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  • 平成29年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第8 農林水産省|
  • 平成28年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項の結果

(3) 農林水産物・食品の輸出促進事業の評価等について


平成28年度決算検査報告参照

1 本院が要求した改善の処置

農林水産省は、農林水産物・食品の輸出額を平成32年(後に31年に前倒し)までに1兆円水準とすることを目指すため、輸出に取り組む事業者向け対策事業(以下「輸出対策事業」という。)を実施する事業実施主体に対して補助金を交付している。事業実施主体は、事業終了後に、輸出額の目標値及び実績値、目標値に対する実績値の比率である目標達成率、目標達成率の背景としての要因分析等を記載した事業成果報告書を地方農政局長等の事業承認者に提出することとされている。また、農林水産省は、事業成果報告書に記載された要因分析等によって事業成果を評価し、これを後年度の事業実施主体の選定等に活用するほか、輸出額の目標値を達成していない事業実施主体に対して輸出額の増加に向けた指導等を行うとしている。しかし、輸出額の目標値の設定及び実績値の把握が適切でなかったり、要因分析が適切に行われていなかったりしている事態、国内の主要な産地が連携した輸出振興体制の構築を図る取組として行う海外市場調査等(以下「産地間連携等の取組」という。)に係る事業成果を把握する指標として適切とはいえない指標により事業成果を評価することとなっているなどの事態、及び事業成果報告書による事業成果の評価を適切に実施していないなどのため目標を達成していないこととなっている品目があるのに指導等を行っていない事態が見受けられた。

したがって、農林水産大臣に対して29年10月に、会計検査院法第36条の規定により次のとおり改善の処置を要求した。

  • ア 事業成果報告書における輸出額の目標値及び実績値に係る数値や目標達成率に係る要因分析の記載状況を地方農政局等に確認させること、また、事業成果報告書の提出時期を事業の内容に応じた時期とするとともに、輸出額の目標値及び実績値の算出方法を把握することとすること
  • イ 事業実施主体に対して、事業成果報告書の重要性について周知すること及び産地間連携等の取組に係る事業成果を適切に把握するための手法を検討した上で、その手法について地方農政局等に事務連絡を発するなどして周知し、地方農政局等に産地間連携等の取組に係る事業成果の把握や要因分析の記載状況を確認させること
  • ウ 地方農政局等に、事業成果報告書による事業成果の評価に基づく事業実施主体に対する輸出額の増加に向けた指導等の内容を明確にして事務連絡等を発すること、また、事業成果報告書を提出している者が後年度の候補者となっている場合には、当該事業実施主体の選定における審査に際し、目標達成率の背景としての要因分析等を用いた評価の項目を設けること

2 当局が講じた処置

本院は、農林水産本省及び水産庁において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。

検査の結果、農林水産省は、本院指摘の趣旨に沿い、輸出対策事業及び30年度以降同様の仕組みにより実施する事業において、次のような処置を講じていた。

ア 29年11月に地方農政局等に対して事務連絡を発して、事業成果報告書における輸出額の目標値及び実績値に係る数値や目標達成率に係る要因分析の記載状況を十分確認させることとした。また、30年3月に制定した事業実施要領において、事業成果報告書の提出時期を事業の内容に応じた時期とするとともに、事業成果報告書に記載させる輸出額の目標値及び実績値の算出方法を把握することとした。

イ 29年11月に地方農政局等及び事業実施主体に対して事務連絡を発して、事業実施主体に対して事業成果報告書の重要性を周知した。また、上記の事務連絡及び事業実施要領により、地方農政局等に対して、産地間連携等の取組に係る事業成果を適切に把握するための手法として、事業実施主体に取組の内容に応じた成果目標を設定させ、当該取組の内容ごとに成果目標の達成状況を評価して要因分析を行いその結果を事業成果報告書に記載させることを周知し、その記載状況を確認させることとした。

ウ 事業成果報告書による事業成果の評価に基づく事業実施主体に対する輸出額の増加に向けた指導等の内容を明確にして、29年11月に地方農政局等に対して事務連絡を発してこれを周知した。また、事業成果報告書を提出している者が後年度の候補者となっている場合の評価について、30年2月に、事業実施主体の選定のための審査基準に目標達成率の背景としての要因分析等を用いた評価の項目を設けた。