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  • 平成28年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第13 防衛省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(1) シースパローミサイルRIM―162の新規組立整備を瑕疵(かし)担保期間内に実施し、瑕疵に該当する異状等を発見した場合に会社に対して瑕疵修補等の請求等を行うことができるよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)防衛本省 (項)武器車両等整備費
(項)平成21年度甲型警備艦建造費
部局等
海上幕僚監部
契約名
シースパローミサイルRIM―162製造請負契約
契約の概要
護衛艦に搭載して運用する艦対空誘導弾を製造する契約
契約の相手方
三菱電機株式会社
シースパローミサイルRIM―162の調達額
445億6380万余円(平成21年度~24年度)
上記のうち新規組立整備で異状等が発見されていたのに会社に対して瑕疵(かし)修補等の請求等を行うことができずそのままでは使用できない状況となっていたRIM―162の調達額
9億0910万円(平成21、22、24各年度)

1 シースパローミサイルRIM―162の整備等の概要

(1) シースパローミサイルRIM―162の概要

海上自衛隊は、各種の艦対空誘導弾を護衛艦に搭載して運用している。シースパローミサイルRIM―162(以下「RIM―162」という。)は、艦対空誘導弾の一つであり、誘導部、弾頭部、制御部、推進部等の構成品により構成されている。

海上幕僚監部(以下「海幕」という。)は、RIM―162の調達に当たって、防衛装備庁(平成27年9月30日以前は装備施設本部。以下「装備庁」という。)に調達要求を行っており、これを受けて装備庁は、RIM―162製造請負契約を三菱電機株式会社(以下「会社」という。)と締結している。

会社は、火薬類取締法(昭和25年法律第149号)に定める火薬類の製造等の許可を受けていないことなどから、火薬が装填された構成品を組み立てて完成弾とすることができないため、RIM―162製造請負契約の仕様書等に基づき、RIM―162を構成品ごとに梱包した状態で海上自衛隊の部隊に納入している。

(2) RIM―162の瑕疵(かし)の処理

装備庁は、「防衛装備庁における契約事務に関する訓令」(平成27年防衛装備庁訓令第34号。27年9月30日以前は「契約事務に関する達」(平成18年装備本部達第4号)。以下「訓令」という。)等に基づき、装備品等の調達における契約に原則として適用される基本契約条項等において、納入された装備品等に瑕疵がある場合、契約の相手方に対して修補若しくは代金の減額又は契約の解除(以下、これらを合わせて「瑕疵修補等」という。)の請求等を行うことができる旨を定めた規定を設けている。

また、海上自衛隊は、「海上自衛隊補給実施要領について(通知)」(平成18年補本装補第2072号)等に基づき、調達品等を受領した部隊等が当該調達品等について瑕疵に該当する異状等を発見するなどした場合には、その内容を記載した異状報告書を装備庁に提出することとなっている。

異状報告書の提出を受けた装備庁は、訓令等に基づき、異状報告書に記載された瑕疵について、瑕疵修補等の請求等を行うことができる期間(以下「瑕疵担保期間」という。)内に発見されるなどした異状等であるか否かを確認するなどした上で、瑕疵修補等の請求等を行うこととなっている。RIM―162製造請負契約においては、瑕疵担保期間は納入の日から1年以内となっており、海上自衛隊において瑕疵担保期間を経過した後に瑕疵に該当する異状等を発見するなどして、修理等の措置を講ずるとした場合には、瑕疵修補等の請求等を行うことはできないことから、別途、修理契約等を会社と締結することになる。

(3) RIM―162の整備等の概要

海幕は、弾薬等の整備を担当する部隊(以下「整備担当部隊」という。)等が行う弾薬等及び同関連器材の整備に関して必要な事項を、弾薬等整備基準(平成27年海幕艦武第1263号)において定めるなどして、整備担当部隊等の監督及び指導を実施することとしている。

そして、弾薬等整備基準に基づき、海上自衛隊補給本部(以下「補給本部」という。)は、誘導弾整備要領(平成29年補本艦武弾第116号。以下「新整備要領」という。29年1月18日以前は誘導弾整備要領(平成10年補本武弾第116号)。以下「旧整備要領」という。)において、誘導弾の弾種ごとに、整備の実施方法、実施範囲等を定めており、整備担当部隊は、誘導弾が構成品ごとに新規に納入された場合、構成品を組み立てて完成弾とし、試験装置を用いて機能試験を行うこととされている。
旧整備要領によれば、RIM―162については上記の機能試験を行う新規納入時検査の実施方法、実施範囲等の詳細は定められておらず、整備担当部隊は、旧整備要領に定められている他の誘導弾の実施方法、実施範囲等を参考にするなどしてRIM―162の新規納入時検査を実施している。

新整備要領によれば、新規納入時検査は、組立整備(注)のうち納入後の最初の組立整備(以下、旧整備要領に基づく新規納入時検査と合わせて「新規組立整備」という。)として整理されている。そして、新整備要領においては、旧整備要領と異なり、RIM―162についても新規組立整備の実施方法、実施範囲等が定められている。

