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必要な数量を超過するなどしている予備部品の優先的な使用を操業会社に指示することなどにより、国家備蓄施設における備蓄機器の部品の調達に係る経費を抑制させて業務委託料の節減を図るよう改善の処置を要求したもの


科目
(石油天然ガス等勘定)経常費用
(平成23年度以前は、(石油天然ガス勘定)経常費用)
部局等
独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構
備蓄機器の部品の概要
我が国又は国内の特定の地域において石油の供給が不足する事態に備えて設置された国家備蓄施設に整備された原油ポンプ等の備蓄機器の部品
備蓄機器の部品の調達に係る契約件数及び契約金額
30件 26億5898万余円(平成21年度~28年度)
必要な数量を超過するなどしている予備部品を使用することなく調達していた部品の品目、数量及び調達額
8品目 15個 5481万円(平成21年度~25年度)

【改善の処置を要求したものの全文】

国家備蓄施設における備蓄機器の部品の調達等について

(平成29年10月30日付け 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構理事長宛て)

標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。

1 備蓄機器の部品の調達等の概要

(1) 国家備蓄施設等の概要

貴機構は、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構法(平成14年法律第94号)に基づき、国の委託を受けて、石油の備蓄の確保等に関する法律(昭和50年法律第96号)に規定する国家備蓄石油及び国家備蓄施設(以下「備蓄基地」という。)を管理している。

国家備蓄石油は、我が国への石油の供給が不足する事態及び我が国における災害の発生により国内の特定の地域への石油の供給が不足する事態に備えて国が所有するものである。また、備蓄基地は、国家備蓄石油の備蓄に必要な施設であって国が所有するものであり、国家備蓄石油のうち原油を備蓄するために全国に10備蓄基地(注1)が設置されている。

(注1)
10備蓄基地  むつ小川原、苫小牧東部、白島、福井、上五島、秋田、志布志、串木野、久慈、菊間各国家石油備蓄基地

貴機構は、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構業務方法書(平成16年資第2号)に基づき、10備蓄基地の管理等に係る業務の一部を、備蓄基地の運営、保守管理等の業務を実施することを目的として設立されるなどした8株式会社(以下「操業会社」という。)に委託している。

(2) 備蓄基地の管理に係る委託契約等の概要

国と貴機構との間で毎年度締結されている備蓄基地の管理に係る委託契約によれば、貴機構は、備蓄基地の管理のための支出を委託契約書に附属する実施計画書に記載された支出計画により行い、国はその費用を負担することとされている。そして、国は、毎年度、委託契約の業務完了後に、貴機構が提出する実績報告書に基づき支払うべき金額を確定することとされている。

また、貴機構と操業会社との間で締結されている備蓄基地の運営、保守管理等に係る業務委託契約(以下「操業委託契約」という。)によれば、操業会社が委託業務の実施に要した経費については貴機構が全て負担することとされている。そして、貴機構は、毎年度、委託業務完了後に、操業会社が提出する実績報告書に基づき支払うべき金額を確定することとされている。

操業委託契約によれば、操業会社は、備蓄基地に係る運転業務、施設管理業務等を実施することとされており、このうち施設管理業務は、原油ポンプ等の機器等(以下「備蓄機器」という。)の定期的な点検・検査、それらの結果に基づく整備・修理等の実施等とされている。そして、操業会社は、備蓄機器の整備等の実施に当たっては、その際に使用する部品の調達を含めた備蓄機器の整備等の計画を事前に貴機構に提出してその承認を受けることとされている。

(3) 備蓄機器の部品の調達及び予備部品の概要

操業会社は、上記施設管理業務の一環として、備蓄機器の部品を含む物品の調達、保管等を行っている。保管等を行っている物品には、操業会社が業務委託料により、製造業者等と購入契約を締結して調達したり、工事等の請負人と締結した備蓄機器の修繕に係る契約に含めて調達したりしているもののほかに、石油公団(平成17年4月1日解散)が資本金の70%を出資して設立した操業会社の前身となる株式会社が、同公団からの資金を原資として調達した後、同公団の解散が決定したことに伴って16年2月に解散するなどした際に貴機構が承継して、操業会社に貸与しているもの(以下「貸与品」という。)がある。そして、操業会社が業務委託料により調達する物品及び貸与品には、故障等が生じた備蓄機器の部品と交換するために保管することにしている原油ポンプの回転軸を支えるベアリング、防油堤のオイルフェンス用膜材等の部品(以下「予備部品」という。)が含まれている。これらの予備部品は、それぞれの備蓄機器の専用品であって、品目ごとに用途が異なっている。

