農林水産省は、強い農業づくり交付金事業、畜産担い手育成総合整備事業等の各補助事業等により、完全混合飼料(以下「TMR」という。)等の飼料生産の基盤施設であるTMRセンター(以下「センター」という。)の整備を行う地方公共団体、農業協同組合等の事業主体に対して国庫補助金等を交付している。各補助事業等の実施要綱等によれば、センターを整備しようとする事業主体は、整備するセンターの利用計画等に係る具体的な数値(以下「計画値」という。)等を記載した事業実施計画を作成して都道府県又は地方農政局等に提出し、都道府県又は地方農政局等は、提出された事業実施計画について採択要件に適合しているかなどを審査することとされている。また、各補助事業等のうち、強い農業づくり交付金等の交付金事業に係る実施要綱等によれば、事業主体は、計画値に加えて、成果目標及びその目標年度を事業実施計画に記載することとされている。そして、事業主体は、成果目標の達成状況について自ら評価を行い、都道府県は、成果目標が達成されていない場合には、当該事業主体に対して必要な改善措置を指導し、また、地方農政局等は、必要に応じて都道府県を指導することとされている。しかし、センターについて、地域の農家、市町村等との連携が十分に図られておらず、TMRの製造量や飼料自給率等に係る目標達成率が50%未満と低調になっているものがあるなど、事業効果が十分に発現していない事態が見受けられた。
したがって、農林水産省において、都道府県に対して、地域の農家、市町村等と連携することの重要性について事業主体に周知するとともに事業実施計画の審査に当たってはセンターと地域の農家、市町村等との連携について十分に審査するよう指導したり、都道府県及び市町村に対して、センターとの円滑な連携を図るよう要請したり、都道府県及び地方農政局等に対して、計画値等の達成状況の確認、達成されていない場合の原因分析及びこれに基づく改善に向けた指導を十分に行うよう指導するとともに、事業主体に対して指導を行う際の留意事項や事業効果が発現しているセンターの取組事例集等を取りまとめるなどして周知したりする処置を講ずるよう、農林水産大臣に対して平成28年10月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
本院は、農林水産本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、農林水産省は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 28年10月に地方農政局等に通知を発して、地方農政局等から都道府県に対して、地域の農家からTMRの原料となる自給飼料を調達したり、市町村等から技術指導や情報提供を受けたりすることなどにより、地域の農家、市町村等と連携することの重要性について事業主体に周知するとともに事業実施計画の審査に当たってはセンターと地域の農家、市町村等との連携について十分に審査するよう指導した。また、地方農政局等から都道府県及び市町村に対して、センターに十分に技術指導や情報提供を行うなどしてセンターとの円滑な連携を図るよう要請した。
イ 都道府県及び地方農政局等に対して、28年10月に地方農政局等に通知を発して、計画値等の達成状況の確認、達成されていない場合の原因分析及びこれに基づく改善に向けた指導を十分に行うよう指導するとともに、29年1月に取組事例集を作成し都道府県及び地方農政局等に配布したり、同年6月に指導に当たっての留意事項を地方農政局等に通知したりなどして周知した。