(平成28年度決算検査報告2か所参照 リンク10263 20588)
日本年金機構(以下「機構」という。)は、厚生労働省の監督の下に、厚生労働省から委任又は委託を受けた国民年金保険料(以下「保険料」という。)の徴収等に係る事務を行っている。機構は、毎月の保険料を納期限である翌月末日までに納付していない者(以下「未納者」という。)が十分な保険料の負担能力があるのに、度重なる納付督励を行っても未納保険料の納付等がなく、最終催告状を発行しても未納保険料の納付等がない場合には、国民年金法(昭和34年法律第141号)に基づく督促及び滞納処分(以下、最終催告状の発行から滞納処分までを「強制徴収」という。)を行うこととしている。また、同法によれば、保険料を徴収する権利は、所定の起算日から2年を経過したときは時効によって消滅することとされており、民法(明治29年法律第89号)によれば、債務者による債務の承認があったなどの場合に、時効は中断することとされている。そして、機構は、滞納整理関係事務処理要領等(以下「要領等」という。)を定めて強制徴収に係る業務(以下「強制徴収業務」という。)等を実施することとしている。しかし、未納期間が25か月を超えている未納保険料のうち時効中断により保険料を徴収することができるものについて督促を行っていない事態、未納者及びその連帯納付義務者(以下、未納者と連帯納付義務者を合わせて「未納者等」という。)の生活の維持又は事業の継続に影響が少なく差押えを行うことが可能な財産(以下「差押可能財産」という。)を保有していることが判明しているのに速やかに差押えを行っていない事態、未納となっている延滞金の納付督励及び滞納処分(以下「延滞金の納付督励等」という。)が適切に行われていない事態、並びに強制徴収業務等の進捗の管理が適切に行われていないなどの事態が見受けられた。
したがって、次のとおり、厚生労働大臣に対して平成29年10月に是正改善の処置を求め、日本年金機構理事長に対して同月に是正の処置を要求し、及び是正改善の処置を求め、並びに改善の処置を要求した。
本院は、厚生労働本省及び機構本部において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、厚生労働省及び機構は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 機構は、29年10月までに、既に消滅時効が完成しているものなどを除き、未納期間が25か月を超えている未納保険料について督促を行い、差押えによる未納者等の生活の維持又は事業の継続に影響が少ない差押可能財産が判明しているものについて差押えを行い、未納となっている延滞金について延滞金の納付督励等を行った。
イ 機構は、29年10月に要領等を改正して未納期間が25か月を超えている未納保険料について督促状を発行する作業手順等を明記するとともに、当該要領等に基づき、時効中断により保険料を徴収することができる場合には全ての未納期間に係る未納保険料について督促を適切に行うよう、各種会議等において各年金事務所に周知徹底した。
ウ 機構は、29年9月に各年金事務所に対して指示文書を発出して、未納者等がその生活の維持又は事業の継続に影響が少ない差押可能財産を保有していることを把握した場合には、特段の理由がない限り、要領等に基づき速やかに差押えを行うよう周知徹底した。
エ 機構は、29年12月に要領等を改正して、未納となっている延滞金について、延滞金の納付督励等のための作業手順等を明記するとともに、当該要領等に基づき、延滞金の納付督励等を適切に行うよう、各種会議等において各年金事務所に周知徹底した。
オ 機構は、30年5月及び同年7月に各年金事務所に対して指示文書を発出して、各年金事務所における強制徴収業務等の進捗状況を的確に把握して適切な指導を行えるよう、各年金事務所から強制徴収対象者進捗管理表を四半期ごとに機構本部に提出させることとするとともに、強制徴収対象者進捗管理表等により強制徴収業務等の進捗の管理を適切に行うよう各年金事務所に周知徹底した。
カ 厚生労働省は、30年3月に機構に対して指示文書を発出して、機構における強制徴収業務等が要領等に基づいて適切に実施されるよう、機構に対して各年金事務所における強制徴収業務等の取組状況を確認することを求めるなど必要な指導監督を行った。