協会における関連団体の事業運営の状況に関する各事項について、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、①関連団体との取引の状況について、関連団体との契約について競争性のある契約方式への移行は十分に行われているか、業務委託の必要性は十分検討されているか、委託業務に係る実績原価の検証は適切に行われているか、また、その結果は十分に活用されているか、関連団体への業務委託費の算定に適用する管理費率は適切なものとなっているか、協会所有の番組等の二次使用等に伴う関連団体からの副次収入の算定方法の検証は適切に行われているか、関係規程類は適切に整備されているか、②関連団体の剰余金及び協会に対する配当の状況について、関連団体の利益剰余金の増加の要因はどのようなものか、また、利益剰余金を適正な規模とするための協会の指導・監督は適切に行われているか、普通配当及び特例配当の額はどのように算定されているか、また、協会における配当要請の基準は適切なものとなっているか、③関連団体の不適正経理の再発防止に向けた指導・監督の状況について、協会による関連団体における経理適正化策に関する指導・監督は、協会及び関連団体においてこれまで講じられてきた経理適正化策を踏まえるなどして適切に行われているか、協会による関連団体における体制整備に関する指導・監督は、不適正経理の防止に向けた内部監査部局等が適切に整備されて、その機能が確保されるよう、適切に行われているか、協会による関連団体に対する指導・監督の一環として行われる調査は、関係規程等を遵守して適切な方法によって行われているかなどの点に着眼して検査を実施した。
検査の結果の概要は、次のとおりである。
協会は、競争性を高めるための各種要領等を制定したものの関連団体との取引の大半が随意契約となっていたり、委託費の削減を目的として委託業務従事者に占める出向者の割合を減少させている契約はなかったり、業務委託額の妥当性を検証するために19年度から一部の契約を対象として実績原価調査を毎年度行っているものの業務委託費の積算等の見直しを行っていなかったり、二次使用料率について20年度に二次使用料率を適用しない算定方式に1団体について1件変更したほかは見直しを行っていなかったり、関係規程類の一部について28年7月現在においてもその適用範囲が明確なものとなるよう改定していなかったりしていた(1020_2_1_1リンク参照)。
(ア) 関連団体との契約に占める競争性のない随意契約の割合は、26年度以降増加していて、27年度は件数で83.2%、金額で92.7%となっている。また、27年度の随意契約の中にも、競争性のある契約への移行が可能なものが見受けられる(1020_2_1_2_1リンク参照)。
(イ) 25年度から27年度までの3か年度の番組制作業務委託に係る企画競争の件数は計108件、契約金額は計38億余円となっていて、番組制作業務委託全体に対する割合は件数で17.5%、金額で1.1%となっている。そして、企画競争により制作した番組の編成時間が総編成時間に占める比率は27年度で1.5%程度にとどまっている(1020_2_1_2_2リンク参照)。
(ア) 27年度末における関連団体26団体の役職員数は、計6,531人となっている。そして、常勤役員に占める協会の出身者の割合が100%となっている関連団体は、子会社において9社、関連公益法人等において7団体、計16団体となっている。なお、社長又は理事長は、17年度末と同様、全て協会の出身者となっている(1020_2_1_3リンク参照)。
(イ) 27年度末における関連団体の職員数は6,402人、協会の職員数は10,074人となっていて、昭和55年度末と比べて、協会において職員数は6,669人減少(平成17年度末と比べて1,590人減少)している一方、関連団体において職員数は4,755人増加(同967人増加)している(zuhyo1-3リンク参照)。
(ア) 関連団体との随意契約における出向者の削減状況をみると、25年度で70件中3件、26年度で93件中4件、27年度で17件中3件、計10件について出向者が減少していたが、このうち6件は出向者がそのまま転籍者となるなど要員区分を見直したことによる減少であり、残り4件は当該委託業務において事業の一部廃止に伴い業務を縮小したことによる減少であり、委託費の削減を目的として出向者の割合を減少させているものはなかった。また、委託業務に従事する要員の構成をみたところ、出向者のみを要員としているものが、25年度で293件中4件、26年度で344件中2件、27年度で284件中3件、計9件見受けられた(1020_2_1_4リンク参照)。
