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  • 平成28年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • (第6 本州四国連絡高速道路株式会社)|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

高圧電力の電気需給契約を締結するに当たり、契約規程等に基づいて一般競争に付することにより、競争の利益を享受できるようにするとともに、特定調達の対象となる要件を満たす場合には協定等に基づく契約手続を実施することにより、内外無差別原則の確立と手続の透明性等を確保するよう改善させたもの


科目
管理費用、休憩所等事業費、鉄道管理受託業務費用
部局等
本社、6管理センター
契約の概要
6管理センターが管轄する施設等で使用する高圧電力の電気の調達を行うもの
一般競争に付することなく随意契約により締結していた契約件数及び支払額
52件 5億5576万円(平成28年度)
上記のうち協定等に基づく契約手続を行っていなかったものの契約件数及び支払額
9件 3億0955万円

1 高圧電力の電気需給契約等の概要

(1) 高圧電力の電気需給契約の概要

本州四国連絡高速道路株式会社(以下「本四会社」という。)は、本州と四国を連絡する自動車専用道路等の新設、改築、維持、修繕その他の管理を行っており、本四会社の6管理センター(注1)は、それぞれが管轄する橋りょう、トンネル等(以下、これらを「施設等」という。)の維持管理等を行っている。そして、6管理センターは、施設等で使用する電気について、本四会社の受電所ごとに、関西電力株式会社等3会社(注2)(以下「3会社」という。)と高圧電力の電気需給契約を締結して電気の供給を受けている。

(注1)
6管理センター  神戸、鳴門、岡山、坂出、しまなみ尾道、しまなみ今治各管理センター
(注2)
関西電力株式会社等3会社  関西電力、中国電力、四国電力各株式会社

(2) 契約に関する事務の概要

本四会社は、契約に関する事務を、本四会社制定の契約規程、契約事務細則等(以下「契約規程等」という。)の内部規程等に基づいて行うこととしており、契約規程等によれば、契約を締結する場合においては、広告等をして申込みをさせることにより一般競争に付さなければならないこととされている。そして、契約の性質又は目的が競争を許さないときなどは随意契約によるとされ、また、予定価格が250万円を超えないときなどは随意契約によることができるとされている。

(3) 高圧電力の電気の小売自由化

需要家に対する高圧電力の電気の小売については、3会社等の一般電気事業者(注3)による地域独占供給となっていたが、電気事業法(昭和39年法律第170号)の改正により、順次自由化されている。すなわち、平成16年4月には、契約電力が原則として500kW以上の需要家は一般電気事業者以外の事業者からも供給が受けられるようになり、17年4月には、契約電力が原則として50kW以上の需要家にまでこの取扱いが拡大され、さらに、28年4月には、契約電力にかかわらず全ての需要家にこの取扱いが拡大された。また、同月以降は、これまでの一般電気事業者等や新たに一般の需要に応じ電気を供給しようとする者は、経済産業大臣の登録を受けて小売電気事業者として電気を供給する事業を行うこととなった。そして、高圧電力の供給実績がある事業者数は、27年4月時点では84者であったが、28年4月には168者となり、さらに29年4月時点では239者となるなど、大きく増加している。

(注3)
一般電気事業者  平成28年4月施行前の電気事業法に基づき、経済産業大臣の許可を受けて、一般の需要に応じ電気を供給する事業を行っていた者。同月以降は、電気事業法の改正により、経済産業大臣の登録を受けて、小売電気事業者として電気を供給する事業を行うこととなった。

(4) 政府調達に関する協定等の概要

 「政府調達に関する協定」(平成7年条約第23号。以下「協定」という。)は、世界貿易機関(WTO)の下で運用されている協定の一つで、各加盟国の中央政府、地方政府及び協定が定める機関による調達の分野における内外無差別原則の確立と手続の透明性等の確保を目的として、各国が遵守すべき調達手続上の義務等を規定している。そして、我が国政府は、「政府調達手続に関する運用指針等について」(平成26年3月関係省庁申合せ)等を我が国の自主的措置として決定している(以下、協定及び我が国の自主的措置を合わせて「協定等」という。)。また、協定等の対象となる機関が、協定等の対象となる調達契約を締結する場合には、内部規程等に加えて、協定等に基づき事務を行う必要がある。

