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  • 平成28年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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(2) 国民健康保険の療養給付費負担金が過大に交付されていたもの[15道府県](107)―(132)


26件 不当と認める国庫補助金 273,486,789円

国民健康保険は、市町村(特別区、一部事務組合及び広域連合を含む。以下同じ。)等が保険者となって、被用者保険の被保険者及びその被扶養者等を除き、当該市町村の区域内に住所を有する者等を被保険者として、その疾病、負傷、出産又は死亡に関して、療養の給付、出産育児一時金の支給、葬祭費の支給等を行う保険である。

市町村が行う国民健康保険の被保険者は、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)に基づき、一般被保険者と退職被保険者(注1)及びその被扶養者(以下「退職被保険者等」という。)とに区分されている。国民健康保険の被保険者の資格を取得している者が退職被保険者となるのは、当該被保険者が厚生年金等の受給権を取得した日(ただし、国民健康保険の資格取得年月日以前に年金受給権を取得している場合は国民健康保険の資格取得年月日。以下「退職者該当年月日」という。)となっている。そして、退職被保険者等となったときは、年金証書等が到達した日の翌日から起算して14日以内に市町村に届出をすることなどとなっている。

(注1)
退職被保険者  被用者保険の被保険者であった者で、平成26年度までの間に退職して国民健康保険の被保険者となり、かつ、厚生年金等の受給権を取得した場合に65歳に達するまでの間において適用される資格を有する者

国民健康保険については各種の国庫助成が行われており、その一つとして、市町村が行う国民健康保険の事業運営の安定化を図るために、同法に基づき療養給付費負担金(以下「国庫負担金」という。)が交付されている。

国庫負担金の交付の対象は、一般被保険者に係る医療費となっており、退職被保険者等に係る医療費については、被用者保険の保険者が拠出する療養給付費等交付金等で負担することとなっていることから、国庫負担金の交付の対象となっていない。

毎年度の国庫負担金の交付額は、「国民健康保険の国庫負担金等の算定に関する政令」(昭和34年政令第41号)等に基づき、次のとおり算定することとなっている。

国民健康保険の国庫負担金等の算定に関する政令 式 画像

このうち、一般被保険者に係る医療給付費は、療養の給付に要する費用の額から当該給付に係る被保険者の一部負担金に相当する額を控除した額と、入院時食事療養費、療養費、高額療養費等の支給に要する費用の額との合算額とすることとなっている。

ただし、届出が遅れるなどしたため退職被保険者等の資格が遡って確認された場合には、一般被保険者に係る医療給付費から、退職者該当年月日以降に一般被保険者に係るものとして支払った医療給付費を控除することとなっている。

また、都道府県又は市町村が、国の負担金等の交付を受けずに自らの財政負担で、年齢その他の事由により、被保険者の全部又は一部について、その一部負担金に相当する額の全部又は一部を当該被保険者に代わり医療機関等に支払う措置(以下「負担軽減措置」という。)を講じている場合がある。そして、負担軽減措置の対象者の延べ人数の被保険者数に占める割合が一定の割合を超える市町村については、負担軽減措置の対象者に係る療養の給付に要する費用の額、高額療養費の支給に要する費用の額等に、被保険者の負担の軽減の度合いに応じた所定の率を乗じて減額調整(注5)を行うこととなっている。

(注5)
減額調整  負担軽減措置により被保険者が医療機関等の窓口で支払う一部負担金が軽減されると、一般的に受診が増えて医療給付費が増加する(波及増)傾向があるとし、波及増に係る医療給付費を国庫負担対象費用額に含めると、負担軽減措置を講じていない市町村との公平を欠くことになるとして、この波及増に係る国庫負担対象費用額を減額するために行われる調整

国庫負担金の交付手続については、①交付を受けようとする市町村は、都道府県に交付申請書を提出し、②これを受理した都道府県は、その内容を添付書類により、また、必要に応じて現地調査を行うことにより審査し確認した上で厚生労働省に提出し、③厚生労働省は、これに基づき交付決定を行って国庫負担金を交付することとなっている。そして、④市町村は、当該年度の終了後に都道府県に事業実績報告書を提出し、⑤これを受理した都道府県は、その内容を審査し確認した上で厚生労働省に提出し、⑥厚生労働省は、これに基づき交付額の確定を行うこととなっている。

本院は、28都道府県の286市区町村及び1広域連合において、平成22年度から27年度までの間に交付された国庫負担金について、会計実地検査を行った。その結果、15道府県の26市町村において、負担軽減措置の対象者に対する高額療養費の一部を減額調整の対象としていなかったり、集計を誤って一般被保険者に係る医療給付費を過大に算定していたりするなどしていたため、国庫負担金交付額計187,626,890,874円のうち計273,486,789円が過大に交付されていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、26市町村において国庫負担金の交付額の算定に当たり、制度の理解が十分でなかったり、確認が十分でなかったりしていたこと、15道府県において事業実績報告書の審査及び確認が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

北海道苫小牧市は、重度心身障害者等の保健の向上に寄与するとともに福祉の増進を図ることを目的として、重度心身障害者等に対して一部負担金に相当する額の一部を助成する負担軽減措置を講じている。

しかし、同市は、平成22年度から26年度までの間の国庫負担金の実績報告に当たり、一般被保険者に係る医療給付費の算定において、負担軽減措置の対象者に対する高額療養費のうち医療機関等に対して直接支払う方法により支給したものなどを減額調整の対象としていなかったため、国庫負担対象費用額を過大に算定していた。

