農林水産省は、鳥獣による農林水産業等に係る被害(以下「鳥獣被害」という。)の軽減に資することを目的として、市町村が定めた被害防止計画に基づき、鳥獣被害防止施設等の整備等を行う鳥獣被害防止総合対策交付金事業(以下「交付金事業」という。)を実施する事業主体に対して鳥獣被害防止総合対策交付金を交付している。鳥獣被害防止総合対策交付金実施要綱等によれば、事業主体は、交付金事業により整備した侵入防止柵等の施設を適正に管理運営するものとされており、都道府県知事等は、交付金事業実施後の管理運営や事業効果等の把握に努めるものとされている。また、事業主体は、各年度の交付金事業の実施状況について都道府県知事等に報告(以下「事業実施状況報告」という。)することとされ、都道府県知事等は、被害防止計画に定められた軽減目標の達成が見込まれないと判断したときは、事業主体に対して必要な指導を行うものとされている。しかし、事業主体において侵入防止柵を設置したほ場ごとに設置後の鳥獣被害の状況を把握していなかったり、侵入防止柵の設置及び維持管理が適切に行われていなかったりしている事態や、道府県等において事業実施状況報告に基づく指導の仕組みが効果的に活用されていない事態が見受けられた。
したがって、農林水産大臣に対して平成29年10月に、会計検査院法第36条の規定により次のとおり改善の処置を要求した。
本院は、農林水産本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、農林水産省は、本院指摘の趣旨に沿い、30年1月に地方農政局等に対して通知を発するなどして、次のような処置を講じていた。
ア 都道府県等に対して、侵入防止柵の効果を把握するために、侵入防止柵を設置したほ場ごとに設置後の鳥獣被害の状況を把握するよう指導するとともに、設置及び維持管理を適切に行うことの重要性について周知した。そして、都道府県等を通じて事業主体に対して、上記の内容について周知し、適切に行うよう指導した。
イ 都道府県等が被害防止計画に定められた軽減目標の達成が見込まれないと判断するための基準を具体的に定めた。そして、都道府県等に対して、事業主体に対する速やかな指導の必要性について周知し、軽減目標の達成が見込まれない場合には、その原因を究明した上で事業主体に対する指導を適切に行うよう指導した。