本院は、合規性等の観点から、事業主に対する助成金の支給決定が適正に行われているかに着眼して、平成27年度から29年度までの間に助成金の支給を受けた事業主から104事業主を選定して、助成金の支給の適否について、全国47労働局のうち、8労働局において会計実地検査を行った。
検査に当たっては、事業主から提出された支給申請書等の書類により会計実地検査を行い、適正でないと思われる事態があった場合には、更に当該労働局に調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。
検査の結果、3労働局管内において28、29両年度に評価及びコンサルティングを実施したとして助成金の支給を受けた3事業主は、確認を受けたジョブ・カードによる評価及びジョブ・カードを活用したコンサルティングをいずれも全く実施していなかったり、確認を受けたジョブ・カードによる評価を全く実施していなかったりしているのに、実施したと偽って助成金の支給を申請しており、これら3事業主に対する助成金の支給額計5,200,000円のうち計3,750,000円は支給の要件を満たしていなかったもので支給が適正でなく、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、事業主が誠実でなかったため、支給申請書等の記載内容が事実と相違するなどしていたのに、上記の3労働局において、これに対する調査確認が十分でないまま支給決定を行っていたことによると認められる。
前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例>
京都労働局は、平成27年12月1日に事業主Aから、評価制度及びコンサルティング制度に係る計画の提出を受け、同月15日に認定していた。そして、事業主Aは、当該計画に沿って、両制度を導入し、28年8月23日から同年10月29日までの間に、労働者延べ20名に評価及びコンサルティングを実施したとする支給申請書等を同労働局に提出して、これに基づき、同労働局は28年度に両制度に係る導入助成及び実施助成として助成金計1,800,000円を事業主Aに支給していた。
しかし、実際には、事業主Aは、全ての労働者について確認を受けたジョブ・カードによる評価及びジョブ・カードを活用したコンサルティングをいずれも全く実施していなかったのに、実施したと偽って助成金の支給を申請していたことから、事業主Aに対する助成金計1,800,000円の全額が支給の要件を満たしていなかった。
なお、これらの適正でなかった支給額については、本院の指摘により、全て返還の処置が執られた。
これらの適正でなかった支給額を労働局ごとに示すと次のとおりである。
労働局名 | 本院の調査に係る事業主数 | 不適正受給事業主数 | 左の事業主に支給した助成金 | 左のうち不当と認める助成金 |
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千円 | 千円 | |||
北海道 | 15 | 1 | 1,700 | 950 |
神奈川 | 15 | 1 | 1,700 | 1,000 |
京都 | 16 | 1 | 1,800 | 1,800 |
計 | 46 | 3 | 5,200 | 3,750 |