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  • 平成29年3月|

地域活性化・地域住民生活等緊急支援交付金(地域消費喚起・生活支援型)による事業の実施状況について


検査対象
内閣府、総務省、409地方公共団体(21道府県及び388市区町村)
地域活性化・地域住民生活等緊急支援交付金(地域消費喚起・生活支援型)の概要
地域における消費喚起やこれに直接効果を有する生活支援を推進するための事業を実施するために、地方公共団体が作成した実施計画に基づく事業に要する費用に対して交付するもの
検査の対象とした事業に係る交付金交付額
917億2463万円 (平成26、27両年度)

1 検査の背景

(1) 地域活性化・地域住民生活等緊急支援交付金等の概要

ア 平成20年度以降の補正予算による地域活性化等を目的とした交付金の概要

国は、20年度から27年度までの間に、地方公共団体(都道府県及び市町村(特別区を含む。)。以下同じ。)が「経済危機対策」(平成21年4月「経済危機対策」に関する政府・与党会議、経済対策閣僚会議合同会議決定)等(以下「経済危機対策等」という。)に対応した事業を円滑に実施して、地域活性化等の速やかかつ着実な実施を図ることを目的として、地方公共団体が作成した実施計画に基づく事業に要する費用のうち地方公共団体が負担する経費に充てるために、図表1のとおり、十の交付金を交付している。

図表1 交付金の名称、予算及び予算額

(単位:百万円)
交付金の名称 予算 予算額
地域活性化・緊急安心実現総合対策交付金 平成20年度
一般会計第1次補正予算
26,000
地域活性化・生活対策臨時交付金 平成20年度
一般会計第2次補正予算
600,000
地域活性化・公共投資臨時交付金 平成21年度
一般会計第1次補正予算
1,379,000
地域活性化・経済危機対策臨時交付金 平成21年度
一般会計第1次補正予算
1,000,000
地域活性化・きめ細かな臨時交付金 平成21年度
一般会計第2次補正予算
500,000
地域活性化交付金(きめ細かな交付金) 平成22年度
一般会計補正予算
250,000
地域活性化交付金(住民生活に光をそそぐ交付金) 平成22年度
一般会計補正予算
100,000
地域の元気臨時交付金(地域経済活性化・雇用創出臨時交付金) 平成24年度
一般会計第1次補正予算
1,398,000
がんばる地域交付金(地域活性化・効果実感臨時交付金) 平成25年度
一般会計補正予算
87,000
地域活性化・地域住民生活等緊急支援交付金 平成26年度
一般会計補正予算
420,000
  うち地域消費喚起・生活支援型   250,000
5,760,000

これらの交付金のうち、平成26年度一般会計補正予算による地域活性化・地域住民生活等緊急支援交付金は、経済のぜい弱な部分に的を絞り、かつスピード感をもって対応を行うことで、経済の好循環を確かなものとすることなどを目指し、地域の実情に配慮しつつ、消費を喚起することなどを重点として取りまとめられた「地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策」(平成26年12月閣議決定。以下「緊急経済対策」という。)に対応した事業を実施するための交付金であり、同補正予算において、地域活性化・地域住民生活等緊急支援交付金に必要な経費4200億円が計上されている。そして、緊急経済対策において、具体的施策として、プレミアム付商品券(注1)の発行支援等、地方公共団体が講ずる消費喚起・生活支援策に対する交付金による助成等を行うとされたことを受けて、上記4200億円のうち2500億円は、「地域活性化・地域住民生活等緊急支援交付金(地域消費喚起・生活支援型)」(以下「緊急支援交付金」という。)のための費用とされている。

(注1)
プレミアム付商品券  販売価格に対して一定の割増分の付いた券面額となっている商品券。券面額のうち割増分をプレミアムといい、販売価格に対するプレミアムの割合をプレミアム率という。例えば、プレミアム率20%のプレミアム付商品券の場合、販売価格が10,000円であればその20%の2,000円分のプレミアムが付いて券面額は12,000円となる。

