24年報告(第1回。平成24年10月) | 25年報告(第2回。25年10月) |
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【報告書の概要】 | 【報告書の概要】 |
① 人的被害、建物への被害、社会基盤施設や農林水産業等の被害はいずれも甚大であり、内閣府によればその被害額は、約16兆9000億円(ただし、東京電力福島第一原発の事故に伴う放射能汚染被害は含まれていない。)と推計されている。そして、国は、被災者の救援、救助等の被害応急対応を実施するとともに、復興基本法、特区法等の制定、復興基本方針の策定、復興庁の設置等を実施し、国の総力を挙げて復旧・復興に取り組んでいる。国は、これらの施策に必要な財源を確保するための特別措置として、復興財源確保法を施行するとともに、23年度補正予算により計14兆9354億余円を東日本大震災関係経費として財政措置した。 |
① 24年度において、国は、復興事業に関する経理を明確にすることを目的として、復興特会を設置し、24年度当初予算3兆7753億余円、24年度補正予算1兆1952億余円をそれぞれ措置するとともに、財源については、それまでに確保されていた19兆円程度に加えて、日本郵政の株式の売却収入として見込まれる4兆円程度等を確保することにより、計25兆円程度を確保することとした。また、除染は直ちに取り組む必要のある喫緊の課題であることから、国は、23年8月26日に除染に関する緊急実施基本方針を策定するとともに、同年8月30日に放射性物質汚染対処特措法を公布し、計画的かつ抜本的に除染等を推進することとした。さらに、復興庁は、25年2月1日に、福島対応体制の抜本的な強化策として、福島復興再生総局を福島現地に設置するとともに、関係省庁の諸施策を総括し総合的かつ強力に推進する福島復興再生総括本部を設置した。 |
② 復旧・復興事業の実施状況について、予算措置年度別の予算現額、支出済額等から執行状況をみると、23年度の予備費及び23年度補正予算の同年度における執行率は60.6%となっていて、これらを経費項目別にみると、全てが執行されている経費項目が多くある一方で、年度内に全て執行されないままその大半が翌年度に繰り越されている経費項目や執行率が20%程度と低くなっている経費項目も見受けられ、経費項目別の執行率が区々となっていた。また、特別会計における執行状況を反映した支出済額の予算現額に対する割合は54.2%であり、一般会計における執行率よりも低くなっていた。そして、このような執行状況の結果、全体の38.3%が翌年度に繰り越され、7.4%が不用となっていた。 |
② 復旧・復興事業の実施状況は、24年度末の執行率が77.2%、繰越率が11.0%、不用率が11.6%となっていた。
復興関連基金事業90事業に対する国庫補助金等交付額は計2兆8674億余円、24年度末における取崩額は計8244億余円であり、基金事業執行率は平均で28.7%となっていた。また、90事業のうち基金事業執行率が10%未満となっているものが40事業あった。そして、3基金の10事業に係る564億余円を基金団体から返還させて、これを国庫に返還していた。
23、24両年度の復興事業1,401件について、「基本的な考え方」に基づき被災地域の復旧・復興及び被災者の暮らしの再生のための施策に関する事業等(以下「復興直結事業」という。)に分類するなどしたところ、復興直結事業912件、その他事業326件等となっていた。 |
③ 特区法に基づく復興特別区域制度による各種計画の実施状況をみると、復興推進計画については、24年8月3日現在、20の復興推進計画における28分類の特例が認定され、復興整備計画については、同年8月10日現在、復興整備協議会を組織した28市町村のうち21市町村が公表していた。また、復興交付金事業計画については、同年7月までに復興庁は市町村から計3回の提出を受け、このうち第2回までの交付対象事業費6220億余円に対して5122億余円を交付可能額として82市町村に通知していた。そして、交付対象事業費6220億余円のうち、防災集団移転促進事業、災害公営住宅整備事業等の5事業が4528億余円を占めていた。 |
③ 特区法に基づく各種計画の実施状況等をみると、復興推進計画66件に記載されている特例は、特区法等において規定されている21の特例のうち14の特例であり、特定被災自治体が作成して認定を受けた復興推進計画に記載された特例数は延べ75件、これらの特例の対象区域とされた市町村数は延べ817市町村となっていた。また、復興庁が計6回にわたって通知した復興交付金の交付可能額は、23年度2510億余円、24年度計1兆3191億余円、25年度527億余円、合計1兆6228億余円と多額に上っていた。 |
