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  • 平成28年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第9 農林水産省|
  • 不当事項|
  • 役務

国営かんがい排水事業における吐水槽等の建設工事のための実施設計業務に当たり、事業所における設計容量の算定の検討が十分でなかったため、実施設計業務の成果物が工事に使用されておらず、契約の目的を達成していなかったもの[沖縄総合事務局宮古伊良部農業水利事業所、沖縄総合事務局](226)


会計名及び科目
一般会計 (組織)農林水産本省 (項)沖縄開発事業費
部局等
沖縄総合事務局宮古伊良部農業水利事業所(契約庁)
沖縄総合事務局(支出庁)
契約名
平成25年度宮古伊良部農業水利事業宮古吐水槽他実施設計業務
契約の概要
宮古島内に設置する吐水槽及び導水路の実施設計を行うもの
契約の相手方
サンスイコンサルタント株式会社
契約
平成25年12月 一般競争契約
契約額
26,250,000円(平成25年度)
工事に使用されなかった成果物に係る契約額相当額
20,581,721円(平成25年度)

1 契約の概要

沖縄総合事務局宮古伊良部農業水利事業所(以下「事業所」という。)は、平成25年度に、国営かんがい排水事業の一環として、沖縄県宮古島市内に設置する宮古吐水槽及び伊良部導水路の工事を実施するために、これらの実施設計に係る請負契約(以下「実施設計業務」という。)を、一般競争契約により、サンスイコンサルタント株式会社との間で契約額26,250,000円で締結している。

沖縄総合事務局が定めた事業計画書等によると、伊良部島内の受益地への送配水計画は、のとおり、地下ダムから、揚水ポンプにより農業用水を取水して、宮古島内に設置する吐水槽(注1)へ送水し、ここから自然流下により、受益地の一部に直接配水するとともに、ファームポンド(注2)に送水するものとなっていた。

(注1)
吐水槽  ポンプの運転と停止を切り替えるには一定の時間を要することから、その時間における水の流れを制御するなどのために必要となる農業用水をあらかじめ貯水しておく農業用貯水施設
(注2)
ファームポンド  かんがい用の水路の通水量と実際の使用水量を調節し、自然流下又はポンプ等による加圧により配水するための農業用貯水施設

図 伊良部島内の受益地への送配水計画の概念図

図 伊良部島内の受益地への送配水計画の概念図 画像

事業所は、25年度に、実施設計業務の特別仕様書の作成に当たり、吐水槽の設計容量について「土地改良事業設計指針「ファームポンド」」(農林水産省構造改善局建設部制定。以下「指針」という。)等に基づくなどして、受益地への円滑な配水に必要な水量を確保するために、揚水ポンプの運転制御容量として560m3、バルブの開閉に係る運転制御容量等として4,530m3、計5,090m3と算定していた。

指針によれば、吐水槽の設計容量のうち運転制御容量は、揚水ポンプの操作、バルブの開閉等の間における水の流れの制御に必要な水量を一時的に貯水するための容量とされ、揚水ポンプの操作等に要する時間に単位時間当たりの揚水量を乗ずるなどして算定される。

一方、ファームポンドの設計容量については、揚水ポンプ等で取水した農業用水はかんがい作業時間外(本件事業の場合8時間)にも送水されることから、かんがい作業時間外に送水される水量を貯水するために必要な容量である時間差調整容量等が用いられている。

2 検査の結果

本院は、合規性、有効性等の観点から、実施設計業務の前提となる設計容量が適切に算定されているかなどに着眼して、事業所において、実施設計業務等を対象として、契約書、特別仕様書、成果物等の書類により会計実地検査を行った。

検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

事業所は、前記のとおり、25年度に、特別仕様書の作成に当たり吐水槽の設計容量を5,090m3と算定し、これに基づき実施設計業務で吐水槽の設計を行わせ、図面等の成果物を受領していた。そして、その後改めて吐水槽の設計容量の検討を行ったところ適正な設計容量は3,136m3と算定されたため、事業所は、26年度に、適正な設計容量3,136m3に基づき再度吐水槽に係る実施設計を実施しており、25年度の実施設計業務の成果物は実際の工事には使われなかった。

そこで、25年度に発注した実施設計業務の前提となった吐水槽の設計容量の算定方法を確認したところ、このうちバルブの開閉に係る運転制御容量等として算定した前記の4,530m3については、算定方法を十分に検討しないまま、吐水槽ではなくファームポンドに適用される時間差調整容量の算定方法を用いて算定したものとなっていた。

しかし、時間差調整容量は、前記のとおり比較的長時間であるかんがい作業時間外に送水される水量を貯水するために必要な容量であり、運転制御容量とは目的や算定方法が全く異なるものであり、一般的に運転制御容量を大幅に上回る容量となることなどから、バルブの開閉に係る運転制御容量等の算定に当たり、時間差調整容量の算定方法を用いたことは適切とは認められない。

したがって、実施設計業務の前提となる設計容量の算定において検討が十分でなかったため、これに基づく実施設計業務の成果物のうち吐水槽に係る部分は設計容量の規模が過大であり工事に使用できないものとなっていて、契約の目的を達成しておらず、これに係る契約額相当額20,581,721円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、事業所において、指針等の理解が十分でなかったこと、吐水槽の設計容量の算定方法に係る検討が十分でなかったことなどによると認められる。