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  • 平成28年度|
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  • (2) 工事の設計及び施工が適切でなかったもの

魚礁の設計及び施工が適切でなかったもの[中国四国防衛局](315)


(1件 不当と認める国庫補助金 27,671,174円)

  部局等 補助事業者等
(事業主体)
補助事業等 年度 事業費
(国庫補助対象事業費)
左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費
(国庫補助対象事業費)
不当と認める国庫補助金等相当額
          千円 千円 千円 千円
(315) 中国四国防衛局 山口県岩国市 再編交付金
(増殖礁整備)
25、26 48,015
(48,015)
45,000 29,666
(29,666)
27,671

この交付金事業は、岩国市が、岩国港海域において、魚介類の成育場(以下「魚礁」という。)を整備するために、成長に伴い深所へ逸散していく増産対象魚種の稚魚を効率的に滞留させるための自然石を積み上げた投石礁24基及び来遊した増産対象魚種を集めて投石礁等へ誘導するなどのためのコンクリート製ブロックの誘導礁40基の設置工事を実施したものである。

このうち、投石礁は、石材と石材の間に稚魚の隠れ場所となる大小様々な空隙を確保するために、石材(1個当たり1,000kg程度)を同海域の海底地盤の所定の範囲に投入して、四角錐(すい)台状に積み上げるものである(参考図1参照)。また、誘導礁は、増産対象魚種の餌料となる生物が着生するために必要な表面積(1基当たり56.6m2、40基計2,265.2m2。以下「餌料着生面積」という。)を確保するために、コンクリート製ブロックを同海域の海底地盤に設置するものである。

同市は、魚礁の設計を「漁港・漁場の施設の設計の手引2003年版」(水産庁監修。以下「手引」という。)等に基づいて行っている。手引によれば、魚礁は、海底地盤の地質等により洗掘、埋没又は沈下してその機能が低下しないように考慮することなどとされている。

そして、同市は、投石礁の設計に当たり、各投石礁の海底地盤から天端までの高さ(以下「天端高」という。)を2.7m、各投石礁の海底地盤へのめり込み深さ(以下「めり込み深度」という。)を最深部で1.0mと算出し、これらにより必要となる石材の投入量(以下「設計投入量」という。)を投石礁1基当たり168.8m3と算定して、これにより施工していた。同市は、石材を海底地盤に設置するに当たり、当初潜水士が石材の投入位置や設置状況を海底から確認する方法により行うとしていたが、請負人からの申出を受けて、作業員が石材の投入位置や設置状況を船上からGPSにより確認する方法で行うことに変更していた。また、同市は、誘導礁の設計に当たり、本件コンクリート製ブロックと同種の誘導礁が同海域近傍の誘導礁として採用実績があり顕著な埋没が見られていないことから、誘導礁に採用することとして、これにより施工していた。

しかし、同市は、投石礁の1基当たりの設計投入量の算定に当たり、海底地盤の支持力係数の計算を誤っていたため、めり込み深度を最深部で0.5m過小に算出していた。そこで、適正なめり込み深度に基づき石材の投入量を算定すると214.3m3となり、上記の設計投入量168.8m3は45.5m3不足していた。また、石材を海底地盤に設置する際、上記の船上から確認する施工方法では、石材が設計図どおりに積み上がっているか確認できないおそれがあるのに、同市は、その施工方法が適切であるかを十分に検討していなかった。さらに、同市は、誘導礁の設計に当たり、海底地盤の地質等を考慮した埋没量の算定や、誘導礁が埋没しないようにするために必要な対策を検討していなかった。

そこで、投石礁及び誘導礁の設置状況を確認したところ、投石礁24基全てにおいて、石材の投入量が不足していたり、投入した石材が広範囲に散乱していたため実際の天端高が設計の天端高2.7mを大幅に下回る0.2mから1.3mとなっていたりしていて、設計図どおりの四角錐台状に積み上がっていなかった。

また、誘導礁40基全てにおいて、海底地盤に一部埋没していたため、餌料着生面積が計1,453.8m2となっており、設計の餌料着生面積計2,265.2m2に比べて計811.4m2不足していた(参考図2参照)。

したがって、本件投石礁及び誘導礁のうち埋没した部分(工事費相当額計29,666,000円)は、設計及び施工が適切でなかったため、稚魚の隠れ場所となる大小様々な空隙が確保されていなかったり、必要な餌料着生面積が確保されていなかったりしている状況となっていて、工事の目的を達しておらず、これに係る交付金相当額計27,671,174円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同市において、投石礁及び誘導礁の設計業務の成果品に誤りがあったのにこれに対する検査が十分でなかったり、投石礁の施工方法が適切であるかの検討が十分でなかったりしたことなどによると認められる。

(参考図1)

投石礁の概念図

投石礁の概念図 画像

(参考図2)

海底地盤に一部が埋没した状態の誘導礁の概念図

海底地盤に一部が埋没した状態の誘導礁の概念図 画像