イ 緊急支援交付金の概要

(ア) 緊急支援交付金の目的等

内閣府が27年2月に定めた地域活性化・地域住民生活等緊急支援交付金(地域消費喚起・生活支援型)制度要綱(平成27年府地創第22号。以下「制度要綱」という。)によれば、緊急支援交付金は、地方公共団体が緊急経済対策に対応し、地域における消費喚起やこれに直接効果を有する生活支援を推進するための事業を実施するために作成した地域活性化・地域住民生活等緊急支援交付金(地域消費喚起・生活支援型)実施計画(以下「実施計画」という。)に基づく事業に要する費用に対して交付することにより、緊急経済対策の速やかかつ着実な実施を図ることを目的とするとされている。

また、制度要綱によれば、緊急支援交付金の交付対象となる事業(以下「交付対象事業」という。)は、緊急経済対策が閣議決定された26年12月27日以降に地方公共団体の予算に計上され、実施計画に基づき実施される地方単独事業とされており、交付対象経費は、交付対象事業に要する費用のうち実施計画を作成した地方公共団体が負担する費用とされている。そして、緊急支援交付金の交付を受けようとする地方公共団体は、実施計画を作成して、内閣府に提出することとされている。

内閣府は、緊急支援交付金の予算について、地方公共団体から提出を受けた実施計画を審査して、予算額2500億円のうち2495億余円を交付行政庁となる総務省に移し替えており、移替えを受けた総務省は、その定めた地域活性化・地域住民生活等緊急支援交付金交付要綱(平成27年総行応第71号)に基づき、地方公共団体が作成した実施計画に基づく事業に要する費用に対して、制度要綱の規定により算出される地方公共団体ごとの交付限度額の範囲内で、緊急支援交付金を26、27両年度に交付している。

(イ) 実施計画

制度要綱等によれば、実施計画には交付対象事業の名称、目的、スキーム、助成率等、高額助成の状況、アンケート実施の時期、交付対象事業に要する費用等を記載することとされている。このうち、高額助成の状況は、助成額が10万円を超える商品への支援を予定しているものについて助成対象商品とその価格等を、また、交付対象事業に要する費用は、プレミアム付商品券のプレミアム分の額やふるさと旅行券事業の旅行商品の割引額等に充当される助成費用と、商品券等の印刷・発行費用、人件費等の助成費用以外の経費(以下「事務費」という。)を記載することとされている。

(ウ) 交付対象事業の概要

交付対象事業については、地域における消費喚起を推進するための事業(以下「地域消費喚起型事業」という。)と、地域における消費喚起に直接効果を有する生活支援を推進するための事業(以下「生活支援型事業」という。)とがあり、地域における消費喚起効果の観点から、主に個人に対する直接の給付事業を対象とするとされている。

そして、地域消費喚起型事業は、消費者の自己負担を伴うことにより助成費用の数倍の消費を喚起することになるものであるとされており、内閣府は、消費喚起効果が高いものとしてプレミアム付商品券事業、ふるさと旅行券事業及びふるさと名物商品事業を行うことを推奨している。これらの事業の概要は、図表2のとおりである。

図表2 プレミアム付商品券事業、ふるさと旅行券事業及びふるさと名物商品事業の概要

事業の名称 事業の概要
プレミアム付商品券事業 主に市町村等の域内における消費喚起を目的として、
プレミアム率がおおむね10%から40%程度のプレミア
ム付商品券を発行するなどのもの
ふるさと旅行券事業 主に市町村等の域外からの旅行需要の喚起を目的として、地域の旅館やホテル等の宿泊施設の宿泊料金を割り引くなどした旅行商品を販売するなどのもの
ふるさと名物商品事業 主に市町村等の域外からの消費喚起を目的として、地域の産品の販売価格を割り引いて販売するなどのもの

