文部科学本省(平成27年10月1日以降はスポーツ庁。以下「本省」という。)は、トップレベルの競技者の強化のために、ナショナルトレーニングセンター競技別強化拠点施設指定要項(平成19年1月文部科学大臣決定)に基づき、冬季競技、屋外系競技等について、既存のトレーニング施設をナショナルトレーニングセンター競技別強化拠点施設(以下「競技別NTC」という。)に指定し、ナショナルトレーニングセンター競技別強化拠点施設活用事業(以下「委託事業」という。)を当該指定施設の設置者、指定管理者等に委託して実施している。
ナショナルトレーニングセンター競技別強化拠点施設活用事業委託要項(平成19年7月スポーツ・青少年局長決定)等によれば、委託事業は、競技別NTCに指定した施設において、公益財団法人日本オリンピック委員会の加盟中央競技団体が選手強化等の活動を効果的に実施することができ、我が国の国際競技力向上に資するようなトレーニング環境を整備するものとされており、全国大会やオリンピック予選等の興行を兼ねる競技会の開催等については委託事業の対象とならないとされている。また、本省は、施設使用料等の借損料、消耗品費、一般管理費等の委託事業に要する経費を予算の範囲内で委託費として受託者に支払うこととされている。受託者は、委託事業が完了したときは、委託事業完了報告書を作成し、支出を証する書類の写しを添えて、本省に提出しなければならないこととされており、本省は、提出された委託事業完了報告書について、審査するなどして、その内容が適正であると認めたときは、委託事業に要した経費の額と委託契約額のいずれか低い額を委託費の額として確定することなどとされている。
そして、本省は、25年度に、サッカーの競技別NTCに指定した堺市立サッカー・ナショナルトレーニングセンターの指定管理者である株式会社ジャパンフットボールマーチャンダイズ(以下「マーチャンダイズ社」という。)との間で委託契約を締結して委託事業を実施し、委託費14,961,466円を支払っている。
本院は、合規性等の観点から、委託費が適正に算定されているかなどに着眼して、上記の委託契約を対象として、本省において、契約書、委託事業完了報告書等により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。
マーチャンダイズ社は、グラウンド使用料等の施設使用料6,872,400円を借損料として計上するなどして、委託事業に要した経費を計14,961,466円とする委託事業完了報告書を本省に提出しており、本省は、これに基づいて委託費の額を確定して同額を支払っていた。
しかし、マーチャンダイズ社は、上記の借損料に委託事業の対象とならない興行を兼ねる競技会に当たる全国大会の開催に係る施設使用料4,827,400円を含めるなどしていた。
したがって、上記の施設使用料4,827,400円を借損料から除くなどして適正な委託費の額を算定すると9,632,186円となり、前記の委託費支払額14,961,466円との差額5,329,280円が過大に支払われていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、本省において、マーチャンダイズ社から提出された委託事業完了報告書に対する審査及び確認が十分でなかったことなどによると認められる。