ページトップ
  • 平成28年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第8 厚生労働省|
  • 不当事項|
  • その他

介護給付費に係る国の負担が不当と認められるもの[9道県、5市](220)


会計名及び科目
一般会計 (組織)厚生労働本省
(項)介護保険制度運営推進費(平成19年度以前は、(項)老人医療・介護保険給付諸費、(項)国民健康保険助成費)
(項)介護納付金年金特別会計へ繰入(平成19年度以前は、(項)社会保険国庫負担金)
(項)生活保護等対策費(平成26年度以前は、(項)生活保護費)
部局等
9道県、5市
国の負担の根拠
介護保険法(平成9年法律第123号)、健康保険法(大正11年法律第70号)、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)、生活保護法(昭和25年法律第144号)
実施主体
市40、区1、町13、村1、一部事務組合3、広域連合2、計60実施主体
事業者
19事業者
過大に支払われた介護給付費に係る介護サービスの種類
通所介護、訪問介護等
過大に支払われた介護給付費の件数
10,342件(平成19年度~28年度)
過大に支払われた介護給付費の額
66,635,566円(平成19年度~28年度)
不当と認める国の負担額
20,232,228円(平成19年度~28年度)

1 介護給付の概要

(1) 介護保険

介護保険は、介護保険法(平成9年法律第123号)に基づき、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態又は要支援状態(以下「要介護状態等」という。)となった者に対して、必要な保健医療サービス及び福祉サービス(以下「介護サービス」という。)に係る保険給付を行うものであり、市町村(特別区、一部事務組合及び広域連合を含む。以下同じ。)が保険者、当該市町村の区域内に住所を有する65歳以上の者等が被保険者となっている。

(2) 介護サービス

被保険者が介護保険法に基づき受ける介護サービスには、居宅サービス(注1)、施設サービス及び地域密着型サービス(注2)並びに居宅の要介護状態となった者が利用する居宅サービス等の種類等を定めた計画(以下「居宅サービス計画」という。)の作成等を行う居宅介護支援等がある。また、居宅サービスには訪問介護(注3)、通所介護(注4)等が、施設サービスには介護療養施設サービス等がある。

そして、被保険者が介護サービスを受けようとする場合の手続は、次のとおりとなっている。

① 要介護状態等にあること及びその該当する要介護状態等の区分について、市町村の認定を受ける(以下、市町村から要介護状態にあるものとして認定を受けた者を「要介護者」といい、要支援状態にあるものとして認定を受けた者と合わせて「要介護者等」という。)。

② 都道府県知事等の指定を受けた居宅介護支援事業者等が、居宅サービス計画等の介護サービス計画を作成する。

③ 介護サービス計画に基づいて、都道府県知事等の指定等を受けた居宅サービス事業者若しくは介護保険施設又は市町村長の指定を受けた地域密着型サービス事業者(以下、これらと居宅介護支援事業者等を合わせて「介護サービス事業者」という。)から介護サービスを受ける。

(注1)
居宅サービス  居宅サービスには介護予防サービスを含む。
(注2)
地域密着型サービス  地域密着型サービスには地域密着型介護予防サービスを含む。
(注3)
訪問介護  居宅の要介護者等が、当該要介護者等の居宅において入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話を受けるもの
(注4)
通所介護  居宅の要介護者等が、指定通所介護事業所において入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話及び機能訓練を受けるもの

(3) 介護報酬の算定

介護サービス事業者が介護サービスを提供して請求することができる報酬の額(以下「介護報酬」という。)は、「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(平成12年厚生省告示第19号)及び「指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準」(平成12年厚生省告示第21号)(以下、両者を合わせて「算定基準」という。)等に基づき、介護サービスの種類の別に定められた単位数に単価(10円から11.40円)を乗ずるなどして算定することとなっている。

(4) 介護給付費

市町村は、介護保険法に基づき、要介護者等が居宅サービス、施設サービス又は地域密着型サービスの提供を受けたときは、原則として、介護報酬の100分の90に相当する額を、また、居宅介護支援等の提供を受けたときは、介護報酬の全額をそれぞれ介護サービス事業者に支払うこととなっている(以下、市町村が支払う介護報酬の額を「介護給付費」という。)。