(イ) 協会は、20年度決算から、関連団体に対し、協会との取引と協会以外との取引を区分経理させることとし、それぞれの取引に係る売上高、営業利益、売上原価、販管費等を把握している(1020_2_1_4_2_1リンク参照)。
(ウ) 協会が区分経理を行わせている子会社等14社における27年度の売上高に占める協会との取引額の割合をみると、番組制作系子会社はおおむね70%を超えている。また、子会社等の原価率について、業種別、資本金別の区分により分類して23年度から27年度までの間の平均を算出すると、74.5%から90.2%となっており、販管費率は5.4%から23.8%となっている。同様に営業利益率については、1.5%から15.3%となっている(1020_2_1_4_2_2リンク参照)。
(エ) 協会が区分経理を行わせている一般財団法人4団体について、23年度から27年度までの間の経常利益率の平均を算出すると、協会との取引に係るものは5.2%となっている(1020_2_1_4_2_2_2リンク参照)。
(オ) 27年度の実績原価調査21件の結果をみると、売上総利益率はマイナス7.7%から31.2%と選定する業務によって大きな差があり、委託業務のうち番組制作については、関連団体に調査票の作成を求めておらず、実績原価調査が行われていない状況となっている。そして、実績原価調査を毎年度実施している関連団体が8団体ある一方、1度も実施していない関連団体が4団体見受けられた。また、実績原価調査を行った翌年度にも同じ内容の契約を締結していて比較が可能な契約のうち、売上総利益率が管理費率を大きく上回る20%以上となっている24年度実施1件、25年度実施1件、26年度実施3件について調査実施の翌年度の契約をみたところ、業務委託費の積算等の見直しが行われていない状況となっていた(1020_2_1_4_3リンク参照)。
(カ) 協会は、管理費率について各関連団体の経営状況を検証し、必要に応じて見直すとしているが、一部を除き長期間にわたって見直されておらず、協会が27年度における管理費率を設定した根拠は明らかでない状況となっている(1020_2_1_4_4リンク参照)。
(ア) 17年度から27年度までの間の協会における関連団体からの副次収入は56億余円から73億余円の間で推移していて、協会における副次収入全体の7割から8割を占めており、27年度については関連団体からの副次収入56億余円のうち、番組関係副次収入は45億余円となっている(1020_2_1_5リンク参照)。
(イ) 協会において、二次使用料率自体の見直しを行っていたものはなく、二次使用料について、実際にその算定方法が妥当なものとなっているかの判断は依然として困難な状況である(zuhyo1-15リンク参照)。
任意業務の委託に関する事務手続等については、28年7月現在においても業務委託基準の適用範囲に含まれておらず、委託に関する他の関係規程類においても明文化されていない状況となっている(1020_2_1_6リンク参照)。
19年報告の前後以降の子会社の利益剰余金残高及び配当総額の推移をみると、利益剰余金残高は、21年度末まではおおむね横ばい、22年度末以降は増加傾向となっていて、27年度末で948億余円となっており、配当総額は、20年度に実施された73億余円の配当の後は、同年度の半分以下で推移している状況が続いていたが、28年度の配当で、72億余円の配当が実施されている(1020_2_2_1リンク参照)。
(ア) 関連団体の27年度末における剰余金に相当する額をみると、子会社13社の利益剰余金は計948億余円、関連会社4社の利益剰余金は計150億余円、日本放送協会健康保険組合を除く関連公益法人等8団体の一般正味財産期末残高等は計153億余円となっている。そして、27年度決算に基づき28年度に実施した配当総額は、子会社が計72億余円(うち協会の受取額計51億余円)、関連会社が計5億余円(同計2億余円)となっている(1020_2_2_2リンク参照)。
