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  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

(1) 6次産業化ネットワーク活動交付金等による事業の実施に当たり、事業主体から収益報告書を提出期限内に確実に提出させるよう是正改善の処置を求め、及び新商品に係る利益が発生していない場合に要因等を事業主体から報告させたり、サポート機関の更なる活用を図ったり、事業終了後4年目以降も利益の発生状況等について報告を徴したりするよう改善の処置を要求したもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)農林水産本省 (項)農山漁村6次産業化対策費
部局等
農林水産本省、9農政局等
補助等の根拠
予算補助、委託契約
補助事業者等
(1) 229農林漁業者等(事業主体)、公益財団法人食品流通構造改善促進機構(平成25年3月31日以前は財団法人食品流通構造改善促進機構)、7県(補助事業)
(2) 63民間事業者等(事業主体)(補助事業及び委託事業)、公益財団法人食品流通構造改善促進機構(平成25年3月31日以前は財団法人食品流通構造改善促進機構)、7県(補助事業)
間接補助事業者等(事業主体)
(1) 21農林漁業者等(補助事業)
(21農林漁業者等と上記(1)229農林漁業者等の合計から重複する2農林漁業者を除いた248農林漁業者等)
(2) 49民間事業者等
(49民間事業者等と上記(2)63民間事業者等の合計から重複する44民間事業者等を除いた68民間事業者等)
補助事業等
6次産業化ネットワーク活動交付金等(補助事業)及び6次産業総合推進委託事業(委託事業)
補助事業等の概要
(1) 農林漁業者等が行う農林水産物等を活用した新商品開発や販路開拓等の取組を支援するもの
(2) (1)の取組を支援するためのサポート事業等に対して支援を実施するもの
検査の対象とした新商品開発事業の事業数及び事業費
(1) 307事業 9億2482万余円(平成22年度~25年度)
上記に対する交付金等交付額(ア)
(1) 5億5693万余円
検査の対象とした支援体制整備事業等の事業数及び事業費
(2) 172事業 20億1647万余円(平成23年度~28年度)
上記に対する交付金等交付額及び委託費の支払額(イ)
(2) 20億0966万余円
(ア)及び(イ)の計
25億6660万円(背景金額)
収益報告書が提出期限内に提出されていない事業数及び事業費
(1) 211事業 6億5309万余円(平成22年度~25年度)
上記に対する交付金等交付額
(1) 3億9144万円

【是正改善の処置を求め及び改善の処置を要求したものの全文】

6次産業化ネットワーク活動交付金等による事業のフォローアップについて

(平成29年10月27日付け 農林水産大臣宛て)

標記について、下記のとおり、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求め、及び同法第36条の規定により改善の処置を要求する。

1 6次産業化ネットワーク活動交付金等による事業の概要等

(1) 6次産業化ネットワーク活動交付金等による事業の概要

国は、農林水産物価格の低迷等により農林漁業者の所得が減少し、高齢化や過疎化の進展等により農山漁村の活力が著しく低下している状況を踏まえて、「地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律」(平成22年法律第67号)を制定し、農林漁業者等による事業の多角化及び高度化、新たな事業の創出等に関する施策等を総合的に推進することとしている。

これを受けて貴省は、同法等に基づく施策の一環として、農林漁業者等が地域資源を活用した新事業の創出等を図ることにより、農林漁業経営の改善を図ることを目的として農林水産物の生産、加工及び販売を一体的に行う事業(以下「総合化事業」という。)を推進することとしている。

そして、貴省は、総合化事業を推進し、農林漁業者等の所得を増大させることなどを目的として、6次産業化ネットワーク活動交付金実施要綱(平成25年25食産第599号農林水産事務次官依命通知)等(以下「実施要綱等」という。)に基づき、表1のとおり、農林漁業者等が行う農林水産物等を活用した新商品開発や販路開拓の取組(以下「推進事業」という。)、これらの取組を支援するためのサポート事業等(以下「支援体制整備事業等」という。)を支援する6次産業化ネットワーク活動交付金等による事業を実施している。

表1 推進事業及び支援体制整備事業等の年度別の事業等の概要

事業 実施年度 事業の種類 事業承認者等 事業主体 補助等の種類
推進事業 平成22年度 農山漁村6次産業化対策事業 本省総合食料局長 農林漁業者等 補助金
22年度~26年度 農山漁村6次産業化対策事業 地方農政局長等 補助金
25年度 農山漁村6次産業化対策事業 公益財団法人食品流通構造改善促進機構会長 助成金
25年度~ 6次産業化ネットワーク活動交付金 都道府県知事 交付金
支援体制整備事業等 23、24両年度 6次産業総合推進委託事業 地方農政局長等 民間事業者等 委託
23年度~ 農山漁村6次産業化対策事業 本省食料産業局長(23年8月31日以前は総合食料局長) 補助金
25年度 農山漁村6次産業化対策事業 公益財団法人食品流通構造改善促進機構会長 助成金
25年度~ 6次産業化ネットワーク活動交付金 都道府県知事 交付金

