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雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったもの[厚生労働本省、48公共職業安定所、14公共職業安定所](102)


会計名及び科目
労働保険特別会計(雇用勘定) (項)失業等給付費
部局等
(1)(2) 厚生労働本省(支給庁)
48公共職業安定所(支給決定庁)
(3)厚生労働本省(支給庁)
14公共職業安定所(支給決定庁、支給庁)
支給の相手方
(1) 72人
(2) 18人
(3) 41人
計 117人(純計)
不当と認める失業等給付金
(1) 求職者給付(日雇労働求職者給付金を除く。)
(2) 就職促進給付
(3) 日雇労働求職者給付金
失業等給付金の支給額の合計
(1) 37,249,222円(平成25年度~29年度)
(2) 10,497,508円(平成27年度~28年度)
(3) 54,290,900円(平成26年度~28年度)
計 102,037,630円
不当と認める支給額
(1) 13,303,308円(平成25年度~29年度)
(2) 10,497,508円(平成27年度~28年度)
(3) 37,112,500円(平成26年度~28年度)
計 60,913,316円

1 保険給付の概要

(1) 雇用保険

雇用保険は、常時雇用される労働者等を被保険者として、被保険者が失業した場合、被保険者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合等に、その生活及び雇用の安定を図るなどのために失業等給付金の支給を行うほか、雇用安定事業等を行う保険である。

(2) 失業等給付金の種類

失業等給付金には、次の求職者給付及び就職促進給付のほか、教育訓練給付及び雇用継続給付の4種がある。

ア 求職者給付には基本手当、日雇労働求職者給付金(以下「日雇給付金」という。)等7種の手当等があり、このうち基本手当は、失業等給付金の支給額の大半を占めており、失業者の生活の安定を図る上で基本的な役割を担うもので、受給資格者(注)が失業している日について所定給付日数を限度として支給される。

イ 就職促進給付には6種の手当等があり、このうち再就職手当は、早期の再就職の促進を図るもので、受給資格者が基本手当を受給できる日数を所定給付日数の3分の1以上残して安定した職業に就いた場合に支給される。また、就業促進定着手当は、再就職手当の支給を受けた者が再就職先に6か月以上雇用され、かつ、再就職後の6か月間の賃金日額が離職前の6か月間の賃金日額を下回る場合に支給される。

ウ アの求職者給付の手当等のうち、日雇給付金は、日々雇用される者又は30日以内の期間を定めて雇用されるなどの者(以下「日雇労働被保険者」という。)であって、日雇労働被保険者手帳(以下「日雇手帳」という。)に雇用保険印紙(以下「印紙」という。)を貼付することにより、失業の日の属する月の前2月間に通算して26日分の雇用保険印紙保険料(以下「印紙保険料」という。)を納付しているなどの支給の要件を満たす者が失業した場合に支給される。なお、日雇手帳に貼付することとされている印紙は、賃金日額に応じて3種類ある。

(注)
受給資格者  被保険者が、離職して労働の意思及び能力を有するにもかかわらず職業に就くことができない状態にあり、原則として、離職日以前2年間に被保険者期間が通算して12か月以上(倒産等により離職した者(特定受給資格者)及び特定受給資格者以外の者であって期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新を希望したにもかかわらず、当該更新がないことなどにより離職した者については、離職日以前1年間に被保険者期間が通算して6か月以上)あることの要件を満たしていて、公共職業安定所において基本手当を受給する資格があると決定された者

(3) 失業等給付金の支給

上記の手当等は、公共職業安定所(以下「安定所」という。)が次のように支給決定を行い、これに基づいて厚生労働本省等が支給することとなっている。

ア 基本手当については、受給資格者から提出された失業認定申告書に記載されている就職又は就労(臨時的に短期間仕事に就くこと)の有無等の事実について確認して、失業の認定を行った上で、支給決定を行う。

イ 再就職手当及び就業促進定着手当については、受給資格者から提出された再就職手当支給申請書及び就業促進定着手当支給申請書に記載されている雇入年月日や賃金額等について調査し確認した上で、支給決定を行う。

ウ 日雇給付金については、失業の認定を行った日雇労働被保険者から提出された日雇手帳に賃金日額等実際の就労状況に応じた適切な印紙が貼付されているか確認した上で、当該失業の認定を行った日について日雇給付金の支給決定を行う。