貴機構は、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構物品管理要領(2004年(財経)要領第5号。以下「要領」という。)等に基づき、取得価額が10万円以上であって耐用年数が1年以上の貸与品である予備部品及び貸与品以外の予備部品であって取得価額が20万円以上等の要件に該当するものについては、台帳を作成するなどして保管数量や受払いについて記録することとしている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

貴機構は、各備蓄基地において、備蓄機器を適切に管理するために、前記のとおり、操業会社に、予備部品の保管等を行わせている。そこで、本院は、経済性等の観点から、予備部品の活用を考慮して部品を調達しているかなどに着眼して、10備蓄基地において、取得価額が10万円以上であって耐用年数が1年以上の予備部品を対象として、調書の提出を求めるなどして検査を行った上で、3備蓄基地(注2)における部品の調達に係る契約について、契約書等を確認するなどして会計実地検査を行った。

(注2)
3備蓄基地  上五島、串木野、菊間各国家石油備蓄基地

(検査の結果)

貴機構は、29年3月末時点で、8備蓄基地で419品目1,034個の予備部品(取得価額計8億8156万余円)を操業会社に保管させているが、これらの予備部品について専ら故障時の対応のために保管することにしていること、それらの多くが貸与品であることなどから、各備蓄機器に必要な予備部品の品目及び数量を設定しておらず、予備部品として保管する必要がなかったり、予備部品として保管する必要がある数量を超過していたりするもの(以下「余剰部品」という。)があるかを把握することとしていなかった。

そこで、上記419品目1,034個の予備部品についてみたところ、非常時の対応のために不可欠と認められるものがある一方で、表1のとおり、5備蓄基地における109品目189個(取得価額計2億9821万余円)については、使用先となる備蓄機器に故障等が生じた際でも当該予備部品を使用することなく別途整備されている予備の備蓄機器を使用して対応できたり、点検の結果、劣化の兆候が確認できた時点で調達手続をとることにより交換が必要な時期までに調達することが可能であったりすることなどから、余剰部品であると認められた。

表1 予備部品及び余剰部品の数量等

(単位:品目、個、千円)
備蓄基地名 平成29年3月末時点において保管させていた予備部品  
うち、余剰部品と認められたもの
品目数 個数 取得価額計 品目数 個数 取得価額計
むつ小川原国家石油備蓄基地 130 229 83,226 3 5 2,170
白島国家石油備蓄基地 80 102 138,002 7 22 10,689
福井国家石油備蓄基地 5 9 26,838 0 0
上五島国家石油備蓄基地 95 346 555,935 25 46 253,703
秋田国家石油備蓄基地 15 196 32,978 0 0
志布志国家石油備蓄基地 18 31 11,389 0 0
串木野国家石油備蓄基地 53 79 21,408 53 79 21,408
菊間国家石油備蓄基地 23 42 11,782 21 37 10,242
合計 419 1,034 881,560 109 189 298,214
注(1)
表中の金額は単位未満を切り捨てていることから、合計欄の取得価額計は各備蓄基地の合計と一致しない。
注(2)
苫小牧東部、久慈両国家石油備蓄基地には、検査の対象とした取得価額が10万円以上であって耐用年数が1年以上の予備部品が存在しない。

そして、上記109品目189個の余剰部品のうち99品目162個(取得価額計2億8535万余円)を保管している前記の3備蓄基地において、21年度から28年度までの間に操業会社が製造業者、工事の請負人等と締結した部品の調達に係る契約のうち契約書等により確認できた30件の契約(契約金額計26億5898万余円)について、余剰部品の活用を考慮して部品を調達しているか検査したところ、次のような事態が見受けられた。

