部局等 | 補助事業者等 | 間接補助事業者等 | 補助事業等 | 年度 | 事業費 | 左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 | 不当と認める国庫補助金等相当額 | |
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(237) | 北海道農政事務所 | 北海道 | 下川町畜産クラスター協議会 (事業主体) |
畜産競争力強化対策緊急整備 | 27 | 207,198 | 95,925 | 22,699 | 10,509 |
この補助事業は、下川町畜産クラスター協議会(以下「協議会」という。)が、上川郡下川町字班渓(ぱんけ)地内において、牛舎、搾乳ロボット、貯留槽等を整備したものである。
このうち貯留槽は、たい肥化するために牛の排せつ物を貯留する円筒形の施設で、協議会は、農林水産省が定めた「家畜排せつ物法に基づく管理基準」(以下「管理基準」という。)等に基づき、貯留槽の規模(直径25.0m、高さ4.0m)等を決定した上で、設計については、構造計算を行うことなく同種施設の構造等を参考にするなどして側壁の寸法(高さ4.0m、壁厚30.0cm)や鉄筋の配置(径13.0mm、25.0cm間隔)を決定し、本件貯留槽を設置する現地の地形を考慮するなどして地盤面から側壁の基礎までの深さ(以下「根入れ深さ」という。)を94.5cmから226.5cmと決定するなどして、これにより施工していた(参考図参照)。
管理基準等によれば、家畜排せつ物の処理又は保管の用に供する施設は汚水が流出することがないように築造することとされている。そして、貯留槽の設計に関しては、本件貯留槽のような家畜排せつ物処理施設の設計に用いられる「スラリー処理施設設計の手引き」(平成22年4月財団法人北海道農業開発公社(24年4月以降は公益財団法人北海道農業公社)作成。以下「設計手引き」という。)等が定められている。設計手引き等によれば、貯留槽の構造は、想定される荷重条件に対して十分な耐久性と安定性を確保した設計をすることとされており、構造物の自重のほか、内部に家畜排せつ物が貯留されている時に側壁に作用する荷重等を考慮して、側壁の構造を決定することなどが示されている。
そこで、本件貯留槽について、設計手引き等に基づき、内部の家畜排せつ物等の荷重等を考慮して構造計算を行ったところ、側壁の鉄筋に生ずる引張応力度(注)が根入れ深さが最も浅い94.5cmの部分で742.0N/mm2、最も深い226.5cmの部分でも431.2N/mm2となり、いずれも許容引張応力度(注)の157.0N/mm2を大幅に上回っていて、応力計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。
したがって、本件貯留槽(工事費相当額22,699,440円)は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額10,509,000円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、協議会において貯留槽の設計についての理解が十分でなかったこと、北海道において協議会に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。
(参考図)
貯留槽の概念図