【是正改善の処置を求めたものの全文】
会議開催等業務に係る契約における仕様書等の変更手続等について
(平成29年10月30日付け 環境大臣宛て)
標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。
記
貴省は、地球環境保全、公害の防止、自然環境の保護及び整備その他の環境の保全並びに原子力の研究、開発及び利用における安全の確保を図ることを目的として、国際・国内会議の開催に係る業務(以下「会議開催業務」という。)や、調査、啓発活動、広報活動等に係る業務(以下、これらを「調査広報等業務」という。)を民間事業者等に請け負わせて実施している(以下、これらの民間事業者等を「請負人」という。)。
貴省は、請負契約の事務を、会計法(昭和22年法律第35号)、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)等に基づいて実施している。貴省は、会議開催業務や調査広報等業務(以下、これらを合わせて「会議開催等業務」という。)について、これらを請け負わせて実施しようとする部局(以下「実施部局」という。)の担当者は、請け負わせようとする業務の具体的な内容、履行期限、及び業務の終了後に実際に行った業務の内容を取りまとめた報告書(以下「報告書」という。)を提出すべきことなどを明記した仕様書等の原案を作成して支出負担行為担当官である大臣官房会計課長(以下「支出負担行為担当官」という。)に送付し、支出負担行為担当官は、実施部局の担当者から提出された仕様書の内容を基に、仕様を決定するとともに、予定価格を算定し、入札を実施するなどした上で請負人、契約額等を決定して契約を締結することとしている。
契約に当たり、貴省は、「請負契約書等の制定について」(平成14年環境省大臣官房会計課長通知)により、契約書には、支出負担行為担当官は、必要があると認めるときは、仕様書等の変更内容を契約相手に通知して、仕様書等を変更することができ、この場合において、必要があると認められるときは履行期間又は契約額を変更しなければならないとする契約条項を設ける必要があるとしている。そして、会議開催等業務に係る契約の仕様書には、請負人に実施させる業務の具体的な内容として、会議等の開催回数や招へい者数等を詳細に記載することにしており、契約を履行させるに当たり、請負人に実施させる業務の内容に変更が必要となった場合には、上記の契約条項に基づいて適宜仕様書等を変更することができることとなっている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
貴省は、毎年度、多数の会議開催等業務を請け負わせて実施しており、その契約額も多額に上っている。
そこで、本院は、合規性、経済性等の観点から、貴省が締結した会議開催等業務に係る契約について、仕様書に記載された業務は適正に履行されているか、請負人に実施させる業務の内容に変更が必要となったときは仕様書等は適切に変更されているかなどに着眼して、貴省本省が平成26、27両年度に締結した契約額500万円以上の会議開催等業務に係る契約192件、契約額計129億6947万余円を対象に、貴省本省において、契約書、仕様書、報告書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。
(検査の結果)
検査したところ、上記192件の契約のうち、29件(契約額計10億1042万余円)において、次のような事態が見受けられた。
貴省は、会議開催業務に係る18件の契約(契約額計6億9243万余円)について、請負人は仕様書に記載された業務を全て適正に履行したとして、契約額の全額を支払っていた。
しかし、仕様書等に記載されていた業務の具体的な内容と請負人から提出された報告書等の内容とを突合したところ、18件の契約において、表1のとおり、実際の会議等の開催回数や招へい者数等が、仕様書等に記載された数量を下回っており、請負人により実施された業務と仕様書等に記載された業務がかい離している状況となっていた。
表1 会議開催業務における状況
番号 | 年度 | 契約件名 | 請負人 | 契約額 (千円) |
変更された業務内容 | 具体的な内容 | 実際に実施された業務 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 平成
26 |
平成26年度森林等の吸収源に関する調査業務 | 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 | 29,000 | ワーキンググループ開催回数 | 2回 | 1回 |
招へい者数 | 10名 | 6名 | |||||
2 | 27 | 平成27年度ダイオキシン類環境測定精度管理調査業務 | 日本工営株式会社 | 19,764 | 分科会出席者数 | 34名 | 29名 |
