg以下の小包
  • 書留・保険付
  • 2kg以下の郵便書状(書留・保険付・代金引換を含む。)
  • 20kg以下の宛名付小包
  • 2kg以下の書状
  • 2kg以下の新聞等
  • 20kg以下の小包
  • 書留・保険付
郵便の配達日数のサービス水準に関する規制 規制あり(週6日) 規制あり(週6日) 規制あり(週6日) 規制あり(週6日) 規制あり(週6日)
郵便局数 約24,000局
(簡易局含む。)
約36,000局
(委託局等含む。)
約12,000局
(委託局等含む。)
約19,600局
(委託局)
約17,000局
(委託局等含む。)
1万km2当たり郵便局の設置数 634 37 493 549 307
1局当たり人口(人) 5,291 9,027 5,416 4,234 3,705
郵便局設置基準の内容
  • 必要とされる郵便局数の定めはない。
  • いずれの市町村にも一以上の郵便局を設置するなど、あまねく全国において利用されることを旨として設置すること
  • 必要とされる郵便局数の定めはない。
  • 利用者が容易にアクセスできる場所に郵便施設を設置することなど
  • 必要とされる郵便局数の定めはない。
  • 郵便を受け取ることができるアクセス・ポイントから5km以内まで95%を下回らない利用者が居住することなど
  • 必要とされる郵便局数1万2,000の固定郵便施設
  • 2,000戸以上の市町村には少なくとも1局の常設局が置かれることなど
  • 必要とされる郵便局数の定めはない。
  • 郵便局は、国民の最低99%、さらにそれぞれの地域の人口の95%が郵便局まで10km未満、かつ1万人以上の全てのコミューンでは少なくとも2万人につき1局設置することなど
(注)
「総務省情報通信審議会郵政政策部会 第19回配付資料」(平成27年9月)等を基に作成
b 郵便事業への参入規制等の状況

日本及び4か国のうち米国以外の3か国では、民間事業者による郵便事業への参入が認められている。日本では、15年4月の信書便法の施行により、国が独占して行ってきた信書の送達の事業について、信書便事業として民間事業者の全面的な参入が可能となったものの、これまでのところ、民間事業者の参入は形状が特殊なものや重量が4kgを超えるなどの特定のサービスのみを提供する特定信書便事業のみとなっており、信書の大半を占める1通当たり4kg以下等の信書の送達を全国で行う事業は、事実上、日本郵便の独占となっている。

オ その他の事業

(ア)病院事業
a 事業の経緯

逓信病院は、昭和13年に逓信省職員とその家族のための職域病院として設置され、24年6月に逓信省が郵政省と電気通信省に分離した際、郵政省に引き継がれた。そして、逓信病院は、会計検査院が昭和53年度決算検査報告において、「逓信病院の運営について」を掲記したことなどを受けて、55年以降、郵政省の職員及び家族だけでなく、地域住民に対して医療サービスを提供している。その後、中央省庁の再編、公社化、民営化を経て、平成19年10月からは日本郵政により全国で14逓信病院が運営されていたが、27年4月には仙台逓信病院等3逓信病院(注40)が他の医療法人に譲渡された。

(注40)
3逓信病院  仙台、新潟、神戸各逓信病院
b 営業収益等の推移

病院事業の19年度以降の患者数、営業収益等の推移は、図3-16のとおり、20年度には外来患者数が延べ約105万人、入院患者数が延べ約37万人であったが、26年度には外来患者数が延べ約82万人、入院患者数が延べ約30万人になるなど、患者数の減少傾向が続いている。そして、営業収益は、20年度の231億余円から26年度の241億余円へと増加しているものの、営業費用が、20年度の282億余円から26年度の302億余円へと増加しているため、営業損失が、20年度の50億余円から26年度には民営化後最も多額となる60億余円へと増加していて、民営化以降、毎年度、営業損失を計上しており、厳しい経営状況となっている。

このような状況の背景としては、診療報酬及び薬価基準のマイナス改定のほか、逓信病院は中小規模の病院が多く専門性が低いこと、施設・設備が老朽化していることなどが挙げられる。

