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租税の徴収に当たり、徴収額に不足があったもの[36税務署](48)


会計名及び科目
一般会計 国税収納金整理資金 (款)歳入組入資金受入
(項)各税受入金
部局等
36税務署
納税者
54人
徴収不足額
487,885,464円(平成23年度~28年度)

1 租税の概要

源泉所得税、申告所得税、法人税、相続税・贈与税、消費税等の国税については、法律により、納税者の定義、納税義務の成立の時期、課税する所得の範囲、税額の計算方法、申告の手続、納付の手続等が定められている。

納税者は、納付すべき税額を税務署に申告して納付することなどとなっている。国税局等又は税務署は、納税者が申告した内容が適正であるかについて申告審理を行い、必要があると認める場合には調査等を行っている。そして、確定した税額は、税務署が徴収決定を行っている。

平成28年度国税収納金整理資金の各税受入金の徴収決定済額は71兆8591億余円となっている。このうち源泉所得税は1218億余円、源泉所得税及復興特別所得税(注1)は16兆7845億余円(以下、源泉所得税と源泉所得税及復興特別所得税とを合わせて「源泉所得税」という。)、申告所得税は623億余円、申告所得税及復興特別所得税は3兆3554億余円(以下、申告所得税と申告所得税及復興特別所得税とを合わせて「申告所得税」という。)、法人税は12兆0330億余円、相続税・贈与税は2兆2739億余円、消費税及地方消費税は28兆0126億余円となっていて、これら各税の合計額は62兆6438億余円となり、全体の87.1%を占めている。

(注1)
復興特別所得税  東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(平成23年法律第117号)に基づくものであり、平成25年1月から49年12月までの25年間、源泉所得税及び申告所得税に、その税額の2.1%相当額を上乗せする形で課税するもの

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

本院は、上記の各税に重点をおいて、合規性等の観点から、課税が法令等に基づき適正に行われているかに着眼して、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)に基づき本院に提出された証拠書類等により検査するとともに、全国の12国税局等及び524税務署のうち12国税局等及び59税務署において、申告書等の書類により会計実地検査を行った。そして、適正でないと思われる事態があった場合には、国税局等及び税務署に調査等を求めて、その調査等の結果の内容を確認するなどの方法により検査した。

(2) 徴収不足の事態

検査の結果、36税務署において、納税者54人から租税を徴収するに当たり、徴収額が、56事項計487,885,464円(23年度から28年度まで)不足していて、不当と認められる。

これを、税目別に示すとのとおりである。

表 税目別の徴収不足額等

税目 事項数 徴収不足額
   
源泉所得税 1 1,146,564
申告所得税 19 34,497,700
法人税 28 428,728,500
相続税・贈与税 2 9,831,000
消費税 5 8,905,100
地方法人税 1 4,776,600
56 487,885,464
(注)
地方法人税  地方法人税法(平成26年法律第11号)に基づくものであり、地方交付税の財源を確保するために、平成26年10月1日以後に開始する事業年度から、法人税額の4.4%相当額を課税するもの

なお、これらの徴収不足額については、本院の指摘により、全て徴収決定の処置が執られた。

(3) 発生原因

このような事態が生じていたのは、前記の36税務署において、納税者が申告書等において所得金額や税額等を誤るなどしているのに、これを見過ごしたり、法令等の適用の検討が十分でなかったり、課税資料の収集及び活用が的確でなかったりしたため、誤ったままにしていたことなどによると認められる。

(4) 税目ごとの態様

この56事項のうち、源泉所得税、申告所得税、法人税、相続税・贈与税及び消費税に関する事態について、その主な態様を示すと次のとおりである。

ア 源泉所得税

源泉所得税に関して徴収不足になっていた事態が1事項あった。これは、退職手当に関する事態である。

退職手当の支払者は、支払の際に、その金額から退職所得控除額を控除した残額の2分の1に相当する金額に所定の税率を乗ずるなどして計算した源泉所得税を徴収して、法定納期限までに国に納付しなければならないこととなっており、納付がない場合には、税務署は支払者に対して納税の告知をしなければならないこととなっている。

この退職手当に関して、納付された源泉所得税額が、所定の方法により計算した額と比べて過小であったのに、これを見過ごしたため、その差額について納税の告知をしておらず徴収不足になっていた事態が1事項1,146,564円あった。

イ 申告所得税

申告所得税に関して徴収不足になっていた事態が19事項あった。この内訳は、譲渡所得に関する事態が9事項、不動産所得に関する事態が4事項及びその他に関する事態が6事項である。

(ア) 譲渡所得に関する事態

個人が資産を譲渡した場合には、その総収入金額から譲渡した資産の取得費や譲渡に要した費用の額等を差し引いた金額を譲渡所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。ただし、土地建物等(借地権を含む。)の譲渡による所得については、他の所得と分離して課税することとなっている。そして、個人が相続又は遺贈により取得した資産を一定の期間内に譲渡した場合には、相続税額のうち所定の方法により計算した金額を、当該資産の譲渡による利益の金額を超えない範囲で取得費に加算する特例の規定を適用できることとなっている。

