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  • 平成29年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第7 厚生労働省|
  • 平成28年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項の結果

(4) 労働移動支援助成金のうち再就職支援奨励金に係る制度の運用について


平成28年度決算検査報告参照

1 本院が要求した改善の処置

厚生労働省は、雇用保険法(昭和49年法律第116号)等に基づき、労働者の円滑な再就職を促進するために必要な措置を講ずる事業主に対して労働移動支援助成金を支給しており、その支給に関する事務は都道府県労働局(以下「労働局」という。)が行っている。同助成金のうち再就職支援奨励金は、事業主が民間の職業紹介事業者(以下「紹介事業者」という。)に再就職支援を委託し、事業規模の縮小等に伴い離職を余儀なくされる労働者にその支援を受けさせることにより早期の再就職を実現させることを目的としたものであり、委託開始申請分(以下「委託開始分」という。)と再就職実現申請分(以下「再就職実現分」という。)から構成されている。委託開始分は、事業主が公共職業安定所から再就職援助計画の認定を受けた後に、再就職援助を承諾した労働者の再就職支援のための委託契約を紹介事業者と締結して当該契約に係る費用を負担することなどが、再就職実現分は、上記の委託契約を締結した後、当該契約に基づく再就職支援の対象となる労働者が助成対象期限内に雇用保険の一般被保険者等として再就職したことなどが、それぞれ支給要件となっている(以下、再就職支援奨励金の支給対象となる労働者を「対象労働者」という。)。しかし、委託開始分の対象労働者のうち助成対象期限内に再就職していない者の中に、助成対象期限内に再就職するための紹介事業者の再就職支援を受ける意思を有していないと認められ、再就職を支援する必要性が必ずしも認められない者が相当数含まれている事態及び再就職実現分の対象労働者の中に、紹介事業者の再就職支援を受けずに再就職している者が相当数含まれている事態が見受けられた。

したがって、厚生労働大臣に対して平成29年10月に、会計検査院法第36条の規定により次のとおり改善の処置を要求した。

  • ア 労働局における委託開始分の支給に当たり、対象労働者における紹介事業者の再就職支援を受ける意思等を確認して、再就職を支援する必要性が認められない者を委託開始分の支給対象としないこととするなど、対象労働者の範囲等について見直しを行うこと
  • イ 労働局における再就職実現分の支給に当たり、対象労働者に対する紹介事業者の再就職支援の状況等を確認して、紹介事業者の再就職支援を受けずに再就職している者を再就職実現分の支給対象としないこととするなど、対象労働者の範囲等について見直しを行うこと

2 当局が講じた処置

本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。

検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、30年4月に雇用保険法施行規則等を改正して、次のような処置を講じていた。

ア 委託開始分の対象労働者の範囲等の見直しについて検討を行った結果、労働局は対象労働者における紹介事業者の再就職支援を受ける意思等について、事業主が委託開始分の支給申請時に提出する書面により確認せざるを得ず、支援開始前に十分に確認することは困難であることから、再就職を支援する必要性が認められない者を支給対象に含めてしまう可能性が否定できず、再就職支援奨励金に係る制度をその趣旨に沿って運用するためには委託開始分の助成を廃止することが適当であると判断して、委託開始分の支給を廃止した。

イ 労働局における再就職実現分の支給に当たり、事業主が委託契約を締結した紹介事業者の再就職支援を受けずに再就職した者を再就職実現分の支給対象としないこととした上で、紹介事業者による対象労働者への再就職支援の実施状況等を記載した書面を事業主から提出させるなどして、紹介事業者の再就職支援を受けて再就職した者であることを確認することとした。