(平成27年度決算検査報告参照)
(平成28年度決算検査報告参照)
金融庁は、「金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律」(平成10年法律第143号。以下「金融機能早期健全化法」という。)等に基づき、預金保険機構及び株式会社整理回収機構を通じて、金融機関が発行する優先株式等の引受け等の措置を実施している。そして、金融機能早期健全化法に基づく優先株式等の引受け等の業務(以下「早健法業務」という。)に係る経理は、預金保険機構において、その他の経理と区分し、金融機能早期健全化勘定を設けて整理しなければならないこととなっており、同勘定に係る資金は、早健法業務以外の用途には使用できないこととなっている。しかし、同勘定においては多額の利益剰余金が保有されていて、本院の試算によれば、今後の早健法業務の実施により同勘定で使用する可能性のある資金の額について一定の前提の下で発生し得る損失を最大限見込んだとしても、なお多額の早健法業務に使用する見込みがない資金(以下「余裕資金」という。)が生じていると認められる状況であり、また、同勘定が廃止されるまでには相当の期間が見込まれる状況となっているにもかかわらず、余裕資金について、同勘定が廃止されるまでの間は国庫に納付することができないなど、有効活用を図ることができないこととなっている事態が見受けられた。
したがって、金融庁において、預金保険機構と共に、金融機能早期健全化勘定における余裕資金の額を把握した上で、余裕資金の有効活用として、適時に国庫に納付したり、財政規律の確保を目的として各勘定を区分経理することとしている金融機能早期健全化法の趣旨に留意しつつ、預金保険機構の財務の健全性を維持するために活用したりするため、必要な制度を整備するなど抜本的な方策を検討するよう、内閣府特命担当大臣に対して平成28年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、金融庁において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
金融庁は、預金保険機構の金融機能早期健全化勘定の利益剰余金について、金融システムの安定化のために巨額の国民負担が確定しているというこれまでの経緯や、他の勘定に欠損金や含み損等が発生していること、金融資本市場の状況等によりその含み損等は変動することなどを総合的に踏まえつつ、財政当局とも協議をしながら、所要の検討を行っている。