国税庁は、所得税(復興特別所得税を含む。)及び消費税(地方消費税を含む。)の確定申告及び納付が期限内に確実に行われるよう周知するとともに確定申告会場の設置場所等を連絡することなどを目的として、前年に確定申告会場を利用して確定申告を行うなどした個人のうち、口座振替等により納付を行った者(以下「はがき送付対象者」という。)に対して、確定申告の受付期間、法定納期限、確定申告会場の設置場所や設置期間等が記載されたはがき(以下「お知らせはがき」という。)を郵送している。
また、全国の12国税局等は、上記の個人のうち、紙媒体の納付書を用いて納付を行った者(以下「通知書送付対象者」という。)に対して、お知らせはがきと同様の情報が記載された書面のほか、納付書、各国税局等において作成した各種案内等を封入した郵便物(以下「お知らせ通知書」という。)をそれぞれ郵送している。
お知らせはがき及びお知らせ通知書(以下「お知らせはがき等」という。)の発送は、国税庁又は各国税局等において一括して行っているが、確定申告会場の設置期間の初日(以下「会場開設日」という。)が確定申告会場ごとに異なっていることから、お知らせはがき等の到達見込日から会場開設日までの間隔も確定申告会場ごとに異なっている。そして、国税庁及び各国税局等は、お知らせはがき等の郵便局への差出日について、はがき送付対象者及び通知書送付対象者の住所や確定申告前の納付税額等に関する情報をできるだけ最新のものとして発送することなども考慮して1月下旬以降で、かつ、会場開設日のおおむね1週間程度前から前日までに到達することが見込まれる日としている。
郵便料金には、各種の割引制度が定められている。このうち、区分郵便物の割引制度は、形状、重量等が同一で郵便番号ごとに区分した郵便物を大量に郵便局に差し出した場合に適用を受けることができるもので、基本割引と一定の条件に該当する場合に基本割引に加算される特別割引とがある。
基本割引は、差出人が、受取人の住所若しくは居所の郵便番号又は差出郵便局が指定する郵便番号ごとに区分するなどした場合に受けられる割引であり、その割引率は、差出通数に応じて5%から9%(平成28年6月以降は3%から6%)となっている。また、特別割引は、送達に一定の余裕を承諾した場合等に基本割引に加算して受けられる割引であり、その割引率は、差出人が日本郵便株式会社の内国郵便約款に定められている送達日数(注1)に加えて送達に3日程度の余裕を承諾した場合(以下、この場合の割引を「3日余裕の特別割引」という。)は4%、差出通数が5万通以上の郵便物について、上記の送達日数に加えて送達に7日程度の余裕を承諾等した場合(以下、この場合の割引を「7日余裕の特別割引」といい、3日余裕の特別割引と合わせて「余裕特割」という。)は7%などとなっている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
お知らせはがき等は、毎年度大量に郵送されていることから、本院は、経済性等の観点から、お知らせはがき等の郵送に当たり、郵便料金の割引制度を適切に活用することにより郵便料金の節減が図られているかなどに着眼して検査した。
検査に当たっては、お知らせはがき(26年度405万余通、27年度419万余通、計825万余通)に係る郵便料金26年度1億7093万余円、27年度1億7663万余円、計3億4757万余円、及び平成28年熊本地震の影響等により会計実地検査を行わなかった2国税局等(注2)を除く10国税局(注3)が郵送したお知らせ通知書(26年度118万余通、27年度122万余通、計240万余通)に係る郵便料金26年度8245万余円、27年度8533万余円、計1億6779万余円、合計5億1536万余円(合計1065万余通)を対象として、国税庁及び10国税局において、確定申告会場に関する関係書類、後納郵便物等差出票の控え等により、確定申告会場の設置期間、差出時期、郵便料金の割引制度の適用状況等を確認するなどして会計実地検査を行った。
(検査の結果)
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
国税庁は、お知らせはがきの郵送に当たり、前記のとおり、はがき送付対象者の住所や確定申告前の納付税額等に関する情報をできるだけ最新のものとする必要があることなどを考慮すると郵便局への差出日は1月下旬以降とする必要があるなどとして、26年度までは1月下旬(26年度は27年1月26日)に郵便局に差し出していて、基本割引及び3日余裕の特別割引の適用を受けていた。
一方、27年度については、これまでの会場への来場者数等を考慮して、国税庁、国税局等において、27年度以降は会場開設日を従前より約1週間遅くすることとしたことを受けて、お知らせはがきの差出日を26年度までより約1週間遅い28年2月1日として、基本割引及び3日余裕の特別割引の適用を受けていた。そして、国税庁では、28年度以降についても同様に差出日を従前より約1週間遅らせる方針としていた。
しかし、27年度についても、お知らせはがきの記載情報を最新のものにする必要があることなどを考慮しても、26年度までと同様1月下旬には差出しが可能と認められた。そして、これにより差し出した場合、送達に7日の余裕を見込んでも、会場開設日のおおむね1週間程度前から前日までには到達することが見込まれることから、7日余裕の特別割引の適用を受けることが可能であった。
10国税局は、お知らせ通知書の郵送に当たり、10国税局全てにおいて基本割引の適用を受けていた。
しかし、余裕特割の適用状況を確認したところ、5国税局(注4)においては、差出日と到達見込日との間の余裕日数等について特段の検討を行っておらず、余裕特割の適用を受けていなかった。
前記のとおりお知らせ通知書は、お知らせはがきと同様に会場開設日のおおむね1週間程度前から前日までに通知書送付対象者に到達することが見込まれる日に差し出しているものである。
したがって、余裕特割の適用を受けていなかった前記の5国税局について、差出日と到達見込日との間の余裕日数等を検討してみると、26年度は5国税局全てで3日余裕の特別割引を適用しても、また、27年度は3国税局(注5)で3日余裕の特別割引を、2国税局(注6)で7日余裕の特別割引をそれぞれ適用しても、会場開設日のおおむね1週間程度前から前日までには到達することが見込まれることから、いずれの国税局においても余裕特割の適用を受けることが可能であったと認められた。
このように、お知らせはがきの郵送に当たり、7日余裕の特別割引の適用を受けることが可能であったのに3日余裕の特別割引の適用しか受けていなかったり、お知らせ通知書の郵送に当たり、余裕特割の適用を受けることが可能であったのに適用を受けていなかったりしていて、郵便料金の節減が図られていなかった事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。
(節減できた郵便料金)
国税庁において、お知らせはがきの郵送に当たり、7日余裕の特別割引の適用を受けていたとすれば、郵便料金を27年度436万余円、5国税局において、お知らせ通知書の郵送に当たり、余裕特割の適用を受けていたとすれば、郵便料金を26年度239万余円、27年度294万余円、計533万余円、合計969万余円節減できたと認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、国税庁において、お知らせはがきの郵送に当たり、差出日についての検討や適切な余裕特割の適用についての検討が十分でなかったこと、国税局において、お知らせ通知書の郵送に当たり、差出日と到達見込日との余裕日数等を考慮して、余裕特割の適用を受けることについての検討を行っていなかったことにもよるが、国税庁において、余裕特割の適用を受けるよう国税局等に周知していなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、国税庁は、29年6月に、29年度以降のお知らせはがきの郵送において7日余裕の特別割引の適用を受けることとし、また、29年3月に事務連絡を発して、29年度以降のお知らせ通知書の郵送に当たり、余裕特割の適用を適切に受けるよう国税局等に周知する処置を講じた。