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  • 平成28年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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(14) 緊急雇用創出事業臨時特例交付金及びふるさと雇用再生特別交付金により造成した基金を活用して実施した事業において基金を補助の目的外に使用していたもの[厚生労働本省](209)―(213)


5件 不当と認める国庫補助金 59,702,091円

緊急雇用創出事業臨時特例交付金は、厚生労働省が定めた「平成20年度緊急雇用創出事業臨時特例交付金交付要綱」(平成21年厚生労働省発職第0130003号)等に基づき、各都道府県が、同交付金を原資として、緊急雇用創出事業臨時特例基金(以下「緊急雇用創出基金」という。)を造成するために国が交付するものであり、平成20年度から28年度までに計1兆6110億余円が交付されている。

また、ふるさと雇用再生特別交付金は、同省が定めた「平成20年度ふるさと雇用再生特別交付金交付要綱」(平成21年厚生労働省発職第0130002号)に基づき、各都道府県が、同交付金を原資として、ふるさと雇用再生特別基金(以下「ふるさと基金」という。)を造成するために国が交付するものであり、20年度に2500億円が交付されている。

そして、各都道府県及び各市町村等(以下「都道府県等」という。)は、同省が定めた「緊急雇用創出事業実施要領」(平成21年職発第0130008号)等に基づき、緊急雇用創出基金を財源として失業者に対する原則として1年以内の短期の雇用・就業機会を創出して提供するなどの緊急雇用創出事業を、また、同省が定めた「ふるさと雇用再生特別基金事業実施要領」(平成21年職発第0130005号)等に基づき、ふるさと基金を財源として地域の求職者等を雇い入れて、原則として1年以上の長期的な雇用機会を創出するふるさと雇用再生特別基金事業を、それぞれ実施している(以下、緊急雇用創出事業とふるさと雇用再生特別基金事業を合わせて「基金事業」といい、また、緊急雇用創出事業実施要領とふるさと雇用再生特別基金事業実施要領を合わせて「実施要領」という。)。なお、ふるさと雇用再生特別基金事業の実施は23年度に終了している。

基金事業では、都道府県等が企画した事業を民間企業等に委託して、当該民間企業等(以下「受託者」という。)が公募により失業者を雇い入れて行う事業(以下「委託事業」といい、また、公募により雇用された失業者を「新規雇用者」という。)等が実施されている。都道府県は、自らが委託事業等を実施する場合には、委託費相当額等をそれぞれの基金から取り崩して受託者に支払い、市町村等が委託事業等を実施する場合には、当該市町村等に対して基金を財源とした補助金(補助率10分の10以内)を交付している。

実施要領等によれば、基金事業の対象となる経費は、新規雇用者、既に受託者等に雇用されている者等(以下「既存雇用者」という。)が基金事業に従事した分に係る賃金等の人件費及び基金事業の実施に必要なその他の経費とされている。

本院が、5道県(注1)において、5道県及びこれらの道県から補助金の交付を受けた59市町村等が実施した基金事業を対象に会計実地検査を行ったところ、3県(注2)及び8市町(注3)が実施した基金事業において、受託者等が、新規雇用者や既存雇用者に係る人件費を過大に計上するなどしていたため、計59,702,091円(交付金相当額同額)が5道県に造成されたそれぞれの基金から過大に取り崩されて、補助の目的外に使用されていて不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、上記の5道県及び8市町において市町又は受託者から提出された委託事業等に係る実績報告書等の審査が十分でなかったこと、5道県において8市町に対する指導が十分でなかったこと、厚生労働省において5道県に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。

(注1)
5道県  北海道、福島、福井、長崎、熊本各県
(注2)
3県  福島、福井、熊本各県
(注3)
8市町  釧路、稚内、会津若松、敦賀、島原、壱岐、阿蘇各市、斜里郡斜里町

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

福島県会津若松市は、ふるさと基金を財源とした委託事業として、平成22、23両年度に、会津地域における農産物等の専門知識を活かし、消費者への商品提案等を行う「会津地域農産食品等産業活性化マーケティング支援(アンテナショップ)事業業務」を契約金額22年度21,100,719円、23年度21,881,949円、計42,982,668円でA社に委託していた。そして、A社は、本件委託事業に要した経費を22年度21,826,754円、23年度23,328,122円、計45,154,876円とする実績報告書を同市に提出し、これにより同市は、委託費の額を両年度とも上記の契約金額と同額で確定し、福島県は同市に対してふるさと基金を財源として同額の補助金を交付していた。

しかし、A社が実績報告書に計上した人件費は、実際に新規雇用者や既存雇用者に支払った賃金等の額より高い額となっていた。また、その他の経費である物件費についても、実際に支払った額より高い額となっているなどしていた。

したがって、実際に支払われた人件費等の額に基づき、両年度の適正な委託費の実績額を算定すると、22年度13,771,262円、23年度8,363,566円、計22,134,828円となり、前記委託費の契約金額計42,982,668円との差額20,847,840円が、福島県から同市に交付される補助金としてふるさと基金から過大に取り崩されて、補助の目的外に使用されていた。

以上を事業主体別に示すと次のとおりである。

  部局等 補助事業者
(事業主体)
補助事業 年度 基金造成額 左に対する交付金交付額 不当と認める基金使用額 不当と認める交付金相当額
          千円 千円 千円 千円
(209) 厚生労働本省 北海道 緊急雇用創出基金 20~25 53,490,000 53,490,000 1,449 1,449
(210) 福島県 20~28 162,808,135 162,808,135 31,345 31,345
      ふるさと基金 20 5,970,000 5,970,000 20,847 20,847
      小計   168,778,135 168,778,135 52,193 52,193
(211) 福井県 緊急雇用創出基金 20~25 12,312,500 12,312,500 3,513 3,513
(212) 長崎県 20~25 19,999,100 19,999,100 1,299 1,299
(213) 熊本県 20~25 22,236,400 22,236,400 1,245 1,245
(209)―(213)の計 276,816,135 276,816,135 59,702 59,702