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  • 平成28年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第13 防衛省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(5) 鉛蓄電池の交換作業等により発生する廃電池について、売払いの実施に必要な手順等を定めた要領等を整備するなどして、その処理を経済的に実施するよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)防衛本省 (項)防衛本省共通費
(項)防衛力基盤整備費
(組織)防衛装備庁 (項)防衛装備庁共通費
部局等
内部部局
契約名
蓄電池交換役務契約等3件
契約の概要
市ヶ谷庁舎に設置されている無停電電源装置等の既設の鉛蓄電池を新品と交換して、処分させるもの
契約の相手方
3会社
契約
平成27年12月、28年12月 一般競争契約
支払
平成28年4月、29年4月
支払額
4231万余円(平成27、28両年度)
上記のうち節減できた廃電池の処分に係る費用相当額
1218万円

1 契約等の概要

(1) 契約の概要

防衛省は、市ヶ谷庁舎において、通信用設備等を多数設置して24時間運用している。そして、災害等によって商用電源が停電した際、自家発電設備から電気が供給されるまでの間に通信用設備等に電気を供給するために、無停電電源装置等(以下「電源装置」という。)を設置し、管理している。これらの電源装置は、電気を供給する負荷に見合った容量を持つ鉛蓄電池等で構成されている。

防衛省内部部局(以下「内局」という。)は、市ヶ谷庁舎に設置されている電源装置の維持管理として、経年劣化した既設の鉛蓄電池を新品の鉛蓄電池と交換する作業に係る役務契約を必要の都度締結しており、平成27、28両年度においては3件の役務契約を3会社(注)と契約金額計4231万余円で締結していた。これらの契約の内容は、既設の鉛蓄電池(以下「廃電池」という。)976個を取り外して新品の鉛蓄電池と交換することに加えて、取り外した976個と、別途不要となった36個とを合わせた廃電池1,012個を産業廃棄物として処分させるものとなっていた。

(注)
3会社  株式会社NTTファシリティーズ、東芝電機サービス株式会社、日立化成株式会社

(2) 廃棄物処理法等の概要

廃棄物は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「廃棄物処理法」という。)等に従って処分等を行うこととなっている。廃棄物処理法によれば、事業者は、産業廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合、産業廃棄物管理票を交付するなどして、都道府県知事に報告書を提出しなければならないなどとされており、事業者は最終処分に至るまでの過程を管理する必要がある。

環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課長が発した「行政処分の指針について(通知)」(平成25年環廃産発第1303299号)によれば、廃棄物とは、占有者が自ら利用し、又は他人に有償で譲渡することができないために不要となったものとされている。そして、廃棄物に該当しない有価物については、廃棄物処理法の適用を受けないこととなっている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、経済性等の観点から、鉛蓄電池の交換作業等に係る役務契約について役務の内容が適切なものとなっているかなどに着眼して、内局が27、28両年度に締結した前記の3契約を対象として、内局において、契約書、仕様書、予定価格調書等の書類を確認するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

内局は、鉛蓄電池の交換作業等により発生する廃電池計1,012個について、有価物として売り払うのではなく、前記のとおり産業廃棄物として処分することとして、当該処分についても役務契約の内容に含めていた。その理由について、内局は、有価物として売り払うことについて検討した際に、廃電池の最終処分に至るまでの過程を報告すること(以下「処分報告」という。)を条件として買受人を探したところ、買受人が見つからなかったためとしていた。

しかし、有価物として廃電池を売り払う場合には、産業廃棄物として処分する場合と異なり、売払人が最終処分に至るまでの過程を管理することは法令等で求められておらず、売払い後に仮に当該廃電池から発生する不要物や当該廃電池自体が処分される際は、廃棄物処理法に従って行われることとなることから、内局が、売払いに当たって処分報告を条件とする必要はなかったと認められた。

現に、海上自衛隊横須賀、呉、佐世保各地方総監部は、27、28両年度に、庁舎の補修等により発生した廃電池について、処分報告を条件とすることなく、有価物として売り払っていた。

このように、鉛蓄電池の交換作業等により発生する廃電池について、有価物として売り払うことができるのに、産業廃棄物として費用を負担して処分していた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(節減できた廃電池の処分に係る費用相当額等)

内局が、鉛蓄電池の交換作業等により発生する廃電池について、産業廃棄物として費用を負担して処分するのではなく、別途、有価物として売り払うことにしたとすると、前記の3契約において、廃電池計1,012個を処分する必要はなくなることから、前記の契約金額計4231万余円は、廃電池の処分に係る費用相当額計1218万余円の節減が図られるとともに、別途、売払いによる収入を得ることができたと認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、内局において、鉛蓄電池の交換作業等により発生する廃電池について、処分するか又は売り払うかの処理を決定するに当たり、売払いに係る取引の実例や売払いの条件を十分検討していなかったり、経済的に実施することの重要性についての理解が十分でなかったりしていたことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、内局は、29年9月に、鉛蓄電池の交換作業等により発生する廃電池について、売払いの実施に必要な手順等を定めた要領等を整備し、同月に、関係部署に通知を発して、廃電池の処理を経済的に実施するよう処置を講じた。