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  • 平成28年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 予算経理

若年定年退職者給付金の支給に当たり、支給額に過不足があったもの[海上、航空両自衛隊の9基地隊等](303)―(311)


会計名及び科目
一般会計 (組織)防衛本省 (項)防衛本省共通費
部局等
海上、航空両自衛隊の9基地隊等
若年定年退職者給付金の概要
若年定年制により退職した自衛官に対して、退職後から60歳までの間の所得上の不利益を補う給付金
給付金の支給額
45,085,040,257円(平成24年度~28年度)
上記のうち過大に支給していた給付金の額
7,292,120円
支給不足となっていた給付金の額
5,782,225円(平成27、28両年度)

1 若年定年退職者給付金の概要

防衛省は、自衛官の退職に関して、自衛隊法(昭和29年法律第165号)等により、自衛官の階級に応じて53歳から56歳までを定年とする若年定年制を採用している。そして、防衛省は、若年定年制により退職した自衛官(以下「退職者」という。)に対して、国家公務員の定年が原則として60歳であることから、退職後から60歳までの間の所得上の不利益を補う給付として、防衛省の職員の給与等に関する法律(昭和27年法律第266号)、若年定年退職者給付金に関する省令(平成21年防衛省令第5号)等(以下「給付金関係法令等」という。)に基づき、若年定年退職者給付金(以下「退職者給付金」という。)を支給している。

退職者給付金の支給額は、給付金関係法令等に基づき、退職時の俸給月額の6か月分に、退職者が定年となった年齢から60歳までの期間の年数を乗ずるなどして算定することとなっている。そして、給付金支給機関である陸上、海上、航空各自衛隊の基地隊等が若年定年退職者給付金支給調書(以下「支給調書」という。)に基づき算定して退職者に支給している。

平成18年4月1日及び27年4月1日に、給付金関係法令等の一部が改正され、自衛官の俸給月額が減額されたが、それぞれ26年及び30年の3月31日までの経過措置として、自衛官が改正後に受ける俸給月額が改正前に受けていた俸給月額に達しない場合には、その差額に相当する額(以下「加算額」という。)を算定して、俸給月額に加算額を加えて支給することとする現給保障が定められている。そして、現給保障を受ける者(以下「現給保障者」という。)に対しては、俸給月額に加算額を加えた額を退職時の俸給月額として退職者給付金の支給額を算定することとなっている。ただし、現給保障者のうち、部隊長等の職にある自衛官が同時期に一斉に定年により退職すると業務に支障が生ずることなどから、退職までの短期間、別部署に勤務するために降任(注1)(以下、単に「降任」という。)した者については、単に現給保障者として加算額を算定すると、降任による俸給月額の減額が適用されないこととなるため、降任する前に受けていた俸給月額と降任後に受ける俸給月額との差額を加算額から減ずることなどが定められている。

また、退職者給付金の支給は、給付金関係法令等に基づき、原則として2回に分割して行われ、1回目の支給は退職後の4月又は10月に、2回目の支給は退職の翌々年の8月に、それぞれ行われることとなっている。そして、2回目の支給の際には、退職の翌年における所得金額が、退職者が退職の翌年まで自衛官として在職していたと仮定した場合に受けるべき俸給月額、扶養手当等を基礎として算出された退職の翌年における給与年額相当額から退職時の俸給月額の6か月分を差し引いた額を超える場合には、その超えた額に応じて支給額の算定を行うこととなっている。なお、給与年額相当額を算出する際の扶養手当については、扶養対象者の続柄等に応じて金額が定められている。

(注1)
降任  自衛官にあってはその者を現に任命されている階級より下位の階級に任命等すること

2 検査の結果

本院は、合規性等の観点から、退職者給付金が給付金関係法令等に基づき適正に支給されているかなどに着眼して、陸上、海上、航空各自衛隊の19基地隊等において、24年度から28年度までの間に支給された退職者給付金を対象として支給調書等を確認するなどして会計実地検査を行った。

