国土交通省は、港湾法(昭和25年法律第218号)に基づき、同法で定められた国際戦略港湾及び同法附則第31項の規定により国際戦略港湾とみなされた国際拠点港湾(以下、これらを合わせて「国際戦略港湾等」という。)ごとに、当該国際戦略港湾等における埠(ふ)頭群を運営する者として、同法で定められた要件を備えていると認められる株式会社を指定している(以下、この指定を受けた株式会社を「港湾運営会社」という。)。
また、国土交通省は、特定外貿埠頭の管理運営に関する法律(昭和56年法律第28号。以下「外貿法」という。)に基づき、東京港、横浜港、大阪港又は神戸港ごとに、外貿法で定められた特定外貿埠頭における管理運営を行う者として、外貿法で定められた要件を備える法人を指定している(以下、この指定を受けた法人を「指定会社」という。)。
そして、港湾運営会社及び指定会社(以下、これらを合わせて「港湾運営会社等」という。)は、コンテナ貨物量の増加等に対応することを目的として、コンテナ埠頭の岸壁に係留される外航コンテナ船等に係る貨物の荷さばきを行うための荷役機械(以下「コンテナクレーン」という。)の建設又は改良を行っている。
一方、地方公共団体等の港湾管理者は、国際戦略港湾等において港湾運営会社等が行うコンテナクレーンの建設又は改良に係る事業(以下「コンテナクレーン整備事業」という。)等に要する費用に充てる資金を当該港湾運営会社等に対して無利子で貸し付けている。そして、国土交通省は、我が国産業の国際競争力の強化等に寄与することなどを目的として、港湾法等又は外貿法等に基づき、港湾管理者の貸付金額の2分の1以内の金額を無利子で当該港湾管理者に貸し付けている(以下、港湾運営会社等に資金を貸し付ける港湾管理者に対して国土交通省が貸し付ける無利子貸付金を「貸付金」という。)。
貸付金は、「港湾法第55条の9に基づく無利子資金の貸付要綱」(平成17年国港総第14号)、「特定外貿埠頭の管理運営に関する法律第6条の外貿埠頭施設整備事業無利子貸付金貸付要綱」(平成20年国港総第971号)等(以下、これらを「貸付要綱」という。)に基づき貸し付けられており、貸付要綱によれば、貸付けの対象は、コンテナクレーン等の各港湾施設の建設又は改良とされている。また、貸付要綱等によれば、国土交通省から貸付金の貸付けを受けようとする港湾管理者は、港湾運営会社等から港湾管理者に対する貸付申請書を受領した後、貸付金の貸付申請書を当該港湾管理者が管理する港湾を管轄する地方整備局等を経由して国土交通省に提出することとされている。
国土交通省は、港湾の国際競争力の強化、物流の効率化等を図ることを目的として、「港湾機能高度化施設整備費補助交付要綱」(平成17年国港管第1号。以下「補助要綱」という。)に基づき、港湾の機能の高度化を図るために必要な施設の整備を行う地方公共団体等に対して、港湾機能高度化施設整備費補助(以下「補助金」という。)を交付している。
補助要綱によれば、補助対象事業は、港湾の機能の高度化を図ることを目的として行うコンテナクレーン等の各施設の整備に係る事業とされている。そして、コンテナクレーン整備事業に係る補助金の額は、補助対象事業費の3分の1以内とされている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
本院は、合規性、経済性等の観点から、貸付要綱等に従って適切に貸付金の貸付けが行われているか、また、補助要綱等に従って適切に補助金の交付が行われているかなどに着眼して、7港湾運営会社等(注1)が実施し、平成24年度から28年度までの間に完了したコンテナクレーン整備事業に対して5港湾管理者(注2)が実施した貸付け35件(貸付対象事業費計336億9303万余円、貸付金額計126億2597万余円)及び3県(注3)が補助事業により実施し、25、28両年度に完了したコンテナクレーン整備事業3件(補助対象事業費計21億7388万余円、補助金交付額計7億2462万余円)を対象として、申請書、完了実績報告書、仕様書等の内容を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。
(検査の結果)
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
貸付要綱によれば、貸付金の貸付けの対象は各港湾施設の建設又は改良とされており、また、補助要綱によれば、補助金の補助対象事業は港湾の機能の高度化を図ることを目的として行う各施設の整備に係る事業とされている。一方、コンテナクレーン等の港湾施設に係るワイヤロープ、ヒューズ等の予備品、消耗品、工具及び備品(以下、これらを合わせて「予備品等」という。)が貸付け及び補助の対象とならないことについては、貸付要綱等や補助要綱等に明記されていないものの、貸付金の貸付けは港湾施設の建設又は改良を対象とし、補助金の交付は施設の整備を対象とするものであることから、コンテナクレーンのしゅん工後に行う維持管理において使用されることとなる予備品等の購入費は、貸付け及び補助の対象とならないと認められた。
しかし、5港湾管理者は、7港湾運営会社等が実施したコンテナクレーン整備事業に対する貸付け30件において、コンテナクレーン本体の建設等に併せて購入した予備品等(購入費計8億0698万余円)を貸付けの対象に含めて資金を貸し付けており、これらの貸付けを踏まえて、国土交通省から貸付金の貸付け(上記予備品等の購入費に係る貸付金相当額計3億0046万余円)を受けていた。
また、岡山、香川両県が補助事業として行ったコンテナクレーン整備事業2件においては、コンテナクレーン本体の整備に併せて購入した予備品等(購入費計2427万余円)を補助の対象に含めており、国土交通省から補助金の交付(上記予備品等の購入費に係る補助金相当額計809万余円)を受けていた。
このように、コンテナクレーン整備事業について、貸付けの対象とならない予備品等の購入費を貸付けの対象に含めて貸付金が貸し付けられたり、補助の対象とならない予備品等の購入費を補助の対象に含めて補助金が交付されたりしていた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、国土交通省において、地方整備局等、貸付先である港湾管理者及び補助事業者である地方公共団体に対して、予備品等の購入費がコンテナクレーン整備事業に係る貸付け及び補助の対象とならないことを明確に示していなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、国土交通省は、29年3月に地方整備局等に対して事務連絡を発して、コンテナクレーン整備事業に係る貸付け及び補助の対象から予備品等の購入費を除くことを明確に示すとともに、港湾管理者からの貸付けの申請及び地方公共団体からの補助の申請に係る手続を適切に実施するよう周知徹底するなどの処置を講じた。