3 | 26 | 平成26年度黄砂・大気汚染に関する国際協力推進調査業務 | 一般社団法人海外環境協力センター | 21,600 | 運営委員会参加者数 | 8名 | 2名 |
4 | 27 | 平成27年度水銀大気排出抑制対策調査業務 | 株式会社エックス都市研究所 | 22,842 | 打合せ出席者人日数 | 110人日 | 61人日 |
5 | 26 | 平成26年度水循環基本法等に係る啓発等業務 | 株式会社博報堂 | 19,800 | 審査委員会委員数 | 7名 | 5名 |
子供向け大会の招へい者数 | 21名 | 20名 | |||||
6 | 27 | 平成27年度中国における畜産排水処理事業に係る調査検討業務 | 株式会社データ設計 | 47,995 | 訪日調査回数 | 2回 | 1回 |
7 | 26 | 平成26年度OECDグローバル・フォーラム東京会合に関する企画・準備・運営等業務 | 株式会社オーエムシー | 37,205 | 旅費の支払対象となる招へい者数 | 45名 | 27名 |
8 | 26 | 平成26年度我が国循環産業海外展開事業化促進のための研修企画・運営業務 | 一般財団法人日本環境衛生センター | 21,600 | 旅費の支払対象となる招へい者数 | 50名 | 34名 |
9 | 27 | 平成27年度アジア太平洋地域の3Rの推進に向けた調査・検討・広報業務 | 一般財団法人日本環境衛生センター | 22,680 | 官民大会出席者数 | 6名 | 3名 |
フォーラム招へい者数 | 12名 | 10名 | |||||
10 | 27 | 平成27年度「アジア太平洋3R白書」作成に係る基礎調査業務 | 公益財団法人地球環境戦略研究機関 | 21,989 | フォーラム招へい者数 | 43名 | 33名 |
11 | 26 | 平成26年度外国人を対象とした国立公園の魅力発信モデル事業実施業務 | 株式会社電通 | 200,000 | オープンラボ開催回数 | 5回 | 4回 |
オープンラボ有識者人日数 | 165人日 | 113人日 | |||||
12 | 27 | 平成27年度生物多様性及び生態系サービスに関する科学的知見に関する調査業務 | 公益財団法人地球環境戦略研究機関 | 18,107 | 国際会議出席者数 | 173名 | 157名 |
13 | 26 | 平成26年度国連生物多様性の10年日本委員会企画運営等業務 | 一般社団法人環境パートナーシップ会議 | 10,908 | 委員会出席者人日数 | 83人日 | 59人日 |
14 | 27 | 平成27年度国連生物多様性の10年日本委員会企画運営広報等業務 | 一般社団法人環境パートナーシップ会議 | 10,908 | 委員会委員数 | 7名 | 5名 |
15 | 26 | 平成26年度全国野鳥保護のつどい記念式典実施業務 | 公益財団法人日本鳥類保護連盟 | 17,172 | 実績発表大会出席者数 | 30名 | 20名 |
16 | 26 | 平成26年度アジアにおける環境影響評価連携推進業務 | 公益財団法人地球環境戦略研究機関 | 53,900 | 海外関係者打合せ回数 | 3回 | 2回 |
17 | 26 | 平成26年度水銀等の管理に関する内外の動向、技術的事項及び国内対応策の検討に係る調査業務 | 株式会社エックス都市研究所 | 38,664 | 作業部会開催回数 | 4回 | 2回 |
18 | 26 | 平成26年度エコチル調査に関する企画調査実施等業務 | 一般社団法人環境情報科学センター | 78,300 | 国際連携調査委員会開催回数 | 4回 | 3回 |
作業グループ開催回数 | 2回 | 1回 | |||||
計 | / | 692,436 | / | / | / |
そして、上記18件の契約について、貴省における履行確認状況を検査したところ、いずれの契約においても、仕様書等に記載された業務の具体的な内容の一部を実施しないことについては、実施部局の担当者が、請負人と協議するなどして、請負人に対して口頭で承認を与えていた。
しかし、当該実施部局の担当者は、上記のような承認を与えたことを支出負担行為担当官に報告していなかったため、支出負担行為担当官は、実施部局の担当者と請負人との協議により実際に行われることになった業務の具体的な内容に応じて仕様書等を変更し契約額を減額するなどの契約変更に必要な手続を行っていなかった。
そして、前記18件の契約について、本院において、実際に実施された業務の具体的な内容が仕様書等に反映されるなどの契約変更が行われたと仮定して契約額を試算すると計6億4356万余円となり、前記の支払われた契約額6億9243万余円との開差額4886万余円が生ずることになると認められる。
上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例1>
