経済産業省は、研究開発プロジェクト等を独立行政法人等に委託して実施しており、受託者は、委託費により必要な試験装置等の物品を取得している(以下、委託事業により取得した20万円以上の物品を「取得物品」という。)。そして、委託事業の執行担当課は、委託事業終了後に取得物品の活用方法を検討し、受託者が継続使用を希望する場合には、取得物品について所有権の移転、物品管理簿への記録及び無償貸付(以下、これらを合わせて「無償貸付等」という。)の手続を行うこととされている。しかし、無償貸付等の手続を経ないまま受託者に取得物品を長期間継続使用させていて、取得物品が物品管理簿に記録されていない事態、取得物品が経済産業省の指示を受けることなく無断で廃棄されている事態、使用される見込みのない取得物品について需要調査を実施せずに受託者において長期間保管されている事態及び複数年度にわたる委託事業の最終年度までに取得物品の活用方法の検討を速やかに行うことができない状況となっている事態が見受けられた。
したがって、経済産業大臣に対して平成29年10月に、次のとおり是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求め、並びに改善の処置を要求した。
本院は、経済産業本省等において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、経済産業省は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 無償貸付等の手続を経ないまま受託者に継続使用させていて物品管理簿に記録されていない取得物品については、30年7月末までに無償貸付等の手続を行ったり、同省の指示を受けることなく無断で廃棄されている取得物品については、同年3月末までに全て受託者にその損害を弁償させたり、受託者において使用される見込みがないまま長期間保管されている取得物品については、同年5月末までにその有効活用を図るための需要調査を行うなどしたりした。
イ 30年1月に、委託事業の執行担当課に対して事務連絡を発出して、委託事業終了の際に、速やかに受託者の継続使用の希望を確認するとともに、受託者が継続使用を希望する取得物品について、無償貸付等の手続を適切に行うよう周知徹底した。
ウ 30年1月に、受託者に対して通知を発出して、委託契約書等に基づき、取得物品を善良な管理者の注意をもって適切に管理し、取得物品を使用する見込みがなくなった場合には、経済産業省に対して速やかにその旨を報告するよう周知徹底した。
エ 30年1月に、イ及びウの事務連絡等に基づき、複数年度にわたる委託事業の最終年度までに取得物品の活用方法の検討を確実に行うために、毎年度、定期的に、執行担当課が委託事業の実施期間中における取得物品の使用状況や委託事業終了後における継続使用の希望の有無等について受託者に確認し、その確認内容を大臣官房会計課において把握することとするなどの取得物品の取扱いに係る体制を整備した。