(注)
組立整備  新規に納入した誘導弾の構成品を組み立てる新規納入時検査と既に供用等した誘導弾の構成品を組み立てる検査を総称したもので、旧整備要領に定められた新規納入時検査と同じ内容の整備事項となっている。

また、整備担当部隊は、旧整備要領又は新整備要領に基づき、整備を円滑に行うために整備計画を作成することとなっていて、整備計画に基づく進捗状況の把握、整備の優先順位の指定等を行い、適切な作業管理を行うこととなっている。そして、整備を行った場合は、整備等の履歴を管理するために経歴簿を作成することとなっている。

RIM―162の整備担当部隊は、横須賀、佐世保両地方総監部の所在地に設置されている横須賀、佐世保両弾薬整備補給所(以下、これらを合わせて「2弾薬整備補給所」という。)となっており、横須賀弾薬整備補給所は19年度から、佐世保弾薬整備補給所は整備器材の納入が遅延したため26年度から、RIM―162の新規組立整備をそれぞれ実施している。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、合規性、経済性、有効性等の観点から、RIM―162の新規組立整備が瑕疵担保期間内に実施されているか、新規組立整備により発見された異状等について瑕疵修補等の請求等が適切に行われているかなどに着眼して、海幕の調達要求に基づき21年度から24年度までの間に締結されたRIM―162製造請負契約(調達額計445億6380万余円、納入時期は23年度から26年度まで)を対象として、装備庁、海幕、補給本部、横須賀、佐世保両地方総監部及び会社において会計実地検査を行った。検査に当たっては、契約関係書類、経歴簿等を確認するとともに、会社において、RIM―162の瑕疵修補等の状況について聴取するなどして検査した。

(検査の結果)

2弾薬整備補給所における27、28両年度の整備計画についてみたところ、いずれも、RIM―162の新規組立整備を瑕疵担保期間内に実施することを前提としたものとなっていなかった。また、海幕は、2弾薬整備補給所等に対して、RIM―162の新規組立整備を瑕疵担保期間内に実施することを明示していなかった。

そして、2弾薬整備補給所におけるRIM―162の新規組立整備の実施状況についてみたところ、調達額計152億3306万余円に相当するRIM―162については、28年4月1日時点において、会社から納入された後に既に瑕疵担保期間を経過しているのに、新規組立整備が実施されていなかった。その後、新規組立整備は29年5月に完了しているが、それぞれの納入日から新規組立整備の完了までに平均で2年3か月の期間(最長4年6か月、最短1年1か月)を要していた。

これについて海幕は、佐世保弾薬整備補給所へのRIM―162に係る整備器材の納入が遅延したため、整備開始時期が26年10月となり、整備器材の運用が可能となるまでの間、新規組立整備を十分に実施することができなかったことによるとしている。しかし、26年10月以降に2弾薬整備補給所に納入された調達額計77億4047万余円に相当するRIM―162についても、28年4月1日時点において、新規組立整備が瑕疵担保期間内に実施されていなかった。

しかし、前記のとおり、RIM―162製造請負契約においては、瑕疵担保期間は納入の日から1年以内となっており、瑕疵担保期間を経過した後に瑕疵に該当する異状等を発見したとしても、瑕疵修補等の請求等を行うことはできない。そして、RIM―162を使用できるように修理等の措置を講ずるとした場合には、別途、修理契約等を会社と締結する必要がある。

現に、RIM―162の新規組立整備の実施により発見した異状等の処理状況について確認したところ、調達額計9億0910万余円に相当するRIM―162は、新規組立整備(実施時期は25年10月から29年4月まで)で異状等が発見されていたものの、会社から納入(納入時期は24年1月から27年1月まで)された後に既に瑕疵担保期間を経過(最長1年4か月、最短8か月)していたため、装備庁は、会社に対して瑕疵修補等の請求等を行うことができなくなっていた。そして、これらのRIM―162は、そのままでは使用することができない状況となっていた。

このように、RIM―162の新規組立整備が瑕疵担保期間内に実施されておらず、瑕疵担保期間を経過した後に瑕疵に該当する異状等を発見したとしても、会社に対して瑕疵修補等の請求等を行うことができない状況となっており、一部のRIM―162について、新規組立整備で異状等が発見されていたのに会社に対して瑕疵修補等の請求等を行うことができず、そのままでは使用することができない状況となっていた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、補給本部及び2弾薬整備補給所においてRIM―162の新規組立整備を瑕疵担保期間内に実施することの必要性についての理解が十分でなかったこと、海幕において補給本部及び2弾薬整備補給所に対して、新規組立整備を瑕疵担保期間内に実施することを明示していなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、海幕は、29年9月に補給本部及び2弾薬整備補給所に対して通知を発して、今後、納入されるRIM―162に瑕疵に該当する異状等を発見した場合に会社に対して瑕疵修補等の請求等を行うことができるよう、新規組立整備を瑕疵担保期間内に実施することとする整備計画を作成して、当該計画に基づき新規組立整備を瑕疵担保期間内に実施することの必要性を周知徹底する処置を講じた。