(イ) 子会社の27年度末の総資産、自己資本等の状況をみると、子会社13社の総資産は計1590億余円、自己資本は計990億余円、自己資本比率は平均で59.2%、当座比率は平均で239.6%となっていて、子会社の中には十分な財務上の余力がある会社が見受けられた。また、27年度決算における子会社の利益剰余金の内訳をみると、任意積立金の大半である目的積立金のうち事業維持積立金計658億余円が利益剰余金全体の69.3%を占めている(1020_2_2_2_3リンク参照)。
(ウ) 子会社の当期純利益は、直近10年間で計44億余円から計69億余円で推移していて、27年度は、子会社13社のうち9社が10か年度連続で黒字となるなどして子会社全体で計54億余円となっている(1020_2_2_2_3_2リンク参照)。
(エ) 子会社の利益剰余金は、子会社全体で、21年度末まではおおむね横ばい、22年度末以降は増加傾向となっていて、18年度末の計761億余円が27年度末は計948億余円となっている(1020_2_2_2_3_3リンク参照)。
(オ) 子会社の事業維持積立金の積立額の推移をみると、19年度末に計517億余円が積み立てられており、20年度以降も積増しが行われ、27年度末で計658億余円が積み立てられている。事業維持積立金の要積立額についてみると、各子会社の最低保有資金の算定方法が資金の受払の実際の状況を考慮したものとなっていないと思料されたり、子会社から協会に報告される最低保有資金の額について根拠が明確に示されずに報告されているため、協会において検証することが困難となっているものが見受けられたりした(1020_2_2_2_3_4リンク参照)。
(カ) 27年度末には子会社13社のうち7社が事業維持積立金以外の目的積立金を計22計上し、その総額は計153億円となっていて、19年度末の計9の積立金計50億余円に比べて3倍程度の規模となっている。また、27年度末で積み立てられている目的積立金は、目的に係る具体的な計画等が明確にされておらず、その目的が具体化される見込みのないまま積み立てられるなどしてから同額が留保され続けているものが見受けられ、8年以上同額が留保され続けているものが3積立金計上されている状況となっている。協会は、目的積立金が新設される場合には事前に報告を受けるなどしているが、その後、具体的な投資計画に基づくなどして、目的積立金の必要性や要積立額の妥当性の検証が十分に行われていない積立金が見受けられる状況となっていた(1020_2_2_2_3_4_2リンク参照)。
(キ) 27年度末において子会社3社に積み立てられている別途積立金計4億余円は、一部を除き、18年度までに積み立てられていた別途積立金の残高と19年度に積み立てた事業維持積立金の開差分がそのまま別途積立金として残されているものである(1020_2_2_2_3_4_3リンク参照)。
(ク) 関連会社2社の27年度末の自己資本比率及び当座比率をみると、株式会社放送衛星システムは45.1%及び164.5%、株式会社ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズは72.1%及び367.7%となっていることなどから、配当を実施していない株式会社ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズは、近年は毎年度、配当を実施している株式会社放送衛星システムと同様に、十分な財務上の余力があり、利益剰余金が今後の新規投資等に向けられないのであれば、配当が十分可能であると思料される(1020_2_2_2_4リンク参照)。
(ケ) 関連会社2社の当期純利益の推移をみると、株式会社放送衛星システムは10か年度連続で黒字となっており、株式会社ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズは黒字となっている年度が多くなっている。また、利益剰余金の推移をみると、株式会社放送衛星システムは18年度末の39億余円から27年度末には128億余円に、株式会社ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズは20年度末の5億余円から27年度末には16億余円にそれぞれ増加している(1020_2_2_2_4_2リンク参照)。
(コ) 一般財団法人5団体及び公益財団法人1団体の一般正味財産の期末残高の推移をみると、18年度末の計112億余円から27年度末には計148億余円に増加している(1020_2_2_2_5リンク参照)。