④ 58市町村の復旧・復興事業等の実施状況を検査した結果、各市町村の事業執行率は市町村によって大きな差が見受けられた。また、これらの市町村では、復旧・復興事業の実施に当たる職員に大きな事務負担が生じており、アンケートにおいて、復興事業の増加に伴う各種業務に対応するための人的支援やそのための体制整備を要望していた。 |
④ 復興事業の実施状況については、8道県及び100市町村に交付決定された23、24両年度の国庫補助金等は計7540億余円となっていた。8道県に対する復興関連基金事業に係る国庫補助金等交付額は、14基金で計1270億余円となっており、24年度末の基金事業執行率は平均で42.4%となっていた。
復興交付金基金による基幹事業の進捗状況については、4県及び26市町村における復興交付金基金による基幹事業の件数は146件となっており、このうち、23、24両年度分の復興交付金に係る事業は102件となっていた。これらの進捗状況をみると、おおむね工程表どおりに進捗している事業がある一方、完了時期を7か月以上延長している事業や、完了時期が未定となっている事業も見受けられた。
また、8道県及び100市町村に対する23年度補正予算により措置された補助事業等に係る国庫補助金等交付決定額は計2202億余円となっており、24年度末までの補助事業執行率は92.4%となっていた。また、24年度予算により措置された補助事業等に係る国庫補助金等交付決定額518億余円のうち252億余円が25年度に繰り越されていた。 |
⑤ 原子力災害関係の経費項目別の予算現額は、23、24両年度計1兆5128億余円であり、23年度補正予算の24年度末までの累計の執行率は79.8%、24年度予算の24年度末における執行率は38.7%となっていた。また、放射性物質に汚染された廃棄物の処理、特措法3事業の執行状況をみると、23年度補正予算では、23年度末における執行率が59.9%、24年度までの累計の執行率が67.5%となっており、24年度予算では、24年度末における執行率が37.0%となっていた。 |
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【所見】 | 【所見】 |
国は、復旧・復興に当たり、被災地の地方公共団体に対して、既存の制度にとらわれない行政手続の簡素化や財政面及び人材面からの支援を実施し、被災地の地方公共団体が行う復興の取組を総力を挙げて支援することとしている。そして、この復旧・復興は、被災地の単なる災害復旧にとどまらない活力ある日本の再生を視野に入れた抜本的な対策及び一人一人の人間が災害を乗り越えて豊かな人生を送ることができるようにすることを旨として行われる施策の推進により実施されるべきとされていることから、復興の成果は、国民全体が感じ取れるものとするとともに、将来の世代にわたって誇ることができるものにする必要がある。
会計検査院は、今回、東日本大震災からの復旧・復興に対する事業について検査を実施した。国及び地方公共団体は、現在全力を挙げて復旧・復興に取り組んでいるところであるが、復旧・復興のための施策は、総合的かつ中長期的な視点を有し、被災地に暮らす国民の声やその迅速性にも配慮して実施することが不可欠であり、復興庁及び関係府省等は連携して、国及び地方公共団体が行う施策が基本理念に即したものとなるよう、今後、以下の点に留意して、復興施策の推進及び支援に適切に取り組む必要がある。 |
会計検査院は、24年次に引き続き、東日本大震災からの復旧・復興に対する事業について検査を行った。国及び地方公共団体は、現在全力を挙げて復旧・復興に取り組んでいるところであるが、東日本大震災から2年半以上を経過した今もなお、多くの住民は仮設住宅での不自由で困難な生活を余儀なくされており、地方公共団体は膨大な復旧・復興事業に取り組んでいる。特に、原子力災害からの復興再生については長期にわたることが予想されていて、地方公共団体は除染や健康管理等の事業を執行する一方、風評被害に苦しめられているなど、被災地の社会経済の再生や生活の再建に向けた課題は数多く、これらを解決するには多くの困難がある。
このため、復旧・復興のための施策は、被災地に暮らす国民の声に配慮して迅速に実施することが不可欠であり、復興庁及び関係府省等は連携して、国及び地方公共団体が行う施策が、基本理念に即して、更なる復旧・復興の進展につながるよう、今後、次の点に留意して、復興施策の推進及び支援に適切に取り組む必要がある。 |
(1) 被災した地方公共団体の意向や要望、取り組んでいる復興施策等を踏まえた経費の配分や事業費の積算を行うこと |
