独立行政法人地域医療機能推進機構(以下「機構」という。)は、地域において必要とされる医療等を提供する機能の確保を図ることを目的として、全国各地に所在する計57の病院の設置、運営等を行っている。
各病院は、患者の診療等に必要となる診療材料及び医療消耗器具備品(以下「診療材料等」という。)を多数調達しているが、一部の病院では、業務の効率化を図るなどのために、外部の業者との間で、診療材料等の調達と在庫管理等とを合わせて行うことを委託する契約(以下「調達管理業務委託契約」という。)を締結している(以下、調達管理業務委託契約の相手方を「受託業者」という。)。
調達管理業務委託契約を締結した病院は、調達管理業務委託契約の対象の診療材料等を個々の販売業者から直接調達するのではなく、受託業者から一元的に調達することになる。このため、病院は、受託業者に対して、委託した業務を実施する上で必要となる人件費等の経費(以下「労務費相当分」という。)や診療材料等の購入費(以下「材料費等相当分」という。)を支払うこととなる。
独立行政法人地域医療機能推進機構会計規程(平成26年規程第61号)によれば、機構は、売買、貸借、請負その他の契約を締結する際、原則として、公告して申込みをさせることにより競争に付さなければならないこととされており、理事長が別に定める契約方法による場合を除き、競争は入札の方法をもって行わなければならないこととされている。
そして、独立行政法人地域医療機能推進機構契約事務取扱細則(平成26年細則第6号)によれば、上記の理事長が定める契約方法は、契約の性質又は目的から価格のみならず企画、技術の提案等を公募して、応募があった提案等を総合的に評価して契約の相手方を決定する方法(以下「公募型企画競争」という。)とされている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
本院は、合規性、経済性等の観点から、調達管理業務委託契約の締結に当たり、契約手続の適正性及び透明性は確保され、競争による利益は十分に享受されているかなどに着眼して、平成26年度から28年度までの間に7病院(注1)が締結した調達管理業務委託契約計8契約(26年度から28年度までの支払額計56億8683万余円)を対象として、機構本部及び7病院において、契約書、仕様書、入札状況調書等の関係書類により会計実地検査を行った。
(検査の結果)
検査したところ、3病院(注2)が3会社と締結した調達管理業務委託契約計4契約について、次のような事態が見受けられた。
3病院は、調達管理業務委託契約の締結に当たり、一般競争入札又は公募型企画競争を実施していたが、材料費等相当分については、毎月の定額払いとなる労務費相当分とは異なり、患者の診療等の状況に応じた実際の調達数量に応じて定まるものであることから、あらかじめ必要な調達予定数量を見込むことが難しいなどとして、競争に付していなかった。また、3病院は、競争に付していない材料費等相当分について、当該契約を締結した受託業者と別途の協議を行って診療材料等の品目ごとに単価を決定し、その単価に実際の調達数量を乗ずるなどして受託業者に支払っていた。
そして、3病院が締結した計4契約に基づく26年10月から29年3月までの支払額は、労務費相当分として計3151万余円、材料費等相当分として計23億9179万余円、合計24億2330万余円となっていて、競争に付していなかった材料費等相当分の占める割合は、いずれの契約においても98%を超えている状況となっていた。
しかし、調達管理業務委託契約は、診療材料等の調達と在庫管理等とを合わせて行うことを委託する契約であり、診療材料等の調達実績等を参考にして調達予定数量を見込むことにより材料費等相当分を競争に付することは可能であることなどから、上記のとおり材料費等相当分が支払額の大部分を占めることを踏まえると、労務費相当分のみならず材料費等相当分も含めた総額を競争に付すべきであったと認められた。
現に、他の4病院(注3)は、調達管理業務委託契約の締結に当たり、労務費相当分のみならず材料費等相当分も含めた総額を競争に付していた。
このように、3病院における調達管理業務委託契約の締結に当たり、労務費相当分のみならず材料費等相当分も含めた総額を競争に付していなかった事態は、契約手続の適正性及び透明性が確保されておらず、競争による利益を十分に享受できないものとなっていて適切ではなく、改善の必要があると認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、3病院において調達管理業務委託契約の締結に当たり契約手続の適正性及び透明性を確保するとともに競争による利益を十分に享受できるようにする必要性があることについての認識が欠けていたこと、機構本部において各病院における調達管理業務委託契約の契約手続に関する実態の把握及び指導が十分でなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、機構は、29年9月に各病院に対して通知を発して、今後、調達管理業務委託契約を締結する際の受託業者の選定に当たっては、労務費相当分のみならず材料費等相当分も含めた総額を競争に付するよう周知徹底する処置を講じた。