(1件 不当と認める国庫補助金 119,900,000円)
部局等 | 補助事業者等 | 間接補助事業者等 | 補助事業等 | 年度 | 事業費 | 左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 | 不当と認める国庫補助金等相当額 | |
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(246) | 九州農政局 | 佐賀県 | 伊万里市 株式会社アースマインド伊万里 (事業主体) |
農業・食品産業強化対策整備交付金 | 25、26 | 251,790 | 119,900 | 239,800 | 119,900 |
この交付金事業は、株式会社アースマインド伊万里(以下「会社」という。)が、新たな栽培品目であるパプリカを年間を通じて栽培することにより、収益性の高い農業経営を確立するため、栽培施設として、低コスト耐候性ハウス(栽培室等の面積5,336m2)、養液栽培装置、複合環境制御装置等を整備したものである。佐賀県は、会社が実施した本件交付金事業に対して市費補助金を交付していた伊万里市に県費補助金を交付しており、これに対して本件交付金が交付されている。
強い農業づくり交付金実施要領(平成17年16生産第8262号大臣官房国際部長、総合食料局長、生産局長及び経営局長通知)等によれば、整備の対象とする生産技術高度化施設は、農作物の栽培等生産の高度化を支援するために必要な施設とするとされ、生産技術高度化施設のうちの低コスト耐候性ハウスについては、50m/s以上の風速に耐えることができる強度を有するものとするなどとされている。また、事業主体は、請負人が工事を完了したときは、しゅん功検査を行った上で引渡しを受け、都道府県又は市町村は、必要に応じてしゅん功検査を実施し、不適正な事態がある場合は手直しなどの措置を指示し、交付対象事業の適正を期するものとするとされている。
会社は、本件栽培施設の整備に当たり、平成25年8月に、請負業者との間で、栽培施設の設計及び施工を行わせる工事請負契約を締結し、26年6月に、請負業者から、栽培施設の最終的な出来形を示したしゅん功図、低コスト耐候性ハウスが50m/sの風速に耐えられることを確認したなどとする構造計算書等の工事関係書類を受領するとともに、しゅん功検査を実施して、栽培施設の引渡しを受けていた。なお、工事関係書類によれば、低コスト耐候性ハウスの外壁部には、4本の胴縁(どうぶち)(注)を設置したことなどが記載されていた。
その後、会社は、伊万里市に対して、栽培施設の整備が完了したとして実績報告書等を工事関係書類とともに提出し、佐賀県及び伊万里市は、しゅん功検査を実施するなどして、栽培施設が実績報告書及び工事関係書類のとおりに整備され本件交付金事業が適正に完了していることを確認して、交付金の額の確定を行っていた。
しかし、現地の状況を確認するなどしたところ、低コスト耐候性ハウスは、胴縁が、2本しか設置されていなかったり(参考図参照)、工事関係書類に記載された位置と異なる位置に設置されていたりしており、また、屋根の構造部等の多くの施工箇所において、工事関係書類に記載された部材とは異なる規格の部材が使用されているなどしていた。
そこで、低コスト耐候性ハウスに50m/sの風速に耐える強度が確保されているか確認したところ、28m/s程度の風速までしか耐えられないものであった。
したがって、本件交付金事業は、低コスト耐候性ハウスに交付金の交付対象基準とされた所要の強度が確保されていない状態になっているのに、事業が適正に完了したとして額の確定が行われており、これに係る交付金119,900,000円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、請負業者が施工等を適切に行っていなかったことにもよるが、会社において施工についての監理及びしゅん功検査が十分でなかったこと、また、佐賀県及び伊万里市において会社に対する指導及びしゅん功検査が十分でなかったことなどによると認められる。
(参考図)
低コスト耐候性ハウスの概念図