防衛装備庁(平成27年9月30日以前は装備施設本部。以下「装備庁」という。)は、航空自衛隊の調達要求に基づき、航空機に搭載する99式空対空誘導弾(B)を調達するために、26年3月に、三菱電機株式会社(以下「会社」という。)と随意契約により製造請負契約を契約金額5,935,626,000円で締結している。
本件契約には、「契約事務に関する達」(平成18年装備本部達第4号)等に基づき「代金の中途確定に関する特約条項」(以下「中確条項」という。)が付されている。中確条項は、製造等の期間が1年を超え、当該期間中に材料の価格、所要工数等の計算項目に相当の変動が予想される場合等に必要に応じて付するもので、中確条項が付されている契約においては、当該契約の履行の中途までの実績に基づくなどして代金を確定することとなっている。そして、その手続は、次のとおりとなっている。
① 契約の相手方は、契約履行の中途までに契約の履行のために支出し、又は負担した費用を計算した実際原価計算書を作成して、装備庁に提出する。
② 装備庁は、地方防衛局の原価監査官等に実際原価計算書の適否を審査するための原価監査を実施させ、原価監査官等は、原価監査報告書を作成して、装備庁に提出する。
③ 契約の相手方は、契約の全期間において契約の履行のために支出し、又は負担した費用及び支出し、又は負担すべき費用に適正な利益を加えた金額を計算した確定計算価格見積書を作成して、装備庁に提出する。
④ 装備庁は、提出された原価監査報告書及び確定計算価格見積書の内容の適否について審査するなどして、直接材料費、加工費及び直接経費を積み上げた製造原価に一般管理及び販売費、利子並びに利益から成る総利益を加えるなどして計算価格を計算し、これに消費税及び地方消費税を加えて最終的な計算価格(以下「確定計算価格」という。)を算定する。このうち加工費は、工数(製造等に直接従事した作業時間)に、装備庁が毎年度設定する加工費率(期間加工費を期間工数で除して算定した1作業時間当たりの加工費)を乗ずることなどにより計算することとなっている。
上記の直接材料費には、契約物品を製造するために必要な材料及び部品の購入費、部品を会社が自社で製造するのに要する費用(以下「自社製造費」という。)等を含めて計上することとなっており、自社製造費のうちの加工費は、上記の加工費率を用いて計算することとなっている。
⑤ 装備庁は、確定計算価格が契約金額に達しない場合、当該確定計算価格を基に最終的な契約金額を確定し、変更契約を締結する。
本件契約において、会社は、契約の履行中である27年10月に、実際原価計算書を作成して、装備庁に提出しており、これを受けて、南関東防衛局の原価監査官は、原価監査を実施した上で原価監査報告書を作成して、同年11月に装備庁に提出している。
その後、会社は、確定計算価格見積書を作成して、同月に装備庁に提出しており、装備庁は、上記の原価監査報告書及び確定計算価格見積書の内容の適否について審査するなどして、確定計算価格を5,801,112,000円と算定している。
そして、装備庁は、確定計算価格が当初の契約金額5,935,626,000円に達しなかったことから、28年2月に当該確定計算価格を基に最終的な契約金額を5,800,854,960円と確定する変更契約を締結し、27年5月から28年3月までの間に7回(前金払を含む。)に分けて同額を会社に支払っている。
本院は、合規性等の観点から、中確条項に基づく確定計算価格の算定は適切に行われているかなどに着眼して、本件契約を対象として、装備庁及び会社において、契約書、原価監査報告書、確定計算価格見積書等の書類を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
装備庁は、確定計算価格の算定に当たり、直接材料費3,333,952,000円のうち8部品の自社製造費を747,936,398円としていた。
しかし、装備庁は、8部品の自社製造費のうち、3部品について自社製造費を重複して計算したり、1部品について数量を誤って計算したり、5部品について装備庁が年度ごとに会社に設定した加工費率でなく会社が定めた加工費率を適用して計算したりなどしていた。このため、8部品の自社製造費を修正計算すると709,682,000円となり、これに基づくなどして直接材料費を計算すると3,295,698,000円となる。
したがって、上記の直接材料費に基づくなどして適正な確定計算価格を算定すると5,755,212,000円となり、前記の支払額5,800,854,960円との差額45,642,960円が過大となっていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、装備庁において、中確条項に基づく確定計算価格の算定に当たり、直接材料費のうち自社製造費の確認が十分でなかったことなどによると認められる。