この譲渡所得に関して、徴収不足になっていた事態が9事項計18,713,900円あった。その主な内容は、取得費に加算できる相続税額を過大に計上しているのに、これを見過ごしたり、法令等の適用の検討が十分でなかったりしたため、譲渡所得の金額を過小のままとしていたものや、借地権の譲渡に係る所得があるのに、これに係る課税資料の収集及び活用が的確でなかったため、課税していなかったものである。

<事例1>相続財産に係る譲渡所得の課税の特例の規定の適用を誤っていた事態

納税者Aは、平成25年分の申告に当たり、譲渡した7筆の土地に係る譲渡所得の計算において、当該7筆の土地が相続により取得したものであるとして、相続財産に係る譲渡所得の課税の特例の規定を適用し、相続税額のうち所定の方法により計算した金額を譲渡した土地の取得費に加算するなどして、譲渡所得の金額を115,021,127円としていた。

しかし、納税者Aの申告書等によれば、譲渡した7筆の土地のうち、6筆の土地について相続する前から持分があり、当該持分については譲渡所得の計算において上記特例の規定を適用できないなどのため、譲渡所得の金額が148,534,596円となり、33,513,469円過小となっていたのに、これを見過ごしたため、申告所得税額5,132,500円が徴収不足になっていた。

(イ) 不動産所得に関する事態

個人が不動産を貸し付けた場合には、その総収入金額から必要経費等を差し引いた金額を不動産所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。そして、個人が貸付けの用に供する不動産を取得する際に支払った仲介手数料は、その取得した不動産の取得価額に含め、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入しないこととなっている。

この不動産所得に関して、徴収不足になっていた事態が4事項計4,886,900円あった。その主な内容は、貸付けの用に供した不動産の取得価額に含めなければならない仲介手数料を必要経費に算入しているのに、これを見過ごしたため、不動産所得の金額を過小のままとしていたものである。

(ウ) その他に関する事態

(ア)及び(イ)のほか、雑所得等に関して、徴収不足になっていた事態が6事項計10,896,900円あった。

ウ 法人税

法人税に関して徴収不足になっていた事態が28事項あった。この内訳は、受取配当等の益金不算入に関する事態が7事項、特定同族会社の留保金に対する特別税率に関する事態が2事項及びその他に関する事態が19事項である。

(ア) 受取配当等の益金不算入に関する事態

法人が他の内国法人から受ける配当等の金額等については、原則として、その全額を基に所定の方法により計算した金額を所得の金額の計算上、益金の額に算入しないこととなっている。ただし、法人が有する当該他の内国法人の株式等が、非支配目的株式等(注2)又はその他株式等(注3)に該当する場合においては、株式等の配当等の額のそれぞれ100分の20相当額又は100分の50相当額を益金不算入の対象とすることとなっている。

(注2)
非支配目的株式等  法人が他の内国法人の発行済株式総数等(その有する自己の株式等を除く。)の原則として100分の5以下に相当する数の株式等を配当等の額の支払に係る基準日において有する場合の当該株式等
(注3)
その他株式等  法人が他の内国法人の発行済株式総数等(その有する自己の株式等を除く。)の原則として100分の5を超え3分の1以下に相当する数の株式等を有する場合の当該株式等

この受取配当等の益金不算入に関して、徴収不足になっていた事態が7事項計21,967,900円あった。その主な内容は、非支配目的株式等に係る配当等の額をその他株式等に係る配当等の額としていて受取配当等の益金不算入額を過大に計上しているのに、これを見過ごしたため、所得の金額を過小のままとしていたものである。

<事例2>非支配目的株式等に係る配当等の額をその他株式等に係る配当等の額としていたため受取配当等の益金不算入額を過大に計上していた事態

B会社は、平成27年4月から28年3月までの事業年度分の申告に当たり、その有する他の内国法人の株式をその他株式等に該当するとして、受取配当等の益金不算入の対象となる金額を、配当等の額の100分の50相当額65,816,600円としていた。

しかし、B会社は当該他の内国法人の発行済株式総数の100分の5以下に相当する数の株式を配当等の額の支払に係る基準日において有していたことから、当該他の内国法人の株式は、非支配目的株式等に該当していた。そのため、受取配当等の益金不算入の対象となる金額は、配当等の額の100分の20相当額26,326,640円となり、上記の金額との差額39,489,960円が過大となっているのに、これを見過ごしたため、法人税額9,188,700円が徴収不足になっていた。

(イ) 特定同族会社の留保金に対する特別税率に関する事態

株主等の1人並びにこれと特殊の関係のある個人及び法人が発行済株式総数又は出資総額の100分の50を超える株式数又は出資金額を有しているなどの会社(資本金又は出資金の額が1億円以下であるものを、原則として除く。以下「特定同族会社」という。)については、通常の法人税のほか、利益のうち社内に留保した金額が一定の金額を超える場合には、その超える部分の金額(以下「課税留保金額」という。)に対し特別税率の法人税を課することとなっている。