貴省は、経済協力開発機構(以下「OECD」という。)とともに、「環境に関するOECDグローバル・フォーラム東京会合」(以下「会合」という。)を平成26年6月に開催することから、会合の円滑な準備、運営等を行うために、「平成26年度OECDグローバル・フォーラム東京会合に関する企画・準備・運営等業務」を株式会社オーエムシー(以下「会社」という。)に契約額37,205,460円で請け負わせて実施している。
本件契約の仕様書によれば、会社は、会合に関する準備、運営等の業務を行うこととされ、世界各国からの会合参加者等のうちの一部については、その旅費等を負担するため、会社は、これらの費用負担の詳細及びその方法について、貴省本省の実施部局の担当者との協議の上で決定することとされている。
これに基づき、貴省は、会合の開催に当たり、世界各国からの会合参加者40名程度及びOECD事務局員5名程度については、旅費及び宿泊費の実費を負担することとし、旅費9,229,008円、航空券・宿泊の手配・支払等を含む運営に係る人件費925,000円、計10,154,008円をこれらに要する費用としていた。
しかし、会社は、貴省の実施部局の担当者からの承認を得て、旅費等を負担する会合参加者については40名を23名に、OECD事務局員5名を4名に減少させていた。そして、これらに要する費用は、旅費5,293,299円、人件費608,400円、計5,901,699円となるのに、貴省は、仕様書等を変更し契約額を減額するなどの契約変更を行わないままその全額を会社に支払っていた。
したがって、契約変更が適切に行われたと仮定して適正な契約額を試算すると計32,544,722円となり、前記の支払われた契約額37,205,460円との開差額4,660,738円が生ずることになると認められる。
貴省は、調査広報等業務に係る11件の契約(契約額計3億1798万余円)について、請負人は仕様書に記載された業務を全て適正に履行したとして、契約額の全額を支払っていた。
しかし、仕様書等に記載されていた業務の具体的な内容と請負人から提出された報告書等の内容とを突合したところ、11件の契約において、表2のとおり、実際の検討会開催回数や調査回数等が、仕様書等に記載された数量を下回っており、請負人により実施された業務と仕様書等に記載された業務がかい離している状況となっていた。
表2 調査広報等業務における状況
番号 | 年度 | 契約件名 | 請負人 | 契約額 (千円) |
変更された業務内容 | 具体的な内容 | 実際に実施された業務 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 平成
26 |
平成26年度家電リサイクル法の見直しに係る調査業務 | 株式会社三菱総合研究所 | 42,660 | 検討会開催回数 | 9回 | 6回 |
調査回数 | 100回 | 31回 | |||||
2 | 26 | 平成26年度自動車リサイクル制度の高度化・安定化方策等に係る検討・調査業務 | 株式会社三菱総合研究所 | 27,000 | 検討会開催回数 | 3回 | 2回 |
3 | 27 | 平成27年度家電リサイクル制度の高度化に係る調査業務 | 株式会社三菱総合研究所 | 39,960 | 検討会委員数 | 7名 | 6名 |
調査回数 | 160回 | 107回 | |||||
4 | 27 | 平成27年度自動車リサイクルに関する3Rの推進・質の向上に向けた検討・調査業務 | 株式会社三菱総合研究所 | 19,980 | 検討会開催回数 | 3回 | 2回 |
検討会委員数 | 10名 | 9名 | |||||
ヒアリング回数 | 20回 | 11回 | |||||
5 | 26 | 平成26年度総合的な2Rシステムの構築に向けた調査・検討業務 | 公益財団法人廃棄物・3R研究財団 | 14,499 | 検討会開催回数 | 4回 | 3回 |
6 | 27 | 平成27年度産業廃棄物処理業の振興方策の検討に関する基礎的調査業務 | 株式会社三菱総合研究所 | 38,880 | 検討会開催回数 | 2回 | 0回 |
7 | 27 | 平成27年度犬猫幼齢個体を親兄弟から引き離す理想的な時期に関する動物行動学的調査業務 | 合同会社Symbio | 12,751 | 調査結果の送付部数 | 2,405部 | 984部 |
8 | 27 | 平成27年度石綿ばく露者の健康管理に係る試行調査等に関する検討調査業務 | 医療法人社団こころとからだの元氣プラザ | 19,440 | 意見交換会回数 | 4回 | 1回 |
検査受診者数 | 150名 | 101名 | |||||
9 | 27 | 平成27年度花粉症に関する調査・検討業務 | ウェザー・サービス株式会社 | 13,716 | 検討会開催回数 | 3回 | 2回 |
10 | 26 | 平成26年度我が国の水銀対策手法の国際展開に係る調査等業務 | 株式会社エックス都市研究所 | 59,940 | 調査対象社数 | 30社 | 13社 |
