12件 不当と認める国庫補助金 1,532,540,579円
地域の元気臨時交付金(地域経済活性化・雇用創出臨時交付金)は、地域の元気臨時交付金(地域経済活性化・雇用創出臨時交付金)制度要綱(平成25年府地活第125号、総行応第50号等。以下「制度要綱」という。)、地域の元気臨時交付金交付要綱(平成25年総行応第252号。以下「交付要綱」という。)等に基づき、地域経済の活性化と雇用の創出を図ることを目的として、「日本経済再生に向けた緊急経済対策」(平成25年1月閣議決定)の迅速かつ円滑な実施ができるよう、地方公共団体が作成した地域の元気臨時交付金(地域経済活性化・雇用創出臨時交付金)実施計画(以下「実施計画」という。)に基づき実施する事業に要する費用のうち、実施計画を作成した地方公共団体が負担する経費に充てるために、国が交付するものである。
制度要綱によれば、交付金の交付対象事業は、既存の国の補助事業の対象とはならない地方単独事業においては、上記閣議決定の後に地方公共団体の平成24年度予算又は25年度予算に計上されたものなどとされている。交付金の交付に関しては、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号。以下「補助金適正化法」という。)のほか交付要綱等に定めるところによるとされている。補助金適正化法等によれば、補助事業者等は、補助事業等が完了したときは補助事業等の成果を記載した実績報告書を各省各庁の長に提出しなければならないこととされている。そして、総務省は、交付金事業の成果は交付金事業が工事に係るものにあっては当該工事の25年度末の工事の出来高であるとしている。
また、制度要綱によれば、交付金の交付対象は、地方単独事業については「建設地方債の発行対象経費であるもの」などとされている。そして、地方財政法(昭和23年法律第109号)によれば、同法第5条に掲げる公共施設又は公用施設の建設事業費の財源とする場合等においては、地方債をもってその財源とすることができることとされている。また、平成25年度地方債同意等基準運用要綱によれば、建設事業費の財源のほか、当該建設事業と一体として整備される備品であって建設される施設等と一体不可分的な機能を有するものの購入費であり、原則として一品当たりの取得価格が20万円以上であって、かつ耐用年数が5年以上のものも、地方債をもってその財源とすることができることとされている。
本院が21府県及び322市町村において会計実地検査を行ったところ、5府県及び7市町において次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
部局等 | 交付金事業者 (事業主体) |
交付金事業 | 年度 | 交付対象事業費 | 左に対する交付金交付額 | 不当と認める交付対象事業費 | 不当と認める交付金相当額 | 摘要 | |
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(21) | 総務本省 | 石川県 | 地域の元気臨時交付金(地域経済活性化・雇用創出臨時交付金) 〈兼六園周辺地区整備事業費等〉 |
25 | 5,961,423 | 5,846,799 | 169,737 | 169,737 | 過大交付 |
(22) | 同 | 京都府 | 同
〈みやこ構想関連整備〉 |
25 | 1,526,571 | 353,139 | 118,593 | 118,593 | 同 |
(23) | 同 | 広島県 | 同
〈(高)耐震化対策整備等〉 |
25 | 3,879,034 | 3,676,682 | 122,614 | 122,614 | 同 |
(24) | 同 | 愛媛県 | 同
〈道路防災・減災対策事業費等〉 |
25 | 2,902,125 | 2,342,019 | 211,479 | 211,479 | 同 |
(25) | 宮城県 | 仙台市 | 同
〈社会資本整備総合交付金〉 |
25 | 712,584 | 712,584 | 653,144 | 653,144 | 同 |
(26) | 同 | 柴田郡柴田町 | 同
〈(仮)船迫こどもセンター新築〉 |
25 | 318,345 | 133,542 | 43,694 | 43,694 | 同 |
(27) | 秋田県 | 鹿角市 | 同
〈庁舎空調設備等改修〉 |
25 | 119,600 | 119,600 | 11,347 | 11,347 | 同 |
(28) | 宮崎県 | 都城市 | 同
〈志和池最終処分場第2期建設〉 |
25 | 154,741 | 148,800 | 58,088 | 58,088 | 同 |
(21)―(28)の計 | 15,574,424 | 13,333,165 | 1,388,698 | 1,388,698 |
これらの交付金事業は、8事業主体が、地方単独事業として、施設整備等の工事を実施したものである。8事業主体は、これらの交付金事業の交付対象事業費を計15,574,424,293円であるとして総務本省及び宮城、秋田、宮崎各県に実績報告書を提出し、総務省から計13,333,165,500円の交付金の交付を受けていた。そして、このうち63工事については、複数年度にわたる契約に基づく工事であり、交付対象事業費を計2,045,193,283円であるとして、同額の交付金の交付を受けていた。
しかし、上記の63工事に係る交付対象事業費は、8事業主体が工事の各契約相手方に対して25年度に支払った前払金等の額の一部等を計上したものであり、これらの交付金事業の成果である工事の同年度末における出来高は計656,494,541円であった。
したがって、前記63工事の適正な交付対象事業費は上記出来高の計656,494,541円となることから、前記の交付対象事業費計2,045,193,283円は1,388,698,742円過大となっており、同額の交付金が過大に交付されていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、8事業主体において交付金事業が完了したときに提出する実績報告書に記載すべき交付金事業の成果についての理解が十分でなかったこと、総務本省及び3県において交付金の額の確定の際の審査が十分でなかったことなどによると認められる。
(29) | 総務本省 | 三重県 | 地域の元気臨時交付金(地域経済活性化・雇用創出臨時交付金) 〈新県立博物館整備〉 |