ア 国は、東日本大震災復旧・復興事業の実施に当たっては、多数かつ多額の事業が実施されている一方、多額の事業費が翌年度に繰り越されていることから、事業の実施計画や規模等は適切かなどについて的確に検討するとともに、事業実施の障害となっている事項について不断に検証して、必要に応じて見直すこと。また、国は、復興事業が有効かつ効率的に実施されるよう優先度等も考慮するなどして予算の配分や人的・技術的支援を行うとともに、事業が適切に実施されているかなどについて確認して、不適切な事態や障害となっている事項については、既存の制度の見直しも含めて迅速な措置を講ずるなどして、被災地の復興が円滑かつ迅速に実施されるよう努めること |
(2) 東日本大震災復旧・復興関係経費の執行に当たっては、計画に基づき円滑かつ迅速に事業が実施されるよう、関係行政機関等が実施する事業の進捗状況を的確に把握するとともに、施策の実施の推進及び総合調整を行いつつ、関係行政機関等との連絡調整を速やかに行うなどして、適切、有効かつ効率的な執行に努めること |
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(3) 復興特別区域制度の運用に当たっては、各被災地域の被害及び復興の実情に応じて柔軟に対応するとともに、地方公共団体と十分な意見交換を行いつつ、復興推進計画の特例や復興交付金事業を活用した取組等について把握した上で、情報提供、助言その他必要な協力を行い、地方公共団体の迅速かつ着実な復興の支援に努めること |
イ 復興特別区域制度の各種計画の作成状況や各種特例の活用状況を把握して、地方公共団体が必要としている制度について十分な意見交換をした上で、情報提供、助言その他必要な協力を行い、地方公共団体の迅速かつ着実な支援に努めること |
ウ 基金事業、復興交付金事業等が、復興に寄与され適切かつ効率的な執行や資金の有効活用が図られるよう、実施状況等の把握と必要な支援に努めること |
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(4) 被災地の地方公共団体等は、限られた人員で震災前と比較して膨大な事業を実施して復旧・復興に取り組んでいることから、その復旧・復興事業の人的な実施体制及び制度の運用状況について現状を把握して、必要な支援に努めること |
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エ 原子力災害からの復興再生については、長期的視点から、被災者等に対する支援や除染等の実施、産業振興・雇用対策等に関して、被災した地方公共団体の意向や要望等を踏まえるなどして、必要な支援に努めること |
27年報告(第3回。27年3月) | 28年報告(第4回。28年4月) |
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【報告書の概要】 | 【報告書の概要】 |
① 被害額の推計について、内閣府は、被害額を約16.9兆円としていた。その推計方法は、再調達価格で算出しているものと減価償却後の価格によるものとが混在していた。また、被害額に推計の対象とならないものなどを一部含めていたり、被害額に反映していなかったりしていたものが見受けられた。 |
① 復興・復旧予算の執行等の状況について、23年度から26年度までの予算現額計29兆3946億余円の26年度末現在における執行状況は、支出済額23兆9132億余円、繰越額1兆5352億余円、不用額3兆9461億余円であり、累計執行率81.3%、繰越率5.2%、不用率13.4%となっていた。このうち26年度予算の執行率は57.2%にとどまり、繰越率は28.6%、不用率は14.1%となっていた。 |
② 復旧・復興事業の実施について、23年度補正予算、24年度予算及び25年度予算の執行状況をみると、予算現額の計は25兆1009億余円に対して、支出済額の計は20兆1211億余円(執行率80.1%)、繰越額の計は1兆9604億余円(繰越率7.8%)、不用額の計は3兆0192億余円(不用率12.0%)となっていた。
東北3県及び管内の市町村に23年度から25年度までに交付等された国庫補助金等は計8兆1780億余円となっていて、補助事業等、復興交付金事業及び復興関連基金事業に係る交付額並びに震災復興特別交付税の交付額が、上記の8兆1780億余円に占める割合は、補助事業等が31.7%、復興交付金事業が24.0%、復興関連基金事業が21.8%、震災復興特別交付税20.3%等となっていた。
これらのうち、復興関連基金事業18基金62事業の25年度末における執行状況をみると、基金事業執行率が100%となっている事業がある一方、1.1%となっている事業があるなど、事業により大きな差が見受けられた。