調査人日数 | 168人日 | 70人日 | |||||
11 | 27 | 平成27年度エコチル調査における広報に関する企画実施業務 | 一般社団法人環境情報科学センター | 29,160 | 戦略広報委員会開催回数 | 4回 | 3回 |
ワーキンググループ回数 | 1回 | 0回 | |||||
計 | / | 317,986 | / | / | / |
そして、上記11件の契約について、貴省における履行確認状況を検査したところ、いずれの契約においても、仕様書等に記載された業務の具体的な内容の一部を実施しないことについては、実施部局の担当者が、請負人と協議するなどして、請負人に対して口頭で承認を与えていた。
しかし、当該実施部局の担当者は、上記のような承認を与えたことを支出負担行為担当官に報告していなかったため、支出負担行為担当官は、実施部局の担当者と請負人との協議により実際に行われることになった業務の具体的な内容に応じて仕様書等を変更し契約額を減額するなどの契約変更に必要な手続を行っていなかった。
そして、前記11件の契約について、本院において、実際に実施された業務の具体的な内容が仕様書等に反映されるなどの契約変更が行われたと仮定して契約額を試算すると計2億7612万余円となり、前記の支払われた契約額3億1798万余円との開差額4185万余円が生ずることになると認められる。
上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例2>
貴省は、我が国の水銀対策技術の国際展開に向けて、国内における水銀対策技術シーズ調査(以下「国内シーズ調査」という。)、途上国における水銀対策技術ニーズ調査(以下「途上国ニーズ調査」という。)等を行うために、「平成26年度我が国の水銀対策手法の国際展開に係る調査等業務」を株式会社エックス都市研究所(以下「会社」という。)に契約額59,940,000円で請け負わせて実施している。
本件契約の仕様書によれば、会社は、国内シーズ調査については、水銀対策技術を保有する企業等への個別訪問ヒアリング調査を30社程度実施することなど、途上国ニーズ調査については、我が国の技術展開に向けた現地調査として3か国において、1か国当たり56人日、3か国計168人日で実施することなどとされている。
これに基づき、貴省は、旅費12,919,315円、運営に係る人件費10,080,700円、雑役務費等7,882,450円、計30,882,465円をこれらに要する費用としていた。
しかし、会社は、貴省の実施部局の担当者からの承認を得て、国内シーズ調査の水銀対策技術を保有する企業等への個別訪問ヒアリング調査については30社を13社に、途上国ニーズ調査の我が国の技術展開に向けた現地調査については3か国計168人日を計70人日に減少させていた。そして、これらに要する費用は、旅費12,075,520円、人件費5,678,100円、雑役務費等7,132,300円、計24,885,920円となるのに、貴省は、仕様書等を変更し契約額を減額するなどの契約変更を行わないままその全額を会社に支払っていた。
したがって、契約変更が適切に行われたと仮定して適正な契約額を試算すると計52,499,517円となり、前記の支払われた契約額59,940,000円との開差額7,440,483円が生ずることになると認められる。
前記29件の契約について、本院において、実際に実施された業務の具体的な内容が仕様書等に反映されるなどの契約変更が行われたと仮定して契約額を試算すると計9億1969万余円となり、前記の支払われた契約額計10億1042万余円との開差額9072万余円が生ずることになると認められる。
(是正改善を必要とする事態)
仕様書等に記載された業務の具体的な内容等を変更する必要が生じているのに、支出負担行為担当官による必要な仕様書及び契約の変更の手続が行われていない事態は適切ではなく、是正改善を図る要があると認められる。
(発生原因)
このような事態が生じているのは、実施部局において、会議開催等業務に係る契約を請負人に履行させるに当たり、仕様書の内容等を変更する必要が生じたときは適切に仕様書及び契約を変更することの必要性についての認識が欠けていること、貴省において、上記のような契約変更を行うために必要な手続等を定めていないことなどによると認められる。
貴省においては、今後も、契約の履行過程で業務の具体的な内容が変動する多数の会議開催等業務を民間事業者等に請け負わせて実施することが見込まれる。
ついては、貴省において、会議開催等業務に係る契約の締結に当たり、請負人に実施させる業務の具体的な内容の変更に応じて仕様書及び契約を変更するために必要な手続等を定めたマニュアル等を整備して、これらを業務の実施部局に周知徹底することにより、会議開催等業務に係る契約を適時適切に変更して、契約額が実施された業務に即したものとなるよう是正改善の処置を求める。