図3-16 病院事業の営業収益等の推移

図3-16 病院事業の営業収益等の推移 画像

会計検査院は前記の昭和53年度決算検査報告において、逓信病院の運営について、経常収支率(注41)及び病床利用率(注42)が低いなどとし、利用を促進するには医療の需要に応じた医師等の確保や医療体制の整備等の検討を要し、利用者の範囲を職員及びその家族以外の一般患者にも拡大するには地域の医療関係団体との調整を要するなどの問題があること、また、経常収支率や病床利用率が極端に低い逓信病院についてその統合を図るには職員及びその家族に対する福利厚生施策上の配慮との関連など種々困難な問題があることから、上記のような諸問題の打開に努めないまま推移すると、国の多額の財政負担が依然として継続することとなる旨を記述した。

(注41)
経常収支率  経常収入額を経常支出額で除して得た率
(注42)
病床利用率  実稼働病床数に対する1日平均入院患者数の割合

そして、経常収支率の水準によって区分した各逓信病院の経常収支率、病床利用率並びに入院患者数及び外来患者数のそれぞれに占める一般患者数の割合の平均の推移は、表3-47のとおりとなっている。

経常収支率をみると、20年度以降、いずれの逓信病院も50%以上、全体の平均については各年度とも80%前後で推移していて、26年度には78.7%となっているなど、昭和53年度の30.3%と比べて改善がみられる。

一方、病床利用率の全体の平均をみると、53年度の59.4%と比べて、平成20年度は58.8%、26年度は57.8%となっており、ほぼ横ばいの状況となっている。また、病床利用率が高い病院は、経常収支率も高くなる傾向がみられる。

さらに、14逓信病院における入院患者数及び外来患者数のそれぞれに占める一般患者数の割合の平均は、20年度以降、90%以上で推移しており、26年度には入院患者数に占める一般患者数の割合が97.8%、外来患者数に占める一般患者数の割合が93.7%となっている。

表3-47 経常収支率の水準によって区分した逓信病院の経常収支率、病床利用率及び一般患者数の割合の平均

(単位:箇所、%)
年度
経常収支率
昭和
53年度
平成
20年度
21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度
全体 病院数 16 14 14 14 14 14 14 14
経常収支率 30.3 80.4 78.7 80.5 82.6 82.9 80.3 78.7
病床利用率 59.4 58.8 54.1 56.4 57.4 60.1 58.9 57.8
一般患者数の割合 入院 96.2 96.5 97.0 97.4 97.5 97.5 97.8
外来 91.8 91.9 92.2 92.2 93.1 93.3 93.7
内訳 90%以上 病院数 0 1 1 2 2 2 2 1
経常収支率 96.1 95.8 91.1 91.7 93.0 93.2 94.0
病床利用率 75.9 71.6 75.9 72.8 74.9 69.9 70.7
一般患者数の割合 入院 98.1 97.4 95.9 96.3 96.4 98.6 98.9
外来 95.9 95.8 88.2 88.6 90.5 95.3 95.6
80%以上
90%未満
病院数 0 4 3 2 4 3 2 3
経常収支率 85.6 83.8 83.6 86.5 85.7 85.4 86.1
病床利用率 68.1 62.5 56.5 59.1 57.9 66.5 68.5
一般患者数の割合 入院 94.7 95.9 98.2 98.8 98.6 96.4 96.9
外来 89.2 88.7 94.4 94.1 94.1 90.5 91.4
70%以上
80%未満
病院数 0 6 6 6 4 6 6 4
経常収支率 73.9 74.9 74.9 73.2 74.6 76.2 76.0
病床利用率 51.8 51.9 50.6 51.0 53.6 51.1 49.5
一般患者数の割合 入院 98.0 97.5 98.3 97.7 98.3 98.6 99.2
外来 94.1 94.3 94.7 93.9 95.1 95.1 95.8
60%以上
70%未満
病院数 0 3 3 3 4 2 3 4
経常収支率 63.8 65.9 61.8 65.4 66.4 69.0 65.1
病床利用率 38.4 38.3 39.8 34.1 42.4 46.4 48.3
一般患者数の割合 入院 98.2 97.0 96.7 97.6 97.1 97.8 98.6
外来 93.4 94.5 93.8 94.6 94.5 94.9 94.6
50%以上
60%未満
病院数 0 0 1 1 0 1 1 2
経常収支率 57.7 57.4 55.3 59.0 55.3
病床利用率 20.5 19.1 30.2 48.0 30.1
一般患者数の割合 入院 96.0 97.2 99.2 99.2 98.4
外来 89.9 93.7 92.6 92.7 94.2
50%未満 病院数 16 0 0 0 0 0 0 0
経常収支率 30.3
病床利用率 59.4
一般患者数の割合 入院
外来
(注)
昭和53年度の16逓信病院のうち、明石逓信病院は62年2月に神戸逓信病院に、旭川逓信病院は平成2年2月に現在の札幌逓信病院に、それぞれ整理統合された。
c 収益向上等に向けた取組