協定等によれば、本四会社は、協定の適用対象となる機関とされており、また、電気については適用対象となる物品の調達の例外ではないとされている。そして、物品の調達契約における評価の基礎となる額(予定価格等)は、我が国の政府調達に関する自主的措置により10万SDR(注4)以上の場合が協定等の適用対象となっており(以下、協定等の適用対象となる調達を「特定調達」という。)、その邦貨は、「国の物品等又は特定役務の調達手続の特例を定める政令」(昭和55年政令第300号)に基づく告示によれば、28年4月1日から30年3月31日までの間は1600万円(以下、この額を「基準額」という。)とするとされている。

協定の適用対象となる機関は、特定調達を行うに当たり、協定等に基づき、原則として一般競争に付することとなっており、一般競争に付する際には、協定等で定める公告期間を設け、また、契約期間等に関する情報等を官報に公告することなどとなっている。

(注4)
SDR  IMF(国際通貨基金)の特別引出権(Special Drawing Rights)

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、合規性、経済性等の観点から、6管理センターが高圧電力の電気需給契約を締結するに当たり、競争の利益を享受できるよう契約規程等に基づいて一般競争に付するなどしているか、協定等に基づいて特定調達に係る契約手続を実施しているかなどに着眼して検査した。

検査に当たっては、28年度に6管理センターが締結した高圧電力の電気需給契約計52件(支払額計5億5576万余円)を対象として、本四会社の本社及び6管理センターにおいて、契約書、請求書等の書類を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、調書の作成及び提出を求めるなどして検査した。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

6管理センターは、28年度の高圧電力の電気需給契約52件の全てについて、27年度までと同様に、3会社との随意契約を自動更新条項等に基づいて更新していた。そして、6管理センターは、上記52件の電気需給契約については、52の受電所それぞれにおいて、高圧電力の電気の安定供給が可能な事業者は1者のみであり、契約規程等において随意契約による場合とされている契約の性質又は目的が競争を許さないときに該当するとしていた。

しかし、高圧電力の電気については、前記のとおり、28年4月には全ての需要家が小売自由化の対象となっている。そして、6管理センターにおいても、3会社以外の小売電気事業者から高圧電力の電気の供給を受けることができる状況となっており、契約の相手方が3会社に限定されるものではないことから、契約の性質又は目的が競争を許さないときには該当しないものとなっていた。さらに、28年度の予定価格を算定する際に用いる前年度(27年度)の電気料金の支払額についてみたところ、これら52件の契約はいずれも250万円を超えていて、随意契約によることができる場合にも該当しないものとなっていた。

また、上記のうち、28年度の支払額が基準額である1600万円以上となっている9件の契約(支払額計3億0955万余円)については、当該契約の評価の基礎となる額を算定する際に用いる前年度(27年度)の電気料金の支払額が基準額である1600万円を上回っていて、特定調達の適用対象であったのに、6管理センターは特定調達に係る契約手続を実施していなかった。

このように、6管理センターにおいて、高圧電力の電気需給契約について、一般競争に付することなく随意契約を自動更新していて、競争の利益を享受できていなかった事態及び特定調達の適用対象であったのに、特定調達に係る契約手続が実施されていなかった事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。

  • ア 6管理センターにおいて3会社以外の小売電気事業者から高圧電力の電気の供給を受けることができる状況となっていることの理解が十分でなかったこと、本社において電気需給契約の締結を契約規程等に基づいて適正に行うことについての6管理センターに対する周知徹底が十分でなかったこと
  • イ 6管理センターにおいて、電気需給契約に関して、特定調達の対象となる要件を満たす場合には、内外無差別原則の確立と手続の透明性等の確保という協定の趣旨を踏まえて、特定調達に係る契約手続を協定等に基づいて実施することの重要性に対する理解が十分でなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、本四会社は、29年7月に6管理センターへ通知を発して、高圧電力の電気需給契約を締結するに当たっては、競争の利益を享受するために契約規程等に基づき一般競争に付すること及び特定調達の対象となる要件を満たす場合には、特定調達に係る契約手続を協定等に基づいて実施することを周知徹底した。そして、6管理センターは、受電所ごとに契約していた52件の契約を管理センターごとにまとめるなどして9件にして一般競争に付することとし、これらが特定調達の対象となる要件を満たすことから、同月に、協定等に基づいて官報に入札公告を掲載するなどの処置を講じた。