ア 推進事業

貴省は、推進事業を実施する農林漁業者等の事業主体に対して、平成22年度から26年度までの間に、貴省から直接又は公益財団法人食品流通構造改善促進機構(25年3月31日以前は財団法人食品流通構造改善促進機構。以下「機構」という。)を通じて補助金又は助成金を交付したり、25年度以降に、道府県を通じて交付金を交付したりしている。

実施要綱等によれば、事業主体は、事業の実施に当たり、事業実施計画を作成して、貴省本省総合食料局長、地方農政局長等、機構会長又は都道府県知事(以下、これらを「事業承認者」という。)に提出することなどとされている。

推進事業のうち新商品を開発するために必要となる試作等に係る事業(以下「新商品開発事業」という。)を実施した事業主体は、事業終了後の翌年度から3年間、開発した新商品の販売金額の計画に対する実績等を記載した事業成果状況報告書(以下「成果報告書」という。)を事業承認者に提出することとなっており、新商品に係る販売金額が当初計画を下回っている場合又は販売に至っていない場合等には、原因及び改善策を記載することとなっている。ただし、25年度以降、新商品開発事業のうち事業承認者が都道府県知事であるものについては、事務の簡素化の観点から、事業主体は、成果報告書を提出する必要はないこととなっている。また、新商品開発事業を実施した事業主体は、開発した新商品を販売したことにより相当の収益が発生した場合、交付された交付金等の額を超えない範囲で、収益を国庫に納付(以下「収益納付」という。)することとなっている。そして、事業主体は、新商品に係る売上高、費用等の実績を記載した事業収益状況報告書(以下「収益報告書」という。)を原則として事業終了年度の翌年度以降3年間、毎年、各決算期の終了後2月以内に事業承認者に提出することとなっている。

イ 支援体制整備事業等

支援体制整備事業等は、「農林漁業者等による農林漁業及び関連事業の総合化並びに地域の農林水産物の利用の促進に関する基本方針」(平成23年農林水産省告示第607号)等を踏まえて、農林漁業者等が総合化事業に取り組むに当たり直面する課題を解決するために、23年度以降、各都道府県に6次産業化サポートセンター(以下「サポート機関」という。)を設置して、新商品開発、販路開拓等を行う農林漁業者等の相談対応を行ったり、必要に応じて6次産業化プランナー(以下「プランナー」という。)を派遣したりするなどの支援を実施するものである。

貴省は、23年度以降に、支援体制整備事業等の実施に当たり、地方農政局等から民間事業者等に事業の実施を委託したり、貴省本省から直接又は機構若しくは道府県を通じて補助金又は助成金若しくは交付金を民間事業者等に交付したりしている。

また、貴省は、27年度以降、総合化事業を実施している農林漁業者等に対する事業の実施状況に関するフォローアップを、地方農政局等、都道府県及びサポート機関が連携して行うよう指導している。

22年度から28年度までの間の交付金等交付額及び委託費の支払額は、計68億7010万余円(推進事業における交付金等交付額17億1926万余円、支援体制整備事業等における交付金等交付額及び委託費の支払額51億5083万余円)となっている。

(2) 過去の会計検査の状況

本院は、農山漁村6次産業化対策事業等について検査した結果、新商品を開発できなかったり、食品の加工・販売施設、農林漁業用機械施設の整備等において目標年度における成果目標等の達成率が低調になっていたりなどして事業効果が十分に発現していない事態等が見受けられたことから、23年10月及び26年10月に会計検査院法第36条の規定に基づく改善の処置を要求し、貴省は、技術的な課題の解決策等について事前に十分な調査及び検討が行われていることを事業採択の要件としたり、上記の整備等において事業効果が十分に発現していない事業主体に対して、サポート機関等を活用し速やかに改善計画を作成させるなどしてより効果的な指導等を行ったりするなどの処置を講じている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、合規性、有効性等の観点から、事業承認者は事業主体が開発した新商品に係る利益の発生状況等を適時適切に把握しているか、事業主体の所得の増大に寄与するために新商品開発事業の実施により利益は発生しているか、事業承認者は事業主体に対する指導を十分に行っているか、サポート機関は事業主体に十分に活用されているかなどに着眼して検査した。