病院事業における収益向上等に向けた取組として、①質の高い医療・看護の提供、②高額医療機器の稼働率向上、③ニーズの高い専門診療等の整備、地域連携・医療福祉相談活動強化等の診療内容等の充実、④利用が少なく非効率となっている診療科の休止の検討や委託契約の仕様の見直し、物品の計画的調達、医薬品等の在庫管理の徹底等の取組が行われている。特に、③については、地域連携により紹介を受けた初診紹介患者数が、地域連携が強化された22年度から26年度までの間に計12万人を超えるなどの成果を上げている。また、27年4月に譲渡された3逓信病院以外の逓信病院についても、引き続き、譲渡等を含む見直しが行われている。

前記のとおり、経常収支率は、昭和53年度と比べて改善がみられるものの、民営化後、患者数の減少傾向が続いていて、営業損失の計上が継続しており、収益向上等に向けた取組を一層進めることが求められる。

(イ)宿泊事業
a 事業の経緯

かんぽの宿等は、簡易生命保険法(昭和24年法律第68号)に基づき、簡易生命保険の加入者の福祉を増進するために30年10月から設置された施設であり、37年4月以降は、同月に設立された簡保事業団が国からかんぽの宿等を承継して、その設置及び運営の業務等を実施していた。

また、前記のとおり、メルパルクは、郵便貯金の普及のために、その周知宣伝に必要な施設として、45年11月から設置された。

その後、公社は、平成15年4月にかんぽの宿等105施設を簡保事業団から、メルパルク23施設を国から、それぞれ承継し、これらのうちかんぽの宿等34施設及びメルパルク12施設を譲渡又は廃止した。そして、19年10月に、日本郵政が、かんぽの宿等71施設及びメルパルク11施設を公社から承継して宿泊事業を行っている。

そして、会計検査院は、かんぽの宿等の譲渡について、参議院からの検査要請に基づいて22年3月に報告した「簡易生命保険の加入者福祉施設等の譲渡等に関する会計検査の結果について」において、日本郵政が、公社から承継したかんぽの宿等について、20年度内の譲渡完了に向けて契約手続を進め、20年12月に、オリックス不動産株式会社との間で契約を締結したが、21年1月に、総務大臣から同契約に関して契約相手方の選定等についての疑義が表明されたことから、同年2月に、同契約を解約したことについて記述した。

さらに、日本郵政株式会社法により、承継したかんぽの宿等及びメルパルクについては、24年9月30日までに、全て譲渡又は廃止することとなっていたが、21年12月に株式処分停止法が施行され、日本郵政は、当該規定にかかわらず、これらの施設の譲渡又は廃止をしてはならないものとされた。このため、24年5月に株式処分停止法が廃止されるまで、日本郵政は、これらの施設の譲渡又は廃止を行うことができなかった。

その後、26年度に、かんぽの宿等7施設(注43)の営業を終了し、廃止しており、26年度末現在では、かんぽの宿等64施設及びメルパルク11施設を運営するなどしている(表3-48参照)。

また、当該7施設のうち、かんぽの郷白山尾口を白山市に、かんぽの郷宇佐を宇佐市にそれぞれ随意契約により譲渡したほか、その他の5施設については、公告の上、一般競争契約等(注44)により譲渡した。

(注43)
かんぽの宿等7施設  かんぽの宿十勝川、かんぽの宿横手、かんぽの宿草津、かんぽの宿修善寺、かんぽの宿山代、かんぽの郷白山尾口、かんぽの郷宇佐
(注44)
かんぽの宿草津は一般競争契約により、他の4施設は一般競争に付しても応札者がいなかったため、公告を行い、先着順で譲渡先を決定した。

