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  • 平成29年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第7 厚生労働省|
  • 平成28年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項の結果

(3) 有料老人ホーム等の入居者が利用する訪問介護に係る介護給付費の算定について


平成28年度決算検査報告参照)

1 本院が表示した意見

国は、介護保険法(平成9年法律第123号)等に基づき、介護給付費の約100分の30を負担している。また、厚生労働省は、1月当たりの居宅サービス等に係る保険給付に一定の上限を設けることとして、要介護度ごとに標準的に必要と考えられる居宅サービス等の種類や回数等を勘案し、居宅介護サービス費等区分支給限度基準額(以下「限度額」という。)を、単位数(以下「限度額単位」という。)の形式で定めている。そして、1月内に利用した居宅サービス等に係る単位数の合計(限度額の対象となるものに限る。以下「利用単位数」という。)が限度額単位を超過した場合には、当該超過分については保険給付の対象とならないこととなっている(以下、利用単位数が限度額単位を超過するかどうかについての判定を「限度額判定」という。)。また、厚生労働省は、利用者が訪問介護を提供する事業所(以下「訪問介護事業所」という。)の所在する建物と同一の建物等に居住する場合に、当該訪問介護事業所が当該利用者に訪問介護を提供するときは、訪問介護を提供する者の移動等の労力が軽減されることを考慮して、訪問介護に係る介護報酬を所定の単位数の100分の90に相当する単位数に減算することとしている(以下、この介護報酬の減算を「同一建物減算」、同一建物減算の適用対象となっている訪問介護事業所の利用者であって同一建物減算が適用されている者を「減算適用者」という。)。減算適用者については、同一建物減算による減算後の単位数を集計した利用単位数に基づき限度額判定を行うこととなっている一方、減算適用者以外の利用者については、減算されていない利用単位数に基づき限度額判定を行うこととなっている。そこで、減算適用者の訪問介護に係る利用単位数について、同一建物減算による減算後の単位数を集計した利用単位数に基づき限度額判定を行うのではなく、同一建物減算による減算前の単位数に置き換えて集計した利用単位数に基づき限度額判定を行ったところ、一部の減算適用者については、利用単位数が限度額単位を超過していた。このように、同一建物減算が適用される場合には、同一建物減算が適用されない場合と比べて限度額単位の範囲で利用できる訪問介護の回数が増加するなど、保険給付の対象となるものが増加している状況となっていて、同一建物減算の適用の有無により介護保険として利用できる訪問介護の回数に差違が生ずるなどしている事態が見受けられた。

したがって、厚生労働省において、介護給付費の算定に当たり、限度額の設定方法及び同一建物減算の趣旨を踏まえて保険給付の公平性が確保されるようにするために、同一建物減算の適用の有無により介護保険として利用できる訪問介護の回数に差違が生ずるなどすることのないようにするための措置を講ずるよう、厚生労働大臣に対して平成29年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。

2 当局が講じた処置

本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。

検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、30年3月に居宅介護サービス費等の上限額の算定方法等に関する告示を改正して、同年4月以降に提供された居宅サービス等に係る介護給付費の算定に当たっては、減算前の単位数を集計した利用単位数に基づき限度額判定を行うこととし、同一建物減算の適用の有無により介護保険として利用できる訪問介護の回数に差違が生ずるなどすることのないようにするための処置を講じていた。