また、復興交付金による市街地・居住地復興のための事業の実施状況等においては、住まいの復興に係る4事業を実施している地区延べ1,004地区、整備計画戸数計45,021戸のうち、集中復興期間の終了年度である27年度末までの整備計画戸数は28,324戸(62.9%)となっており、残りの16,697戸(37.0%)は、集中復興期間終了後の28年度以降に完了する見込みなどとなっていた。 |
② 国から財政支援等を受けて地方公共団体等が実施する復旧・復興事業の状況について、復興交付金事業(基金型事業)では、23年度から26年度までの4か年度の実施計画分に係る交付額2兆0412億余円、基金事業執行率48.5%、取崩未済額1兆0509億余円であり、そのうち効果促進事業(一括配分)については、26年度末現在、交付額計1448億余円のうち549億余円の復興交付金の事業内容が未定であった。復興関連基金事業では、23年度から26年度までに設置造成等された112事業の交付額3兆8167億余円、取崩額1兆9674億余円、保有している国庫補助金等相当額1兆6870億余円、基金事業執行率は51.5%であった。各基金団体からの国庫返納額(27年8月末現在)は48事業、2731億余円となっていた。1事業で残余額を復旧・復興事業以外の区分に配分変更している事態が見受けられた。 |
③ 東北3県における復興特別区域制度の活用状況をみると、復興推進計画では、26年9月末までに、管内の市町村において作成された計96計画で14の特例の適用を受けることができるようになっていた。復興整備計画では、26年9月末までに、管内の市町村が県と共同して同計画を作成していて、特区法に規定されている14の復興整備事業のうち6事業を記載し、各種の特例を受けることができるようになっていた。復興交付金事業計画では、管内の79市町村が復興交付金事業計画を作成して、復興庁に提出していた。 |
③ 沿岸6県(青森、岩手、宮城、福島、茨城、千葉各県)における復旧・復興事業の実施状況について、復興交付金事業では、当初計画において26年度末以前に完了する予定であった、被災した地域の復興地域づくりに不可欠な基盤を整備する基幹事業511事業のうち集中復興期間終了後の28年度以降に完了予定の事業は27.3%を占めていた。また、復興関連基金事業70事業を終了年度別にみると、26年度末現在、終了年度を28年度以降又は終了年度未定としている27事業のうち21事業は「原子力災害等への対応」となっていた。 |
④ 復興関連基金事業において、区分して経理していない又は全額が国庫に返納された事業を除いた計102事業の国庫補助金等交付額は計3兆4013億余円で、基金事業執行率は40.5%となっていた。このうち、東北3県では、同種の復興事業等により代替可能であったことなどにより基金事業の執行が低調となっているものなどが見受けられた。東北3県を除く17都県では、事業の対象となる被災者がほとんどいないことなどのため今後の実施が見込めないものなどが見受けられた。 |
④ 復旧・復興事業の成果の状況について、ハード施策である海岸保全施設では、事業が計画されている28市町512海岸のうち26年度末までの完成施設数は52海岸(完成率10.1%)、計画事業費9398億余円のうち支出済事業費1427億余円(事業費進捗率15.1%)となっていた。また、復旧・復興事業が実施されている419海岸について、地域海岸内堤防高を基に海岸の機能の多様性への配慮等を総合的に考慮して設定した高さで整備する防潮堤の復旧後堤防高と、設計津波水位を前提に設定された地域海岸内堤防高とを比較してみると、復旧後堤防高が地域海岸内堤防高よりも低いものが130海岸となっており、その理由は、湾の形状を考慮した津波シミュレーション等の結果によるものが49海岸、海岸背後地に重要な保全対象がないことによるものが29海岸、農地海岸の防潮堤で背後地にある農地等の浸食防止を主な目的としていることによるものが23海岸、復旧後堤防高を低くして欲しい旨の住民等からの要望を受けた県及び市町と当該住民等との協議等の結果によるものが15海岸等となっていた。 |
一方、ソフト施策である津波避難計画の策定状況では、14市町が策定しておらず、このうち11市町が防潮堤の完了予定年度を28年度以降としていて、頻度の高い津波に対する防御が十分ではない市町においても今なお津波避難計画が策定されていなかった。また、津波ハザードマップの作成状況については、浸水した地域が少なかったこと、まちづくりに関する事業を実施中であるため市街地等が形成される範囲と津波により浸水する範囲を合わせて図示することが現状では困難であることなどを理由として7市町が作成していなかった。 |