検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

(1) 退職者給付金を過大に支給していたもの

2基地隊等(注2)は、24年から26年までの退職者15人に対する1回目及び2回目の退職者給付金の支給に当たり、現給保障者のうち、退職前に降任した者について、降任する前に受けていた俸給月額と降任後に受ける俸給月額との差額を加算額から減ずることなく退職時の俸給月額を算出するなどし、これにより退職者給付金の支給額を算定していたため、退職者給付金計4,218,356円を過大に支給していた。

また、4基地隊等(注3)は、25、26両年の退職者12人に対する2回目の退職者給付金の支給に当たり、退職の翌年における給与年額相当額について、誤った扶養対象者の続柄等による扶養手当の額に基づいて算出するなどし、これにより退職者給付金の支給額を算定していたため、退職者給付金計3,073,764円を過大に支給していた。

(注2)
2基地隊等  海上自衛隊東京業務隊、同横須賀基地業務隊
(注3)
4基地隊等  海上自衛隊厚木、岩国両航空基地隊、航空自衛隊中部航空警戒管制団、同第2補給処十条支処

(2) 退職者給付金が支給不足となっていたもの

4基地隊等(注4)は、25、26両年の退職者12人に対する2回目の退職者給付金の支給に当たり、退職の翌年における給与年額相当額について、退職者が現給保障者であるのに、俸給月額に加算額を加えることなく算出するなどし、これにより退職者給付金の支給額を算定していたため、退職者給付金計5,782,225円が支給不足となっていた。

(注4)
4基地隊等  海上自衛隊鹿屋、八戸、厚木各航空基地隊、航空自衛隊航空中央業務隊

したがって、(1)及び(2)のとおり、退職者給付金の支給に当たり、退職者給付金の支給額の算定が適正に行われておらず、24年度から28年度までの間に9基地隊等において支給された退職者給付金計45,085,040,257円のうち計7,292,120円(退職者27人)を過大に支給していたり、退職者給付金計5,782,225円(退職者12人)が支給不足となっていたりしていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、各基地隊等において、退職者給付金の支給額の算定に当たり給付金関係法令等の理解が十分でなかったことなどによると認められる。

(1)の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

海上自衛隊東京業務隊は、平成24年2月に退職した自衛官Aに対して、退職時の俸給月額519,900円が給付金関係法令等の一部改正前に受けていた俸給月額546,900円に達していないことから、現給保障者として、加算額を加えた額である退職時の俸給月額により退職者給付金の支給額を算定し、同年4月に1回目の退職者給付金3,569,444円、26年8月に2回目の退職者給付金2,301,347円、計5,870,791円を支給していた。

しかし、自衛官Aは、退職前に降任していたことから、降任する前に受けていた俸給月額534,800円と降任後に受ける俸給月額との差額14,900円を加算額から減ずるなどして退職時の俸給月額を算定すべきであった。このため、上記の差額を加算額から減じた退職時の俸給月額により適正な退職者給付金の支給額を算定すると、1回目の支給額は3,560,328円、2回目の支給額は1,361,010円、計4,921,338円となり、退職者給付金949,453円が過大に支給されていた。

以上を基地隊等別に示すと次のとおりである。

  基地隊等名 年度 退職者給付金を過大に
支給していた人数
左の額 退職者給付金が支給不足となっていた人数 左の額(△)
      千円 千円
(303) 海上自衛隊東京業務隊 24~28 11 3,449
(304) 同横須賀基地業務隊 24~27 4 768
(305) 同鹿屋航空基地隊 28 4 △3,723
(306) 同八戸航空基地隊 28 6 △1,390
(307) 同厚木航空基地隊 27、28 5 434 1 △142
(308) 同岩国航空基地隊 27、28 2 775
(309) 航空自衛隊中部航空警戒管制団 28 2 1,404
(310) 同第2補給処十条支処 27 3 459
(311) 同航空中央業務隊 27 1 △526
(303)―(311)の計 27 7,292 12 △5,782