この特定同族会社の留保金に対する特別税率に関して、徴収不足になっていた事態が2事項計374,510,200円あった。その主な内容は、特定同族会社について課税留保金額が算出されるのに、これを見過ごしたため、特別税率の法人税を課していなかったものである。

<事例3>特定同族会社の課税留保金額に対して特別税率の法人税を課していなかった事態

C会社は、平成24年1月から27年12月までの4事業年度分の申告に当たり、特定同族会社に該当しているのに課税留保金額の計算をしていなかった。

しかし、C会社の申告書等の課税留保金額に関する資料によれば、利益のうち社内に留保した金額があるため課税留保金額の計算を行う必要があり、所定の計算を行うと課税留保金額24年12月期分409,008,000円、25年12月期分398,647,000円、26年12月期分606,527,000円及び27年12月期分575,290,000円が算出されるのに、これを見過ごしたため、特別税率の法人税を課しておらず、法人税額24年12月期分75,301,500円、25年12月期分73,229,400円、26年12月期分114,805,300円及び27年12月期分108,557,900円、計371,894,100円が徴収不足になっていた。

(ウ) その他に関する事態

(ア)及び(イ)のほか、法人税額の特別控除、役員給与の損金不算入等に関して、徴収不足になっていた事態が19事項計32,250,400円あった。

エ 相続税・贈与税

相続税に関して徴収不足になっていた事態が2事項あった。これらは、有価証券の価額に関する事態である。

個人が相続又は遺贈により有価証券を取得した場合には、その取得した有価証券に対して相続税を課することとなっており、取得した有価証券の価額は、相続又は遺贈により取得した時の時価とすることとなっている。そして、取得した有価証券のうち取引相場のない株式の価額については、評価しようとするその株式の発行会社(以下「評価会社」という。)の総資産価額、従業員数等によって評価会社を大会社、中会社及び小会社に区分し、この区分に応じて定められた方式(以下「一般の評価会社の原則的評価方式」という。)により計算した金額によって評価することとなっている。ただし、評価しようとする株式が、特定の評価会社の株式(注4)に該当する場合は一般の評価会社の原則的評価方式とは異なる方法で計算した金額によって評価することとなっている。

この有価証券の価額に関して、取引相場のない株式について、特定の評価会社の株式に該当する株式を一般の評価会社の原則的評価方式で計算した金額によって評価しているのに、これを見過ごしたため、株式の価額を過小のままとしており徴収不足になっていた事態が2事項計9,831,000円あった。

(注4)
特定の評価会社の株式  1株当たりの年配当金額、年利益金額及び純資産価額の三つの要素のうち、いずれか二つの要素が0円であるなどの会社の株式

オ 消費税

消費税に関して徴収不足になっていた事態が5事項あった。この内訳は、課税仕入れに係る消費税額の控除に関する事態が3事項及びその他に関する事態が2事項である。

(ア) 課税仕入れに係る消費税額の控除に関する事態

事業者は、課税期間における課税売上高に対する消費税額から課税仕入れに係る消費税額を控除した額を消費税として納付することとなっている。そして、課税売上高に対する消費税額から控除する課税仕入れに係る消費税額は、一定の要件に該当して全額控除できる場合を除き、課税仕入れに係る消費税額等の合計額に課税売上割合(非課税売上高等を含めた総売上高に占める課税売上高の割合。以下同じ。)を乗ずるなどして計算することとなっている。

この課税仕入れに係る消費税額の控除に関して、徴収不足になっていた事態が3事項計7,496,500円あった。その主な内容は、非課税売上高である土地の譲渡収入を総売上高に含めないで課税売上割合を計算しているのに、これを見過ごしたため、課税仕入れに係る消費税額の控除額を過大のままとしていたものである。

(イ) その他に関する事態

(ア)のほか、納税義務の免除に関して、徴収不足になっていた事態が2事項計1,408,600円あった。

これらの徴収不足額を国税局等別に示すと次のとおりである。

国税局等 税務署数   源泉所得税   申告所得税   法人税   相続税
贈与税
  消費税   地方法人税  
事項数 徴収不足 事項数 徴収不足 事項数 徴収不足 事項数 徴収不足 事項数 徴収不足 事項数 徴収不足 事項数 徴収不足
      千円   千円   千円   千円   千円   千円   千円
札幌国税局 1         1 1,133             1 1,133
仙台国税局 2     1 684 1 1,570             2 2,254
関東信越国税局 4     2 2,164 1 755     1 2,949     4 5,869
東京国税局 20 1 1,146 14 22,736 18 408,112     4 5,955 1 4,776 38 442,727
名古屋国税局 2     1 4,573     2 9,831         3 14,404
大阪国税局 1         1 3,457             1 3,457
福岡国税局 2         2 5,494             2 5,494
熊本国税局 2     1 4,339 1 2,709             2 7,048
沖縄国税事務所 2         3 5,495             3 5,495
36 1 1,146 19 34,497 28 428,728 2 9,831 5 8,905 1 4,776 56 487,885