(サ) 学校法人1団体及び社会福祉法人1団体の流動資産から流動負債等を差し引いた額の推移をみると、学校法人日本放送協会学園はおおむね減少傾向に、社会福祉法人NHK厚生文化事業団はおおむね横ばいとなっている(1020_2_2_2_5_2リンク参照)。
(ア) 協会は、17年に、協会が直接出資する子会社には、原則として、毎期、当該期純利益又は当該期末資本金のそれぞれに所定の率を乗じた額のうち高額なものを下限として配当を求めることとした。その後、19年12月に、原則として、配当額は当該期純利益の35%相当額を下限とすることなどを定めた新しい配当の指針を制定した(1020_2_2_3リンク参照)。
(イ) 子会社の配当については、運営基準に基づき、協会と子会社との間で事前に協議を行うこととなっており、その際に、財務状況、事業計画、株主構成等を勘案した上で、配当の有無、規模等を協議することとなっている(1020_2_2_3_1_2リンク参照)。
(ウ) 子会社の配当額をみると、18年度決算に基づく配当は配当総額で計33億余円、19年度決算に基づく配当は配当総額で計73億余円となっており、その後、23年度決算に基づく配当までは計30億円前後、24年度決算に基づく配当から26年度決算に基づく配当までは、配当の規模が縮小して計20億円台で推移している。そして、27年度決算に基づく配当においては、計72億余円に大きく増加している。これらの配当のうち、持株比率に基づく協会の受取配当額は、19年度決算に基づく配当が計53億余円と最も多く、26年度決算に基づく配当が計13億余円と最も少なくなっている(1020_2_2_3_1_3リンク参照)。
(エ) 子会社における普通配当の配当額は、21年度決算に基づく配当からは計20億円を超える状況が続いていて、27年度決算に基づく配当は計21億余円となっている。そして、普通配当の配当性向をみると、20年度決算に基づく配当以降は、配当性向の下限である当該期純利益の35%以上の配当がおおむね実施されている(1020_2_2_3_1_4リンク参照)。
(オ) 子会社の特例配当については、17年度決算に基づく配当から23年度決算に基づく配当までの7か年度の間に実施された分を合わせると、計156億余円が各子会社から配当された。そして、24年度決算に基づく配当以降は、協会は、子会社に対して特例配当の要請を行っておらず、子会社の特例配当は26年度決算に基づく配当までの3か年度は実施されていなかった。その後、27年度決算に基づく配当において、協会は、4年ぶりに子会社4社に対して計51億円の特例配当を要請し、このうち38億余円を持株比率に基づく協会受領分として受け取った(1020_2_2_3_1_5リンク参照)。
(カ) 24、25両年度決算に基づく配当(配当実施は25、26両年度)において、子会社に対して特例配当を要請しなかったことについて、協会は、子会社が自社株式を買い取ることに優先的に剰余金を使わせたことなど、子会社の資本政策の見直しの状況を考慮したことによるとしている。また、26年度決算に基づく配当(配当実施は27年度)において、子会社に対して特例配当の要請を行わなかったことについて、協会は、従来、関連団体の事業所が複数のビルに分散していることから、関連団体が放送センターの近隣に共同でビルを購入するなどの構想が協会内であり、一方、当時はまだ協会本部が所在する放送センターの建て替え場所の検討途中であり、この決定までは、利益剰余金の規模を小さくすることになる特例配当の要請について消極的に判断したことによるとしている。
しかし、この判断は、23年度決算に基づく配当以降、協会において、特例配当についての定めや経営計画の中で具体的な配当額を示すことがなくなった状況の中で、子会社による明確な投資計画が示されないまま、具体的な目的に係る目的積立金として積み立てるなどすることなく行われたものである(1020_2_2_3_1_5_2リンク参照)。
(キ) 関連会社の配当については、運営基準に基づき、協会と関連会社との間で事前に協議を行うこととなっており、その際には、協会は、他の株主の意向を尊重しつつ行うこととなっている。そして、関連会社2社の配当額をみると、株式会社放送衛星システムは、21年度決算に基づく配当以降、毎年度配当を実施している一方、株式会社ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズは20年度以降配当を実施していない状況となっている。また、関連会社の配当については、配当の指針等の対象が、協会が直接出資している子会社に限定されているため、現状は関連会社から示された配当額を受け取っている状況となっている(1020_2_2_3_2リンク参照)。