地域消費喚起型事業のうちプレミアム付商品券事業を例にとると、緊急支援交付金の交付対象となるのは、主として発行されるプレミアム付商品券のプレミアム分であり、消費者は、プレミアム付商品券の購入時に販売価格分を支払い、その後、購入したプレミアム付商品券を利用してプレミアムの付いた券面額分の商品・サービスを購入することが想定されることから、国による支援よりも多くの消費がなされることになり、内閣府は、この消費喚起効果を直接的な消費喚起効果というとしている。一方、消費者がプレミアム付商品券を入手しない場合でも当該商品・サービスを購入する予定であったとすれば、もともと予定されていた消費の原資の一部を国が負担しただけとなり、新たな消費を喚起したことにはならないことから、プレミアム付商品券を入手したことにより、新たに商品・サービスが購入されることが重要であり、この消費喚起効果を新規の消費喚起効果というとしている。

また、生活支援型事業は、消費者の自己負担による消費喚起効果がないものであるとされており、多子世帯等支援策、低所得者等向け商品・サービス購入券事業、低所得者等向け灯油等購入助成事業等の自己負担を伴わない事業が例示されている。

地方公共団体は、これらの事業について、地域の商工会等に補助金を交付したり、業務を委託したりするなどして実施している。

プレミアム付商品券事業を例にとると、実施方法の概要は図表3のとおりであり、主に商工会等がプレミアム付商品券の発行者となって、発行、換金等の事務を行っている。

図表3 プレミアム付商品券事業の実施方法の概要

図表3 プレミアム付商品券事業の実施方法の概要 画像

(エ) 交付対象事業の実施に当たっての留意点等

内閣府は、27年1月から3月までの間に地方公共団体から寄せられた質問内容を踏まえるなどして随時改訂した「地域住民生活等緊急支援のための交付金に関するQ&A」(以下「交付金に関するQ&A」という。)を5回にわたり、また、同年4月及び8月に「消費喚起・生活支援型交付金事業の執行に関するQ&A」(以下「執行に関するQ&A」という。)をそれぞれ地方公共団体に対して発出しており、これらの文書において、消費喚起効果の高い手法を地域の実情に合わせて最大限工夫するよう求めるなどしている。また、これらの文書によれば、地域消費喚起型事業については、緊急経済対策である以上、可及的速やかに執行と消費喚起が求められるため、プレミアム付商品券等の利用期限は短期の方が望ましいが、どのような利用期限を設定するにしても、緊急支援交付金事業は27年度で終了し、緊急支援交付金は27年度末までのプレミアム付商品券等の利用実績により精算することとされている。

そして、具体的には、交付金に関するQ&A等によれば、地域消費喚起型事業について、「域内で利用するパスカード等への助成は、新たな消費が喚起される効果が高くない場合には、一般的には推奨されない」「ふるさと名物商品・旅行券事業に求められるのは、既存の旅行需要等を割り引くことによる事業予算の消化ではなく、従来にない新規の消費喚起である」などとされるとともに、低所得者等向けである生活支援型事業においても、「現金給付は貯蓄に回る恐れもあり、消費喚起効果が不確かであることから、原則、対象としない」「電気・ガス・水道代などのエネルギー消費については、生活上の必要経費であり新規の消費誘発効果がなく、(中略)原則対象としない」「医療サービスについては、ある種の必要経費であり、いわゆる新たな消費の喚起(中略)とは異なるため、(中略)原則、対象とはならない」などとされていて、いずれの事業においても特に新規の消費喚起効果を高めることに留意することが求められている。

また、「過度に高い助成率を設定することは、結果として支援が特定者に集中しやすいとの批判を招きかねない」「特定の者に高額な商品に対する支援が行われる商品券の設計は、公平性の観点からも一般的には望ましくない」「不動産の取得はもとより、自動車のような資産性の高い商品を対象とすることは推奨されない」などとされており、公平性等に留意するよう求めている。

