4件 不当と認める国庫補助金 38,305,000円
国宝重要文化財等保存整備費補助金は、文化財保護法(昭和25年法律第214号)の趣旨にのっとり、文化財の適正な保存管理とその活用を図り、もって文化財保護の充実に資することを目的として、埋蔵文化財の実態を把握するために発掘調査を行う地方公共団体、重要文化財の修理を行う所有者、埋蔵文化財の総合的な公開活用に当たる法人等に対して、文化財保存事業費関係補助金交付要綱(昭和54年文化庁長官裁定。以下「交付要綱」という。)等に基づき事業に要する経費の一部を国が補助するものである。
交付要綱等において、補助事業の補助対象経費は、①埋蔵文化財緊急調査については発掘調査に要する経費や発掘調査の成果を記録した発掘調査報告書の作成に要する経費等、②重要文化財(建造物・美術工芸品)修理、防災事業については重要文化財である建造物の修理工事経費等、③地域の特色ある埋蔵文化財活用事業(平成26年度は地域の特性を活かした史跡等総合活用支援推進事業)については埋蔵文化財の公開及び整理・収蔵等を行うために必要な施設の設備整備経費、附帯工事経費、設計料、監理料等となっている。そして、埋蔵文化財以外の文化財を取り扱うための経費は、③の事業の補助の対象とならないこととなっている。また、補助事業は、国庫補助金の交付を受けた年度の3月31日までに完了しなければならないこととなっている。
消費税(地方消費税を含む。以下同じ。)は、課税事業者が課税対象となる取引を行った場合に納税義務が生ずるが、生産及び流通の各段階で重ねて課税されないように、確定申告において、課税売上高に対する消費税額から課税仕入れに係る消費税額を控除(以下、この控除を「仕入税額控除」という。)する仕組みが採られている。そして、消費税の課税事業者である事業主体が、補助の対象となる建造物の修理等を行うことは課税仕入れに該当することから、上記の仕組みにより確定申告の際に当該修理等の課税仕入れに係る消費税額を仕入税額控除した場合には、事業主体はこれらに係る消費税額を実質的に負担していないことになる。このため、交付要綱において、事業主体は、補助事業完了後に消費税の確定申告により仕入税額控除した消費税額に係る国庫補助金相当額が確定した場合には、その額を速やかに都道府県教育委員会に報告し、同委員会は、その額の返還を命ずることとなっている。
本院が、21都道県、123市町村、52法人等計196事業主体において会計実地検査を行ったところ、4事業主体において、補助事業期間中に納品されておらず補助の対象とならない成果品に係る経費を補助対象経費に含めていたり、仕入税額控除した消費税額に係る国庫補助金相当額の報告及び返還を行っていなかったり、補助の対象とならない工事に係る設計費等を補助対象経費に含めていたりしていたため、国庫補助金計38,305,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、4事業主体において適正な会計経理を行うことの認識が欠けていたこと、補助事業における消費税の取扱いに対する理解が十分でなかったこと、交付要綱等の理解が十分でなかったこと、文化庁及び3県の教育委員会において実績報告書等に対する審査及び確認が十分でなかったこと、補助事業における消費税の取扱いについての指導及び審査が十分でなかったことなどによると認められる。
前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例1>
沖縄県は、平成23年度に実施した県内遺跡発掘調査に係る発掘調査報告書の印刷製本業務に係る経費等を対象として、補助対象経費を55,500,000円(国庫補助金44,400,000円)としていた。
しかし、同県は、上記補助対象経費のうち印刷製本業務に係る経費3,570,000円について、当該業務に係る成果品が実際には補助事業期間経過後の26年12月に納品されていて補助の対象とならないのに、補助対象期間中の24年3月30日に納品されたこととして、補助対象経費に含めていた。
したがって、上記補助の対象とならない経費を除いて適正な補助対象経費を算定すると51,930,000円(国庫補助金41,544,000円)となり、国庫補助金2,856,000円が過大に交付されていた。
<事例2>
オエノンホールディングス株式会社は、平成26、27両年度に実施した国指定重要文化財シャトーカミヤ旧醸造場施設の災害復旧に係る保存修理事業等の補助対象経費について、工事経費等に消費税を含めて計520,401,740円(国庫補助金計354,512,000円)としていた。
しかし、同社は、補助事業完了後の消費税の確定申告の際に、本件補助事業に係る消費税額を仕入税額控除していたのに、これに係る国庫補助金相当額の報告及び返還を行っていなかった。
したがって、上記の仕入税額控除した消費税額計38,534,171円に係る国庫補助金計26,250,000円が過大に交付されていた。
<事例3>
公益財団法人元興寺文化財研究所は、平成26、27両年度に埋蔵文化財の公開活用のために、その修復等を行う施設の改修工事等を実施し、これに係る設計費、監理費、改修工事費等の経費を対象として、補助対象経費を計381,442,253円(国庫補助金計190,720,000円)としていた。
しかし、同法人は、上記の補助対象経費に、埋蔵文化財以外の文化財の修復を取り扱うため補助の対象とならない記録資料修復室等の改修工事等に係る設計費6,791,364円及び監理費6,955,200円、計13,746,564円を含めていた。
したがって、上記補助の対象とならない経費を除いて適正な補助対象経費を算定すると計367,695,689円(国庫補助金計183,847,000円)となり、国庫補助金計6,873,000円が過大に交付されていた。
以上を部局等別に示すと次のとおりである。
部局等 | 補助事業者 (事業主体) |
補助事業 | 年度 | 補助対象経費 | 左に対する国庫補助金交付額 | 不当と認める補助対象経費 | 不当と認める国庫補助金 | 摘要 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(89) | 文化庁 | 沖縄県 | 埋蔵文化財緊急調査 | 23 | 55,500 | 44,400 | 3,570 | 2,856 | 補助事業期間中に納品されておらず補助の対象とならない成果品に係る経費を補助対象経費に含めていたもの |
(90) | 青森県 | 五所川原市 | 同 | 27 | 16,009 | 8,000 | 4,660 | 2,326 | 同 |
(91) | 茨城県 | オエノンホールディングス株式会社 | 重要文化財(建造物・美術工芸品)修理、防災 | 26、27 | 520,401 | 354,512 | 38,534 | 26,250 | 仕入税額控除した消費税額に係る国庫補助金相当額の報告及び返還を行っていなかったもの |
(92) | 奈良県 | 公益財団法人元興寺文化財研究所 | 地域の特色ある埋蔵文化財活用 | 26、27 | 381,442 | 190,720 | 13,746 | 6,873 | 補助の対象とならない工事に係る設計費等を補助対象経費に含めていたもの |
(89)―(92)の計 | 973,353 | 597,632 | 60,510 | 38,305 |