25 | 1,147,488 | 1,047,999 | 32,459 | 32,459 | 補助の対象外 |
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(30) | 愛媛県 | 南宇和郡愛南町 | 同
〈公用車購入〉 |
25 | 7,421 | 5,388 | 3,641 | 2,613 | 同 |
(29)(30)の計 | 1,154,910 | 1,053,387 | 36,100 | 35,072 |
これらの交付金事業は、2事業主体が、地方単独事業として、建設事業と一体として整備される備品であって建設される施設等と一体不可分的な機能を有するものの購入等を実施したものである。2事業主体は、これらの交付金事業の交付対象事業費を計1,154,910,536円であるとして総務本省及び愛媛県に実績報告書を提出し、総務省から計1,053,387,568円の交付金の交付を受けていた。
しかし、当該備品のうち3,924点については、一品当たりの取得価格が20万円未満のもの又は耐用年数が5年未満のものであり地方債をもってその財源とすることができないことから、制度要綱で交付金の交付対象とされている「建設地方債の発行対象経費であるもの」に該当しないものであった。
したがって、上記の備品3,924点に係る交付対象事業費計36,100,788円は交付対象とは認められず、これに係る交付金計35,072,220円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、2事業主体において交付金の制度に対する理解が十分でなかったこと、総務本省及び同県において交付金の額の確定の際の審査が十分でなかったことなどによると認められる。
(31) | 熊本県 | 玉名郡和水町 | 地域の元気臨時交付金(地域経済活性化・雇用創出臨時交付金) 〈菊水区域学校敷地造成〉 |
25 | 114,570 | 100,536 | 114,570 | 100,536 | 目的不達成 |
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この交付金事業は、玉名郡和水町が、地方単独事業として、実施計画に基づき菊水区域内の既存の小中学校を統合した併設校を新設するための用地(以下「併設校用地」という。)の造成を実施したものである。
しかし、併設校用地は、事業完了後約2年間にわたり、校舎用の敷地として一度も使用されていなかった。そして、同町は、28年10月に併設校の新設を中止することとしたことから、併設校用地は今後も校舎用の敷地として使用する見込みのない状況となっていた。
したがって、交付金事業により造成した併設校用地(交付対象事業費114,570,075円)は、補助の目的を達しておらず、これに係る交付金交付額100,536,000円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同町において、交付金事業により整備した用地を実施計画の目的に沿って使用することについての認識が欠けていたことなどによると認められる。
(32) | 群馬県 | 太田市 | 地域の元気臨時交付金(地域経済活性化・雇用創出臨時交付金) 〈道路新設改良〉 |
25 | 100,702 | 100,702 | 8,233 | 8,233 | 設計不適切 |
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この交付金事業は、太田市が、地方単独事業として、既存の市道を拡幅するために、コンクリート矢板工、ガードレール設置工等を実施したものである。
上記工事のうち、コンクリート矢板工は、コンクリート矢板を土留め擁壁とするために、市道の法面に延長50.0m設置するものである。また、ガードレール設置工は、車両の転落を防止するために、コンクリート矢板に近接して、支柱を土中に埋め込む構造のガードレールを延長49.2m設置するものである。
同市は、コンクリート矢板工の設計に当たり、コンクリート矢板に作用する土圧等を算定し、構造計算上安全であるとして、これにより施工していた。
しかし、同市は、車両がガードレールに衝突する際の荷重(以下「衝突荷重」という。)がコンクリート矢板に与える影響を考慮していなかった。
そこで、実際の施工状況に基づいて、ガードレールの設計に適用される「車両用防護柵標準仕様・同解説」(社団法人日本道路協会編)により、衝突荷重に対するガードレールの支柱の支持力について支柱1本が関与する背面土質量(注1)(以下「背面土質量」という。)を評価して、施工されたガードレールの支柱が衝突荷重に耐えることができるか確認したところ、ガードレールの支柱の背面土質量は、延長49.2mにおいて、ガードレールの支柱がコンクリート矢板に近接した位置に設置されていたことから、必要とされる背面土質量0.82tを大幅に下回る0.03tとなっていて、ガードレールの支柱は背面土質量による所要の支持力が得られていなかった。このため、延長49.2mのガードレールに車両が衝突した場合、コンクリート矢板には、前記コンクリート矢板工の設計で想定していなかった衝突荷重が作用することになることから、改めて衝突荷重を考慮して構造計算を行ったところ、コンクリート矢板に作用する曲げモーメント(注2)は73.71kN・mとなり、コンクリート矢板のひび割れモーメント(注3)35.00kN・mを大幅に上回っていて、構造計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。
したがって、延長50.0m区間のコンクリート矢板、ガードレール等(工事費相当額8,233,617円)は、ガードレールの設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る交付金相当額8,233,617円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同市において、設置するガードレールが他の構造物へ与える影響についての理解が十分でなかったことなどによると認められる。
(参考図)
ガードレール、コンクリート矢板等の概念図
(21)―(32)の計 | 16,944,606 | 14,587,791 | 1,547,603 | 1,532,540 |
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