環境省並びに福島県及び管内市町村等は、国が指定した除染等の措置等を実施する必要がある地域において、放射線量の低減を図るために、住宅屋根等の清掃や、除草、表土等の除去等の作業を行う除染工事及び仮置場の造成工事(以下、これらの工事を「除染工事等」という。)を実施しており、環境省は「除染特別地域における除染等工事暫定積算基準」(以下「直轄除染積算基準」という。)に基づき、福島県及び管内市町村等は直轄除染積算基準に準拠した積算基準(以下、これらの積算基準を「除染積算基準」という。)等に基づき除染工事等の工事費を積算している。環境省は、直轄除染積算基準における共通仮設費率及び現場管理費率について、国土交通省における道路維持工事の共通仮設費率及び現場管理費率を準用している。そして、国土交通省の設定している共通仮設費率及び現場管理費率は、実態調査の結果を踏まえて、工事の規模等に応じて逓減するものとなっているが、共通仮設費及び現場管理費に対する算定対象額が1億円を超える道路維持工事の実態が少ないため、算定対象額が1億円を超えると逓減せずに下限となる一定の率となっている。
しかし、除染工事等は、国土交通省における道路維持工事とは異なり、算定対象額が1億円を超えるものが多数ある状況となっており、また、環境省等が施工業者から提出させている工事費内訳書から推計した共通仮設費率及び現場管理費率と、除染積算基準上の共通仮設費率及び現場管理費率とを比較すると、工事費内訳書から推計した率の方が低い状況となっていた。そして、除染工事等における工事費の積算について、除染工事等の実績が積み重ねられ、その実態を把握することが可能となっている中で、実態調査を行わずに、算定対象額が1億円を超える場合に、工事規模の実態に即した共通仮設費率及び現場管理費率に基づいた共通仮設費及び現場管理費の算定がなされていない事態が見受けられた。
したがって、環境省において、除染工事等に係る工事費の積算が工事規模の実態に即したものとなるよう、実態調査を行うなどして適切な共通仮設費率及び現場管理費率を設定するとともに、事業の実施主体に対してこれを周知するよう、環境大臣に対して平成29年10月に、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求めた。
本院は、環境本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、環境省は、本院指摘の趣旨に沿い、除染工事等に係る工事費の積算が工事規模の実態に即したものとなるよう、24年度から27年度までの間に実施された除染工事等を対象に実態調査を実施し、除染工事等と工事の内容が近似している工事に係る他省庁の積算基準を参考にするなどして、30年5月に直轄除染積算基準を改定し、同年6月以降に締結する契約から新たに設定した共通仮設費率及び現場管理費率を適用することとする処置を講じていた。また、環境省は、同年5月に福島県に対して直轄除染積算基準の改定内容について通知を発するなどして、事業の実施主体に対して上記の改定内容を周知する処置を講じていた。