ページトップ
  • 平成28年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第1 日本私立学校振興・共済事業団|
  • 不当事項|
  • 補助金

私立大学等経常費補助金の経理が不当と認められるもの[日本私立学校振興・共済事業団](317)―(324)


科目
(助成勘定)補助金経理 (項)交付補助金
部局等
日本私立学校振興・共済事業団
補助の根拠
私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)
事業主体
8学校法人
補助の対象
私立大学等における専任教職員の給与等教育又は研究に要する経常的経費
上記に対する事業団の補助金交付額
21,727,961,000円(平成24年度~27年度)
不当と認める事業団の補助金交付額
47,928,000円(平成24年度~27年度)

1 補助金の概要

(1) 補助金交付の目的

日本私立学校振興・共済事業団(以下「事業団」という。)は、私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)に基づき、国の補助金を財源として、私立大学等(注)を設置する学校法人に私立大学等経常費補助金(以下「補助金」という。)を交付している。補助金は、私立大学等の教育条件の維持及び向上並びに学生の修学上の経済的負担の軽減を図るとともに私立大学等の経営の健全性を高めることを目的として、私立大学等における専任教職員の給与等教育又は研究に要する経常的経費に充てるために交付されるものである。

(注)
私立大学等  私立の大学、短期大学及び高等専門学校

(2) 補助金の額の算定

事業団は、私立大学等経常費補助金交付要綱(昭和52年文部大臣裁定)等に基づき、補助金の額を算定する資料(以下「算定資料」という。)として、各学校法人に補助金交付申請書とともに次の資料等を提出させている。

  • ア 申請年度の5月1日現在の専任教員等の数、専任職員数及び学生数に関する資料
  • イ 学校法人会計基準(昭和46年文部省令第18号)に基づき作成した前年度決算の学生納付金収入、教育研究経費支出、設備関係支出等に関する資料

そして、事業団は、算定資料に基づき、私立大学等経常費補助金配分基準(平成10年日本私立学校振興・共済事業団理事長裁定)に定める方法により、補助金の額を算定している。

(3) 一般補助

事業団は、次の①から③までの方法により、私立大学等における経常的経費に対する一般補助の額を算定している。

① 経常的経費を専任教員等給与費、専任職員給与費、教育研究経常費等の経費に区分して、経費区分ごとに専任教員等の数、専任職員数、学生数等に所定の補助単価を乗ずるなどして補助金の基準額を算定する。

そして、上記のうち専任教員等の数について、1週間の割当授業時間数が6時間以上であることが、算定対象となる要件の一つとなっている。ただし、専任教員等のうち助教及び助手については、当該割当授業時間数の要件はないが、申請年度の4月1日から3月31日までの間に育休等により勤務しない期間がある場合、5月1日現在で、その期間が休暇届等により6か月を超えると判断される者は、補助金の基準額の算定対象とすることができないこととなっている。また、専任職員については、校友会等の補助対象となる私立大学等とは別の組織等の職務に主として従事している者や調理師等の職務に従事している者は、補助金の基準額の算定対象とすることができないこととなっている。

② 各私立大学等の教育研究条件の整備状況等を勘案して、補助金の重点的な配分を行うために、収容定員に対する在籍学生数の割合、専任教員等の数に対する在籍学生数の割合、学生納付金収入に対する教育研究経費支出と設備関係支出との合計額の割合等に基づいて増減率を算定する。

③ ①で算定した経費区分ごとの基準額に②で算定した増減率を乗ずるなどの方法により得られた金額を合計して、一般補助の額とする。

(4) 特別補助

上記のほか、私立大学における学術の振興及び私立大学等における特定の分野、課程等に係る教育の振興のために特に必要があると認められるときは、補助金を増額して交付すること(以下「特別補助」という。)ができることとなっている。

特別補助の対象となる項目には「大型設備等運営支援」があり、これは、大学院等の機能高度化を促進するために、申請年度の維持費等(消耗品費、光熱水費、保守管理費等)の所要経費が100万円以上であることなどの一定の要件を満たす大型設備等を保有して研究活動を行っている私立大学等を対象として、当該大型設備等に係る維持費等の所要経費に応じて定められた額の増額を行うものである。

そして、事業団は、各学校法人から算定対象となる大型設備等の所要経費の見込額等を記載した算定資料を提出させて、特別補助の額を算定し、見込額に比べて実際の所要経費が減少した場合は、実績額を報告させて、特別補助の額の減額を行っている。

(5) 私立大学等改革総合支援事業の支援対象校に対する補助金の増額

平成25年度以降、事業団及び文部科学省は、教育の質的転換、地域発展、産業界・国内外の大学等との連携等の改革に取り組む私立大学等に対する支援を強化するために、私立大学等改革総合支援事業(以下「総合支援事業」という。)を実施している。

総合支援事業の実施に当たり、文部科学省は、各学校法人が改革の取組状況を記載して事業団に提出した私立大学等改革総合支援事業調査票(以下「総合支援事業調査票」という。)に基づき算定された点数により、支援対象校を選定している。そして、事業団は、提出された総合支援事業調査票を基に、支援対象校として選定された私立大学等に係る一般補助の額の増額を行うとともに、特別補助による総合支援事業調査票の点数に応じて定められた額の増額を行っている。また、支援対象校に選定される総合支援事業調査票の点数には下限が定められており、下限点数を下回った場合は支援対象校に選定されず、一般補助及び特別補助共に総合支援事業に係る増額は行われない。

