(平成28年度決算検査報告2か所参照 リンク10113 20608)
外務省及び独立行政法人国際協力機構(以下「機構」という。)は、国際社会の平和と発展に貢献することなどを目的として、開発途上地域の政府等に対して政府開発援助を実施している。しかし、草の根・人間の安全保障無償資金協力(以下「草の根無償」という。)による、診療所建設計画において建設中の診療所の柱が倒壊するなどして工事が中断されたままとなっていて建設が完了していなかったり、橋りょう建設計画において橋りょうが崩壊等していたりしていて援助の効果が全く発現していない事態、及び草の根無償による職業訓練施設建設計画において整備された職業訓練施設等が事業の目的のために使用されていなかったり、有償資金協力による下水処理施設整備事業において幹線管渠(きょ)等の整備の遅れにより下水処理場の処理能力量の一部に当たる汚水しか処理されていないなどしたりしていて援助の効果が十分に発現していない事態が見受けられた。
したがって、外務大臣及び独立行政法人国際協力機構理事長に対して平成29年10月に、会計検査院法第36条の規定により、次のような措置を講ずるよう意見を表示した。
本院は、外務本省及び機構本部において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、外務省及び機構は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 診療所建設計画について、外務省は、事業実施機関に対して、速やかに工事を再開させて診療所を完成させるよう働きかけを行った。その結果、事業実施機関は、中断されたままとなっていた診療所の工事に着手した。また、外務省は、30年6月に在外公館に対して通知を発して、草の根無償で建物の設計を伴う建築工事を行う事業を実施する場合、建物の設計を行う者の専門的能力の有無及び建築工事に係る施工管理等の体制について確認することにより、適切な設計や施工管理が実施されるよう事業実施機関に要請することとした。
イ 橋りょう建設計画について、外務省は、事業実施機関に対して、橋りょうの完成等に向けて、設計を見直したり、建設場所等に関する建設計画の見直しについて検討したりなどするよう働きかけを行った。その結果、事業実施機関は、橋りょう崩壊の原因を究明するための調査結果に基づき、橋台の根入れ深さを見直すなどして、橋りょうの改修計画を進めることとした。また、外務省は、30年6月に在外公館に対して通知を発して、草の根無償で大雨による洪水が多発している場所に橋りょうを建設する計画の申請を受けた場合、橋りょうの建設場所等に関する建設計画について検証を十分に行うこととした。
ウ 飲食業職業訓練施設建設計画について、外務省は、事業実施機関に対して、職業訓練施設等を事業の目的に沿って使用するよう働きかけを行った。その結果、事業実施機関は、職業訓練施設等を事業の目的に沿って使用することとする年間計画を策定し、若者や女性を対象とした調理指導等を実施した。また、外務省は、30年6月に在外公館に対して通知を発して、草の根無償で事業実施後の現況調査により職業訓練施設が事業の目的に沿って使用されていないことを確認した場合、事業の目的に沿って使用するよう事業実施機関へ働きかけを十分に行うことなどとした。
エ 下水処理施設整備事業について、機構は、事業実施機関等との間で、幹線管渠等の整備の完了に向けて必要な資金を確保することや、遊休施設を適切に維持管理することについて協議等を行った。その結果、事業実施機関等は、中断されていた幹線管渠等の整備に係る融資契約の再開に向けて手続を進めるとともに、一部の幹線管渠等について新たな資金を確保して整備を再開した。そして、機構は、引き続き事業の進捗及び遊休施設の適切な維持管理が図られるよう事業実施機関等と協議等を行っていくこととし、事業実施機関等との間で、定期的な事業の状況の確認を継続することなどについて合意した。また、機構は、30年6月に関係部署に対して通知を発して、有償資金協力で事業実施後に幹線管渠等の整備の遅れにより下水処理場を含む事業全体の効果の発現が不十分となっている場合、事業の進捗及び完了を促進するよう事業実施機関と十分に協議等を行うこととした。