表3-48 宿泊事業の経緯

年月 沿革
昭和30年10月 熱海に初の簡易保険・郵便年金加入者老人福祉施設(現かんぽの宿熱海)を設置
37年4月 簡保事業団設立
45年11月 大阪に初の郵便貯金会館(現メルパルク大阪)を設置
平成15年4月
公社が簡保事業団からかんぽの宿等105施設を、国からメルパルク23施設を承継
この間に、公社はかんぽの宿等34施設及びメルパルク12施設を譲渡又は廃止
19年10月 日本郵政が公社からかんぽの宿等71施設及びメルパルク11施設を承継(24年9月30日までに全て廃止することとされていた。)
20年12月 日本郵政がオリックス不動産株式会社との間でかんぽの宿等の譲渡契約を締結
21年1月 総務大臣から、かんぽの宿等の譲渡契約に関して、契約相手方の選定等についての疑義が表明される。
2月 日本郵政がかんぽの宿等の譲渡契約を解約
12月 株式処分停止法が施行。かんぽの宿等及びメルパルクの譲渡又は廃止が禁止される。
24年5月 株式処分停止法が廃止
26年8月 かんぽの宿十勝川、かんぽの宿横手、かんぽの宿草津、かんぽの宿山代、かんぽの宿修善寺の営業を終了
11月 かんぽの郷白山尾口の営業を終了
27年3月 かんぽの郷宇佐の営業を終了
b 営業収益等の推移

かんぽの宿等については、これまで、経営改善のための取組が行われており、表3-49のとおり、客室稼働率は、民営化後最も低かった23年度の63.5%から26年度の67.6%へと向上しており、また、宿泊単価は、民営化後最も低かった23年度の10,643円から26年度の11,193円へと上昇していて、いずれも23年度以降、改善傾向にある。また、メルパルクについては、民営化後、定期建物賃貸借契約を締結して賃貸しており、毎年度、おおむね30億円程度の賃貸料に係る営業収益を計上している。

しかし、宿泊事業の19年度以降の営業収益等の推移をみると、20年度に52億余円の営業損失を計上した後、営業費用については、同年度の428億余円から26年度の332億余円へと減少しているものの、営業収益については、宿泊利用人数が19年度の約209万人から23年度の約180万人へ、さらに、26年度の約169万人へと減少傾向が続いていることなどにより、20年度の376億余円から26年度の303億余円へと減少している。このため、26年度においても29億余円の営業損失を計上するなど、毎年度営業損失を計上していて、厳しい経営状況となっている。

表3-49 宿泊事業の営業収益等の推移

(単位:百万円、施設)
項目 平成
19年度
20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度
営業収益 18,938 37,668 35,238 34,115 31,731 32,278 31,874 30,365
営業費用 19,357 42,871 38,447 37,362 34,725 33,693 33,725 33,299
営業損益 ▲419 ▲5,202 ▲3,208 ▲3,246 ▲2,993 ▲1,414 ▲1,851 ▲2,934
かんぽの宿等
  施設数 71 71 71 71 71 71 71 64
  宿泊利用人数 209万人 205万人 191万人 190万人 180万人 180万人 179万人 169万人
  客室稼働率 70.7% 70.5% 65.9% 65.3% 63.5% 64.4% 65.1% 67.6%
  宿泊単価 10,921円 11,035円 11,225円 10,878円 10,643円 10,917円 11,064円 11,193円
メルパルクの賃貸料 1,520 3,043 3,084 2,973 3,121 3,121 3,121
注(1)
平成19年度の営業収益、営業費用及び営業損益は民営化後の下期分のみを記載している。
注(2)
かんぽの宿等の施設数は各年度末時点の数である。

このような状況の背景としては、20年9月のいわゆるリーマン・ショックに端を発した景気低迷の影響等により全国的に旅行需要の低迷が続いたこと、主要顧客の高齢化が進んでいること、26年度については、前記のとおり、かんぽの宿等7施設の営業を終了したことなどが挙げられる。

会計検査院は、衆議院からの検査要請に基づいて10年9月に報告した「公的宿泊施設の運営に関する会計検査の結果について」において、施設の稼働率や収支の状況を把握し、稼働率が著しく低かったり、収支が著しく悪かったりする施設については、その原因を十分究明した上、今後の事態の改善や事業継続の可能性、統廃合の要否等を検討する必要があること、いずれの公的宿泊施設においても、地方公共団体、地域住民等も様々な利害関係を持ち、相互に影響を及ぼしていることなどから幅広く議論がなされることが肝要であることなどを記述した。また、前記の22年3月の報告において、収益の増加、人件費等の費用の削減のほか、株式処分停止法により、現時点での廃止はできないとしても、一時的な休業も念頭に損益改善策の検討を行う必要があることなどを記述した。