介護給付費の支払手続は、次のとおりとなっている(図参照)。

① 介護サービス事業者は、要介護者等に提供した介護サービスの内容、金額等を記載した介護給付費請求書等を、市町村から介護給付費に係る審査及び支払に関する事務の委託を受けた国民健康保険団体連合会(以下「国保連合会」という。)に送付する。

② 国保連合会は、介護サービス事業者から送付された介護給付費請求書等の審査点検を行い、介護給付費を市町村に請求する。

③ 請求を受けた市町村は、金額等を確認した上で国保連合会を通じて介護サービス事業者に介護給付費を支払う。

図 介護給付費の支払の手続

図 介護給付費の支払の手続 画像

(5) 国の負担

介護給付費は、介護保険法に基づき、100分の50を公費で、100分の50を被保険者の保険料でそれぞれ負担することとなっている。

そして、公費負担として、介護給付費のうち、施設等分(注5)については国が100分の20、都道府県が100分の17.5及び市町村が100分の12.5を負担し、施設等以外の分については国が100分の25、都道府県及び市町村がそれぞれ100分の12.5を負担している。

また、国は、健康保険法(大正11年法律第70号)及び国民健康保険法(昭和33年法律第192号)に基づき、社会保険診療報酬支払基金が介護保険の保険者に交付する介護給付費交付金等の財源として医療保険者(注6)が同基金に納付する介護給付費納付金に要する費用の額の一部を負担している。

(注5)
施設等分  施設介護サービス費、指定施設サービス等に係る特定入所者介護サービス費、特定施設入居者生活介護費、介護予防特定施設入居者生活介護費等
(注6)
医療保険者  医療保険各法の規定により医療に関する給付を行う市町村、全国健康保険協会、国民健康保険組合等

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

本院は、合規性等の観点から、介護報酬の算定が適正に行われているかに着眼して、23都道府県及び32市において、295事業者に対する介護給付費の支払について、介護給付費請求書等により会計実地検査を行った。そして、介護給付費の支払について疑義のある事態が見受けられた場合には、更に都道府県等に事態の詳細な報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

(2) 検査の結果

検査の結果、9道県及び5市に所在する19事業者に対して17都道府県の60市区町村等の実施主体が行った平成19年度から28年度までの間における介護給付費の支払が計10,342件、計66,635,566円過大となっていて、これに対する国の負担額20,232,228円は負担の必要がなかったものであり、不当と認められる。

これらの事態について、介護サービスの種類の別に示すと次のとおりである。

ア 通所介護

算定基準等によれば、通所介護については、前年度の1月当たりの平均利用延べ人員数による事業所規模が300人以内の場合は小規模型通所介護費、300人超750人以内の場合は通常規模型通所介護費、750人超900人以内の場合は大規模型通所介護費(I)及び900人超の場合は大規模型通所介護費(II)とし、それぞれの事業所規模ごとの区分等に応じて、小規模の事業所については大規模の事業所よりも高く定められた単位数等により介護報酬を算定することなどとされている。

しかし、7事業者は、前年度の1月当たりの平均利用延べ人員数が300人を超えていたのに、通常規模型通所介護費の区分によらずに小規模型通所介護費の区分により単位数を算定していた。また、1事業者は、750人を超えていたのに、大規模型通所介護費(I)の区分によらずに通常規模型通所介護費の区分によるなどして算定していた。さらに、1事業者は、900人を超えていたのに、大規模型通所介護費(II)の区分によらずに大規模型通所介護費(I)の区分により算定していた。

このため、3,886件の請求に対して30市区町村等が支払った介護給付費が計25,547,876円過大となっていて、これに対する国の負担額8,036,619円は負担の必要がなかった。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例1>

事業者Aは、平成16年12月に熊本県から通所介護事業所の指定を受けて通所介護を提供している。そして、23年4月から24年3月までの間に提供した通所介護に係る介護報酬について、前年度の1月当たりの平均利用延べ人員数が300人以内であるとして、小規模型通所介護費の区分により算定していた。しかし、事業者Aの前年度における1月当たりの平均利用延べ人員数は、実際には325人となっていた。したがって、23年4月から24年3月までの間に提供した通所介護に係る介護報酬については、通常規模型通所介護費の区分により算定する必要があった。

