少子・高齢化やグローバル化が急速に進み社会保障給付等の増加や経済変動により国の財政がますます厳しくなる中で、今後の税の在り方が、その使途とともに国民にとっても一層身近で重大な問題となってきている。
会計検査院は、27年次の検査において、法人税関係特別措置等の適用状況等に着目して検査した状況を、会計検査院法第30条の2の規定に基づき、27年10月に国会及び内閣に報告したところである。
また、前記のとおり、所得税関係特別措置は、その適用による減収見込額が多額に上っている一方で、租特透明化法において適用実態調査が義務付けられておらず、これまでに実施されたことがない。
そこで、会計検査院は、上記のことなどを踏まえて、有効性等の観点から、①所得税関係特別措置の適用状況はどのようになっているか、②関係省庁及び財務省における所得税軽減措置に係る検証状況等はどのようになっているか、③減収見込額が多額に上っている所得税軽減措置について、会計検査院が提出を受けた確定申告書等から把握した適用状況等を踏まえて、当該所得税軽減措置が国民の納得できる必要最小限のものとなっているかなどの指針等に照らして検証が適切に行われているかなどに着眼して検査した。
26年分において適用される所得税関係特別措置を適用している納税者のうち、図表7のとおり、
①計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)に基づき、所得が一定金額以上のため会計検査院に証拠書類として確定申告書等が提出された納税者のうち、会計実地検査を行った68税務署(注2)に係る8,659人、
②会計検査院に証拠書類として確定申告書等が提出されていない納税者のうち、会計実地検査を行った68税務署において確定申告書等の提出を受けた納税者及び上記68税務署以外の100税務署(注3)について国税庁を通じて確定申告書等の提出を受けた納税者計6,290人、
合計14,949人について、24年分から26年分までの所得税関係特別措置の適用状況を対象として検査した。
図表7 所得税関係特別措置の適用状況を検査した納税者数
区分 | 注(1) e-Taxにより申告した納税者数 |
紙媒体により申告した納税者数 | 計 | |
---|---|---|---|---|
① 計算証明規則に基づき所得が一定金額以上のため会計検査院に証拠書類として確定申告書等が提出された納税者 |
68税務署 6,363人 注(2) |
68税務署 2,296人 注(2) |
8,659人 | |
② 会計検査院に証拠書類として確定申告書等が提出されていない納税者 |
会計実地検査を行った68税務署において確定申告書等の提出を受けた納税者 | - | 68税務署 3,318人 注(3) |
6,290人 |
上記以外の100税務署について国税庁を通じて確定申告書等の提出を受けた納税者 | 100税務署 2,972人 注(4) |
- | ||
計 | 14,949人 |
上記のほか、減収見込額が多額に上っている所得税軽減措置の検査に際しては、金融商品取引法(昭和23年法律第25号)に規定する有価証券報告書等の資料から抽出するなどした23税務署(注4)の延べ48人の納税者も対象に加え、25年分及び26年分の適用状況を対象として検査した。
検査に当たっては、所得税関係特別措置を適用している納税者の確定申告書等や、減収見込額が多額に上っている所得税軽減措置を適用している納税者の配当等の所得に係る源泉徴収の状況を示した資料、確定申告書等に係るデータを集計、分析するなどして検査した。
そして、内閣府本府等14府省庁(注5)において、政策評価に係る関係資料や税制改正要望の際に財務省に提出した要望書等における所得税軽減措置に係る検証状況及び適用実績の把握状況を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。
また、財務省において、所得税関係特別措置の検証状況等を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。