租税特別措置(以下「特別措置」という。)は、国による特定の政策目的を実現するための特別な政策手段であるとされ、「公平・中立・簡素」という税制の基本原則の例外措置として設けられているものである。特別措置に関しては、行政機関が行う政策の評価に関する法律(平成13年法律第86号)等により、法人税関係の特別措置について、政策評価が義務付けられている。また、租税特別措置の適用状況の透明化等に関する法律(平成22年法律第8号)が平成22年4月に施行され、税負担を軽減する法人税関係の特別措置に関して、適用実態調査及びその結果の国会への報告等の措置が定められている。
一方、所得税関係の特別措置については、政策評価は義務付けられておらず、政策評価に関する基本方針(平成17年12月閣議決定)に基づき、積極的かつ自主的に政策評価を実施するよう努めることとされている。また、所得税関係の特別措置等に関して、これまでに適用実態調査が実施されたことはない。
少子・高齢化やグローバル化が急速に進み社会保障給付等の増加や経済変動により国の財政がますます厳しくなる中で、今後の税の在り方が、その使途とともに国民にとっても一層身近で重大な問題となってきている。
本報告書は、以上のような状況を踏まえて、所得税関係の特別措置の適用状況並びに関係省庁及び財務省による検証状況等について検査を行い、その状況を取りまとめたことから、会計検査院法(昭和22年法律第73号)第30条の2の規定に基づき、会計検査院長から衆議院議長、参議院議長及び内閣総理大臣に対して報告するものである。
平成28年12月
会計検査院