(ア) 協会は、24年度決算に基づく配当以降、3か年度にわたって特例配当の要請を行っておらず、その結果、子会社が特例配当を実施していないことなどが、近年の子会社の利益剰余金増加の一因となっていると思料される(1020_2_2_4リンク参照)。
(イ) 協会によると、27年度決算に基づく配当の要請時における配当可能額は、必要運転資金について、事業維持積立金の要積立額の算定においては原則として3か月分で算定していたものを1.5か月分にしたり、事業維持積立金以外の目的積立金について考慮しなくなったりしたことにより、現金預金残高等の状況を考慮する前の計算で子会社13社のうち9社で計294億余円となるとしている。また、同様の算定方法で、28年度決算に基づく配当の要請時における配当可能額を算定すると、25年の国会答弁時における算定の方法で算定した場合の72億余円を大きく上回る10社、計269億余円になる。このように、配当可能額の算定について、協会はより多額の配当可能額となるような方法に改めるなどした(1020_2_2_4_1リンク参照)。
(ウ) 協会は、26年度決算に基づく配当までの3年間に特例配当を要請しなかったことなどのため、27年度末で計948億余円に上った子会社の利益剰余金から、27年度決算に基づく配当において、単年度で計72億余円(このうち協会の受取額は計51億余円)に上る配当の要請をまとめて行うことになった(1020_2_2_4_2リンク参照)。
(ア) 関連団体は、近年相次いだ不適正経理の発覚を受けて、それぞれの団体において、協会の指導・監督等に基づき、種々の取組を行っている。そして、協会が把握している関連団体における不適正経理のうち、旅費の領得については、株式会社NHKアイテックにおいて、証ひょう等による事後的な確認が十分でなかったために発生したものであるが、協会においては過去の不適正経理を受けて旅費を原則事後精算とすることと定めて以降、同様の不適正経理は発覚していない。 また、不適正経理のほとんどは関連団体の自主事業において生じた事態である(1020_2_3_1リンク参照)。
(イ) 関連団体26団体における内部監査部局の設置状況を確認したところ、28年12月末時点では、株式会社NHKプラネットを除く子会社12社において、内部監査部局又は社長直属の内部監査担当者を設置している状況となっていた。一方、関連公益法人等9団体において、内部監査部局を設置している団体は一般財団法人NHKサービスセンター及び一般財団法人日本放送協会共済会の2団体となっていた。関連団体における不適正経理の概要等と関連団体の内部監査部局の設置状況との関連性をみると、不適正経理が発覚した時点において内部監査部局が設置されていなかったり、内部監査部局が設置された後にも不適正経理に係る行為が続いていたばかりか、会社の担当取締役が社内調査の結果を十分に活用しなかったことなどから、改善が進まないまま、東京国税局の税務調査で指摘されるまで不適正経理を発見することができていなかったりしていた。
また、海外の法人2団体を除く全ての団体において、毎年度の決算等について、監事又は監査役による監査が行われていた。そして、4団体では、監事又は監査役による監査に加えて、関係法に基づき外部の監査法人等を会計監査人とする監査が義務付けられており、27年度の実施状況を確認したところ、当該4団体において監査が行われていた(1020_2_3_1_2リンク参照)。
(ウ) 協会は、25年10月に、新たに「NHKグループ通報制度規程」を定めた。これにより、リスク管理室は、通報された内容が個別の関連団体における問題か、協会グループ全体における問題かについて判断した上で更なる事実調査等の対応をすることとなった(1020_2_3_1_3リンク参照)。
16年以降に協会の不適正経理が相次いで発覚し、20年4月に、ガバナンスの向上等を目的として、平成19年改正法が施行され、協会に役員の職務の執行を監査する監査委員会を置くこととされたほか、協会は、経営委員会による「内部統制関係議決」に基づいて従来のコンプライアンスに関する組織を改組してリスクマネジメント委員会及びリスク管理室を設置するなど、協会における不適正経理の再発防止に向けた体制整備を行った。