そこで、表3-50のとおり、19年度に公社から承継したかんぽの宿等71施設のうち、休館等のため、営業損益等の比較ができない5施設を除いた66施設について、24年度から26年度までの3年間の各施設の営業損益を平均した額(以下「3年平均損益」という。)を算定し、19年度の各施設の営業損益、3年平均損益及び26年度の客室稼働率等をそれぞれ比較した。

19年度に営業利益を計上していた12施設の3年平均損益をみると、23年3月に発生した東日本大震災で大きな影響があった「かんぽの宿いわき」及び「かんぽの宿旭」が営業損失を計上しているものの、10施設は営業利益を計上している。一方、19年度に営業損失を計上していた54施設の3年平均損益をみると、26年度に営業を終了した7施設を含む45施設は引き続き営業損失を計上しているものの、9施設は営業利益を計上している。全体としてみると、上記の66施設のうち19施設が営業利益を計上していて、19年度と比べて営業利益を計上している施設数が7施設増加している。

そして、19年度の営業損益及び3年平均損益において、営業損失を計上していた45施設について、19年度の営業費用を営業収益で除した値(以下「19年度営業費用率」という。)と24年度から26年度までの3年間の営業費用の平均を同期間の営業収益の平均で除した値(以下「3年平均営業費用率」という。)とを比較すると、19年度営業費用率と比べて3年平均営業費用率の方が小さくなっていて改善していた施設が18施設あるものの、27施設では19年度営業費用率よりも3年平均営業費用率の方が大きくなっていて更に悪化している。

また、19年度に営業損失を計上していた54施設について19年度と26年度の客室稼働率とを比較すると、14施設は客室稼働率が改善しているものの、40施設は悪化している。

表3-50 平成19年度の営業損益、3年平均損益、客室稼働率等の状況

(単位:施設、百万円)
平成19年度の営業損益 3年平均損益 19年度営業費用率と3年平均営業費用率の比較 26年度の客室稼働率
改善した施設 悪化した施設
営業利益 営業損失   営業利益 営業損失   営業利益 営業損失   改善 悪化
うち営業終了 うち営業終了 うち営業終了
営業利益 施設数 12 10 2 0 12 6 0 0 6 4 2 0 6 12 2 10 12
(金額) (36) (36) (▲10) (-) (28) (42) (-) (-) (42) (27) (▲10) (-) (14) (28) 86.5% 74.5% 76.5%
営業
損失
施設数 54 9 45 7 54 9 18 4 27 0 27 3 27 54 14 40 54
(金額) (▲37) (14) (▲33) (▲45) (▲25) (14) (▲25) (▲31) (▲11) (-) (▲39) (▲65) (▲39) (▲25) 68.9% 64.9% 65.9%
施設数 66 19 47 7 66 15 18 4 33 4 29 3 33 66 16 50 66
(金額) (▲24) (25) (▲32) (▲45) (▲15) (25) (▲25) (▲31) (▲2) (27) (▲37) (▲65) (▲29) (▲15) 71.1% 66.8% 67.9%
休館等 施設数 5
(金額) (▲127)
合計 施設数 71 66 66 66
注(1)
括弧書きは1施設当たりの金額である。
注(2)
平成26年度の客室稼働率は、各施設の客室稼働率の平均である。
c 収益向上等に向けた取組

宿泊事業における収益向上等に向けた取組として、①メンバーズカード会員向けの情報誌の発行や同会員限定プランの販売、全国キャンペーンの展開等による新規顧客の開拓等の顧客基盤の拡大、②臨時従業員の効率的な配置等や光熱費の引下げのための省エネ器具の設置等が行われている。

前記のとおり、民営化後、宿泊利用人数の減少傾向が続いていて、営業損失の計上が継続しており、収益向上等に向けた取組を一層進めることが求められる。

(4)株式売却に係る手続等及び株式売却収入の復興財源への充当の状況等

前記のとおり、国が保有する日本郵政の株式については、復興財源確保法により、その売却収入を復興財源に充てることとなっている。日本郵政及び金融2社の株式売却に係る手続等並びに日本郵政の株式売却収入の復興財源への充当の状況等を示すと次のとおりである。

