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  • 平成28年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第8 厚生労働省|
  • 不当事項|
  • 補助金

(1) 医療施設耐震化臨時特例交付金により造成した基金を活用して実施した事業において、仕入税額控除した消費税に係る交付金相当額が基金又は国庫に返還されていなかったもの[厚生労働本省](105)(106)


2件 不当と認める国庫補助金 31,689,415円

医療施設耐震化臨時特例交付金(以下「交付金」という。)は、「平成21年度医療施設耐震化臨時特例交付金の交付について」(平成21年厚生労働省発医政第0605004号)等に基づき、大規模地震等の災害時に重要な役割を果たす災害拠点病院等の医療機関の耐震整備を行い、地震発生時において適切な医療提供体制の維持を図るために、都道府県に設置する医療施設耐震化臨時特例基金(以下「基金」という。)の造成に必要な経費を国が交付するものである。

都道府県は、「医療施設耐震化臨時特例基金管理運営要領」(平成21年医政発第0605010号。以下「要領」という。)等に基づき、医療機関の開設者である事業者が行う耐震化整備事業に必要な経費を基金から取り崩して、事業者に対して助成金を交付している。

消費税(地方消費税を含む。以下同じ。)は、課税事業者が課税対象となる取引を行った場合に納税義務が生ずるが、生産及び流通の各段階の取引で重ねて課税されないように、確定申告において、課税売上高に対する消費税額から課税仕入れに係る消費税額を控除(以下、この控除を「仕入税額控除」という。)する仕組みが採られている。そして、消費税の課税事業者である事業者が、助成金の交付を受けて建物の改築等を行うことは課税仕入れに該当することから、上記の仕組みにより確定申告の際に当該建物の改築等の課税仕入れに係る消費税額を仕入税額控除した場合には、事業者はこれらに係る消費税額を実質的に負担していないことになる。このため、要領等において、事業者は、実績報告書の提出後に消費税の確定申告により仕入税額控除した消費税に係る助成金相当額が確定した場合には、その額を速やかに都道府県に報告し、都道府県は、その額を返還させることとなっている。また、都道府県は、当該事業者から返還を受けたときには、当該金額を基金に積み立てることとなっており、基金の解散後に返還を受けたときには、当該金額を国庫に返還することとなっている。

本院が、15都府県において会計実地検査を行ったところ、埼玉、福井両県において次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

両県が助成金を交付した計19事業者のうち14事業者は、消費税の確定申告の際に耐震化整備事業に係る消費税額計31,689,415円を仕入税額控除しており、これに係る助成金相当額が同額と確定していた。しかし、両県は、13事業者(一部の年度において報告を行っていた事業者を含む。)から助成金相当額の報告を受けていたのに、当該事業者から助成金相当額を返還させていなかった。また、埼玉県は、1事業者から助成金相当額の報告を受けておらず、その額を返還させていなかった。このため、両県は、助成金相当額計31,689,415円(交付金相当額同額)を、基金に積み立てていなかったり、基金の解散(埼玉県:平成29年4月、福井県:28年5月)後には国庫に返還していなかったりしていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、両県において、仕入税額控除した消費税に係る交付金相当額を適時適切に処理することについての認識が欠けていたことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

埼玉県は、平成25年度から27年度までの間に、さいたま赤十字病院の耐震化整備事業を行う日本赤十字社埼玉県支部に対して、基金を取り崩して、助成金計956,878,890円を交付していた。そして、日本赤十字社本社は、実績報告書の提出後に行った消費税の確定申告の際に、耐震化整備事業に係る消費税額25年度100,040円、26年度984,649円、27年度6,479,499円、計7,564,188円を仕入税額控除しており、同支部に対するこれに係る助成金相当額が同額と確定していた。

しかし、同県は、同支部から、25年度の助成金相当額100,040円の報告を受けていたのに、その額を返還させておらず、また、26、27両年度の助成金相当額984,649円及び6,479,499円の報告を受けておらず、その額を返還させていなかった。このため、同県は、当該助成金相当額計7,564,188円(交付金相当額同額)を基金に積み立てていなかったり、基金の解散(29年4月)後には国庫に返還していなかったりしていた。

以上を事業主体別に示すと次のとおりである。

  部局等 補助事業者
(事業主体)
補助事業 年度 基金使用額 左に対する交付金交付額 不当と認める交付金相当額
          千円 千円 千円
(105) 厚生労働本省 埼玉県 医療施設耐震化臨時特例交付金 21、22、24、25 5,125,185 5,125,185 29,682
(106) 福井県 21、22、25 635,457 635,457 2,007
(105)(106)の計 5,760,642 5,760,642 31,689