厚生労働省は、都道府県の社会福祉協議会(以下「社協」という。)が生活福祉資金貸付事業(以下「貸付事業」という。)を実施するに当たり、都道府県又は政令指定都市(以下「都道府県等」という。)に対してセーフティネット支援対策等事業費補助金等を交付している。都道府県等はこれらを財源として補助金等を各都道府県社協に対して交付し、各都道府県社協はこれらを貸付事業の原資としている。貸付事業は、低所得世帯等の経済的自立、社会参加の促進等を図り、安定した生活を送ることができるようにすることを目的として、都道府県社協が低所得世帯等に対して資金の貸付けと必要な相談支援を行うものである。しかし、多くの都道県社協における「貸付資金として貸し出されることなく保有されている資金」(以下「保有資金」という。)の額が貸付事業の運営に必要な額を上回る状況となっているのに、厚生労働省において保有資金の額が適正な規模となっているかについての評価を行うための判断基準がなく、また、都道府県がそのような評価を行い又は同省が都道府県からその評価について報告を受ける仕組みがない事態、及び保有資金の額が適正な規模ではないと認められる場合に国庫補助金相当額の一部を国庫に返還させることができない事態が見受けられた。
したがって、厚生労働大臣に対して平成28年10月に、会計検査院法第36条の規定により次のとおり意見を表示した。
本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、29年8月に国庫補助金の交付要綱を改正して、都道府県社協の保有資金の額が今後別に定める判断基準に照らして適正な規模を上回っていると認められる場合には、国庫補助金相当額の一部について国庫に返還させることができるようにするとともに、都道府県に対して交付要綱を改正した旨を周知していた。
一方、厚生労働省は、上記判断基準の作成については、事業の実施主体である都道府県社協からの意見を徴するなどした上で評価項目等の詳細について具体的な検討を進めているところであり、都道府県に対する判断基準の周知や適切な評価等の仕組みの整備については、判断基準を作成した後に都道府県に対して通知を発出するとしている。