ア 日本郵政及び金融2社の株式売却に係る手続等の状況

日本郵政及び金融2社の26、27両年度における株式の上場の日程等は図3-17のとおりとなっていた。

図3-17 株式の上場スケジュール

図3-17 株式の上場スケジュール 画像

27年9月に日本郵政及び金融2社の株式の上場が株式会社東京証券取引所(以下「東証」という。)によって承認され、上場日は同年11月4日とされた。その後、同年10月に東証第一部への上場が決定した。

当該承認に先立ち、上記の3社は、同年8月1日に普通株式1株につき30株の割合で株式分割を実施しており、株式の売出数を、日本郵政が発行済株式総数45億株のうち4億9500万株、ゆうちょ銀行が45億株(自己株式を除くと37億4947万5000株)のうち4億1244万2300株、かんぽ生命が6億株のうち6600万株としていて、売却割合はいずれも11%となっていた。

また、国内向けと海外向けの株式の売出数の比率を6対4又は7対3とするのが一般的となっているが、日本郵政の知名度の高さから海外より国内の需要が多く見込まれたこと、民営化法改正法の附帯決議において、「日本郵政株式会社の株式も含め、これらの株式が国民全体の財産であることに鑑み、その処分に当たっては、ユニバーサルサービスの確保に配慮しつつ、可能な限り株式が特定の個人・法人へ集中することなく、広く国民が所有できるよう努めること」と定められていることなどから、上記3社の株式売却については、いずれも、国内向けを株式の売出数の8割、海外の機関投資家向けを同2割としており、さらに、国内向けのうち、個人投資家等の機関投資家以外(以下「一般投資家」という。)向けを95%、機関投資家向けを5%としていた。

そして、株式の売出価格は、前記財政制度等審議会の答申を踏まえて、広範な投資家に対する需要状況の調査を通じて、需要の積上げを行い、その結果に基づいて合理的な価格形成を行うために、ブックビルディング方式(注45)によって決定された。

(注45)
ブックビルディング方式  上場会社又は上場を申請する会社と当該会社の株式の売出しを支援する証券会社が協議により、事業内容・利益計画の検討、類似会社との比較等を行い、上場後に想定される時価総額から株式の理論価格を算出し、これに投資家の需要の見込みや期間リスクを加味するなどして想定発行価格を決め、さらに、株価算定能力が高いと思われる機関投資家等の意見を聴取するなどして売出価格の範囲である仮条件を決める。そして、これを投資家に提示した上、ブックビルディング期間として一定の期間を設けて、同期間中に投資家の需要状況を把握することによって市場動向に即した売出価格を決定する方式

その結果、売出価格は、日本郵政が1,400円、ゆうちょ銀行が1,450円、かんぽ生命が2,200円とされ、いずれも仮条件の上限となっていた。仮条件の上限が売出価格とされたのは、ブックビルディング方式により、仮条件を投資家に提示した結果、仮条件の上限での売出数に対する需要の倍率が、日本郵政及びゆうちょ銀行についてはいずれも5倍程度、かんぽ生命については15倍程度となっていて、旺盛な需要が確認できたことなどによるものである。

また、日本郵政の資産の大半(26年度末で約9割)を占める金融2社の株式の価値を日本郵政の株式の売出価格に反映させるために、金融2社の売出価格の決定日である27年10月19日の4日後の同月23日を日本郵政のブックビルディング期間の終了日とした。

イ 日本郵政及び金融2社の株式売却並びに日本郵政の株式売却収入の復興財源への充当

日本郵政及び金融2社の株式売却に係る収入、支出等並びに日本郵政の株式売却収入の復興財源への充当の状況は、次のとおりとなっている。

(ア)国による日本郵政の株式売却に係る収入、支出等及び復興財源への充当

国が27年11月4日の日本郵政の株式売却によって得られた収入は、前記の売出価格1,400円に売却株式数4億9500万株を乗じた金額である6930億円である。そして、財務省は、日本郵政の株式売却に当たり、「国の所有に係る日本郵政株式会社の株式の処分に係る政令」(平成27年政令第243号)に基づき、国内向け及び海外向けの売却に係る売出引受契約を27年10月に、随意契約により61証券会社及び4証券会社との間でそれぞれ締結し、引受手数料として、1株当たり一般投資家向けが23円80銭、国内及び海外機関投資家向けが21円、国内向け売却分計101億1890万余円、海外向け売却分計20億7900万円、合計121億9790万余円を支払っていた。また、同年9月に、これらの売出引受契約に係る契約書に関する書類作成等の委託契約を2法律事務所との間で契約金額国内分432万円、海外分162万円、計594万円で随意契約により締結し、同額を支払っていた(表3-51参照)。そして、上記の収入から証券会社等に支払うこれらの引受手数料等計122億0384万余円を差し引くと実際に得られた収入は6807億9615万余円となった。

