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  • 平成28年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 補助金

(8) 生活扶助費等負担金等が過大に交付されていたもの[13都道府県](167)―(192)


26件 不当と認める国庫補助金 779,445,265円

生活扶助費等負担金、医療扶助費等負担金及び介護扶助費等負担金(平成25年度以前はこれらを合わせて生活保護費等負担金。以下「負担金」という。)は、都道府県又は市町村(特別区を含む。以下「事業主体」という。)が、生活に困窮する者に対して、最低限度の生活を保障するために、その困窮の程度に応じて必要な保護に要する費用(以下「保護費」という。)等を支弁する場合に、その一部を国が負担するものである。保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産や能力等あらゆるものを活用することを要件としている。

また、事業主体は、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず保護を受けた者から事業主体の定める額を返還させたり、不実の申請等により保護を受けるなどした者から、その費用の額の全部又は一部を徴収したりすることなどができることとなっている(以下、これらを「返還金等」という。)。そして、事業主体は、地方自治法(昭和22年法律第67号)等に基づき、返還金等に係る債権(以下「返還金等債権」という。)を管理することとなっている。

負担金のうち保護費に係る交付額は、次のとおり算定することとなっている。

負担金のうち保護費に係る交付額の算定 画像

この費用の額、返還金等の調定額及び不納欠損額は、それぞれ次のとおり算定することとなっている。

ア 費用の額は、次の①及び②の額とする。

  • ① 保護を受ける世帯(以下「被保護世帯」という。)を単位として、その所在地域、構成員の数、年齢等の別に応じて算定される生活費の額から、被保護世帯における就労収入、年金又は手当の受給額等を基に収入として認定される額を控除して決定された生活扶助等に係る保護費の額
  • ② 被保護者が医療機関で診察、治療等の診療を受けるなどの場合の費用について、その全額又は一部を事業主体が負担するものとして決定された医療扶助及び介護扶助に係る保護費の額

イ 返還金等の調定額は、事業主体において、当該年度に調査、決定した返還金等の額とする。

ウ 不納欠損額は、返還金等債権のうち、時効が成立し権利が消滅するなどした額とする。

なお、返還金等債権に対して時効中断措置及び適切な納入指導等の措置(以下「時効中断措置等」という。)を執らないまま消滅時効が成立した場合は、適時適切な債権管理を行っていたとは認められず、これに係る不納欠損額は国庫負担の対象から除かれる。

本院が、25都道府県の271事業主体において会計実地検査を行ったところ、13都道府県の26事業主体において、返還金等債権の時効中断措置等が執られておらず、適時適切な債権管理が行われていなかったのに、これに係る不納欠損額を国庫負担の対象として計上するなどしていたため、負担金計779,445,265円が過大に交付されていて不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、事業主体において返還金等債権について適時適切な債権管理を行う必要性についての認識が欠けていたこと、適時適切な債権管理を行っていない返還金等債権に係る不納欠損額は国庫負担の対象とならないことについての理解が十分でなかったこと、都道府県において事業実績報告書の審査及び確認が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

大阪府東大阪市は、平成23、24両年度に不納欠損処理した返還金等債権380件、計253,444,414円について全て適切な債権管理を行っていたとして、各年度の事業実績報告書に国庫負担の対象として計上していたが、実際には、上記返還金等債権のうち194件、計150,364,219円について時効中断措置等を執っておらず、適時適切な債権管理を行っていなかった。したがって、これらの返還金等債権に係る不納欠損額を国庫負担の対象として計上していたことは適切でなく、これに係る負担金計112,773,164円が過大に交付されていた。

以上を部局等別・事業主体別に示すと、次のとおりである。

  部局等 補助事業者
(事業主体)
年度 国庫負担対象事業費 左に対する国庫負担金交付額 不当と認める国庫負担対象事業費 不当と認める国庫負担金交付額 摘要
        千円 千円 千円 千円  
(167) 北海道 札幌市 23~25 376,605,166 282,453,874 77,817 58,363 時効中断措置等を執っていなかったもの
(168) 函館市 23~25 63,872,243 47,904,182 123,503 92,627
(169) 旭川市 23~25 64,661,313 48,495,985 102,974 77,230
(170) 室蘭市 23、25 12,299,102 9,224,327 9,179 6,884
(171) 釧路市 23~25 43,300,689 32,475,516 35,308 26,481
(172) 苫小牧市 23~25 27,287,753 20,465,814 15,116 11,337
(173) 青森県 青森県 24、25 4,353,342 3,265,006 8,754 6,566
(174) 茨城県 つくば市 23~25 6,940 5,205 2,371 1,778 返還決定額を誤っていたもの
(175) 埼玉県 さいたま市 (注)
23~25
95,472,573 71,604,430 50,170 37,628 時効中断措置等を執っていなかったもの
(176) 川越市 (注)
23~25
20,845,232 15,633,924 62,459 46,844
(177) 千葉県 千葉市 (注)
23、24
59,245,921 44,434,441 11,995 8,996
(178) 船橋市 (注)
23~25
43,844,902 32,883,676 16,957 12,718
(179) 浦安市 (注)
23~25
6,309,045 4,731,783 4,943 3,707
(180) 東京都 文京区 (注)
23~25
15,041,870 11,281,402 25,770 19,328
(181) 江東区 (注)
23~25
54,474,207 40,855,655 51,315 38,486
(182) 世田谷区 (注)
23~25
57,344,726 43,008,544 9,043 6,782
(183) 練馬区 (注)
23~25
90,673,329 68,004,997 27,311 20,483
(184) 石川県 小松市 23~26 6,910 5,183 1,777 1,333 返還決定額を誤っていたもの
(185) 愛知県 名古屋市 (注)
23~25
243,538,246 182,653,684 81,743 61,307 時効中断措置等を執っていなかったもの
(186) 京都府 京都市 (注)
23、24
151,851,413 113,888,559 37,166 27,874
(187) 大阪府 大阪府 (注)
23
1,210,734 908,050 4,504 3,378
(188) 東大阪市 23、24 70,816,146 53,112,109 150,364 112,773
(189) 高知県 高知市 24~27 3,390 2,543 2,284 1,713 返還決定額を誤っていたもの
(190) 福岡県 福岡市 (注)
23~25
231,700,992 173,775,744 105,168 78,876 時効中断措置等を執っていなかったもの
(191) 大牟田市 (注)
23、24
15,259,492 11,444,619 16,749 12,561
(192) 宮崎県 延岡市 (注)
24
4,010,537 3,007,902 4,506 3,380
(167)―(192)の計 1,754,036,223 1,315,527,167 1,039,260 779,445  
(注)
さいたま、川越、千葉、船橋、浦安、名古屋、京都、東大阪、福岡、大牟田、延岡各市、文京、江東、世田谷、練馬各区は、返還金等債権に係る不納欠損額について、平成25年度においても他年度と同様に国庫負担の対象として過大に計上していたが、当該事態については平成26年度決算検査報告252ページの「生活保護費に係る返還金等債権について、適時適切な債権管理を行うことなどにより、返還金等債権に係る負担金の算定が適正に行われるよう適宜の処置を要求し及び是正改善の処置を求めたもの」において指摘金額としていることから、重複する額については除外している。