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⑤ 東京電力の福島第一原発の事故による原子力災害からの復興再生において、25年度に実施された原子力災害関係の事業に係る予算現額は計1兆1629億余円であり、放射性物質汚染対処特措法に基づき汚染土壌等の除染等について、除染特別地域の進捗状況をみると、26年9月末現在、田村市、双葉郡楢葉、大熊両町及び川内村は、帰還困難区域を除き終了しているが、その他の市町村は当初の目標から遅れるなどしていた。また、福島県等8県管内で除染実施計画を策定している市町村における進捗状況をみると、26年9月末現在、福島県管内の市町村では完了したものはなく、その他の7県管内の市町村のうち、現在も事業を実施しているのは一部となっていた。
長期避難者生活拠点形成事業について、福島県は、長期避難者のための災害公営住宅の整備計画における全体戸数4,890戸のうちおおむね3,700戸について27年度までの入居を目指すとしていたが、26年9月末現在、27年度末までの完成予定は1,170戸(入居開始23戸を含む。)となっていた。 |
⑤ 原子力災害からの復興再生について、除染等の措置の実施状況を、宅地、農地、森林(生活圏)、道路の除染対象別にみると、27年9月末現在、除染特別地域については、ほとんど又は全ての除染対象の進捗率が50%に満たない市町村があり、また、汚染状況重点調査地域については、福島県内の県北、会津両地域を除いた各地域では50%以下の除染対象も見受けられた。福島県内における除去土壌等の保管状況をみると、除染特別地域の仮置場等の箇所数及び保管量は247か所、約459万m3、汚染状況重点調査地域の保管箇所数及び保管量は114,536か所、約455万m3となっていた。汚染状況重点調査地域においては、住宅等の敷地内において保管袋等に入れるなどして地上又は地下で保管している箇所が96.3%と大半を占め、住宅、学校等の施設における保管量は29.8%となっていて、地元住民の生活にも少なからず負担を与えている。
また、特措法3事業のうち、農林水産省が実施した国有林における放射性物質に汚染された土壌等の除染等に係る事業費2億余円について、農林水産省は、求償を行うための体制や具体的な手法等を定めておらず、東京電力に対して求償を行っていなかった。 |
⑥ 復旧・復興事業の財源の確保等の状況について、各年度の収納済歳入額等をみると、23年度は、復興公債金、歳出予算の既定経費の減額等により計14兆4733億余円、24年度は、復興公債金、一般会計より受入等により計5兆0222億余円、25年度は、一般会計より受入、前年度剰余金受入、復興特別法人税等により計6兆7703億余円となっていた。そして、23年度から25年度までの復興債の年度末現在額は、23年度末現在額11兆2574億余円、24年度末現在額11兆0437億余円、25年度末現在額9兆0135億余円となっていた。 |
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【所見】 | 【所見】 |
会計検査院は、24年次及び25年次に引き続き、東日本大震災からの復旧・復興に対する事業について検査を実施した。
国及び地方公共団体は、引き続き全力を挙げて復旧・復興に取り組んでいるところであるが、東日本大震災発生後3年11か月を経過した今もなお、数多くの住民は応急仮設住宅や避難先での不自由で困難な生活を余儀なくされており、被災地の社会経済の再生や生活の再建には復旧・復興事業の進捗の遅れや地域の人口減少等、数多くの課題があり、これらを解決するには多くの困難がある。
このため、復旧・復興のための施策は、被災地に暮らす住民の声に配慮して迅速かつ円滑に実施する必要があり、復興庁及び関係府省等は連携して、国及び地方公共団体が行う施策が基本理念に即し、更なる復旧・復興の進展につながるよう、今後、次の点に留意して、復興施策の推進及び支援に適切に取り組む必要がある。 |
東日本大震災からの復旧・復興については、復興基本方針等で定めた5年間の集中復興期間に続き、28年度から5年間の復興・創生期間を迎えたところである。国及び地方公共団体は、これまで全力を挙げて復旧・復興に取り組んできており、事業の進捗とともにその成果も見受けられるようになってきたところである。一方、津波による被害から国民の生命、身体及び財産を保護する津波対策についてみると、防潮堤の大部分は完成しておらず、津波避難計画の策定や津波ハザードマップの作成がなされていない市町があるなどの状況が一部において見受けられた。また、災害公営住宅や宅地の供給はまだ計画の半分に満たない状態であり、多くの避難者が応急仮設住宅等の生活を続けている。さらに、福島県の避難指示区域等については、復旧・復興の完了までには今後なお相当の時間を要する状況となっている。
