ページトップ
  • 平成28年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第11 国土交通省|
  • 不当事項|
  • 補助金|
  • (1) 工事の設計が適切でなかったもの

ガードレールの設計が適切でなかったもの[茨城県](269)


(1件 不当と認める国庫補助金 2,143,900円)

  部局等 補助事業者等
(事業主体)
補助事業等 年度 事業費
(国庫補助対象事業費)
左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費
(国庫補助対象事業費)
不当と認める国庫補助金等相当額
          千円 千円 千円 千円
(269) 茨城県 茨城県 社会資本整備総合交付金(道路) 26 24,656
(24,656)
13,561 3,898
(3,898)
2,143

この交付金事業は、茨城県が、猿島郡境町蛇池地内において、一般国道354号境岩井バイパスの路面排水を円滑に行うなどのために、排水構造物工、防護柵工等を実施したものである。

このうち、排水構造物工は、バイパスに近接した町道に並行している既存の水路を付け替えて水路の流下能力を増大させるために、プレキャストコンクリート製のU型水路(内空断面の幅1.8m、高さ0.9m~1.3m、延長104m。以下「U型水路」という。)等を築造するものであり、防護柵工は、U型水路に車両が転落するのを防止するために、支柱を土中に埋め込む構造のガードレール(参考図参照)を町道のU型水路側に39m設置するものである。

同県は、排水構造物工の設計に当たり、U型水路の側壁等に作用する土圧等を算定し、応力計算上安全であるとして、これにより施工していた。また、同県は、防護柵工の設計に際しては、「車両用防護柵標準仕様・同解説」(社団法人日本道路協会編。以下「防護柵設計標準」という。)等に基づいて行うこととしており、防護柵設計標準によれば、本件ガードレールの支柱の支持力については、車両がガードレールに衝突する際の荷重(以下「衝突荷重」という。)に対し、支柱1本が関与する背面土質量(注1)(以下「背面土質量」という。)が0.82t以上必要とされており、この背面土質量が確保できない場合は、他の構造を選定することによりガードレールの支柱の支持力を得ることとされている。

しかし、同県は、ガードレールの支柱の支持力についての検討を行うことなくガードレールの設計を行い、これにより施工していた。

そこで、改めてガードレールの支柱の背面土質量を確認したところ、延長39mのうち28mの区間において、ガードレールの支柱がU型水路の側壁に近接した位置に設置されていたことから、0.01tから0.03tと0.82tを大幅に下回っていて、ガードレールの支柱は背面土質量により所要の支持力が得られていなかった。このため、上記延長28mの区間のガードレールに車両が衝突した場合、U型水路には、前記排水構造物工の設計で想定していなかった衝突荷重が作用することになることから、改めて衝突荷重を考慮して応力計算を行ったところ、側壁の鉄筋に作用する引張応力度(注2)は408N/mm2から632N/mm2となり、許容引張応力度(注2)270N/mm2を大幅に上回っていて、応力計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。

したがって、延長28m区間に係るガードレール、U型水路等(工事費相当額3,898,000円)は、ガードレールの設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る交付金相当額2,143,900円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同県において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことなどによると認められる。

(注1)
支柱1本が関与する背面土質量  1本の支柱にかかった衝突荷重に対し、その反力として働く背面土の質量
(注2)
引張応力度・許容引張応力度  「引張応力度」とは、材に外から引張力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容引張応力度」という。

参考図

ガードレール、U型水路等の概念図

ガードレール、U型水路等の概念図 画像