検査に当たっては、新商品開発事業については、22年度から25年度までの間に実施され、28年3月末時点で収益報告書の提出期限が到来している248事業主体に係る307事業(事業費計9億2482万余円、交付金等交付額計5億5693万余円)を、支援体制整備事業等については、23年度から28年度までの間に、今回検査の対象とした新商品開発事業に対して支援を実施した68民間事業者等に係る172事業(事業費計20億1647万余円、交付金等交付額及び委託費の支払額計20億0966万余円)、計479事業(事業費計29億4129万余円、交付金等交付額及び委託費の支払額計25億6660万余円)をそれぞれ対象とした。

そして、貴省本省、8農政局等(注1)、機構、7県(注2)及び95事業主体において、収益報告書等を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、9農政局等(注3)、機構及び上記の7県から新商品開発事業の実施による利益の発生状況等に関する調書の提出を受けて、その内容を分析するなどの方法により検査した。

(注1)
8農政局等  東北、関東、北陸、東海、近畿、中国四国、九州各農政局、北海道農政事務所
(注2)
7県  栃木、新潟、滋賀、岡山、山口、徳島、大分各県
(注3)
9農政局等  東北、関東、北陸、東海、近畿、中国四国、九州各農政局、北海道農政事務所、沖縄総合事務局

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 収益報告書の提出状況

収益報告書は、新商品に係る売上高、費用等の実績が記載されることから、事業承認者にとって、新商品に係る利益の発生状況を把握して新商品開発事業が事業主体の所得の増大に寄与しているかを確認したり、新商品に係る利益が発生していない場合に改善策等を検討することにつなげたりする上で重要な資料である。

そこで、検査の対象とした新商品開発事業307事業のうち、28年3月末までに収益報告書を提出する必要のある収益報告書556件の提出状況をみると、提出期限内に提出されていないものが211事業(事業費計6億5309万余円、交付金等交付額計3億9144万余円)に係る330件(556件の59.3%)となっていた。また、収益報告書が提出期限内に提出されていない理由を事業承認者が把握できていないものが、87事業に係る140件(330件の42.4%)見受けられた。

このように、事業主体から収益報告書が提出期限内に提出されていないものが数多く見受けられ、事業承認者は、事業主体が開発した新商品に係る利益の発生状況等を適時適切に把握できていない状況となっていた。

(2) 利益の発生状況等

ア 新商品に係る利益の発生状況

検査の対象とした新商品開発事業307事業のうち、事業主体が提出期限が到来した収益報告書を、28年9月末までに、事業終了年度の翌年度以降毎年分提出していた221事業について、新商品に係る利益の発生状況をみると、提出のあった毎年の収益報告書において新商品に係る利益が発生している事業が50事業(221事業の22.6%)ある一方で、これまで利益が一度も発生していない事業は117事業(同52.9%)となっており、半数以上の事業において事業の実施が事業主体の所得の増大に寄与していない状況となっていた。

そして、上記の117事業に係る194件のうち、65事業に係る112件(194件の57.7%)については、事業承認者が新商品に係る利益が発生していない要因を把握できていなかった。その理由をみると、売上げに係る要因については、新商品の販売金額の実績が計画を下回った原因や改善策を成果報告書により把握できるものの、費用に係る要因については、成果報告書においても事業主体から報告させることとなっておらず把握することができないため、新商品に係る利益が発生していない要因を十分に把握できないとしているものが40事業に係る71件(112件の63.3%)等となっていた。さらに、25年度以降に成果報告書の提出が不要となった事業承認者が都道府県知事である前記の7県に係る12事業について要因の把握状況をみると、収益報告書において新商品に係る利益が発生していない5事業のうち、収益報告書だけでは要因が把握できないとしてヒアリングを実施するなどして要因を把握しているものが3事業となっていた。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>新商品開発事業終了後の翌年度から3年以内に新商品に係る利益が発生しておらず、事業承認者において利益が発生していない要因を把握していないもの

会社Aは、平成23年度に自社生産の鶏卵を用いたプリン等の加工品の製造・販売を行うために、新商品開発事業を実施し国庫補助金の交付を受けている(事業費266万余円、国庫補助金169万余円)。