このため、180件の請求に対して5市町が支払った介護給付費計5,543,478円が過大となっていた。

イ 訪問介護

算定基準等によれば、訪問介護については、訪問介護事業所の指定を受けた介護サービス事業者が、次のいずれかの要件を満たす建物の居住者に対してこれを提供した場合は、所定単位数の100分の90に相当する単位数に減算して介護報酬を算定することとされている。

  • ① 当該事業所の所在する建物と同一の建物(老人福祉法(昭和38年法律第133号)に規定する有料老人ホーム等に限る。以下同じ。)等
  • ② 当該事業所から訪問介護の提供を受けている者が1月当たり20人以上居住している建物

しかし、5事業者は、これらのいずれかの要件を満たす建物の居住者に対して訪問介護を提供していたのに、所定単位数の100分の90に相当する単位数に減算することなく介護報酬を算定していた。

このため、1,599件の請求に対して19市町等が支払った介護給付費が計19,670,248円過大となっていて、これに対する国の負担額6,367,333円は負担の必要がなかった。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例2>

事業者Bは、平成17年1月に富山県富山市から訪問介護事業所の指定を受けて訪問介護を提供している。そして、事業者Bは、有料老人ホームC(1棟)の居住者に対して訪問介護を提供しており、27年4月から28年4月までの間、有料老人ホームCには、当該事業所から訪問介護の提供を受けている者が1月当たり20人以上居住していたのに、これらの者に対して提供した訪問介護に係る介護報酬の算定に当たり、所定単位数の100分の90に相当する単位数に減算していなかった。

このため、356件の請求に対して3市等が支払った介護給付費計8,515,636円が過大となっていた。

ウ その他の介護サービス

ア及びイの介護サービスのほか、介護療養施設サービス、介護福祉施設サービス、通所リハビリテーション、短期入所生活介護及び短期入所療養介護の5介護サービスについて、5事業者は、単位数の算定を誤り、介護報酬を過大に算定していた。

このため、4,857件の請求に対して16市町が支払った介護給付費が計21,417,442円過大となっていて、これに対する国の負担額5,828,276円は負担の必要がなかった。

このような事態が生じていたのは、事業者において算定基準等を十分に理解していなかったことにもよるが、市区町村、一部事務組合、広域連合及び国保連合会において介護給付費の請求に対する審査点検が十分でなかったこと、道県等において事業者に対して算定基準等の内容を十分に周知していないなど指導が十分でなかったことなどによると認められる。

以上を道県等別に示すと、次のとおりである。

道県等名 実施主体
(事業者数)
年度 過大に支払われた介護給付費の件数 過大に支払われた介護給付費 不当と認める国の負担額 摘要
      千円 千円  
北海道 5市町(2) 27、28 687 7,870 2,487 ア、イ
神奈川県 1市(1) 22~24 272 3,749 975
相模原市 1市(1) 22、23 49 1,352 450
横須賀市 3市(1) 19~24 489 4,934 1,344
富山県 5市村等(1) 23~26 1,071 3,656 1,119
富山市 3市等(1) 27、28 356 8,515 2,888
石川県 2市(1) 27、28 148 1,786 534
福井県 9市町(1) 24~28 2,765 8,710 2,231
静岡県 1市(1) 27、28 276 2,078 623
姫路市 2市町(1) 27、28 566 1,568 491
福岡県 16市区町等(4) 22、23、
26~28
2,340 10,846 3,509 ア、イ、ウ
福岡市 4市等(1) 27 496 1,647 497
熊本県 5市町(2) 23、24、
26
366 7,614 2,339
沖縄県 6市町等(1) 23、24 461 2,303 739
60実施主体(19) 19~28 10,342 66,635 20,232  
注(1)
計欄の実施主体数は、道県等の間で実施主体が重複することがあるため、各道県等の実施主体数を合計したものとは一致しない。
注(2)
摘要欄のア、イ及びウは、2(2)検査の結果の介護サービスの種類の別に対応している。