また、日本郵政は、日本郵政の資本効率の向上、国が保有する日本郵政の株式の売却による復興財源確保への貢献等に資するために、27年12月3日に自己株式の取得を実施しており、国が保有する日本郵政の株式のうち、3億8290万1700株を7301億9354万余円(1株当たり1,907円)で取得した。国は、これらに係る売却手数料788万余円を除く7301億8565万余円と上記の収入を合わせた計1兆4109億8180万余円を復興財源に充当した(表3-51参照)。

前記のとおり、復興財源に充当する日本郵政の株式売却収入は4兆円程度と見込まれている。上記の充当額は、この約3分の1に当たる金額となっており、財務省は、引き続き、復興財源の確保に努めることが求められる。

また、この結果、国が保有する日本郵政の株式数は、27年12月末時点で、36億2209万8300株となっている。

表3-51 国による日本郵政の株式売却等及び復興財源への充当額

(単位:株、円)
項目 株式数 単価 金額
A 日本郵政の株式上場
収入 株式上場による売却額 (A) 495,000,000 1,400.00 693,000,000,000
支出 引受手数料 (B) 12,197,908,800
  国内一般投資家 376,200,000 (23.80) (8,953,560,000)
9,669,844,800
国内機関投資家 19,800,000 (21.00) (415,800,000)
449,064,000
海外機関投資家 99,000,000 21.00 2,079,000,000
書類作成等の委託契約に係る支払額 (C) 5,940,000
  国内分 4,320,000
海外分 1,620,000
計 (D)=(B+C) 12,203,848,800
差引
(E)=(A-D)
680,796,151,200
B 日本郵政による自己株式取得
収入 日本郵政への株式売却額 (F) 382,901,700 1,907.00 730,193,541,900
支出 売却手数料 (G) 7,886,089
差引
(H)=(F-G)
730,185,655,811
収入 計  (I)=(A+F) 1,423,193,541,900
支出 計  (J)=(D+G) 12,211,734,889
C 復興財源への充当額 (E+H) 1,410,981,807,011
(注)
括弧書きは税抜きの金額である。
(イ)日本郵政及び金融2社 の株式売却に係る収入、支出等
a 日本郵政による金融2社の株式売却に係る引受手数料、売却収入等

日本郵政は、金融2社の株式売却に当たり、財務省と同様に、国内向け及び海外向けの売却に係る売出引受契約を27年10月に、随意契約により36証券会社及び4証券会社との間でそれぞれ締結しており、これらの証券会社に支払う引受手数料については、株式の売出価格と日本郵政から各証券会社に株式を売り渡す際の価格である引受価額との差額とすることとなっている。そして、ゆうちょ銀行の株式の1株当たりの引受価額は国内向け1,425円50銭、海外向け1,428円25銭であり、売出価格1,450円とそれぞれの引受価額との差額の24円50銭、21円75銭が1株当たりの引受手数料となり、引受手数料の総額は国内向け売却分80億8386万余円、海外向け売却分17億9412万余円、計98億7799万余円となっている。また、かんぽ生命の株式の1株当たりの引受価額は国内向け2,162円82銭、海外向け2,167円であり、売出価格2,200円とそれぞれの引受価額との差額の37円18銭、33円が1株当たりの引受手数料となり、引受手数料の総額は国内向け売却分19億6310万余円、海外向け売却分4億3560万円、計23億9870万余円となっている(表3-52参照)。

そして、上記の金融2社の株式の引受価額にそれぞれの売却株式数4億1244万2300株、6600万株を乗じた金額は、ゆうちょ銀行が5881億6334万余円、かんぽ生命が1428億0129万余円、計7309億6463万余円となり、日本郵政は、この収入を原資として、自己株式の取得を実施しており、前記のとおり、国から3億8290万1700株を7301億9354万余円で取得したほか、国以外の株主から40万4300株を7億7100万余円で取得した。上記の売却により、日本郵政が保有する金融2社の株式は、27年12月末時点で、それぞれ33億3703万2700株、5億3400万株となっている(表3-52参照)。