また、偽りその他不正の行為により上記手当等の支給を受け、又は受けようとした者に対しては、その支給を受け、又は受けようとした日以後、当該手当等を支給しないことなどとなっており、安定所は、既に支給した手当等の返還等を命ずることができることとなっている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

本院は、合規性等の観点から、失業等給付金の支給を受けた者(以下「受給者」という。)に対する失業等給付金の支給決定が適正に行われているかに着眼して、求職者給付(日雇給付金を除く。以下同じ。)及び就職促進給付については全国47都道府県労働局(以下、都道府県労働局を「労働局」という。)の436安定所(平成29年3月末現在)のうち、14労働局の146安定所において会計実地検査を行い、25年度から29年度までの間における受給者から5,603人を選定して、また、日雇給付金については28年次に会計実地検査を行った12労働局の58安定所管内の199事業所が26年度に雇用するなどした受給者のうち2,123人を本年次においても引き続き対象として、失業等給付金の支給の適否について検査した。

検査に当たっては、失業認定申告書、日雇手帳等の書類により会計実地検査を行い、適正でないと思われる事態があった場合には、他の年度分も含めて更に当該安定所に調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

(2) 検査の結果

検査の結果、12労働局の48安定所管内における25年度から29年度までの間の求職者給付及び就職促進給付の受給者76人、及び6労働局の14安定所管内における26年度から28年度までの間の日雇給付金の受給者41人に対する失業等給付金の支給額計102,037,630円のうち計60,913,316円は、支給の要件を満たしていなかったもので支給が適正でなく、不当と認められる。

これを給付等の種別に示すと次のとおりである(下記ウの安定所、事業所及び受給者の数については、複数の態様に該当するものがある。)。

ア 求職者給付

46安定所管内の受給者72人は、再就職した後も引き続き基本手当の支給を受けるなどしており、これらに対する基本手当の支給額計37,249,222円のうち計13,303,308円は、支給の要件を満たしていなかった。

イ 就職促進給付

16安定所管内の受給者18人は、事実と相違した雇入年月日により再就職手当の支給を受けるなどしており、これらに対する再就職手当等の支給額計10,497,508円(再就職手当計9,117,685円、就業促進定着手当計1,379,823円)の全額は、支給の要件を満たしていなかった。

ア及びイの事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例1>

須崎安定所は、受給者Aから、平成27年8月25日に就職したとする失業認定申告書及び再就職手当支給申請書の提出を受けて、これに基づくなどして、基本手当151,500円、再就職手当980,473円及び就業促進定着手当581,024円、計1,712,997円の支給決定を行っていた。

しかし、実際には、受給者Aは27年8月2日に就職していたのに、上記のとおり27年8月25日に就職したと偽って申告したことから、受給者Aに対する基本手当124,453円、再就職手当980,473円及び就業促進定着手当581,024円、計1,685,950円が支給の要件を満たしていなかった。

ウ 日雇給付金

(ア) 3安定所管内の受給者20人(当該受給者が雇用されていた事業所数5)は、実際には就労していない日について、事業主から日雇手帳に印紙の貼付を受け、その日を含めて失業の日の属する月の前2月間に通算して26日分以上の印紙保険料が納付されていることとして支給を受けており、これらに対する日雇給付金の支給額計17,177,700円は、支給の要件を満たしていなかった。

(イ) 14安定所管内の受給者30人(当該受給者が雇用されていた事業所数9)は、実際には就労していた日について、事業主から日雇手帳に印紙の貼付を受けないまま、後日、その日に就労していないこととして失業の認定を受けることで支給を受けており、これらに対する日雇給付金の支給額計14,872,300円は、支給の要件を満たしていなかった。

(ウ) 1安定所管内の受給者10人(当該受給者が雇用されていた事業所数1)は、就労していた日について、事業主から日雇手帳に賃金日額に対応しない種類の印紙の貼付を受け、所定の額よりも高額な日雇給付金の支給を受けるなどしており、これらに対する日雇給付金の支給額計5,062,500円は、支給の要件を満たしていなかった。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例2>

名古屋中安定所は、名古屋南安定所管内の事業主Bに雇用されていた受給者16名が安定所に提出した日雇手帳等に基づき失業の認定を行うなどして、平成26年9月20日から28年8月26日までの間の2,718日分について、日雇給付金計20,385,000円の支給決定を行っていた。

