この工事は、東北地方整備局福島河川国道事務所(以下「事務所」という。)が、道路維持管理業務の一環として、平成26年度から28年度までの間に、一般国道13号の西大橋(橋長414.4m、幅員12.5m、20径間)等4橋りょうに係る主桁補修工、伸縮継手工等の橋りょう上部工補修工事を契約額357,048,000円で株式会社小野工業所に請け負わせて施工したものである。
このうち、伸縮継手工は、上記4橋りょうのうち福島市仁井田地内の西大橋の上り車線にある伸縮装置を更新するための材料を購入して、事務所の資材置場に搬入するものであり、伸縮装置の設置は本件工事とは別に行うこととされている。
事務所は、本件工事の工事費の積算を国土交通省制定の「土木工事標準積算基準書」(以下「積算基準」という。)に基づき行っており、積算基準によれば、工事費は、材料費、労務費等の直接工事費のほかに、共通仮設費及び現場管理費(以下、これらを合わせて「間接工事費」という。)、一般管理費等、消費税等で構成することとされている。このうち、間接工事費は、工事を管理するために必要な費用を計上するもので、間接工事費の対象額に所定の率を乗ずるなどして算定することとされており、共通仮設費については直接工事費を、現場管理費については直接工事費に共通仮設費を加えた純工事費を対象額として、当該対象額に共通仮設費率又は現場管理費率をそれぞれ乗ずるなどして算定することとされている。
そして、国土交通省は、積算基準に基づく間接工事費の算定に当たり、請負人が購入した材料を管理しない場合は、当該材料の購入費を間接工事費の対象額に含めないことにしている。
本院は、経済性等の観点から、工事費の積算が適切に行われているかなどに着眼して、事務所において、本件工事を対象に、積算内訳書等の書類を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
すなわち、事務所は、間接工事費の対象額の中の直接工事費に伸縮継手工に係る費用24,375,807円を含め、この対象額に共通仮設費率又は現場管理費率をそれぞれ乗ずるなどして間接工事費を132,048,844円と算定し、これを含めた工事費の総額を357,253,200円と積算していた。
しかし、本件伸縮継手工は、請負人が伸縮装置の材料の購入から事務所の資材置場への搬入までを行うもので、請負人が購入した材料を管理しないことから、事務所は、伸縮継手工に係る費用を間接工事費の対象額に含めるべきではなかった。
したがって、伸縮継手工に係る費用を間接工事費の対象額から控除して修正計算すると、間接工事費は116,347,798円となり、これらを含めた工事費の総額は338,593,145円となることから、本件契約額357,048,000円はこれに比べて約1840万円割高となっていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、事務所において、間接工事費の積算に対する理解が十分でなかったこと、本件工事の工事費の積算に対する審査及び確認が十分でなかったことなどによると認められる。