表3-52 日本郵政による金融2社の株式売却、自己株式の取得等

(単位:株、円)
項目 株式数 単価 金額
ゆうちょ銀行 上場前に日本郵政が保有していた株式数
(A)
3,749,475,000
株式売却収入 (B) 412,442,300 588,163,342,025
  国内一般投資家及び国内機関投資家 329,953,800 1,425.50 470,349,141,900
海外機関投資家 82,488,500 1,428.25 117,814,200,125
引受手数料 9,877,992,975
  国内一般投資家及び国内機関投資家 329,953,800 24.50 8,083,868,100
海外機関投資家 82,488,500 21.75 1,794,124,875
上記の売却後、日本郵政が保有する株式数
(C)=(A-B)
3,337,032,700
かんぽ生命 上場前に日本郵政が保有していた株式数
(D)
600,000,000
株式売却収入 (E) 66,000,000 142,801,296,000
  国内一般投資家及び国内機関投資家 52,800,000 2,162.82 114,196,896,000
海外機関投資家 13,200,000 2,167.00 28,604,400,000
引受手数料   2,398,704,000
  国内一般投資家及び国内機関投資家 52,800,000 37.18 1,963,104,000
海外機関投資家 13,200,000 33.00 435,600,000
上記の売却後、日本郵政が保有する株式数
(F)=(D-E)
534,000,000
株式上場に係る日本郵政の収入 計 (G)=(B+E) 730,964,638,025
日本郵政による自己株式の取得額 国からの自己株式取得額 (H) 382,901,700 1,907.00 730,193,541,900
国以外の株主からの自己株式取得額 (I) 404,300 1,907.00 771,000,100
計 (J)=(H+I) 383,306,000 730,964,542,000
 
東証への支払額 日本郵政及び金融2社が支払った上場審査料等 216,674,028
その他の支出 日本郵政及び金融2社の平成27年12月までの支払額 642,437,480
b 上場審査料等

東証への上場に当たり、日本郵政及び金融2社は、それぞれ東証の有価証券上場規程施行規則により、上場申請時に支払う上場審査料、上場時に支払う新規上場料及び売出しに係る料金を東証に支払うこととなっている。上場審査料は1社432万円であり、新規上場料については、日本郵政及び金融2社が上場した市場第一部では1社1620万円である。また、売出しに係る料金については売出価格に売却株式数を乗じた金額の1万分の1とされており、日本郵政が7484万余円、ゆうちょ銀行が6458万余円、かんぽ生命が1568万余円、計2億1667万余円となっている。

そして、日本郵政及び金融2社は、27年4月に上場審査料を、同年12月に新規上場料及び売出しに係る料金をそれぞれ東証に支払っていた(表3-53参照)。

表3-53 日本郵政及び金融2社の上場審査料等

(単位:円)
会社名 項目 金額
日本郵政 上場審査料 4,320,000
新規上場料 16,200,000
売出しに係る料金 74,844,000
ゆうちょ銀行 上場審査料 4,320,000
新規上場料 16,200,000
売出しに係る料金 64,588,428
かんぽ生命 上場審査料 4,320,000
新規上場料 16,200,000
売出しに係る料金 15,681,600
216,674,028
c その他の支出

株式上場に係る上記以外の支出については、日本郵政及び金融2社は、株式上場に関する助言や上場申請に係る提出書類等の作成支援等、当該提出書類の印刷等、上場挨拶の広告の新聞掲載等に係る契約を締結して、これらに係る代金として、21年10月から27年12月までの間に計6億4243万余円を支払っていた。

これらの支出に係る契約の概要は表3-54のとおりとなっている。

表3-54 日本郵政及び金融2社のその他の支出に係る契約の概要

会社名 契約の内容 契約件数
日本郵政 株式上場に関する助言や上場申請に係る提出書類等の作成支援等を内容とする委託契約 7
上場申請に係る提出書類の印刷等に係る委託契約 1
上場挨拶の広告の新聞掲載等に係る委託契約 4
ゆうちょ銀行 株式上場に関する助言や上場申請に係る提出書類等の作成支援等を内容とする委託契約 3
かんぽ生命 株式上場に関する助言や上場申請に係る提出書類等の作成支援等を内容とする委託契約 4
上場申請に係る提出書類の印刷等に係る委託契約 2

日本郵政は、復興財源の確保への貢献のため、日本郵政の資産の大半を占めていて日本郵政の株式の価値に影響を及ぼす金融2社の株式売却を適切に実施することが求められる。