その結果、国庫負担金が計55,588,952円過大に交付されていた。

以上を部局等別・交付先(保険者)別に示すと、次のとおりである。

  部局等 交付先
(保険者)
年度 国庫負担対象費用額 左に対する国庫負担金 不当と認める国庫負担対象費用額 不当と認める国庫負担金 摘要
        千円 千円 千円 千円  
(107) 北海道 岩見沢市 23、25、26 10,509,019 3,433,209 14,821 4,816 負担軽減措置の対象者に対する高額療養費の一部を減額調整の対象としていなかったもの
(108) 苫小牧市 22~26 30,303,984 9,944,906 169,673 55,588
(109) 岩手県 花巻市 25 3,066,927 982,326 6,998 2,369 遡及退職被保険者等に係る遡及期間中の医療給付費を控除していなかったもの
(110) 茨城県 土浦市 25、26 11,862,434 3,792,109 30,663 9,812 負担軽減措置の対象者に対する高額療養費の一部を減額調整の対象としていなかったもの
(111) 埼玉県 川口市 25、26 48,018,700 15,354,810 17,541 5,614 負担軽減措置の対象者に対する高額療養費の一部を減額調整の対象としていなかったものなど
(112) 坂戸市 26 3,141,776 1,005,286 6,339 2,094 遡及退職被保険者等に係る遡及期間中の医療給付費を控除していなかったもの
(113) 千葉県 八千代市 22~26 28,720,521 9,410,006 8,686 2,809
(114) 香取郡
多古町
24 909,042 291,776 (注7)
1,526 計算を誤って国庫負担金を過大に算定していたもの
(115) 神奈川県 横浜市 22、23 232,669,126 79,106,356 97,511 33,153 負担軽減措置の対象者に対する高額療養費の一部を減額調整の対象としていなかったもの
(116) 川崎市 26 48,942,830 15,654,512 115,888 37,084 集計を誤って一般被保険者に係る医療給付費を過大に算定していたもの
(117) 新潟県 魚沼市 26 1,296,271 416,091 (注8)
△4,515
1,279 計算を誤って国庫負担金を過大に算定していたもの
(118) 石川県 河北郡
内灘町
24 1,044,535 335,363 (注7)
1,669
(119) 長野県 上高井郡
高山村
25 193,159 63,687 (注7)
2,427
(120) 岐阜県 大垣市 23、24 9,779,682 3,225,929 12,342 4,061 負担軽減措置の対象となっている医療給付費に係る減額調整を誤っていたもの
(121) 土岐市 26、27 3,765,891 1,204,942 10,565 3,381 負担軽減措置の対象者に対する高額療養費の一部を減額調整の対象としていなかったもの
(122) 山県市 23~27 5,914,741 1,914,310 19,156 6,198
(123) 愛知県 安城市 25、26 9,620,275 3,071,781 12,729 4,424 集計を誤って一般被保険者に係る医療給付費を過大に算定していたもの
(124) 京都府 京都市 26 50,957,469 16,303,347 81,110 25,955
(125) 舞鶴市 25 2,725,708 874,224 9,876 3,160
(126) 大阪府 茨木市 22~26 44,504,593 14,576,319 14,582 4,980
(127) 福岡県 久留米市 26 13,608,813 4,350,030 69,457 22,226 負担軽減措置の対象となっている医療給付費に係る減額調整を誤っていたものなど
(128) 中間市 26 1,803,171 576,226 12,834 4,106 集計を誤って一般被保険者に係る医療給付費を過大に算定していたもの
(129) 宮若市 27 1,351,388 432,444 12,801 4,096 負担軽減措置の対象となっている医療給付費に係る減額調整を誤っていたもの
(130) 遠賀郡
岡垣町
26 1,036,121 331,252 17,990 6,054 集計を誤って一般被保険者に係る医療給付費を過大に算定していたもの
(131) 佐賀県 小城市 27 2,117,932 679,990 (注7)
5,124 計算を誤って国庫負担金を過大に算定していたもの
(132) 佐賀県 西松浦郡
有田町
26 866,521 295,644 (注9)
1,656
19,469 計算を誤って国庫負担金を過大に算定していたものなど
(107)―(132)の計 568,730,642 187,626,890 743,227 273,486  
(注6)
遡及して退職被保険者等の資格を取得した者
(注7)
香取郡多古町、河北郡内灘町、上高井郡高山村及び小城市は、計算を誤って国庫負担金を過大に算定していたもので、国庫負担対象費用額の算出には誤りはなかったことから、本表の「不当と認める国庫負担対象費用額」欄には計数を掲げていない。
(注8)
魚沼市は、遡及退職被保険者等に係る医療給付費の集計を誤り、国庫負担対象費用額を過小に算定するとともに、その後の国庫負担金の算定の際には計算を誤って国庫負担金を過大に算定していた。このため、同市の「国庫負担対象費用額」は過小に算定していた額となり、また、「不当と認める国庫負担対象費用額」はマイナス表示の額となることから、当該金額については集計の対象としていない。
(注9)
西松浦郡有田町は、遡及退職被保険者等に係る医療給付費の集計を誤り、国庫負担対象費用額を過大に算定するとともに、その後の国庫負担金の算定の際には計算を誤って国庫負担金を過大に算定していた。