このほか、執行に関するQ&Aによれば、プレミアム付商品券について、「ギャンブル等の遊興娯楽、保険診療の対象となる医療サービスなど、その消費の拡大に取り組むこと自体に疑義があるものは、対象とならない」とされていたり、「「商品券の対象としてパチンコ、麻雀を対象にしても良いか。」、「固定資産税の支払いに使っても良いか。」といった非常識的な質問が未だに目立つところ。まずは消費喚起・生活支援型交付金の目的である「消費喚起」につながるのか一度各地方公共団体においてお考えいただいた上で、必要がある場合において、ご質問をするよう、お願いしたい」とされていたりして、各地方公共団体が緊急支援交付金の目的を踏まえて、主体的に考えて事業執行するよう注意喚起がなされている。

(オ) 効果検証

制度要綱によれば、地方公共団体は、緊急支援交付金事業の実施に伴う効果について検証して、内閣総理大臣に報告することとされている。そして、内閣府は、緊急支援交付金事業の効果検証のために、27年5月に「地域活性化・地域住民生活等緊急支援交付金(地域消費喚起・生活支援型)の消費喚起効果の測定等について」の事務連絡を発出して、消費者向けのアンケートのひな形等を示すなどして、消費喚起効果の測定方法等について地方公共団体に周知している。この事務連絡によれば、消費喚起効果の測定の狙いは、緊急支援交付金事業が新規の消費誘発を目的としていることから、どのような手法が、どのような消費喚起効果を得たかといった、喚起した消費の実態について調査を行うことなどとされている。

そして、内閣府は、地域消費喚起型事業については、①直接的な消費喚起効果と②新規の消費喚起効果の二つの消費喚起効果を把握して報告するよう求めている。一方、生活支援型事業については、①直接的な消費喚起効果を把握して報告すればよいとし、②新規の消費喚起効果については必ずしも把握することを求めていない。具体的には、内閣府は、地方公共団体に対して、直接的な消費喚起効果については、プレミアム付商品券等の利用実績等を、新規の消費喚起効果については、アンケートを実施して、その結果に基づき類推される金額をそれぞれ把握して報告することを求めている。

ウ 緊急支援交付金の特徴

内閣府は、緊急支援交付金について、交付対象事業は国として推奨する施策等を例示するという形にとどめ、どのような事業をどのように組み合わせて実施していくかは、地域の実情等に応じた地方公共団体の判断に広く委ねることとしているなど、地方公共団体の裁量に委ねると同時に、効果検証等、事業・施策の実施責任を求めるものとしていることが大きな特徴であり、緊急支援交付金を通じて、回復の遅れる地方の消費の喚起等が各地方の実情に応じて的確に進められることを期待するものであるとしている。

また、緊急支援交付金事業は、前記のとおり、緊急経済対策に対応して、地域における消費喚起を推進することなどが目的とされており、その実施に当たっては、緊急経済対策の速やかかつ着実な実施を図るとともに、新規の消費喚起効果を高めることに留意するよう求められているのが特徴となっている。

(2) 緊急支援交付金事業の交付決定等の状況

27年11月に内閣府が公表した緊急支援交付金事業の進捗状況によれば、緊急支援交付金の予算額2500億円のうち2495億円が同年9月30日までに交付決定されており、図表4のとおり、地域消費喚起型事業であるプレミアム付商品券事業及びふるさと旅行券事業又はふるさと名物商品事業で実施計画における事業費(以下「計画事業費」という。)が予算額の大半を占めている。

図表4 緊急支援交付金事業の交付決定の状況

事業 事業主体数 計画事業費
プレミアム付商品券事業 34都道府県
1,716市町村
1595億円
ふるさと旅行券事業又はふるさと名物商品事業 46都道府県
354市町村
616億円
低所得者等向け灯油等購入助成事業 2都道府県
68市町村
6億円
低所得者等向け商品・サービス購入券事業 10都道府県
273市町村
94億円
多子世帯等支援策 15都道府県
594市町村
185億円
47都道府県
1,741市町村
2495億円
注(1)
「計画事業費」欄の額は四捨五入しているため、これらを合計しても計欄の額とは一致しない。
注(2)
「事業主体数」欄は、複数の事業を実施している事業主体があるため、事業主体数を合計しても計欄の事業主体数とは一致しない。