そして、同会社は、同年度に実施した事業に係る収益報告書を毎年分農政局へ提出していた。

収益報告書等の内容をみたところ、同会社では、事業終了年度の翌年度から3年間、新商品に係る利益は一度も発生していなかった。また、利益が発生していない要因をみたところ、新商品を認知してもらうため販売促進の費用が多額になり、新商品に係る費用が売上げを上回ってしまったことなどによるものであった。

しかし、収益報告書において、費用について分析結果を報告させることとなっていないことなどから、農政局は、新商品に係る利益が発生していない要因について十分に把握することができないとしていた。

このように、事業主体の所得の増大に寄与する新商品に係る利益の発生状況について、事業承認者が、事業主体に対して指導を行うに当たって前提となる、新商品に係る利益が発生していない場合の要因及び改善策を事業主体から報告させるなどしておらず、それらを十分に把握していない状況となっていた。

イ 新商品に係る利益の発生状況の推移と収益報告書の提出期間

前記221事業のうち、事業終了年度の翌年度から3年間収益報告書が提出されている59事業について、新商品に係る利益の発生状況をみると、1年目から利益が発生したものが20事業(59事業の33.8%)、2年目に初めて利益が発生したものが10事業(同16.9%)、3年目に初めて利益が発生したものが8事業(同13.5%)あり、2年目までは利益を生まなかった事業であっても、新商品の販売を継続した結果、3年目に至って利益を生んでいるものが一定程度見受けられた(表2参照)。

表2 事業終了年度の翌年度から3年間収益報告書が提出されている事業の新商品に係る利益の発生状況

(単位:事業数、%)
区分 事業 割合
事業終了年度の翌年度から3年間収益報告書が提出されている事業 59
  1年目から利益が発生した事業 20 33.8
2年目に初めて利益が発生した事業 10 16.9
3年目に初めて利益が発生した事業 8 13.5
3年の間には利益が発生していない事業 21 35.5

一方、3年の間には利益が発生していないものが21事業(同35.5%)見受けられたが、上記のとおり、新商品の試作等の事業が終了した後、実際に新商品の販売によって利益が得られるまでには一定の期間を要する場合もあるという新商品開発事業の特性を踏まえると、収益報告書の提出を3年目までとしている取扱いはフォローアップとしては十分とはいえず、3年経過後も利益を生じていない事業については、その後の利益の発生状況等についても一定年数フォローアップを続けることが重要であると考えられる。

しかし、実施要綱等において、収益報告書の提出期間は新商品開発事業終了年度の翌年度以降3年間とされていることから、それ以降は、事業承認者として当該事業主体の新商品に係る利益の発生状況や改善の取組状況等を把握することができない。そのため、事業承認者は、継続して販売・開発を行った新商品に係る利益が発生し、事業主体の所得の増大に寄与しているかを確認できず、事業主体に対して継続的に指導するなどのフォローアップを行うことができない状況となっていた。

(3) サポート機関の活用状況等

検査の対象とした新商品開発事業307事業のうち、総合化事業に関する計画が作成され、かつ、サポート機関の活用が事業実施前から可能であった24、25両年度に実施されていて、28年9月末までに収益報告書が1回でも提出されていた161事業について、サポート機関の活用状況をみると、表3のとおり、事業主体が事業実施前、事業実施中及び事業終了後の各段階でサポート機関を一度も活用していないものが、78事業(161事業の48.4%)、88事業(同54.6%)、115事業(同71.4%)となっていて、事業終了後に係る割合が高くなっていた。

表3 サポート機関の活用状況

(単位:事業数、%)
区分 事業 割合
平成28年9月末までに収益報告書が1回でも提出されていたもの(A) 161
うちサポート機関を活用していない事業 事業実施前に活用していない事業(B)(B/A) 78 48.4
事業実施中に活用していない事業(C)(C/A) 88 54.6
事業終了後に活用していない事業(D)(D/A) 115 71.4

そして、事業終了後に事業主体がサポート機関を一度も活用していない115事業に係る収益報告書177件のうち、事業承認者がその理由を把握できていないものが82事業に係る127件(177件の71.7%)見受けられた。

また、前記161事業のうち、収益報告書において新商品に係る利益が一度も発生していない91事業についてみると、表4のとおり、事業実施前から事業終了後までサポート機関を一度も活用していないものが23事業(91事業の25.2%)、事業終了後に活用していないものが70事業(同76.9%)となっていた。

表4 収益報告書において新商品に係る利益が一度も発生していない事業におけるサポート機関の活用状況

(単位:事業数、%)
区分 事業 割合
平成28年9月末までに収益報告書が1回でも提出されていたもの 161
上記のうち収益報告書において新商品に係る利益が一度も発生していない事業(A) 91
サポート機関の活用 事業実施前から事業終了後まで一度も活用していない事業(B)(B/A) 23 25.2
事業終了後に活用していない事業(C)(C/A) 70 76.9

