国は、26、27両年度に、地方公共団体が緊急経済対策に対応し、地域における消費喚起やこれに直接効果を有する低所得者等への生活支援を推進するための事業に要する費用に対して緊急支援交付金を交付しており、その額は多額に上っている。そして、地域における消費喚起のための事業においては、新規の消費が喚起されることが重要であり、また、地域における消費喚起効果等についての適切な検証が重要となっている。
そこで、緊急支援交付金事業は制度要綱等の趣旨に沿って適切かつ効率的、効果的に実施されているか、効果検証として行われる消費喚起効果の測定は適切に実施されているかなどに着眼して検査したところ、次のような状況が見受けられた。
ア 事務費割合は、プレミアム付商品券事業17.7%、ふるさと旅行券事業24.5%、ふるさと名物商品事業35.0%となっており、ふるさと名物商品事業では事務費に充当された緊急支援交付金の割合が他の事業より高くなっていた。
イ プレミアム付商品券事業については、プレミアム付商品券の利用率は全体で99.5%となっており、プレミアム率と利用率等との関係に一定の傾向は見られなかった。207事業においては購入限度額を設けた上で先着順で販売していたが、これらのうち購入限度額以内の購入かどうかを確認できるようになっていなかったものが多数見受けられた。また、プレミアム付商品券が新規の消費喚起を推進することを目的とした緊急支援交付金の趣旨に沿っていないものと考えられる自動車の車検費用やプロパンガスの使用料等の支払に利用されていた事態、利用限度額を設けていなかった33地方公共団体において一部の利用者がプレミアム付商品券を大量に入手して高額な商品の購入に充てていた事態等も見受けられた。
ウ ふるさと旅行券事業については、計画実績比は全体として96.1%となっていた。また、出張等の仕事での利用者の割合が60%となっていた事業も見受けられた。
エ ふるさと名物商品事業については、計画実績比は全体として78.3%とふるさと旅行券事業より低くなっており、中には、ふるさと名物商品の販売が低調であったため結果として事務費割合が高くなっていた事業も見受けられた。また、自主事業分の人件費に対して緊急支援交付金が充当されていた事例も見受けられた。
オ プレミアム付商品券等の販売代金のうち未換金相当分である余剰金は3事業全体で計5億7171万余円となっており、地方公共団体や補助先等に留保されているものもあった。
カ 生活支援型事業のうち低所得者等商品券事業で、27年度における利用実績が把握できなかったり、利用期限が設定されていない商品券を給付したため消費喚起効果の全てが必ずしも27年度中に発現しないものとなっていたりしているものや、その他の生活支援型事業で、26年度以前においても毎年度地方単独事業として実施していたものを緊急支援交付金事業として実施していた事態が見受けられた。
キ 効果検証として行われる消費喚起効果の測定のためのプレミアム付商品券事業に係る消費者向けのアンケートにおいて、アンケート結果の集計対象とする有効回答を選別するための取扱いが地方公共団体により異なっていたり、アンケート項目の設定が適切でなかったりなどしていて、消費喚起効果を正確に把握することができないなどの状況が見受けられた。
緊急支援交付金は、緊急支援交付金事業の実施方法等について地方公共団体の裁量に委ねると同時に、事業・施策の実施責任を求めることが特徴とされており、緊急支援交付金事業の効果検証等を行うことが求められている。
ついては、内閣府において、緊急支援交付金事業の効果について検証を行うとともに、今後同種の地域における消費喚起やこれに直接効果を有する生活支援を目的とする事業を実施する地方公共団体が負担する費用に対して支援を行う場合には、緊急支援交付金事業の実施結果を踏まえ、各地方公共団体の裁量を尊重しつつも、事業の実施に当たり、次の事項について、より具体的な方策を地方公共団体に対して示すなどして、地域における消費喚起等の推進に向けた事業が適切かつ効率的、効果的に実施されるよう、的確に支援を実施していくことが重要である。
会計検査院としては、これまで数年度にわたり経済危機対策等に対応して地方公共団体が実施する事業に対して地域活性化等を目的とした交付金が交付されてきたことを踏まえて、今後、地方公共団体が実施する地域における消費喚起やこれに直接効果を有する生活支援を目的とする事業に要する費用に対して国が交付金を交付する際には、その実施状況について注視していくこととする。