復旧・復興事業については、27年度以降も多くの事業が一刻も早い完了を目指して実施されているところであり、また、復興・創生期間と位置付けられた28年度からの5年間は、被災自治体においても一定の負担を行うものとされた上で、被災地の自立につながり地方創生のモデルとなるような復興の実現を目指すこととなっている。
ついては、復興庁及び関係府省等は連携して、国及び地方公共団体が行う施策が基本理念に即して更なる復旧・復興の進展につながるよう、今後、次の点に留意して、復興施策の推進及び支援に適切に取り組む必要がある。 |
ア 復旧・復興事業の実施については、進捗している事業が多くある一方、事業完了までに時間を要しているものが多く見受けられることから、国は、被災地の一刻も早い復旧・復興を目指す観点から復興需要が高まる期間として位置付けた27年度末までの集中復興期間において、国庫補助事業等の各種復旧・復興事業が東北3県等の地方公共団体において円滑かつ迅速に実施できるよう、事業の実施状況や復興の進捗に課題となっている事項を把握するとともに、集中復興期間後も被災地の復旧・復興を図るため引き続き支援し、被災者の生活の再建が迅速に行われるよう努めること |
ア 復旧・復興事業については、今後更に3.2兆円の新規財源を要するとされたところであり、各種事業が有効かつ効率的に実施されるように努めること |
イ 東北3県及び管内の市町村では、多数多額の市街地・居住地復興のための事業を実施するなどしていることから、国は、復興特別区域制度がより一層活用されるよう、また、復興交付金等により実施する各種事業が加速化されるよう、引き続き、地方公共団体と十分な意見交換を行いつつ、情報提供、助言その他必要な協力を行い、迅速かつ着実な復興の支援に努めること |
イ 復興交付金については、復興庁が新たに定めた対応等に基づき使用見込みのない額の返還の促進を図るとともに、効果促進事業(一括配分)の効果的な活用に向けた支援を行い、機動的な事業の実施についても十分に配慮しつつ、各特定被災自治体における事業内容の決定状況等を踏まえた復興交付金の交付時期や規模等について検討を行っていくこと。復興関連基金事業の基金残額については、その規模が適切か検証し、復旧・復興事業への使用が見込めなくなった場合、残余額等については速やかに国庫への返納を要請すること |
ウ 復興関連基金事業において、国は、今後も基金団体と十分連携し、適切かつ有効に事業が実施されるよう努めるとともに、基金の執行や基金規模は適切かなどの検証を行い、基金団体に今後の使用が見込めない余剰金等が生じている場合には、これを国庫に返納することを要請するなど、資金を適切かつ有効に活用するよう努めること |
ウ 国庫補助金等を交付して実施している事業において、特に公共施設等の整備については、国は、特定被災自治体の意向や要望を十分に把握して、情報提供、助言その他着実な執行に向けた支援を行っていくこと。そして、今後の事業期間の設定において、被災者の生活再建の見通しなどに与える影響にも十分配慮して、これまでの実績を十分に反映するなどした的確なものとなるような方策について検討すること
また、復興関連基金事業において、特に福島県内における「原子力災害等への対応」は事業の今後の見通しが立てにくい中で、更に継続していくことが見込まれるが、国は、福島県等と十分連携して、適切な基金の執行管理を行うよう努めること |
エ 復旧・復興事業の実施に当たっては、復興等に向けた支援を的確に実施して、事業の成果を発現させていくよう努めること。特に、津波防災に係る復旧・復興事業については、復興基本方針においても被災しても人命が失われないことを最重視するとされていることなどを踏まえて、防潮堤の整備等を着実に実施していくとともに、住民等の適切な避難を確保するための施策についても早期の実施が図られるよう、技術的な助言等も含めて必要な支援を行っていくこと |
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エ 原子力災害からの復興再生について、国は、引き続き除染等の事業の早期の完了を目指すとともに、現在も多くの住民が避難生活を送っている福島県については、住民の意向を踏まえるなどして、長期避難者支援等の事業の円滑かつ迅速な実施に努めること |
オ 原子力災害からの復興再生については、国は、除染等の措置をより進捗させるために、除去土壌等の保管場所である中間貯蔵施設等の整備の促進に努めること |
オ 復旧・復興事業は、今後とも多額の経費が見込まれることから、国は、各種事業が有効かつ効率的に実施されるよう努めるとともに、復興財源が復興特別税等により確保されていることなどから、引き続き国民負担の増大を抑制しつつ、必要な財源の確保に努めること |