そして、この70事業について、事業主体に対して事業承認者が指導を行っているかについてみると、指導を行っていたものが62事業(70事業の88.5%)となっているが、その指導内容として、サポート機関の活用を促していたものは17事業(62事業の27.4%)にとどまっていた。

前記のとおり、支援体制整備事業等は、農林漁業者等が総合化事業に取り組むに当たり直面する課題を解決するために、サポート機関を設置してプランナーの派遣を行うことなどを実施するものであるが、利益が発生していない新商品開発事業において、サポート機関が事業主体に十分に活用されていない状況となっていた。

サポート機関を活用して利益が発生した新商品開発事業について、事例を示すと次のとおりである。

<参考事例>サポート機関を活用して利益が発生したもの

会社Bは、平成24年度に六条大麦を用いたビールの製造・販売を行うために、新商品開発事業を実施し国庫補助金の交付を受けている(事業費357万余円、国庫補助金238万余円)。

同会社は、新商品開発事業の事業終了後に、製品や販路開拓についてサポート機関に相談をして、プランナーの派遣を受けた。そして、同会社は、1年目の収益報告書から新商品に係る利益が発生しており、2年目の収益報告書においても続けて利益が発生していて、29年3月に238万余円を収益納付していた。

(是正改善及び改善を必要とする事態)

新商品開発事業について、新商品に係る利益の発生状況を把握して利益が発生していない場合に改善策等を検討することにつなげるなどする上で重要な資料である収益報告書が提出期限内に提出されていないことにより、事業承認者が新商品に係る利益の発生状況等を適時適切に把握できていない事態は適切ではなく、是正改善を図る要があると認められる。また、事業承認者が新商品に係る利益が発生していない場合に要因等を十分に把握していなかったり、試作等の事業の終了後、実際に新商品の販売によって利益が得られるまでには一定の期間を要する場合もあるという事業の特性を踏まえると、事業終了後に、事業承認者が新商品に係る利益が発生していない事業主体に対して継続的に指導するなどのフォローアップを行う期間が十分でなかったりする事態及びサポート機関が事業主体に十分に活用されていない事態は適切ではなく、改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、次のことなどによると認められる。

  • ア 事業承認者において、新商品開発事業について、新商品に係る利益の発生状況等を適時適切に把握するために、事業主体から収益報告書を提出期限内に提出させることの重要性について認識が欠けていること
  • イ 事業承認者において、新商品開発事業終了後に新商品に係る利益が発生していない場合に要因及び改善策を把握するために、事業主体から要因等を報告させるなどしていなかったり、貴省本省において、新商品開発事業について、実施要綱等で収益報告書の提出期間を同事業終了年度の翌年度以降3年間と定めているため、その後の状況を事業承認者が把握できる体制となっていなかったりしていること
  • ウ 事業承認者において、サポート機関の更なる活用に関する事業主体への指導が十分でないこと

3 本院が求める是正改善の処置及び要求する改善の処置

貴省は、農山漁村の6次産業化の市場規模を32年度に10兆円(27年度の実績値は5.5兆円)に拡大させるとともに、農林漁業経営の改善を図るために農林漁業者等の所得を増大させることなどを目的として、引き続き6次産業化ネットワーク活動交付金等による事業を実施することとしている。

ついては、貴省において、6次産業化ネットワーク活動交付金等による事業の目的に資するよう、次のとおり是正改善の処置を求め及び改善の処置を要求する。

  • ア 事業承認者に対して、新商品に係る利益の発生状況等を適時適切に把握するために、収益報告書を提出期限内に提出させることの重要性を十分認識させた上で、事業主体から収益報告書を提出期限内に確実に提出させるよう指導すること(会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求めるもの)
  • イ 事業承認者に対して、新商品開発事業終了後に新商品に係る利益が発生していない場合に要因及び改善策を事業主体から報告させるなどして、その要因等を十分に把握したり、サポート機関を事業主体に更に活用させたりするよう指導すること(同法第36条の規定により改善の処置を要求するもの)
  • ウ 新商品開発事業終了年度の翌年度以降3年間提出させている収益報告書において新商品に係る利益の発生が認められない場合、事業主体に新商品の販売・開発の継続を検討させて、継続する場合には、4年目以降も事業主体から利益の発生状況等について報告を徴するよう実施要綱等に定めること(同法第36条の規定により改善の処置を要求するもの)