林野庁は、地域材の需要拡大等を図るために、都道府県、市町村等が事業主体として実施する木造公共施設等の整備等の事業に対して森林・林業再生基盤づくり交付金等を交付するなどしている。森林・林業再生基盤づくり交付金実施要領等(以下「要領等」という。)によれば、都道府県知事は、上記の交付金等により木造公共施設等の整備の事業(以下「整備事業」という。)を実施するに当たっては、その必要性や効率性、有効性等を厳に検証すること、事業の採択に当たっては、真にモデル的な施設の整備と認められるものに絞り込んだ上でこれを行うこととされている。そして、整備事業において実施される設備工事のうちの電気・上下水道工事等は地域材の利用促進に直接寄与するものではないことから補助対象から除くこととされており、また、事業費当たり又は延床面積当たりの地域材利用量等の目標が原則として都道府県の目標値以上であることなどを事業の採択基準として設定することとされている。しかし、木材をほとんど使用せず、地域材の利用促進に直接寄与しない昇降機設備や空気調和設備等の設備工事等を補助対象に含めている事態、及び採択基準が地域材を利用するモデル的な公共建築物等の整備を行う事業を選定する上で適切なものになっておらず、事業費当たり又は延床面積当たりの地域材利用量(以下「地域材利用割合」という。)が非常に低く、地域材利用のモデルとしての効果を期待し難い事業が採択されている事態が見受けられた。
したがって、林野庁において、地域材の利用促進に直接寄与しない設備工事等を補助対象から除くなど、補助対象の範囲について十分に検討した上で要領等に定めて、事業主体及び都道府県に対して周知したり、整備事業の採択基準について、地域材利用割合が一定程度以上であることを要件とするなど具体的な基準等を設けるとともに、その内容及び地域材の利用を促進するために整備事業を効率的、効果的に実施することの重要性について事業主体及び都道府県に対して周知したりするよう、林野庁長官に対して平成28年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、林野庁において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、林野庁は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 29年3月に要領等を改正して、地域材の利用促進に直接寄与しない設備工事等を補助対象から除くこととするなどして補助対象の範囲を明確にした上で、同年4月にこれを都道府県及び都道府県を通じて事業主体に対して周知した。
イ 28年10月に通知を発して、地域材の利用を促進するために整備事業を効率的、効果的に実施することの重要性について、都道府県及び都道府県を通じて事業主体に対して周知し、また、29年3月に要領等を改正して、整備事業の採択基準について、地域材利用割合に関する具体的な基準を設けて、同年4月に当該基準の内容について、都道府県及び都道府県を通じて事業主体に対して周知した。