上五島国家石油備蓄基地には、原油を貯蔵している洋上タンクの周囲の海域に原油の流出拡大を防止するための防油堤が設置されており、その防油堤には、海上及び海中における原油の流出を防止するためのオイルフェンス用膜材等の交換可能な部品が取り付けられている。そして、貴機構は、操業会社に点検・整備を行わせた結果、交換の必要性が確認できたことから、21年度以降、毎年度、当該部品を交換することとする計画を承認していた。操業会社は、これに基づき、21年度から28年度までの間、毎年度、製造業者等と浮防油堤補修工事契約等を締結して、表2のとおり、同備蓄基地において保管する12品目の予備部品と同一品目の部品を計283個調達していた。

表2 上五島国家石油備蓄基地における防油堤の部品に係る12品目の調達状況

(単位:件、千円、品目、個)
年度 契約件数 契約額計 12品目の部品の調達状況
品目数 個数
平成21 2 192,675 3 42
22 2 264,705 6 52
23 2 190,260 4 33
24 2 189,504 3 32
25 2 264,127 4 29
26 2 279,504 4 29
27 2 301,320 5 33
28 2 264,384 2 33
合計 16 1,946,479 12 283
注(1)
契約額には工事費等が含まれている。
注(2)
各年度で同一の品目を調達しているものがあることから、合計欄の品目数は各年度の合計と一致しない。

しかし、上記12品目283個の部品のうち、8品目15個(調達価格(注3)計5481万余円)については、同備蓄基地に同一品目の余剰部品8品目15個(取得価額計5712万余円)があることから、これらを考慮することなく別途調達していたことは適切とは認められない。

(注3)
調達価格  調達単価を確認することができた7品目14個の部品の価格

貴機構は、備蓄機器の部品の調達に当たっては、当該部品の調達を含めた備蓄機器の整備等の計画の承認を行っているが、前記のとおり、各備蓄機器に必要な予備部品の品目及び数量を設定しておらず、余剰部品の存在を把握することとしていなかった。また、貴機構は、大半の予備部品について要領等に基づき品目、保管数量等を台帳により管理しているものの、予備部品の使用先となる備蓄機器の名称等を記載することとしておらず、さらに、要領等に基づく管理の対象とならない予備部品もあることから、予備部品の使用先となる備蓄機器等を認識できず、予備部品の活用に係る検討を行えない状況となっていた。

(改善を必要とする事態)

貴機構において、余剰部品の存在を把握しないまま、操業会社に余剰部品を活用させることなく同一品目の部品を別途調達させている事態は適切ではなく、改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、貴機構において、各備蓄機器に必要な予備部品の品目及び数量を設定することについて検討していないこと、備蓄機器の部品を調達する操業会社に対して余剰部品を優先的に使用するなどその有効活用を図る指示を行っていないこと、予備部品の適切な管理に必要な情報を把握することについての理解が十分でないことなどによると認められる。

3 本院が要求する改善の処置

貴機構が管理を受託している備蓄基地は、国民生活の安定を保証するための重要施設であることから、今後も引き続き適切に管理していく必要がある一方で、その管理に当たっては更なるコスト削減が求められている。

ついては、貴機構において、備蓄基地の運営、保守管理等に当たり、部品の調達に係る経費を抑制させて業務委託料の節減を図るよう、次のとおり改善の処置を要求する。

  • ア 操業会社に対して、予備部品として保管する必要性及び数量を判断する際の要件を示して、これに沿って各備蓄機器に必要な予備部品の品目及び数量を設定させること
  • イ 操業会社に対して、部品を交換する必要が生じた場合には同一品目の余剰部品を優先的に使用するよう求めるなど、余剰部品の有効活用を図るための指示を行うこと
  • ウ 必要な予備部品及び余剰部品の品目や数量、その使用先となる備蓄機器の名称等の情報を操業会社に報告させて、その情報を基に管理台帳を整備して、予備部品の活用状況について定期的に確認すること