2 検査の結果

本院は、合規性等の観点から、一般補助における専任教員等の数や専任職員数は適切に算定されているか、特別補助の算定対象となる経費は適切に算定されているか、また、総合支援事業の支援対象校に対する補助金の増額は適切に行われているかなどに着眼して、事業団が24年度から27年度までに補助金を交付している648学校法人のうち26学校法人において、算定資料等の書類により会計実地検査を行った。

検査したところ、8学校法人において、事業団に提出した算定資料に一般補助の算定対象とならない専任教員等や専任職員を含めたり、特別補助の算定対象とならない経費を含めたり、総合支援事業調査票に実態と異なる改革の取組状況を記載したりしていたのに、事業団は、これらの誤った算定資料に基づいて補助金の額を算定していた。このため、補助金計47,928,000円が過大に交付されていて不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、8学校法人が、補助金の制度を十分に理解していなかったり、算定資料の作成に当たりその内容の確認を十分に行っていなかったりしているのに、事業団において、これらの学校法人に対する指導及び調査が十分でなかったことによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例1>

学校法人武蔵野大学は、一般補助において、事業団に提出した算定資料に、武蔵野大学における平成25、26、27各年度の算定対象の専任職員数について、校友会等の補助対象となる私立大学等とは別の組織等の職務に主として従事している者であることから算定対象とならない職員を、それぞれ、1名、1名、2名含めて計上していた。

また、特別補助において、同学校法人は、事業団に提出した算定資料に、同大学における27年度の大型設備等運営支援に係る4設備の維持費等の所要経費に関して、実際には、使用しておらず、所要経費が発生していない1設備について、誤って他の設備に係る所要経費を算定対象として計上していた。

さらに、総合支援事業において、同学校法人は、27年度の同大学に係る総合支援事業調査票の提出に当たり、少なくとも、学長又は副学長若しくは理事に相当する職、全学部長等を構成員として含むこととされている国際化推進のための全学的な体制の整備、並びに国際化の企画及び実施を担う常設の担当部署の整備について、「いずれも整備している」と記載していたが、実際に整備した国際化の推進のための全学的な体制には、いずれの学部長も含まれておらず、総合支援事業調査票の点数が過大となっていた。

したがって、25、26、27各年度において、一般補助の算定対象とならない職員を除外し、また、27年度において、特別補助の算定対象とならない他の設備に係る所要経費を除外するとともに、27年度の適正な総合支援事業調査票の点数に基づいて算定すると、適正な補助金の額は、25年度926,096,000円、26年度984,202,000円、27年度1,009,323,000円となり、それぞれ、845,000円、759,000円、3,034,000円、計4,638,000円が過大に交付されていた。

<事例2>

学校法人花園学園は、総合支援事業において、平成27年度の花園大学に係る総合支援事業調査票の提出に当たり、学修時間の実態の把握、集計及び分析の組織的な実施について、「一部の学部等又は一つの学年のみについて行っている」と記載していたが、実際には学修時間の実態の集計及び分析を組織的に行っておらず、総合支援事業調査票の点数が過大となっていた。また、学内の教育改革に取り組む教員又は組織(学部等)を財政的に支援するためにあらかじめ別枠で確保され、学内における公募による自由競争によって配分されることを要件とする予算について、「設けている」と記載していたが、同大学が設けていた予算は学内の教育改革等に取り組む部署全体の予算であり、要件を満たしておらず、総合支援事業調査票の点数が過大となっていた。

したがって、適正な総合支援事業調査票の点数を算定すると、下限点数を下回り、総合支援事業の支援対象校に選定されず、一般補助及び特別補助共に総合支援事業に係る増額は行われないことから、適正な補助金の額は、194,804,000円となり、16,363,000円が過大に交付されていた。

以上を事業主体別に示すと次のとおりである。

  事業主体
(本部所在地)
年度 補助金交付額 不当と認める補助金額 摘要
      千円 千円  
(317) 学校法人国際医療福祉大学
(栃木県大田原市)
26 1,115,240 1,000 総合支援事業において総合支援事業調査票に実態と異なる改革の取組状況を記載していたもの
(国際医療福祉大学)
    27 1,230,049 2,000
    小計 2,345,289 3,000
(318) 学校法人國學院大學
(東京都渋谷区)
26 650,098 1,000
(國學院大學)
(319) 学校法人昭和大学
(東京都品川区)
26 5,115,718 1,000 一般補助において算定対象とならない専任職員が含まれていたものなど
(昭和大学)
    27 5,167,166 11,667
    小計 10,282,884 12,667
(320) 学校法人武蔵野大学
(東京都江東区)
25 926,941 845 一般補助において算定対象とならない専任職員が含まれていたもの、特別補助において算定対象とならない経費が含まれていたものなど
(武蔵野大学)
    26 984,961 759
    27 1,012,357 3,034
    小計 2,924,259 4,638
(321) 学校法人明治薬科大学
(東京都清瀬市)
26 383,913 1,000 総合支援事業において総合支援事業調査票に実態と異なる改革の取組状況を記載していたもの
(明治薬科大学)
(322) 学校法人花園学園
(京都市)
27 211,167 16,363 総合支援事業において総合支援事業調査票に実態と異なる改革の取組状況を記載していたため支援対象校に選定されないもの
(花園大学)
(323) 学校法人兵庫医科大学
(兵庫県西宮市)
24 1,972,930 6,486 特別補助において算定対象とならない経費が含まれていたものなど
(兵庫医科大学)
    27 2,121,195 1,000
    小計 4,094,125 7,486
(324) 学校法人村崎学園
(徳島県徳島市)
27 836,226 1,774 一般補助において算定対象とならない専任教員等が含まれていたもの
(徳島文理大学)
(317)―(324)の計 21,727,961 47,928