しかし、受給者16名は、実際には就労していない日について、事業主Bから日雇手帳に印紙の貼付を受け、その日を含めて失業の日の属する月の前2月間に通算して26日分以上の印紙保険料が納付されていることとして日雇給付金の支給を受けるなどしており、当該2,718日分の日雇給付金計20,385,000円が支給の要件を満たしていなかった。

このような事態が生じていたのは、受給者が誠実でなかったなどのため、失業認定申告書等の記載内容が事実と相違するなどしていたり、日雇手帳の印紙の貼付状況が受給者の実際の就労状況と相違していたりしていたのに、ア及びイの事態に係る48安定所及びウの事態に係る14安定所において、これに対する調査確認が十分でないまま支給決定を行っていたことなどによると認められる。

なお、これらの適正でなかった支給額は、本院の指摘により、全て返還の処置が執られた。

これらの適正でなかった支給額を労働局ごとに示すと次のとおりである。

ア及びイの事態

労働局名 安定所 本院の調査に係る受給者数 不適正受給者数 左の受給者に支給した失業等給付金 左のうち不当と認める失業等給付金
    千円 千円
北海道 函館 等5 184 8 8,699 1,234
     
  小計       8,699 1,234
山形 山形 等3 175 6 2,885 826
     
  小計       2,885 826
東京 大森 等3 137 4 2,372 1,106
     
  小計       2,372 1,106
山梨 富士吉田 等2 51 4 3,135 543
  甲府 等2 85 2 1,292 1,292
  小計       4,428 1,835
長野 上田 等5 176 9 4,748 2,035
  篠ノ井 等3 58 3 1,289 1,289
  小計       6,038 3,325
岐阜 多治見 等3 123 5 1,838 1,347
  高山 等2 54 2 913 913
  小計       2,751 2,261
愛知 半田 等5 170 7 2,977 1,665
  瀬戸 等3 64 3 1,641 1,641
  小計       4,618 3,307
大阪 梅田 等6 220 6 2,054 1,340
     
  小計       2,054 1,340
岡山 岡山 等4 199 8 3,698 314
  津山   53 1 281 281
  小計       3,980 596
愛媛 八幡浜 等4 123 6 1,326 594
  八幡浜 等3 75 3 1,939 1,939
  小計       3,266 2,533
高知 高知 等3 145 6 1,376 1,011
  須崎   38 3 2,404 2,404
  小計       3,780 3,415
福岡 福岡中央 等3 123 3 2,136 1,281
  福岡中央   40 1 734 734
  小計       2,870 2,016
求職者給付計 46か所 1,826 72 37,249 13,303
就職促進給付計 16か所 467 18 10,497 10,497
合計       47,746 23,800
注(1)
上段は求職者給付に係る分、下段は就職促進給付に係る分である。
注(2)
安定所数及び不適正受給者数については、両給付間で重複しているものがあり、実数はそれぞれ48か所、76人である。

ウの事態

労働局名 安定所 本院の調査に係る受給者数 労働局管内に所在する事業所数 不適正受給者数 左の受給者に支給した日雇給付金 左のうち不当と認める日雇給付金
      千円 千円
愛知 名古屋中   95 2 17 21,480 20,655
三重 伊賀   7(7) 10,777 2,910
京都 京都田辺   2(2) 1,260 30
大阪 大阪港 等7 476 4 9(2) 15,440 10,060
奈良 奈良 等3 225 5 10 8,490 3,442
高知 安芸   1(1) 765 15
14か所 765 11 41 54,290 37,112
注(1)
本院の調査に係る受給者数については、異なる労働局管内に所在する複数の事業所で就労する受給者がいるため、数値を合計しても計とは一致しない。
注(2)
不適正受給者数の( )書きは、他の労働局管内に所在する事業所で就労した不適正受給者数で、内数である。
注(3)
不適正受給者数及び不適正受給者に支給した日雇給付金については、異なる労働局管内に所在する2安定所で不適正な支給を受けている受給者が1人、3安定所で不適正な支給を受けている受給者が2人いるため、数値を合計しても計とは一致しない。

ア、イ及びウの事態の合計(純計)

  不適正受給者数 左に支給した失業等給付金 左のうち不当と認める失業等給付金
千円 千円
117 102,037 60,913