これらの取組にもかかわらず、19年報告以降も不適正経理が発覚しており、このうち、旅費及び自動車料については、過去に不適正経理を踏まえて経理適正化策を講じたものであるが、更に厳格な手続等を定めるなどしている状況であった。
このように、協会は、不適正経理が発覚するたびに、種々の経理適正化策を講じ、また、平成19年改正法の施行に伴い不適正経理の再発防止等のための体制整備を行ってきたにもかかわらず、不適正経理が依然として生じている(1020_2_3_2_1リンク参照)。
協会は、関連団体の事業運営に対する指導・監督について、監査委員会、リスクマネジメント委員会、リスク管理室、内部監査室、関連事業局等が関連団体に対して行う調査や日常の業務上の情報交換、指示等を通じて行っているとしている。また、協会は、協会と子会社等との連結財務諸表を作成しており、協会の会計監査を行う監査法人に連結財務諸表に対する会計監査も行わせている。
また、協会は、関連団体における不適正経理の再発防止のため次のような取組を行っている(1020_2_3_2_2リンク参照)。
a 内部監査室は、運営基準に基づく指導・監督に必要な事項についての調査を20年度から27年度までの間に子会社13社及び関連公益法人等5団体に対して行っているが、調査の対象は、協会からの委託事業としており、26年度までは関連団体の自主事業については調査の対象としていなかった(1020_2_3_2_2_1リンク参照)。
b 協会は、関連団体における不適正経理の発覚を受けて緊急調査チームを編成し、自主的に関連団体に対する調査を実施している。このうち、NHK関連団体ガバナンス調査委員会による調査及びアドバイザリー・サービス契約に基づく調査において、調査に係る契約及び当該契約に関する支出について不透明な点が見受けられたり、計算証明規則等に基づく証拠書類の提出漏れが生じたりしていた(1020_2_3_2_2_2リンク参照)。
c 協会は、26年9月から27年3月にかけて、関連団体ガバナンス向上プロジェクトを実施し、子会社に対して個別に助言等を行い、規程類のひな形を示してその整備を支援した。そして、全ての子会社が、27年6月までに、上記のひな形に準じて規程を定めていた。また、協会の内部監査室と関連事業局は、連携して、内部監査連絡会等を通じて関連団体における内部監査体制の構築に向けて内部監査関係の規程類を整備させるなどの支援を行ったが、一部の団体においては内部監査部局が設置されていない(1020_2_3_2_2_3リンク参照)。
d 協会は、27年11月に発覚した株式会社NHKアイテックの不適正経理等を踏まえるなどして、28年3月に「「NHKグループ経営改革」の取り組み」を公表したり、協会の指導・監督機能の強化の一環として、同年4月に内部統制関係議決の改正を行ったりしている(1020_2_3_2_2_4リンク参照)。
関連団体における不適正経理の発生並びに協会及び関連団体における主な取組の状況をみると、協会の取組はおおむね25年以降に開始されており、関連団体においても経理適正化策を実施したり体制整備を進めたりしたが、それにもかかわらず、不適正経理は依然として生じている(zuhyo3-11リンク参照)。
関連団体との取引を含めた協会の取引に充てられる資金の主たる財源は受信料であり、この受信料は、臨時放送関係法制調査会による答申において、特殊な負担金と解すべきであると示されている。また、運営基準において、関連団体の事業目的は、協会の業務を補完・支援することを基本として、協会の業務の効率的推進、協会のソフト資産やノウハウの社会還元並びにこれらを通じた経費節減及び副次収入による協会への財政的寄与・視聴者負担の抑制となっている。さらに、運営基準において、協会は、関連団体の事業運営に対して基本契約等に基づき指導・監督を行うこととされている。
また、関連団体の利益剰余金については、会計検査院が19年報告の報告を行った後も、子会社の利益剰余金が増加しており、27年度末には計948億余円となっている。
ついては、協会において、今回の会計検査院の検査の結果を踏まえて、次のような点に留意して、関連団体の事業運営に対する指導・監督を適切に実施する必要があると認められる。
以上のとおり報告する。
会計検査院としては、協会の関連団体との取引の状況、関連団体の剰余金及び協会に対する配当の状況、関連団体の不適正経理の再発防止に向けた各種施策の状況について検査していくとともに、協会における関連団体の事業運営に対する指導・監督が適切に行われているかについて、今後も引き続き検査していくこととする。