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  • 平成28年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第7 文部科学省|
  • 不当事項|
  • 補助金

(2) 公立高等学校授業料不徴収交付金が過大に交付されていたもの[奈良県](54)


1件 不当と認める国庫補助金 4,013,003円

公立高等学校授業料不徴収交付金(以下「交付金」という。)は、「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律」(平成22年法律第18号。平成26年4月1日以降は「高等学校等就学支援金の支給に関する法律」)等に基づき、高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって教育の機会均等に寄与することを目的として、国が地方公共団体に対して交付するものである。

交付金の交付額は、同法等によれば、同法の「公立高等学校(注1)については、授業料を徴収しないものとする。」との規定の適用がないとしたならば、地方公共団体が徴収することとなる年間の授業料を基礎として算定する額(以下「年間授業料相当額」という。)に相当する金額とされている。そして、年間授業料相当額は、当該地方公共団体に係る公立高等学校に当該年度の10月1日に在学する生徒の数を公立高等学校基礎授業料月額の12倍に相当する額に乗ずるなどして算定することとされている。なお、26年度以降の交付金の交付については、「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律の一部を改正する法律」(平成25年法律第90号)により、公立高等学校に係る授業料の不徴収制度が廃止された一方で、26年3月以前から引き続き公立高等学校に在学する生徒に係る分はなお従前の例によるとされた。このため、26年4月以降に公立高等学校に入学した生徒については、10月1日に在学する生徒の数に含めないこととなる。

また、文部科学省は、事務連絡等において、交付金の算定対象となる生徒の数には、10月1日現在で休学している生徒のうち、既に標準修業年限(注2)を超過している生徒及び今後標準修業年限の超過が見込まれる生徒の数を含めないこと、学年による教育課程の区分を設けずに決められた単位を修得すれば卒業が認められる単位制の公立高等学校に在学している生徒のうち、受講する教科の単位登録をしていない生徒の数を含めないこととしている。

(注1)
公立高等学校  地方公共団体が設置する高等学校、中等教育学校の後期課程及び特別支援学校の高等部
(注2)
標準修業年限  入学から卒業までに要する標準的な年限で、交付金の算定においては、全日制の公立高等学校では3年、定時制及び通信制の公立高等学校では4年以内とすることとなっている。

本院が、交付金の算定等について、2県において会計実地検査を行ったところ、1県において次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

  部局等 補助事業者
(事業主体)
年度 年間授業料相当額 左に対する交付金交付額 不当と認める年間授業料相当額 不当と認める交付金交付額 摘要
        千円 千円 千円 千円  
(54) 奈良県 奈良県 23~27 10,173,165 10,173,165 4,013 4,013 交付金の算定対象とならない生徒を含めるなどしていたもの

奈良県は、同県が設置する公立高等学校に10月1日に在学する生徒のうち交付金の算定対象となる生徒の数を23年度26,457人、24年度26,379人、25年度25,994人、26年度16,966人、27年度8,506人として、これらに係る年間授業料相当額を23年度2,545,117,870円、24年度2,560,997,748円、25年度2,547,722,935円、26年度1,683,742,802円、27年度835,584,574円、計10,173,165,929円と算定し、同額の交付金の交付を受けていた。

しかし、同県が交付金の算定対象とした上記生徒の数には、①10月1日より前に退学又は転学したり、26年4月以降に入学したりなどしていて、10月1日現在で同県が設置する公立高等学校に在学する生徒の数に含めてはならない生徒、②10月1日現在で休学している生徒のうち、既に標準修業年限を超過している生徒、③10月1日現在で休学している生徒のうち、出席日数の不足により当該年度末での卒業が見込めないなどの理由から標準修業年限の超過が確実に見込まれる生徒、及び④単位制の県立高等学校に在学しているものの受講する教科の単位登録をしていない生徒が、23年度6人、24年度12人、25年度9人、26年度37人、27年度56人、計120人含まれていた。一方で、交付金の算定対象とした上記生徒の数には、⑤算定対象として含まれるべき生徒が、23年度2人、25年度1人、26年度4人、27年度3人、計10人含まれていなかった。

したがって、上記①、②、③及び④の生徒数を交付金の算定対象となる生徒の数から除外し、また、交付金の算定対象となる生徒の数に上記⑤の生徒数を加えて適正な交付金の交付額を算定すると、23年度2,544,710,563円、24年度2,559,987,184円、25年度2,546,790,895円、26年度1,682,612,622円、27年度835,051,662円となることから、23年度407,307円、24年度1,010,564円、25年度932,040円、26年度1,130,180円、27年度532,912円、計4,013,003円の交付金が過大に交付されていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同県において、交付金の算定対象となる生徒の数についての理解及び確認が十分でなかったことなどによると認められる。