(平成28年度決算検査報告2か所参照 リンク10121 20339)
外務省及び林野庁(以下「両省庁」という。)は、国際熱帯木材機関(以下「ITTO」という。)に対して拠出金を拠出している。ITTOでは、平成24年10月から26年2月までの間に、当時の事務局幹部が、ITTOの財政規則に反して理事会で承認を受けていない金融機関(以下「未承認金融機関」という。)に対して拠出金を原資として投資を行っていたが、未承認金融機関が清算手続に入ったことなどにより、投資した資金の回収が見込めない状況となった。しかし、両省庁は、ITTOの決算書の送付を受けており、これを精査することによりITTOが信用リスクのある未承認金融機関へ投資していたことが把握可能であったと認められるにもかかわらず、両省庁においてITTOの決算書の確認を十分に行っていない事態、及び財政規則に反した投資により発生した財務損失が我が国を含む加盟国の拠出金により実施しているITTOの拠出金事業に影響を及ぼす状況となっている事態が見受けられた。
したがって、外務大臣及び林野庁長官に対して29年10月に、会計検査院法第36条の規定により次のとおり意見を表示した。
本院は、外務本省及び林野庁において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、両省庁は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 外務省は29年11月に、林野庁は30年1月に、それぞれ担当部局に対して通知文書を発出するなどして、国際機関等から提出される決算書を十分に確認することの重要性を各担当者に周知するとともに、提出された決算書について確認すべき項目を取りまとめた資料を作成し、同資料をチェックリストとして活用することなどにより国際機関等の決算書を基に我が国の分担金及び拠出金が適切に使用されたかを確認することとした。
イ アの通知文書により、国際機関等から提出された決算書の内容の確認を行った結果、疑義があるなどの場合は、国際機関等の理事会等への出席に際して我が国としてどのように対応すべきかをあらかじめ取りまとめるなどして、国際機関等に対して必要な働きかけを行うこととするよう各担当者に周知した。
ウ ITTOの財務損失による影響を最小限に抑えるよう費用の見直しを含む調整が行われた結果、我が国を含む各加盟国の拠出金事業への影響額は縮減され、我が国の拠出金事業のうち実施中の29事業の全てが継続して実施されることとなるとともに、開始されていなかった3事業のうち2事業についても実施されることとなった。また、ITTO事務局が実施する拠出金事業の管理等を監視するために、我が国の拠出金事業に関する支払状況報告をITTO事務局から定期的に受領して確認することなどにより、事業の進捗状況等を適時に確認することとした。